4人の泥棒同盟
これは前回の『泥棒同盟』の続編となります。
この話だけでも楽しめるよう書いてはありますが、ご興味のある方は是非前回から見ていただきますとより楽しめるようになります。
魔法使いさん達の世界では高い魔法能力を持ってしても、それを利用し犯罪に手を染めるものもいるのです。
今回の主人公さんは2人の泥棒同盟を組んでいる移動魔法使いさん。時速800キロほどは出せる凄腕さんですが…どうやら犯罪に利用し使い道を間違ってしまっているようです。
そんな彼が大きな物語の主人公になる前の小さな小さな物語がはじまります。
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「なんだよこれ!ふざけやがって!!」
スクープ週刊雑誌を読んでいる相方が叫んでいる。
記事には「泥棒火炎魔法使いはニセモノだ。実際は上手く魔法が使えないポンコツ魔法使い。ポンコツ泥棒に注意しろ!」といった内容が載っている。
相方は火炎魔法使いを偽って脅し、泥棒を行う百面相魔法使い。火炎魔法を使えないのは本当だが、百面相魔法使いの魔法能力はかなり高い。人が視認出来ないスピードで別人になることができる。一昔前ではそれを利用してプロのスリ師をしていたほどだ。
相方はどうやらポンコツと言われて憤慨しているのだろう。とはいえ、実態とはかけ離れた記事でそこまで感情的になれるなんて馬鹿なやつだ。
だが、真実はどうであれ、記事の材料にされたことはかなり問題がある。
俺たちは同盟を組んで共に泥棒をしている。今後、俺たちは「ポンコツ」としていつもの手段が通じなくなる可能性がある。それに、ターゲットするカモたちも警戒が強くなってしまうだろう。
「こうも言われちゃあ、俺たちも何か策を考えないといけないな」
俺は独り言のように相方に呟いた。
「策っていったって、俺が毎度毎度顔を変えて泥棒するぐらいか、はたまたもう同盟解散してスリ生活に戻るぐらいじゃないか?」
彼はさっきまで怒り狂っていたのとは裏腹に今度は少し困りながら真剣そうに聞いてきた。
「いや、どちらもあまり良い選択ではない。お前が百面相魔法使いだとバレたらお前だけリスクが高くなる。それに、今更スリ生活なんて俺は効率悪すぎてやってられねぇよ。一攫千金の旨味を知ってしまったからな」
「じゃあどうするってんだ」
「仲間を増やすってのはどうだ?空き巣を狙ったり、警戒体制を上手くすり抜けれるように出来る現場調査役だよ」
俺は考えている策を相方に話してみた。だが、あまり反応は良さそうではない。
当たり前だ。仲間を増やすってそう簡単なものではない。俺達の知り合いを通じて増やしても、相手も犯罪者だ、いつ裏切られるか分からない。それに変に俺たちの、特に百面相魔法使いの相方の正体をバラすのもリスクが高い。
結局、俺たちは良い案は思い浮かぶことはなく、次の泥棒を行うことになった。
今回もある骨董品がお好みな家主の邸宅をターゲットにしている。
俺は彼の逃走を手伝う役割だ。彼をベランダへ送り、彼が外へ出てくるまで屋根の上で待とうとした。
その時だ、俺は異変に気付いた。
上空には小さな羽をつけた目玉達が四つほどいる。監視目玉だ。
気づかれてはまずい。俺は物陰に隠れた。
不幸中の幸いにも見つけられる事はなく俺の安全はある程度確保されたが、胸騒ぎがする。中の常態が心配だ。外でもここまで警戒している、中が無警戒なわけが無い。
そして、俺の考えが的中したかのように、館からやけに騒がしい音が聞こえてきた。
俺は恐る恐る監視目玉に注意しつつも窓から様子を見た。
俺の目には多くの警察が見えた。少なくとも10人はいるだろう。
相方のピンチを助けるべく、俺は窓を蹴り割り屋敷に入った。
背中に大きな翼が生えた俺は奴らに一目で移動魔法使いだとバレる。姿を見せてしまうと魔法を永久に無力化させる消滅魔法使いの警察に捕まって一巻の終わりだ。
俺はまず時速800キロで目玉魔法使いのベールがついた警察帽を盗み、ベールで顔を隠した。
そして、瞬時に警察に追われている相方を掴み、再び窓を蹴り割って遠くへと逃げてた。
幸いにもお宝はゲットしているようだ。それに俺の魔法が無力化されずにすんだことに一安心した。
「ありがとう。今回は本気でまずかった。後一歩のところで捕まるとこだったよ」
ヘトヘトの彼は安堵した様子で礼を言っていた。だが、その後驚く事を言い出した。
「なぁ、俺、良いこと考えたよ。もう一度引き返そう」
「はぁ?!どういうことだ?お宝はあるじゃないか」
意味のわからない事を言う彼に驚いている俺を見て彼はニヤリと笑った。
「あいつらを利用するんだよ。邸宅の中にも外にも大量に監視目玉がいた。あいつら全員捕まえてその中から金を提供し俺ら泥棒同盟に鞍替えるやつを選別するんだ。警察の連中はみな官僚、魔法能力は高いはずだ」
うむ、少し引き返すことにリスクはあるが悪くない提案だ。
勝手な単独行動する時点で規則の厳しい官僚達だ、どれぐらい鞍替える見込みあるかが分かる。ここである程度信頼はできるだろう。
それに、完全に仲間になるまでは羽と目玉を人質のように俺たちが握ってればいい。
分かったと俺は一言返事し、俺たちは邸宅へ逆戻りした。
そして、俺を目掛けて打ってくる火玉や襲ってくる蔦なんか余裕で避けて、監視目玉達を全て回収した。ざっと数えて10個はいるだろう。
その後、俺たちは路地裏へ逃げて、監視目玉達を解放した。俺の顔は見せてはならねぇからさっきの警察帽を仕方なく被ったままでいる。
やつら監視目玉達は会話は出来ないので俺は仕方なく筆談で交渉を始めた。
『俺たちは監視目玉の協力を得たい』
『俺たちに協力すれば盗んだものを平等に山分けし、大金を稼ぐことが出来る。そして、仮に警察に捕まった場合は俺たちが奪い返しに行ってやる』
『協力する意思があればここに残れ。そして、明日お前達の体自身がこの場所に来て取りに来い』
『他の警察に伝えても無駄だ。さっきのように俺たちを捕まえることは出来ない』
全て書き終えると、監視目玉達は周りを見渡し目配せしながらみんな去って行き、一つだけ残った。どうやら交渉成立のようだ。
「これは上手くいったな」
相方は嬉しそうにしている。
ああと俺も同じような嬉しそうな表情で返事をした。
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今回のお話はここまで。これから4人の泥棒同盟が誕生します。
その後、彼らは世界を驚かし楽しませる大人気のエンターテイナー、怪盗エンジェルとして大活躍していくのです。
ここは小さな小さな物語の集まりです。大きな物語はまた別の機会でお話ししましょう。
おしまい、おしまい。
毎日投稿しております。
もし気に入っていただけたなら、他の物語達も見に行ってあげて下さい。