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ベストパートナー

「なんでこんなやつとバディを組まないといけないんですか!!!」


 某新聞社の編集部写真課では2人の大声が響いていました。

 黒いハットを被りハットに付いたベールで目を隠している1人は目玉魔法使い。彼は目玉が外れる魔法で主に目で見たことを機械で通し、写真を作成しているのです。頭に小さな羽が生えているもう1人は羽魔法使い。彼女は自在に操れる小さな羽を出すことが出来、彼の目玉を現場まで運ぶ役割を担っています。

 そう、彼らは2人で一つの仕事を行わなければならないのですが…。大丈夫なのでしょうか?


 さて、そんな彼らの小さな小さな物語がはじまります。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 大声で課長に問い詰める俺らは周りからの視線を感じる。

 そんなものどうだっていい。俺のバディの羽魔法使いはとにかく高飛車で傲慢で文句が多い。

 あいつが静止しないせいでピントが合わない写真が出来上がってしまったというのに何故か俺の記憶力のせいにしやがる。本当にクソ野望だ。俺はもう我慢の限界だ。


「そう言われてもね。君達は相性が良いんだよ。彼女の羽のスピードに移動酔いもなくついていけるのは君しかいない。それに、隣の君も我々編集者はリアルタイムが最も大事なことを知っているだろう。十分に力を発揮出来なければせっかくの魔法能力がもったいないじゃないか」


 部長は必死に俺から彼女へと順を追って宥めているようだ。だが、そんなもので引き下がる俺たちではない。


「そんなもん知りませんよ。俺はもっとゆっくりした方の方が綺麗な写真が撮れます。移動酔いしなくったってピントが合ってなければ意味がないじゃないですか?それにこの偉そうな態度部長から言ってどうにかならないものですか?」


「こちらこそ、もっと的確に支持をくれる方がいいわ。彼は指示が下手くそなのよ。早く着いたってこんな写真じゃあ意味がないわ。ほんと1人じゃ何も出来ない目玉魔法のくせに偉そうに、人に言えたものじゃないわ」


「おい、お前魔法差別するつもりか?流石は羽魔法使い様だな!社則を破るほど偉いのかい?」


 俺たちの喧嘩はヒートアップするばかりだ。

 指示が下手くそだって?スピードバカが何言ってやがるんだ。

 それに目玉魔法をバカにしやがって、たしかに羽魔法と違って汎用性は低いがこれでも俺は優秀な方なんだぞ。記憶力もいいから写真の出来も良いし、お前のスピードにだって合わせてやっているってのにまったく。誰のおかげで写真を撮れているのか知りやしない。全くもって馬鹿野郎だ。


「わかった、わかったから。では、バディを変えてみよう。それで君らは納得いくだろう?」


 部長の一言で俺たちの喧嘩は終わりを迎えた。


 そして、新しくバディになったのは彼女とは正反対の大人しめな女性の後輩だった。


「あの、本日からバディを組ませていただきます。よろしくお願いします。一緒に適切な写真が残せるよう頑張っていきましょう」


「ああ、よろしく。今朝は騒いで悪かったね。俺も頑張っていくよ。あ、後指示は任せてくれ、しっかり伝えてやるからさ」


「ありがとうございます、助かります」


 先輩の俺とバディになったことでちょっと緊張してそうではあるが、上手くやっていけそうな気がした。



 しばらくして事件が起こった。警察からの情報によると子供の誘拐事件らしい。記者の移動魔法使い達は背中に生えた大きな翼をはためかせ、猛スピードで現場へ向かって行った。

 それを見送った後は俺たちも出番だ。俺は早速片目を取り外し、後輩のバディに羽をつけてもらった。


 やはり移動は以前の彼女の比ではないほど遅かった。事件収束まで間に合うか不安だったが俺は適切に指示していった。


 だが、俺の想像通り俺たちが着いた頃にはもうすでに他の目玉魔法使いや羽魔法使いが到着しており、事件も終盤を迎えていた。


「ごめんなさい、私が遅いがためにこんなことになって」


 そんな、今までこんな事なかったのに。

 俄然とし驚く俺に彼女は謝ってきた。


「いや、大丈夫だよ。とりあえず写真は撮っておこう」


 とりあえず返事をしてみたが、心の中は悔しさともどかしさでモヤモヤしていた。


 そんな気持ちを引きずっていると遠くの方から罵声が聞こえた。

 また、あいつだ。高飛車で傲慢だから誰とやってもどうせいつも通りだ。


 結局、採用された写真は俺たちのでもなく、あいつのでもないものだった。まぁ、それもそのはずだ。あんなに遅れていては仕方ない。


 だが、こんなの初めてだ。

 採用され周りから良い写真だと褒められている奴らを見ると、胸の奥からまた悔しさが沸き上がってくる。そして、その場にいられないほどに、直視すらできないほどに、俺は後悔でいっぱいだった。久しぶりに涙が出そうだ。


 会社のみんなの前で悔し泣きなんてしたら一生の恥だ。

 そう思った俺は仕方なく誰もいない屋上へ来た。


 するとそこにはあいつもいた。

 おい、と声をかけようとした時、俺はあいつが泣いている事に気がついた。


 いつもあんなに罵倒しあっていても、今、この状況を心地よく思えなかった。むしろ、心が痛んだ。

 思えば、あんなに傲慢な彼女は仕事に一生懸命だった。彼女も俺と同じく悔し泣きをしているのだろう。


 もし、俺が今回も彼女とバディを組んでいたら…。そう考えると更に心がチクチクとしてきた。


「さっきはすまなかった。お前は凄いよ。こんなにも仕事に一生懸命だったなんてな。それに、俺は今回で気づいたんだ。お前のスピードがあってこその俺の魔法能力なんだって」


 気がつくと俺は彼女に歩み寄り、謝っていた。そして、彼女の実力を初めて素直に尊敬していた。


 顔をあげる彼女。何を言おうか考えているようだった。いつもの傲慢さはどこか消え去っていた。


「うん、ありがとう。私こそごめんなさい。あなたがいなければ私は現場にすら着けなかったわ」


 とても素直な彼女に驚き、そして俺も何故か涙が出ていた。もう何の涙か分からないでいた。


「なぁ、俺たちもう一度バディを組まないか?」


 うん、と彼女は笑顔を見せた。

 なんだ、素直になると案外可愛くなるんだな。


 俺と彼女はベストパートナーなんだ。彼女には言わずとも俺の心の中でそう思った。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 魔法使いさん達は時には協力し合わなければならないことになるのです。そして、それが出来て初めて役を得るのです。

 誰か1人が強くて目立った主人公になることはないのでしょう。


 今回の小さな小さな物語はこれでおしまい、おしまい。


段落ごとの最初の1文字空けを忘れていてすみませんでした。

今回以降からはやっていきます。


これからも毎日投稿しますので、面白かったら是非毎日見に来て見てください。

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