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プロポーズ

『植物魔法使いのプロポーズ大作戦』という本を読み耽っている彼が今回の主人公さん。


 どうやら一大イベントがありそうな予感です。

 一体どうなるのでしょうか?


 今回の小さな小さな物語のはじまります。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 俺は今プロポーズの作戦を考えている。長年付き合っている彼女がいて、そろそろ結婚も考えないとと思っていてな。

 それで本を読んでいるわけだ。本には色んな方法が載ってはいるが、俺にはある大きな問題がある。それは、俺は植物魔法使いなのに花が一切出せないことだ。


 掲載されてるプロポーズ方法はどれもこれも花を使うものばかりだ。一瞬にして花畑を作れる植物魔法使いのプロポーズなんか最高だろうな。

「あまり花が出せない男子はこんなのもオススメ」と書いてはいるが、一瞬で花束を出しサプライズしたり、花冠を作りながら永遠の愛を誓ったりと、結局花が必要だ。まるで俺を馬鹿にしているようだ。

 女っていうものはそんなに花が好きなのか?


 俺だって出せるものはある。木だけだけどな。木なんて沢山だしても花畑どころかただの森になってしまう。ロマンチックとは程遠いものが出来上がってしまうわけだ。


 こんなにプロポーズごときで苦戦を強いられるなんてな。それに彼女は同じ植物魔法使い、もちろん花なんか余裕で出せる。

 はぁ、環境保護団体で街の森を生産している俺の名が廃ってくるよ。


 そんなこんなでへこんでいる俺に誰かが声をかけてきた。


「『プロポーズ大作戦』かぁ、こんな場所でよく恥ずかしげも無く読めるな」


 声の主は同じ団体で働いている同僚だ。


「おい、勝手に人の見るなよ、プライバシーの侵害だぞ」


「プライバシーだがプロポーズだがしらねぇが、勤務時間中だろ?」


 彼は注意のついでに俺を茶化してきた。俺は何も言い返せない。


「なぁ、どうせお前今暇だろ?なんか良い案ないか?俺が出来そうなやつでさ」


「は?まぁ、暇ではあるけど…」


 彼は驚き不本意そうな顔をしながら案を考え出した。そして、俺も彼と同じく再び考えに耽っていた。


「やっぱ、お前、森しかないじゃん」


 数分間うーんと考えていた彼は結局俺と同じ結論になっていた。まるで俺に追い討ちをかけているようだ。


「だから、森でもなんかロマンチックに出来ることがないかって聞いてるんだよ。花が必要なのは分かってんだからさ」


 不満げに俺は言い返した。そんなもん分かってる。だが、魔法なんてそうそう便利なものではない。自分の願いを叶えることも難しいものだ。


「あ、そうだ。願いが叶う大きな木の伝説って知ってるか?」


「なにそれ」


 何か良いことを思い出したのか彼の顔色が変わった。そして、唐突に出てきたそれは俺がよく知らないものだった。だが、初めて木でロマンチックなものが出てきそうだと俺は彼の話に少し期待し、耳を傾けた。


「なにやら、この世には星に届きそうなほど馬鹿でかい木があるってんだ。その木を触ったものは願いが叶うって話さ。だが、その木はどこに生えているかわからなくて、更には願いがありその木を求めているものの前にしか現れないって噂だ」


「なんだよ、それ。それを俺に探せってのか?」


「いや、作るんだよ」


 なんてこいつは無茶なこと言いやがる。そんな大きな木を一瞬にして出すことは出来ないし、育てるにもある程度時間がいる。俺は呆れ顔で返事した。


「作るって伝説を?んな馬鹿なことが出来るか。俺1人でどうやって……」


 俺が言い終わる前に被せて返事をしてきた。


「だから、協力してやるよ。俺に良い考えがあるんだ。2人で協力し合えればきっと素敵なものができるさ」


 俺は彼の考えを聞くやいなやなるほどと言って、本番で決行することにした。

 これは最高なプロポーズが出来そうだ。俺はそう感じた。



 プロポーズ当日、俺は彼女を何も無い丘の上まで呼んだ。呼ばれた彼女は不思議そうにしている。


「今から君に伝えたいことがあるんだ」


 そういうと何かを察したのか、彼女嬉しそうな顔をし始めた。それと同時に俺は木を出した。それも普通の木ではない、木の幹が何重にも重なって螺旋階段のような木を出した。

 彼女に手を差し伸べ、俺は聞いた。


「なぁ、願いが叶う大きな木の伝説って知ってるかい?」


 俺は彼女をエスコートしながら螺旋階段状の木の幹を登りつつ、伝説の説明を彼女にし出した。それと同時に最初に出した木はまた螺旋階段のような木の幹となっている2本目の木に縦に繋がっていった。


 2本目の木は俺の魔法では無い。同僚のだ。

 彼が考案した作戦はこうだった。俺1人では伝説のような大きな木を出すことは出来ない、だから交互に木を出し合おうってことにした。1人が木を出している間にもう片方がその木の上から2本目の木を出し始め木を繋げて行く、それを繰り返すわけだ。さらに、出す木の幹を螺旋階段状にして、2人で登りながら伝説通り大きな木にしていくってわけだ。


 伝説を一通り話した後、俺は彼女に一言言った。


「さぁ、伝説を2人で見に行こう。俺には叶えたいことがあるんだ、それはこの世で一番大きな木を登り切った時君に伝えよう」


 そう言いながら俺たちは木を登り続けた。登っている間、俺たちの思い出を話していた。2人で過ごして楽しかったことから喧嘩して悲しかったことまで木が大きくなるとともに色々とお互いに振り返っていた。


 そしてついに、俺たちはここらの街で1番大きな木を作り上げた。俺たちを見渡す限り、視界を遮るものは何も無い。そこには満点の星空が広がっていた。

 ただの丘だった場所は、花がなくともとてもロマンチックな環境へと変わっていた。


「伝説通り世界で1番大きな木さ。じゃあ、俺の願いを叶えさせてもらおうかな。俺と結婚して下さい。俺は君に一生隣にして欲しい」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 彼の願いはもちろん叶ったことでしょう。

 魔法使いさん達は日々、自身の魔法能力と上手く付き合い素敵な日々を過ごしているのです。


 今回のお話のおしまい、おしまい。




毎日投稿しております。

気に入っていただければ、他の物語達も見に行ってあげてください。


また、小さな物語達では異世界の世界観をお見せしております。見たいことや知りたいことなどあれば、感想にてお伝えしていただくとそれを題材に物語を書かせていただきます。

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