黒の水平線を目指すための私の脚
2話構成。1
歩く事それが許されたのは、私が15の誕生日を迎えた時だった。
「今日から、自分の足で何処へでも行ける。」
彼は、私を手助けしてくれる1人、ハムだ。
よく分からない研究の最中に顔の半分が吹っ飛んで、かろうじて残った左目も運悪く病気のせいで見えなくなってきている。
しかし、ハムがとても凄い事という事は知っている。
真っ直ぐ私をみつめる濁った目から、その言葉以上の思いを感じた。
「義足って物だろ?何でつけるのさ」
私は、膝より上の体しか持っていない。
覚えてもいない頃に、事故にあったらしい。
「なんでって、歩く為だ。それよりもその言葉使いをそろそろ治さないとなエイコ」
「はぁーい。それよりも、答えになってねーよ。杖があれば、歩けるだろうけど義足だけじゃ立つのは無理だ。」
「そうだ。本来は、そうだろう。しかし!私が作り出した最高義体に杖なんて必要ないのだ。」
ハムは、そう言うと手に持っていた2つの義足を私の脚に装着しようとした。
「まてよハム。年頃の乙女の跨ぐらをまさぐろうなんて考えてないだろうな?」
「コレは失敬。エイコも乙女だったな。すまないすまない。おーい。カナデ」
カナデは、1つ年下の私のいとこだ。
廊下を歩いてくる音が聞こえる。
見えたカナデは、林檎中学校の制服姿だった。
「なに?それよりも、エイコ着替えないと遅刻するよ。」
そう言って、私達を素通りしてカナデは、キッチンで朝食を作り始めた。
あと、1時間で支度を済ませれば余裕で間に合うと思う。
が、
朝はカナデが言う事を大人しく聞いておこう。
1日介助してくれるのだ。ささいな事で手をわずらわせたくはない。
「カナデ、ちょっと手伝って欲しいんだが……」
とハム。
「ハム。あたし着替えてくるよ。」
「お、おいエイコ」
私は、電動の移動機を動かして部屋へ向かう。
「ハムさん。早く食べて頂戴な。」
「わーお!私の好きな半熟玉子焼きだ!」
カナデの眠たそうな声と少し変なテンションのハムの声が後ろで聞こえた。
次に続くかも