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3,喋る猫、影なる獣(3)


(魔法……アレが魔法……?)


 イメージしていた魔法の定義が自分の中で崩れていくのを感じながら、俺はクエスチョンマークを頭の上に浮かべる。


 置いてけぼりになった俺をよそに、黒嵜さんは魔法のステッキで金色の球体をコツンと叩き目を閉じる。何かを念じているようだ。


「君に聞かれる前に答えておこう。陰獣は倒されれば『コア』を体外に放出する。我々は陰獣を倒すだけでなく、アレを封印・管理する役割を担っているんだ。さて瀬渕君、一通り陰獣との戦いを見てもらったわけだがいかがだったかな?」

「いかがだったって……。あ、あんなでかい怪物がいたなんて知らなかった……なんでニュースにならないんだ……」

「なるわけがないさ。見てもらった通り、倒された陰獣は消えていく。それに情報機関には国が保秘命を出しているし、そもそも知られてはいけないよう魔法乙女が結界を張って戦っているからな。最も、今は結界を解いたみたいだが」


 よく見たまえと、シンさんは先ほど鎌でえぐられた地面を指した。そこには、俺たちが来た時と変わりない無傷の舗装された道路があった。地面に飛び散っていた粘液や怪物の破片も、なぎ倒された街灯も、|何もかもが無かったこと《・・・・・・・・・・・》になっている。


 話の流れ的に、陰獣と戦う前にその『結界』とやらを張っていれば、戦い終わった時に周囲へのダメージはなくなるようだ。


「『結界』とはすなわち、新たなる別世界を作り、我々が住まう世界から陰獣を隔離するためのフィールドのことだ。唯一、魔方陣の中にいればフィールドに中に留まることができるがな。また魔法乙女以外の生物が、結界に物理的干渉を行うことも、ましてや知覚することもできなくなる。我々(・・)は例外だがな」


 陰獣を倒すために別世界を作り出すとか、もう何でも有りだな魔法乙女。


「あの、二人とも、終わりました……!」


 まだ魔法乙女の服装をした黒嵜さんが、半透明の膜に包まれた掌サイズの金色の球体を猫に差し出す。アレが『コア』か。


「……あれ?」


 気が付けば、陰獣の散らばった肉片が細かく分解されていき、キラキラと輝く粒子になっていた。どうやら封印が済めば死体は残らないらしい。


「ご苦労様、黒嵜君」


 黒嵜さんを労った猫は、なんとその球体を────あんぐりと口を開けて飲み込んだ。


 え……マジで? なにやってんの?


 あんな化け物と派手にドレスアップしたクラスメイトを見た後だ。もう何を見ても驚かない自信があったが、一歩間違えれば動物虐待のような光景にはさすがに凝視してしまう。


「危なくねーの……?」

「シンさんは『アニマルマシン』っていう機械を操っていて、中の人は別にいるんです」

「そういうことだ。この『コア』は我々が安全に保管するから安心したまえ」


 機械? アレが?


 どこをどうみたって猫そのものだろ。


 ていうか組織だって行動しているのか。


 次から次に舞い込む情報量の多さに、「そうなんだ」と絞り出すのが精一杯だったが、ようやく疑問が一つ氷解したと同時に違和感も晴れた。


「だから猫が日本語喋れたのか……」

「今更か」


 呆気にとられる俺の前に黒嵜さんがやってくる。


「瀬渕くん!」


 心なしか目がキラキラしているぞ。


「凄かった!!」

「……なにが?」

特異体質(バッファー)!!」

「そ、そうなんだ……」


 主語を忘れ、普段のキャラが崩れるほど興奮しているようだ。まぁ俺は通常時のパフォーマンスを知らないので差分が分からないのだが、このウキウキ具合を見るに力になれたようでなによりだ。


 ただし、俺の心境で結ばせてもらうならこうなる。



(黒嵜さんのがスゲーっつーの……)




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