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鯨の空  作者: 藤原(の)コウト
七日間天体観測
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九月十九日(日) 夕方

 UFOの毒々しい光が夕方の(だいだい)を蹴散らしている。寂れた神社にはびこった雑草が、UFOのホバリングする風で揺れている。ハッチが開く。俺に来いと手招きしているようだ。


「光くん……?」


 目の前の春原が不安そうに言う。そりゃそうだよな。こんな光景見せられて、驚かないやつなんていないよな。

 UFOが一台、俺たちの街に降り立った。この退屈な街の神社に降り立った。俺を迎えに、ずっと遠くの銀河からやって来た。


「なあ」


 もはや猶予はない。

 だから俺は告げなければならない。


「聞いてくれるか、春原」


 お別れを。

 最後の言葉を。

 ()()()


 夕焼けに沈む春原の輪郭(りんかく)は、今にも泣き出しそうにも見えた。何が起こっているのかは分かってなくても、何が起こるかはなんとなく察したのかもしれない。そしてそれはたぶん正しい。


「春原、俺な」


 俺はできるだけ笑顔でいようとした。下手で、不器用で、お前にも変だと笑われた笑顔。ボロボロで、わざとらしくて、見るに()えない俺の笑顔。

 失敗だらけのこれまでだった。いいことなんて一つもなかった。何度も(つまづ)いて、何度も諦めた。それを変えてくれたのはお前だ。俺を地獄から救い出してくれたのは、お前だ。

 俺は笑った。歯をむき出しにして、目を細めて、泣きそうなのをごまかして笑った。たぶん顔面がむちゃくちゃになっちまったけど、これでいい。最後までうまく行きやしなかったけど、これが一番俺らしい。

 そして俺は春原に告げた。



「――俺な、宇宙人なんだ――」



 告白が風に乗って消えていく。

 俺の青春はそこで終わった。


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