九月十五日(水) 1
「アホみたいにキツい……」
九月十五日、水曜日。午前十時。熱は三十八度五分。症状は熱と喉の痛みと全身のだるさ。俺はベッドの中でもぞもぞしながら独り言を呟いていた。
昨日、雨の中を馬鹿みたいに走り回ったせいで傷口からウイルスが混入、見事に風邪を引いた。さっきまで母さんが看病してくれていたのだが、仕事のこともあって感染るといけないと俺が追い出した。風邪そのものの心配というより、母さんは風邪引いても絶対仕事に行こうとするから、その事前妨害だ。
俺はと言うと、もちろん休んだ。学校に行けるような容態でもないし、母さんに止められたし、何より俺が行きたくなかった。
昨日自分の残り期限を今一度自覚したせいで、学校に行くことになんとなく抵抗を感じているのだ。学校に行ったところで別に楽しくねえし、一週間後にいなくなるのに今さら何を学んでも意味ないし、何より春原と遊べない。俺の中の学校の価値は、昨日一日で大暴落していた。元々マイナス付近をうろちょろしてたけど。
ということで、もし明日容態が回復したとしても、俺は学校をサボることを決意した。一度そう決めると、これまで何で愚直に通ってたのかが分からなくなる。暇だったのかね。
「うえ……」
気は楽になったが、体が気持ちについてこない。飲み物を取るのに腕を伸ばすのすら辛い。近年引いた風邪の中でも割と重いやつかもしれない。俺ってやつはつくづく間が悪い。何で今になってこんな風邪とか引くのやら。
「どれもこれも宇宙人のせいだ……」
十八年何度も言ってきて、もう癖みたいに宇宙人を非難した。宇宙人本人が聞けば濡れ衣だとでも思うのかもしれない。
でも、彼らのおかげで春原とも知り合えた。
「…………」
結局、春原の質問には答えられなかったな。自問にすら。なぜ春原を助けたのか。そんな哲学的な質問、ウイルスに浮かされた頭では分からない。
宇宙人だからなのか、そうじゃないのか。そうじゃないなら一体何なのか。考え出すと頭が痛くなる。比喩じゃなく本当に。なんたって病人だしな。
「寝るか……」
難しいことは後回しにして、今は眠ることにした。寝て体力を回復させれば、今よりはマシな考えができるだろう。風邪の辛さからも逃げられるし。
俺はゆっくりと目を閉じた。




