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鯨の空  作者: 藤原(の)コウト
トリプル・バンク・ブッキング
31/56

合流するルーザーとバンクロバー

「あっぶねえ!」


 ついさっきまで私の頭があったとこをRPG弾が駆け抜けてった。ちくしょう、ヤル気満々だあの野郎! すっ飛んでったミサイルは車に当たって大爆発を起こした。

 道路の真ん中じゃ逃げ場がねえ。じゃあどこにあるかって言われりゃ、まあどこにもねえんだけど……さて、どうすっか。


「乗って下さい!」

「あん?」


 そんなことを考えていると、ハイエースが近づいてその窓から冴えない男が顔を出していた。誰だこいつ。私がそう訝しんでいると、男は急かすように再び声を張り上げた。


「早く!」


 私はパワードスーツに視線を戻すと、ヤツは既に二発目の準備を終えていた。防具なし。遮蔽物なし。どうせ逃げれないならと腹を(くく)り、私はドアを乱暴に開けてお邪魔することにした。


「出発します!」


 後部座席に転がり込む、と同時に車は発進した。二発目のRPGが車の天井スレスレを通り抜けていく。


「(どの道、一発当たったら全部終わるけどよ……)」


 そこは運転手のテクニックに期待しよう。私は運転できないし。


「あん?」


 私はそこで同乗者の存在に気づく。乗ってるというか、乗せられてるというか……破れた制服を着た女子高生が縛られていた。


「おいテメエどういうつもりだゴラ? 誘拐現行犯か?」

「まっ、ままま待って下さい! 僕もその子を助けようとしてるんです! いえ元はと言えば完全に僕のせいなんですけど……っ!」


 こめかみに銃を突きつけると、冴えない男はあっさり自白した。罪は認めたってことでオーケーか?


「話せば長くなるんですけどっ、要は僕はヤクザに脅されてたんです!」


 む。そうか。まあそんな大それたことできるようなタマにゃ見えんしな。それに脅されてたっつうんなら私と同じだ。どこの世界にもそういうドジ踏むヤツはいるってこったな。


「だからもしお手数でなければなんですけど、彼女の縄をほどいてあげてくれませんかっ!?」

「つっても、こりゃナイフか何かがねえと切れねえぞ?」


 と、着ぐるみの顎に手をついた瞬間、焦げた手首から刃が落ちてシートに刺さった。着ぐるみの隙間から出たということは、元はこれも嫌がらせギミックの一つなのだろう。あのチビ、つくづく手が込んでやがる。


「ど、どうかしました?」

「何でもねえ。とりあえずナイフは見つけた」


 じゃぎじゃぎ。片手しか動かせないから切りにくいが、それでも拘束を解くくらいはできた。最後に猿轡(さるぐつわ)を切断してやると、自由になったJKはそそくさと距離を取った。礼もなしかとちょっとイラッとしたが、よく見るとビクビク怯えているようだ。私何かしたっけな。


「え、えっと、もしかしてなんですけど、あなた……」

「何だ? 私は赤荻(あかおぎ)だ。お前は誰だ」

「あっ、あたしは花崎(はなさき)です。えっと、間違えてたらゴメンナサイなんですけど……」伺うような目を向けられる。本当に心当たりがない。「……銀行強盗さん、ですか?」

「……何で知ってんだテメエ」


 もしや警察関係者か? 私の眼光が鋭くなると、花崎とやらのビビりも増した。


「にゅっ、ニュースで見たんです! ニュース、昨日のやつでやってて……!」

「それで私の顔が出てたってか? あのチビ、人の許可もなしに勝手に載せやがったのか!」


 肖像権というのを知らないのか! それとも犯罪者には人権がねえとでも!? 


「他には? ニュースじゃ私のこと何て言ってた!?」

「あうっ、え、えーと、銀行の柱折ったとか、ATM粉砕したとか、人質何人も殺したとか、今世紀最悪の金庫破りとかって言われてました……」


 全部私じゃねえ!! そりゃクソ親父の仕業だ! 私はどうやら知らんところで濡れ衣を被さられていたらしい。あのチビが……。

 だが、この様子だとパワードスーツのことは取り上げられてないらしいな。どうしてだ? あんだけ派手にやりゃ隠すのも無理があるだろうに。


 それとも米軍から圧力でも掛かってんのかね。盗まれたとか知られちゃマズいのかもしれない。ま、そんな政治的なこと考えるのは私の役目じゃねえか。

 今はとにかく……。


「ミサイル来ます!」


 運転手はそう叫び、ハンドルを大きく切った。すぐ横をRPG弾頭が飛んでいく。パワードスーツが追ってきた。あいつはまだ私を諦めちゃいない。


「(なんで今更私なんかにご執心なのかね、クソ親父殿は)」


 十年ぶりに会えて嬉しいとか、存外本気で考えてるのかもしれねえな。だとしたら歪んだ愛情表現だ。そんなアッツイご対面なんて私は望んじゃいねーぜ。


「おい何か武器ねーのか! あいつ止めれるようなヤツはよ!」

「無茶言わないで下さい乗用車にそんなのないですよ!」

「爆弾の一つもねーのか庶民の車には!」

「貴族の車にもありませんからね!」


 クソ! 圧倒的に火力が足りない。背中向けてるばっかじゃ狙い撃ちされるだけだ。倒すとはいかなくても、足止めできるくれえのパワーが欲しい……ん?


「あ」


 あるじゃん。

 私は自分の体を見た。ふざけた見た目の犬の着ぐるみ。ドSチビの意地悪なギミック満載のそれ。中でも特大に悪ふざけが過ぎてんのが……。


()()()()()()()()()……何だ、ドデカい花火ぶち上げられんじゃねーの」


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