合流するルーザーとバンクロバー
「あっぶねえ!」
ついさっきまで私の頭があったとこをRPG弾が駆け抜けてった。ちくしょう、ヤル気満々だあの野郎! すっ飛んでったミサイルは車に当たって大爆発を起こした。
道路の真ん中じゃ逃げ場がねえ。じゃあどこにあるかって言われりゃ、まあどこにもねえんだけど……さて、どうすっか。
「乗って下さい!」
「あん?」
そんなことを考えていると、ハイエースが近づいてその窓から冴えない男が顔を出していた。誰だこいつ。私がそう訝しんでいると、男は急かすように再び声を張り上げた。
「早く!」
私はパワードスーツに視線を戻すと、ヤツは既に二発目の準備を終えていた。防具なし。遮蔽物なし。どうせ逃げれないならと腹を括り、私はドアを乱暴に開けてお邪魔することにした。
「出発します!」
後部座席に転がり込む、と同時に車は発進した。二発目のRPGが車の天井スレスレを通り抜けていく。
「(どの道、一発当たったら全部終わるけどよ……)」
そこは運転手のテクニックに期待しよう。私は運転できないし。
「あん?」
私はそこで同乗者の存在に気づく。乗ってるというか、乗せられてるというか……破れた制服を着た女子高生が縛られていた。
「おいテメエどういうつもりだゴラ? 誘拐現行犯か?」
「まっ、ままま待って下さい! 僕もその子を助けようとしてるんです! いえ元はと言えば完全に僕のせいなんですけど……っ!」
こめかみに銃を突きつけると、冴えない男はあっさり自白した。罪は認めたってことでオーケーか?
「話せば長くなるんですけどっ、要は僕はヤクザに脅されてたんです!」
む。そうか。まあそんな大それたことできるようなタマにゃ見えんしな。それに脅されてたっつうんなら私と同じだ。どこの世界にもそういうドジ踏むヤツはいるってこったな。
「だからもしお手数でなければなんですけど、彼女の縄をほどいてあげてくれませんかっ!?」
「つっても、こりゃナイフか何かがねえと切れねえぞ?」
と、着ぐるみの顎に手をついた瞬間、焦げた手首から刃が落ちてシートに刺さった。着ぐるみの隙間から出たということは、元はこれも嫌がらせギミックの一つなのだろう。あのチビ、つくづく手が込んでやがる。
「ど、どうかしました?」
「何でもねえ。とりあえずナイフは見つけた」
じゃぎじゃぎ。片手しか動かせないから切りにくいが、それでも拘束を解くくらいはできた。最後に猿轡を切断してやると、自由になったJKはそそくさと距離を取った。礼もなしかとちょっとイラッとしたが、よく見るとビクビク怯えているようだ。私何かしたっけな。
「え、えっと、もしかしてなんですけど、あなた……」
「何だ? 私は赤荻だ。お前は誰だ」
「あっ、あたしは花崎です。えっと、間違えてたらゴメンナサイなんですけど……」伺うような目を向けられる。本当に心当たりがない。「……銀行強盗さん、ですか?」
「……何で知ってんだテメエ」
もしや警察関係者か? 私の眼光が鋭くなると、花崎とやらのビビりも増した。
「にゅっ、ニュースで見たんです! ニュース、昨日のやつでやってて……!」
「それで私の顔が出てたってか? あのチビ、人の許可もなしに勝手に載せやがったのか!」
肖像権というのを知らないのか! それとも犯罪者には人権がねえとでも!?
「他には? ニュースじゃ私のこと何て言ってた!?」
「あうっ、え、えーと、銀行の柱折ったとか、ATM粉砕したとか、人質何人も殺したとか、今世紀最悪の金庫破りとかって言われてました……」
全部私じゃねえ!! そりゃクソ親父の仕業だ! 私はどうやら知らんところで濡れ衣を被さられていたらしい。あのチビが……。
だが、この様子だとパワードスーツのことは取り上げられてないらしいな。どうしてだ? あんだけ派手にやりゃ隠すのも無理があるだろうに。
それとも米軍から圧力でも掛かってんのかね。盗まれたとか知られちゃマズいのかもしれない。ま、そんな政治的なこと考えるのは私の役目じゃねえか。
今はとにかく……。
「ミサイル来ます!」
運転手はそう叫び、ハンドルを大きく切った。すぐ横をRPG弾頭が飛んでいく。パワードスーツが追ってきた。あいつはまだ私を諦めちゃいない。
「(なんで今更私なんかにご執心なのかね、クソ親父殿は)」
十年ぶりに会えて嬉しいとか、存外本気で考えてるのかもしれねえな。だとしたら歪んだ愛情表現だ。そんなアッツイご対面なんて私は望んじゃいねーぜ。
「おい何か武器ねーのか! あいつ止めれるようなヤツはよ!」
「無茶言わないで下さい乗用車にそんなのないですよ!」
「爆弾の一つもねーのか庶民の車には!」
「貴族の車にもありませんからね!」
クソ! 圧倒的に火力が足りない。背中向けてるばっかじゃ狙い撃ちされるだけだ。倒すとはいかなくても、足止めできるくれえのパワーが欲しい……ん?
「あ」
あるじゃん。
私は自分の体を見た。ふざけた見た目の犬の着ぐるみ。ドSチビの意地悪なギミック満載のそれ。中でも特大に悪ふざけが過ぎてんのが……。
「二十キロのC4爆弾……何だ、ドデカい花火ぶち上げられんじゃねーの」




