死闘を制すバンクロバー
超重量の巨体が私の隣を駆け抜けて行った!
「おあぎゃあ! 危ねえ!」
「大丈夫ですか、姐さん!」
さっきの爆発でひっくり返った私をKが引き起こす。む。痩せてるようで結構がっしりしている。んなことはどうでもいい。
「しかし、うまくいきましたね!」
「まだ耳キンキンするけどな!」
あいつの装甲車から武器を奪って戦う。戦力が心許ないなら増やせばいい、という分かりやすい作戦だ。単純明快。金の次に好きな言葉だな。
「さあて、金だ金! トランクケース返してもらうぞこの野郎!」
「姐さん、まだ金庫の中熱いと思いますよ!」
「知るかアッチぃ!? 靴が溶けたぞ!?」
「あれだけ派手にブチかましましたから! というか、そもそもトランクケース無事なんですかね!?」
「あ? 無事? 無事って何が――」
……いや待てよ?
さっきはあいつ倒すのに必死で何も考えてなかったけど、よく考えればパワードスーツ壊すような爆発が、都合よく私の金だけ守ってくれるなんてありえるのか?
つうか肝心のトランクケースはどこだ? さっきちらっと見た限りではあいつの近くにはなかったが、どこか別の場所に隠したのか?
「………………あれ?」
考えれば考えるほど、なんかもう詰んでる気がする。いやでもこういうのって気持ちの問題だから。諦めたらそこで諸々終了って言ってたし。誰かが。
「ああ私の金ぇ! 熱い! 無事でいてくれちくしょーっ!」
「もう諦めましょう姐さん! ここは引いてまた別の銀行襲いましょう!」
「はァ!? あそこまでやったってのにか! もうすぐ全部報われるってのにかァ!?」
「そうやって競馬で大負けしてたでしょう姐さん!」
「なんでそれ知ってんだてめっ、うお!?」
行こうとする私とそれを引きとめようとするKとで揉めていると、ジリリリリリ! と天井のあたりから甲高いベルの音が銀行中に響いた。
「なんだ、火事かっ!?」
「正解みたいです、スプリンクラーです!」
上から雨みたいに水が降り注ぐ。目出し帽やら下着やら全身濡らされたが、
「おっラッキー。これで回収しにいけるな」
「姐さん、火事現場にバケツの水被って突入するみたいなノリで行かないで下さい!」
Kの制止を振り切って金庫に突撃する。邪魔者はいない。あとは金回収して逃げるだけで人生バラ色だ……っ!
「動くなカス共。警察だ」
……なんでだ。
なんでいつも、あと一歩の所で邪魔されるんだ!!
振り返ると、完全装備の警察が私らを取り囲んでいた。
私とKは顔を見合わせ、やがてゆっくりと両手を挙げた。