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鯨の空  作者: 藤原(の)コウト
幼吸血鬼ヴィヨンドの受難
13/56

扉を開けると


「よお。案外遅かったな、救世主。もう連中来てるぞ」

「バンピー? なんできみがここに?」


 病院から出て、自転車で花崎さんのアパートまで来ると、666号室の前に人間の姿のバンピーがいた。半開きの扉から騒ぎ声が聞こえる。


「もう傷は大丈夫なの? ていうか、連中って?」

「質問が多い。あと傷なんか大丈夫じゃねえに決まってるだろ。鯨の高度から落ちて無傷だった竜二とは違って、こっちは今にも倒れそうだ」


 そりゃそうか。もしかしたらバンピーが珍しく人間の姿でいるのも、まだ癒えてない傷を服で隠すためなのかもしれない。というか、竜二はあの高さから落ちて無事だったんだ。さすがすぎる。


「で、連中ってのはそいつらのことだ。魔術王とその(おい)の騎士団長。あとは俺の知らんテロリストとか名乗る集団と、弱っちそうな女のガキ。そんで、俺がここにいる理由は、あのいけすかねえ小娘から頼まれたからだよ」

「な、なにを?」

「お前を連れてこい、って」


 そう言って、バンピーはぼくの腕を掴んで引き寄せる。扉を開ける。


「俺はどうせ来るんだから待ちゃいいっつったんだがよ」


 見慣れた666号室。だけど今日は雰囲気が違う。

 あれだけぼくの心を軋ませた十字架がない。ねじくれた空間がない。一人じゃ掃除もできない彼女の、高貴な家の生まれらしくない汚い部屋。その中心でたくさんの人に囲まれて、のけ反り返る小さな背中。


「今すぐ会いたいから連れてこい、だとさ。あの吸血鬼が丸くなったもんだな」


 振り返る。

 その金髪の(きら)めきに、いつしかぼくは恋をしてたらしい。





























「ヴィヨンド……」

「遅いわ、人間風情が妾を待たせるな」


 これがぼくの、ぼくたちのお話。その結末。

 鯨が泳ぐ街で住むぼくらの、いわゆる青春物語だ。



これにて第一章? というか彼らの物語はおしまいです。

お付き合いくださりありがとうございました。



……まだ次があるぞ。


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