帝都目前での襲撃
帝都リリーファルナの城下町へと続く城下門が見え、リオンが気を抜いたであろう隙を突いて迫り来る凶刃…それは1つではなく複数同時に放たれていた。
しかしそれらがリオンに触れる前に龍真が斜線上に立ちはだかる。
「っ!龍真様っ!!」
自分の前に我が身を盾にして割って入った龍真に声を上げたリオンだったが刃物の先すら龍真に触れる事は叶わなかった。
(【断絶結界】の方はすり抜けてリオンに当たるしな…この場合は【万物離散】で充分だろ…)
襲い掛かった複数の刃は龍真が使用したスキル【万物離散】によって触れるどころか手前で粉々に霧散し塵状になっていた。
「…何もしていないのに散った…だと?馬鹿な…っ」
殺すつもりで放った物が訳も分からず無くなってしまうのを目の当たりにすれば驚くのは当然の反応だろう。暗殺者として見れば隙だらけだと言えてしまうが。
「マスター、危険な方法で対処するのは止めて下さい。私の力でもシオンさんの力でも幾らでも対処出来ますしマスターがわざわざ割って入らなくても守れるじゃないですかっ」
切迫した状況のはずなのだがミアティスが注意したのは防いだ龍真だった。
この程度の事ならスレイモンスターの自分とシオンで充分防げるし龍真自身ももっと安全な方法で出来るだろうという抗議である。
「そうだな。けどミアティス、俺が攻撃されても安心なのは知ってるだろうし身体が咄嗟に動いたんだ…大目に見てくれ」
「つ、次からは気を付けて下さいね…?」
ミアティスの意見はもっともだと実感していた龍真だったが、身体が勝手に動いて庇ってしまったのだしそれからでもどうとでもなるのだから許して欲しいと片手を伸ばしミアティスの頭を撫でる。
ミアティスは少し俯いて言葉を詰まらせるも以後気を付けるようにと再度注意することで主人の行動を許した。
「襲われてる最中の行動、言動とは思えん…少人数な上に年若い者ばかり、手練れなのか愚か者なのか判断出来んな」
龍真達が自分の話に意識を向けているのが油断なのかわざとなのか計り兼ねてる暗殺者は攻めあぐねていた。
「その台詞は別に要らないな。大体リオン様を亡き者にするのにお前1人で来たわけじゃないだろ?」
少人数で年若い…などと充分聴いた龍真は不要だと呟くと暗殺者の方に視線を向けて様相を確める。
黒装束に身を包み、フードを被った上で布マスクのような物で表情を隠す姿はどことなく忍者を連想させる格好だった。
【識別眼】の使用で既に単独での襲撃ではなく複数人隠れて狙っていることを把握していた龍真は暗殺者に他に仲間がいるだろうと指摘する。
「…何のことだ?」
「惚けても無駄なんだ、分かるからな…出て来ないならこちらから引き摺り出してみようか。リオン様を脅かす敵の一団、集え…【万物集束】」
一拍間を置いて平静を装い惚けた暗殺者だが龍真はおろかミアティスとシオンも潜伏していることを察していた為その行動は意味を成していなかった。
こんなところで無駄な時間を使う訳にはいかないと判断した龍真はリオンの傍だというのも構わず隠蔽していたスキルを口にする。
「な…っ!」
「身体が、勝手にっ!!」
「うぁあああっ!?」
何の構えも取らず発動した対象を集めるスキルによって物陰に隠れていた暗殺者達は忍んでいた甲斐も虚しく目の前にいた暗殺者の周囲に次々と集められていく。土の中に隠れていた者もいたのは若干リオンが驚いていたが。
「思ったより少人数だったな…ところで、その様子だと口を割って大人しく話す気もない、特殊な魔法で痛覚を無効にして命尽きるまで狙って来るって戦法なんだよな?」
「な、何故それを…!?」
「…っ!馬鹿!」
【万物集束】を使って集まった暗殺者達の数は6人程度であった。1部隊程は用意して襲って来たのかと思っていた龍真としては予想外である。
集束状態を解除してない為黒い塊のようになった暗殺者達を"識別"してどういう意思でどんな状態でどんな行動を取るか理解した龍真が塊に近付き、口に出して言い当てると1人の男が反応を示してしまい慌てて別の男が余計な事を口にするなというように注意するが重ねて無駄な努力だった。
「…もう一度言うけど無駄なんだ、分かってるって言っただろ?出来れば無駄に争いたくないんだが、俺達はリオン様の護衛だ…最初に狙って来たのはそっちの方だし諦めて貰うか」
「何をするつもりだ…?言っておくが我々は………」
「目標、対象の心臓…【万物離散】」
何を試みても無意味だと理解していても命を狙うような危険な集団と関わり合いになりたくない龍真だったが諦めて倒すことに決める。
暗殺者達が何をされても口を割らないと言い掛けた矢先、龍真はスキル発動の対象を暗殺者全員の心臓に絞り【万物離散】を使用した。
龍真の【識別眼】で把握した痛覚排除の魔法の影響下にある暗殺者達は自分が何をされたのか全く自覚することが出来ず、糸の切れた人形のようにその生命活動を停止して頭を垂らした。
「龍真さん、隠してたのに使っちゃって良かったの?」
暗殺者の襲撃を手早く撃退した龍真に声を掛けたのは儀式の神殿から自ら姿を現すことを極力控えていた龍真担当精霊のもちこだった。
"勇滅の森"を出る際に慎重過ぎる程念入りな隠蔽をしてきた龍真がリオンの前であっさりスキルを使用したことを心配してのことである。
「リオンにはだいぶ見せてるし話してるから今更って感じだしな。それにあの娘は口外しないって約束を守ってくれる筈だ」
「そっかぁ、龍真さんが見てそう思うなら大丈夫だよね」
今までのリオンの行動や言動とその本心を調べた龍真は確証を得ていた。
その答えを聴いたもちこは笑みを浮かべて納得し再び視認出来ないように姿を隠したのであった。
「マスター、お疲れ様でした」
「私は何の懸念もなかったがな…して主よ、この襲撃してきた愚か者達はどうするつもりだ?このまま野晒しにしておくわけではあるまい」
龍真がもちこと小声でやりとりし終えたところでミアティスとシオンが龍真に近寄る。ミアティスは純粋にマスターである龍真へ労いの言葉を掛けたがシオンは龍真がわざわざ無傷の状態で暗殺者達を無力化したことに興味を持ったようだ。
「生命活動を停止させたら持ち運びが出来るからな…彼等をリリーファルナで使って根源を炙り出せるかも知れないんだ」
「くくっ、主は面白いことを考える。私は賛成だな」
「龍真様、彼等を弔ってあげることは難しいですか…?」
龍真が【自由保存】に収納し怪しい人物の前で出して動揺させようとしてるのを話してシオンが合点が行ったと納得しているとリオンが弔うことを提案してきた。
命を狙われた張本人だというのに驚きである。
「失礼ですがリオン様…彼等は貴女のことを狙っていました。それもこの帝都目前で。これは最早重大な事件です」
「そうですけど…」
「命を狙われてる以上その根本を取り除かなければ解決にはなりません、どうかご理解下さい」
"成人の儀"を終えたばかりのタイミングで明白に暗殺を企てる存在がいる以上、龍真は先ず護衛として問題を解決しなければならないだろうと今後の活動を改めた。
このような事案は帝都の者と当人に任せ自由に動けば良いという気持ちも無かった訳ではないが、そこは一度受け持った仕事は責任を持って全うしなければならないと感じてしまう龍真の性であった。
だからこそリオンに頭を下げてでも理解を得なければならないのだ。
「龍真様…っ」
「リオン様の今後の生活を安全な物にする為にも協力して下さい」
龍真の行動を止めさせようとしたリオンだったがそれを言わせる前に龍真は同意を求める。
リオンに待ち受ける危険な生活から脱却させる為に実際年齢で見れば龍真の半分にも満たない年下のリオンへ頭を下げ頼み込むことには何ら抵抗も無かった。
「もぉ…龍真様にそんな風にされたら駄目なんてリオン言えませんよ。分かりました、龍真様にお任せしますね」
一時の沈黙を作った後、困ったように苦笑いしたリオンは暗殺者達を弔うことを諦め龍真の行動に賛同を示した。
更新しようとした日にちの前日、端末が壊れ復旧と作成に思わぬ時間を消費してしまいました。
読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、評価下さってる皆さん、いつも本当にありがとうございます。




