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これからの事を考えよう

更新時間、日数共に安定するまで疎らになりそうです。


(…さて、こういう小説を読んだり書いたりしてる俺自身が異世界に来たっていうのは良いが、これからどう行動して生きていくか…だな)


ステータスを見終えて精霊の命名も終え、一段落した龍真は化物達の接近が無い事を確認しつつ、次に自分の今後の方針に付いて一人考え始めた。

変更の利かない命名で残念な結果になり周りを飛んで何か抗議してる精霊"大福もちこ"については…考える邪魔になりそうなので少し無視を決め込んで良いだろう。


龍真は先ず、自分が持参してる持ち物の種類確認から始めた。身近な物から整理して状況を正しく見極める為だ。


【大きめのバッグ】

携帯テント

レインウェア

食料

縮小可能なストック

ライト

ライト電池

コンパス

水筒

帽子

グローブ

タオル

ビニール袋

救急セット

ライター

日焼け止め

虫除け

ナイフ

登山靴から履き替える為の靴

地図

替えの服

イヤホン

携帯シャンプー&リンス

手動充電器

寝袋

本数冊

ノート数冊

ペンケース


【所持道具】

財布

身分証

腕時計

リング

ネックレス

携帯

望遠鏡



(意外と多いな…不要な物は削るか、地図とか。いや…戻れなかった場合の記念位にはなるかも知れない)


元々登山知識の無い龍真はネットなどを確認して調べ、一応初心者の登山用に買い揃えていた物を残すべきか捨てるべきか一通り確認した後その扱いに頭を悩ませる。

結果的に何でも何らかの役に立つかも知れないと思い、今は整理を保留する事にした。

整理してる間相手せずに無視を貫いて対応せずにいた精霊…大福もちこが涙目で執拗に睨んでいたのだ。

その眼力は相当強かったのだが見た目と大きさで完全に台無しだった。


「ぐすっ…酷い、これから貴方が生を終えるまでの大事な名前を決める場面なのに、そんな変な名前って無いよぉ…本当信じられない…っ」


無視を続けていたせいか、怒りを通り越して悲しみが勝ったみたいで龍真が視線を向けたもちこほ瞳には涙を溜めていて、手でそれを拭い去ると龍真の正面を陣取った。

余程不服そうな顔をして残念な名前だと理解したのか、龍真に対して先程までの敬語を取り払い普通の喋り方に変わっている。龍真としては敬語を使われるよりその方が話し易く感じていた為特に気にも留めず大歓迎だったが。



「まぁ…そう言うなよ、大福もちこって名前はな…一見馬鹿にしたような名前に見えて実は俺の国の言葉で"大きな幸福を持ってる娘"って言う意味合いを持ってるんだからな」


抗議の眼差しを向けるもちこに対して龍真は名前の持つ意味を即興で捻り出し、後ろめたい気持ちを微塵も出さず堂々と伝えた。物は言い様である。


(…ま、この世界じゃ漢字って概念なんて伝わるか分からないけどな)


「…そう、なの?だったら…仕方無いからそれで我慢する」


この異世界の文字を只の1つも知らない龍真が内心突っ込みを入れる中、もちこ自身の方は名前の持つ意味を聞いて自分に言い利かせるように渋々納得したようだ。

少しは落ち着きを取り戻したもちこだが口調を戻す素振りは見せない。龍真はそれに特に何も感じないので直すように指摘する事もなかった。


「少し質問が有るんだが、もちこはステータスを司る精霊だと言ったな。関係無い事でも質問に答えても良い立場にあるのか?」


ショックから立ち直り切ってないもちこに多少の罪悪感も残っていたが、現状龍真の身に起こった状況や疑問が浮かんだ事に対する回答を出来るのは目の前の精霊であるもちこしか居なかった為、龍真はもちこに話し掛ける。

だがもちこはステータスを司る精霊でありそれ以外の会話、疑問への返答などが可能なのかは全く分からなかったし様々な制約が有ったりするのではと考えた末、龍真の出した最初の質問はこういう形になった。

これでもしもステータスの精霊という立場上答えられないのであるなら、龍真一人でこれからの身の振り方を考えるしか無いのだ。



「え?…答えられるかどうかは質問の内容にもよるけど、私達は基本的に対話して大丈夫な存在だよ~」


龍真としては切迫した確認にあっさりと大丈夫だと返答したもちこを見て、龍真の心配は杞憂に終わった為小さく安堵の溜息を漏らした。


「それなら良かった。じゃあ質問させて貰うか、この場所…この森の中の事を指すんだが、此処は人間が野宿しても安全な場所か?」


対話や質問が可能だと認識した龍真が最初に確認したのは現在自分自身が居る場所の安全確保に繋がる事への質問だ。

景色が変わりそれを満足に調べも出来ずに地球では見ない非常識な化物に襲われて、何とか逃げ延びた龍真だったが、もちこと会話している間別な化物とかにも襲われたりしてないので、このまま気配が無ければテントを組んで中に入り少しでも身体を休めたかったのが本音だった。


「此処はね、"勇滅の森"と言う名前の場所になるんだけど休む場所には全然適してないかな。龍真さん、多分知らないんだろうけどね…好んでこんな奥地に来て生きてる人族なんて殆ど居ないんだよ?」


もちこの口から物騒かつ中二的な名称が出てきた。

追加された多言語理解が無かったら別な名称で言われるのかと一瞬疑問を持った龍真だが必要な情報では無いだろうと口には出さなかった。


「ゆうめつ…勇滅ね。生きて出られるかも分からない危険な場所って事か?」


「残念だけど、熟練の強い人族でも一人で出るのは難しいかも…」


誰かと一緒に召喚され城で安全を保たれた訳でも無く、チートな強さも全てを凌駕する武器も持ち合わせて転移してきてない龍真にとって突き付けられたこの情報は恐ろしく絶望的な内容だ。


(さっき見た【多言語理解】の他のスキル…【万物創造】っていうのは恐らく何かを作る物だろうし、危機回避とかには適して無いだろうな。もしかして生産系のスキルだろうか)


ラノベ的な展開で考えて今の龍真に出来る生き方としては、勇者として多数を守ったり冒険したり出来るような華々しい人生ではなく、何処か安全な場所を確保してそこでスローライフするような感じしかないのでは…と考え込む。


(そもそも、俺はこの世界の金も存在を証明する身分も無いんだし、がむしゃらに足掻いて運良く森から出られて人里に入った所で連行されて取り調べとか拷問とかされるのが関の山だよな。世の中そんなに甘くない筈だ)


仮にこの"勇滅の森"を無事に出られて人間が居る場所に辿り着いたとしても安全が約束される訳じゃないと推察すると一気に頭が冷え、軽率な行動は控え安全策を検討し最善を選択したい所だ。

ゲームのようにやり直しも利かないしそういうスキルも持ち合わせてない龍真が異世界の人間なのだと誰かに伝えるのは自分の首を締める愚策だろうと結論付ける。

これは色々な展開を脳内保存していた龍真にとって理不尽に捕らえられ、死ぬ一歩手前で好き放題人体実験されて一生を終える展開になるのでは…と本能的な部分でも警鐘を鳴らしていたのも事実だった。


「じゃあ次だ、この世界の生物は倒したら金銭を落としたり倒した後、何かを残したりするか?」


「いやいや、そんな都合良い話は無いかなぁ。倒した生物の素材とかは自分で解体するか、そういうお店に頼むかしてお金に替えたり出来るけど。あ、魔物だったら魔力の塊で作られた魔結晶とかも素材であるけどね」



次に龍真がもちこに問い掛けたのはゲーム的な展開でありがちな敵を倒せばドロップ…というのが有るかどうかだったのだが、その微かな望みももちこからあっさり否定された。

どうやら魔石に似たような魔結晶という物質は存在していて、普通の動物と魔物との区別はそれにあるのだと理解して記憶に留める。


(不意討ちとか罠で無傷で倒して、稼いだ金で強力な装備を得るって線も無し…か。素材の解体なんて素人だし必要以上にこの世界の住人と接触してしまう)


遠距離からの意表を突いた攻撃で経験や金銭を得られれば少しは楽になるかと思ったのだがその考えも一蹴され、手持ちのナイフでは魔物の解体に適してるかどうかも分からず仕舞いで不安も募りいよいよ取るべき道はスローライフ以外選択肢が無いように思えた。

目立たず過ごすというのは寧ろ好ましい方に分類される龍真だったが、自分が安全に生活していけるだけの最低限の強さは持っていたいのも事実だった。

どう過ごしていくにしても平和に過ごしたいのだ。


「…じゃあ次だ、スキルっていうのは店で買える物もあるか?」


もちこに次の質問を投げ掛けながらバッグの中から筆記用具を出して要点を書き記す。

折角得られた知識を流してしまうのは勿体無いし何かに使えると思ったからだった。


「あはは、大事なスキルがそこら辺に売ってる訳無いよ。もしかしたら、龍真さんの世界ではそうなのかも知れないけど此処だと最低限人に教わったり、自分で学んで増やしたり、生まれながらに持ってたり途中で発現する固有スキルがあるだけだね~」


攻撃系のスキルを得られる可能性を持ってスキルの売買を聞いた事はもちこに日本では可能な物として勘違いした捉え方をさせてしまったが、龍真はこの世界の仕組みの理解に集中する。

この質問に対する返答も龍真にとっては厳しい現実を突き付けられる結果になってしまったが襲われない今の時間は理解を深めるチャンスだと気持ちを切り替えた。



「そうか…追加の見込みは少なくても有るんだな?質問ばかりで済まないが、この世界にはこうした袋の中に容量以上の物を詰め込める道具袋とか中に入れた物の時間を止めるアイテムとかそういう都合の良い魔法のアイテムとかはないか?」


手早くノートに纏めながら龍真は質問を重ねていく。

次の確認はアイテムボックスの存在の有無だ、数有る物語の中で主人公達が大半使っている便利道具がもし存在するのなら龍真自身も是非持っておきたいと思っていた。

自分の手荷物の中でどれが異世界で役立たない物なのか今のところは不明だが、変な物を見せて知らない内に不審に思われるのも避けたかったし、アイテムボックスがあれば素材の大量確保とかにも使える。

鮮度を保てて容量も際限無い物があったら言う事無しのアイテムだし、実在するなら手に入れるのは今後の目標にもなる。


「龍真さん……さっきからとても変な質問ばかりだけど、そんな時間も空間も関係無くなるような夢の道具が現実存在するって本気で言ってる?道具袋は道具袋、入れられるのはその大きさに見合った物だけだよっ」


もちこは生暖かい視線を龍真に向けている。

龍真の事を可哀想な人だと少し同情が生まれ、滅茶苦茶な状況での契約ではあるが出来る限りの協力はしてあげようという考えを持ち始めていたのだ。


(無いのか…欲しかったな、アイテムボックスは…実は何処かに、スキルとかに存在したりしないだろうか)


夢の無限収納は無し、ともちこの返事を聞いて記載した龍真はそれでも諦められずにいた。

もちこ達が知らないだけで何処かに有るのでは…とアイテムボックスへの渇望を払えなかった。


「っ!…──龍真さん、龍真さんのスキルに【自由保存(フリーストレージ)】っていうのが追加されたけど、確認する?」


「…はい?」


まるで神からの贈り物的な絶妙なタイミングで、もちこがアイテムボックスだろうと予想出来るスキル追加の報告を龍真に告げる。

偶然にしては出来過ぎるご都合主義な展開に龍真は驚きを隠せなかった。






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