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魔物が増えた生活 4


朝、明るくなる前からシオンと鍛練をしてミアティスの作った食事を食べた後、この世界の基本から学習し再びミアティスの食事を食べると魔物解体場を定め龍真とミアティス、それぞれ1体ずつ解体し後始末を終えて住処の洞窟に戻って来ていた。

続けて解体しようと思っていた龍真にミアティスが服作りをしたいと提案した為だ。


《本当に1人でやるのか?》


《はい、マスター達、ゆっくりして欲しい…》


住居に戻る最中、服作りの手伝いを申し出ていた龍真だったがミアティスはそれを良しとしなかった。

動きっぱなしの龍真達を気遣っての事だと理解していた龍真とシオンはあまり強く言えなかったのだ。


《分かった、じゃあ何か有ったら呼んでくれ》


洞窟の前でミアティスと別れ、近くでゆっくりしようとした龍真の袖をミアティスが引っ張り引き留める。


《あ、マスター…あの、使ってる牙…もっと人族の武器に近いように加工、出来るけど…する?》


《俺にとっては嬉しい申し出だけど、良いのか?》


スレイリンクで契約したとは言え過剰とも思えるミアティスの献身具合が一度心配になった龍真はミアティスを見詰め確認したが、そこには媚びた感情も無理に取り繕った忠誠も棄てられるかも知れない恐怖も感じられず、出来る事で無理ではないから申し出たのだと捉えられた。


《マスターの安全高まるの、私の安心にもなる、から…マスターが良いなら、出来る》


《…分かった、じゃあ武器の加工も宜しくな》



予想通りの返答を返してきたミアティスに【自由保存(フリーストレージ)】から解体した食用部位以外の素材を全て手渡し、中に持っていき戻って来たミアティスにイビルティグレスの牙を渡すと両手で抱えて中へ入って行った。


《龍真よ、ミアティスが作業しておる間何をするのだ?その様子だと何もせずに待っているという訳ではあるまい?》


中に入り物音が聞こえ始めたのを確認して何かを探し始めるように視線を泳がす龍真を見てシオンが待ち時間の間の動向を確認する。


《あぁ、勿論だ…さっき解体で使ったスキルを応用してテントから木材を使った住居に変えようと思う》


視線を泳がす龍真の片眼は淡く輝き、既にスキルの【識別眼】を発動させていて、"寝具や住居に適した木"を識別しながら空き時間の使い方をシオンに返答する。


《ほぅ、住居か。龍真はその若さで住居を造れる技術を持っておるのか?》


《…いや、知識として知ってるだけで実際作った事は無いな》


厳選して探している龍真の傍らで質問を続けるシオンに龍真は嘘を付いた。

本当は地球に居る時物を作る事は体験しているし、実体験を踏まえた取材で経験もしている。

流石に一流の職人技を持ってる訳ではないがそれなりの物は出来るのだ。

シオンに対して真実を告げないのは異世界の人間だとボロを出さない為だ。


龍真が作るやり方がこの世界の方法と異なる可能性は限りなく高い。

下手に知ってると伝えて博識のシオンが知らない方法だった場合問い詰められるのは避けたかったし初めてだと言えば滅茶苦茶な出来でも違和感が無いのだ。


《…あれは良さそうだな》


シオンが言葉を続ける前に龍真の眼が建物に適した木材を示した。

良質な木材を幾ら見出だしてもスキルのお陰だと言えば言い訳も立つ為素材選びは手抜きしなかった。


《【万物集束】、風の魔力よ…両手に集え。【万物纏合】、刃を成して両手を纏え。…よし、シオンは離れててくれ》


《む、気にせずやると良い》


解体作業で使ったナイフとは違い今度は両手に風属性の魔力を集め、刃を作る。

木を伐採する作業でシオンに一声注意を促すとシオンは自信満々に構える。


《【飛天縮地】…っ、この速度なら》


問題無さそうなシオンを横目に龍真は新たに得たスキルを使用して材料となる樹木へ急速接近する。

【識別眼】を発動し材料に適した伐採線を見定め風の刃を振るい簡潔に伐採すると再び【飛天縮地】を使用して別な場所に姿を現し、次の伐採線を切り裂いて行く。


【飛天縮地】の発動効果は"短距離空間転移"だった。

龍真は体力を消費せずに最小限の動きで次々と伐採を繰り返し、ついさっきまで樹木だった物は瞬く間に複数の木材へと姿を変えた。

流れ弾の如く飛び散った枝や木の破片は散乱しないようにシオンが光魔法を使って消失させていた…でなければ他の生物に無差別に当たって大惨事である。


当然このやり方で木材にするのは"勇滅の森"限定だろう。

人里でやる事が有っても単独で行動出来る時以外は出来ない方法だった。


《龍真、私は暇だから作った木材から水分でも抜いておくぞ?》


シオンが木材を直ぐに使える状態にすると提案したのを聞き龍真は一度頷いて次の樹木へ移る。


(やっぱりシオンは住居に関しての知識も持っていたか、危なかったな)


何も言わずに次の手順へのサポートを提案したシオンの言葉に龍真は選択を誤らなかった事に内心安堵していた。


同じ手順で樹木を5本程伐採していくと木材がかなりの物量になった為、作業を一時中断してシオンの傍へ戻る。


《おぉ、随分早かったが材料はもう良いのか?》


龍真が切り裂いた破片を消失させつつ形を整えた木材から水分を根刮ぎ追い出すという器用な芸当を余裕でこなしていたシオンが龍真の接近に気付き、一度作業の手を止める。


《作り過ぎても置き場所に困るし、時間も有るしな…ゆっくり進めていけば良いだろ》


一度に必要な材料を揃えても良かったのだが簡単に揃えずに少しずつ作り上げていく事を選んだ。

今は焦る必要の無い期間だし暇潰し出来る作業は多い方が龍真にとっては有難い事だった。


《ふむ…それもそうだな。少しずつ作り上げられるのを見るのも悪くない》


《次は繋げる物の調達だな…凹凸を付けて嵌め込むのも有りだが時間が掛かりそうだしな》


龍真の考えに賛同を示しながら最後の木材から水分を追い出したシオンは空中に停滞した水の玉を自分に近付け喉を潤していたが龍真は釘の代わりになる物を考えていた。


《接触部分の事か、であれば粘着力を持つ土を使用するのはどうだ?濡らせば溶けて絡まりそこから渇かせば岩石と同質に硬化するぞ?》


《っ…その土は近くに有るのか?》


頭を悩ませてた龍真にアドバイスを与えたシオンの打開策…それはつまり地球で言うコンクリートの材料になる物と同じ性質を持つ土だった。


その性質の土が存在して尚且つシオンが知ってる事に龍真は即座に食い付いた。

それが近くに、そして豊富に存在するのなら自衛するのに大幅に役立つのだからそれも必然だろう。


《近くも何も、龍真が住居としてる洞窟に有るのだぞ。私が遠方で打開案を出す筈があるまい?》


揺るぎ無く自信満々で答えるシオンを見て龍真は言葉を失った。

付き合い続ける中でずっとこんな調子なら異世界転移する前の龍真であれば関わりたくない類いの尊大な態度だった。


《…ま、近くに有るならそれが良いけどな。後でどれがその土なのか教えてくれ》


《うむ、勿論だ。私は龍真の作る物が楽しみだから協力も惜しまぬぞ!》


シオンの聖獣としての立場と異世界に馴染んできた事も有って何事も無く会話を続けた龍真は今度は木材を手に取り風の刃で両端に突出部分を作り、別な木材に突出部分がギリギリで入る穴を開けていく。


《シオン、助かる。今は寝具だけでも作っておくかな》


色々な分野で協力してるシオンに素直に礼を述べると龍真は自分の分とミアティスの分のベッドとなるパーツを次々作り始めた。



─────────────────────────────

──────────────────

───────…


《取り敢えずこんな物か…》


同じパーツで2セット作り組み立てて調整を繰り返しながら漸く完成した頃には辺りは薄暗くなっていた。

シオンは龍真の作業を覗いたり近くで昼寝したりして自由に過ごしていた。


《一区切り着いたか?ではそろそろ戻った方が良いだろうな》


龍真が残った木材も合わせて全て【自由保存】に材料を収納するとシオンが身体を起こし帰宅の頃合いを指摘する。

龍真はそれに相槌を打つと揃って洞窟の住処の中へ入った。



《…マスター、シオン様…お帰り、なさいっ》


洞窟へ入ると既に全てを終えていたミアティスがよくテンプレで見掛けるような皮のワンピースを纏った村娘みたいな格好で出迎えてくれた。

いつの間に作ったのか、夜の食事も作成済みだった。


「ねぇ、龍真さん…スレイモンスターと聖獣様、どっちも魔物だけど普通に充実してるよね?…魔物なのに」


「もちこ、それは口にしても無意味な事だ…良かったと考えるべきだな」


朝から龍真の1日を傍で眺めていたもちこは、龍真と行動を共にしてるのは魔物だというのに妙に充実してるギャップに違和感を感じ、応える龍真も突っ込んだら負けだとこの現状を受け入れた。

先ずは食事をと龍真の袖を引っ張るミアティスに連れられ龍真達は揃って食事を済ませる。



《マスター、これ…出来たから…使って?》



食事を終えてシオンが夜の散歩だと住処を出て行った後、ミアティスがイビルティグレスの牙だと分かる面影を微かに残した見事に加工された長剣を龍真に差し出してきた。





読んで下さってる皆さん、ブックマークして下さってる皆さん、いつも本当に有難うございます。



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