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女の子(?)を拾った…


従魔…この世界でいう所の"スレイモンスター"。

龍真はスレイモンスターを手に入れる事を決意するも、どういう魔物を従えるかで頭を抱えていた。

異世界転移して日が浅く、勇滅の森から出たことも無い龍真の持つ知識は当然ながら乏しく、もちこに聞いた所で能力だけ知れても外見を知れなければ意味無いのだ。


(…従魔の見た目っていうのは重要事項だよな。俺の見た目どうこうより遥かに必須項目だ)


どうせ作品に出すなら見た目が壮観で麗美な方が良い。

龍真の描く理想と現在持つ知識が矛盾してる為、一度先送りにするかとも思ったが今手に入れて連携が取れているのと別な誰かが関わる所で手に入れるのでは関係性が変わると判断して絞り込みを続ける。


「ねぇ、龍真さんはどんな魔物を従えたいの?」


必要な問い掛けに答えていたもちこが龍真に問い掛ける。

何代も人族に寄り添って関わってきたもちこは意外と出来る精霊(おんな)だった。


「そうだな、空は飛べた方が良い。人を乗せられたら尚更良いが…」


龍真の頭に描いた従魔の候補としてはグリフォンやフェンリル、ドラゴンやユニコーン等が浮かび上がったが、どれも定番だったり従魔としている作品を見てきた為自分も手に入れるのは申し訳無い気持ちが勝った。

第一神話的生物が日本で見たのと同じような姿形をして同じような能力を持ってこの世界に居るかどうかなんて分からない、過剰な希望までは持てなかった。


「そっかぁ、それなら心当たりが有るから着いてきてよっ!」


悩んでる最中退屈していただろうもちこが龍真の条件に見合う魔物の住処に心当たりが有るらしく、飛び上がって案内を申し出る。


もちこ本人がここ数週間で語った事だが、本来ステータスを司る精霊達というのは必要な時以外殆ど不干渉で着いて回り、姿も消している者が大半だという。

現在の龍真ともちこの多干渉状態は珍しい形だともちこが力説していたが龍真は実際他人の関係性を見た訳では無いので半信半疑だ。


「分かった、その魔物をスレイモンスターにするかは見てから決めるが…取り敢えず行ってみるか」


もちこの提案に乗った龍真は立ち上がり端に置いていたイビルティグレスの牙を手に携えスレイモンスター候補の生息地へ向かった。




──────────────────

──────────

────…


「もう少しで住んでる所に着く筈だよ~」


もちこに着いて行くまま勇滅の森を草木を掻き分け進んでいき、岩肌の多い地帯へやって来た。

候補になる魔物はこの奥に住んでいるらしい。


「此処に住んでる魔物はフェルスアピナって言って半分人型で羽根が有るんだけど、獣人族みたいに言葉を話さない魔物なんだよね」


この先に住む魔物の様相を聞いた龍真の脳裏に連想されたのはゲーム等で良く目にするハーピーだった。


「もちこ、その魔物は大きいのか?」


連想したものが間違いの可能性も有る為龍真はもちこに大きさはどれくらいか確認する。


「人族と同じくらいかなぁ…大きい個体も小さい個体も居るけど大体その大きさだよ?その種族は雌しかいないんだよね」


《あああぁあぁー!》


大きさを確認した上に雌だけの魔物と聞いてほぼハーピーと同類だと判断した龍真の頭上から甲高い鳴き声と悲鳴が聞こえた。

龍真達が慌てて上を向いて何が居るのか確認してみると限り無く人間に近い女の子が落下して来ていた。


「…定番イベントの"空から女の子が降ってきた"…か、有りがちだが受け止めないと駄目だろうな」


日本でラノベを書いていた頃なら実際起これば動転していただろう出来事も今の龍真には冷静に判断出来た。

唯一有りがちな出会い方に不満が残って呟きを漏らしたが、受け止める為にイビルティグレスの牙を【自由保存(フリーストレージ)】に収納すると下に落ちてる小石を右手で鷲掴みして即死の力を込めて大きな葉に向かって投げ付けた。


枝を切り裂くように貫き、空に数枚舞い散った大きな葉が落下する少女の斜線に重なって少しずつ落下の速度を殺していく。

狙い通りに落下速度を殺せた龍真はこれなら受け止められそうだと判断して少女を受け止める為に両手を拡げ、見事少女を受け止める事に成功した。


「…っ!」


何とか受け止めた物の完全に勢いを殺すと少女にも龍真にも衝撃が大きい故に龍真は受け止めながら後ろに転がりもつれ合って少し先で完全に止まった。

咄嗟に少女の頭を手で庇ったが多少身体に傷が付いたかも知れないと素早く起き上がり少女の様子を見た限り無事なようだった。


《うう……っ…》


《「…話が通じるか分からないが、大丈夫か?」》


眼を閉じて未だ起き上がれず蠢いている少女を上から下迄見下ろして容姿を確認する。

頭に羽根を重ねたような毛並みの尖った耳が有る事、胸から少し下の辺りに羽根を生やしていて片方の羽根が貫かれている事、足首に羽根飾りみたいな体毛がある事、そして衣服を纏ってない事を除けば普通の女の子だった。


「これは獣人族とやらに分類されるのか?」


上から下まで確認した龍真はもちこの方へ視線を写し、獣人族かどうか確認する。理性の有る人だったとしたら住居に届けたり面倒事に巻き込まれたりする危険性も有るので余り歓迎出来なかった。


「うーん…多分フェルスアピナの未成熟個体じゃないかな」


「そうか…そいつらはこうも人に近いのか?」


「いやいや、そんな事無いよ?特徴的頭の耳と羽根の感じがフェルスアピナってだけでこれは特殊な個体みたい…余り良い意味じゃなくて」


獣人として分類されなかった眼下の相手に龍真は内心胸を撫で下ろして安堵するも、余りに人間に近い事から襲われたら躊躇するかも知れないと思いこの姿が一般的なのかどうか確認する。

対するもちこの返答は違うという物だった。


元来この魔物には人族の様に腕を持っておらず顔立ちも獣的、二の腕から先は翼になっており脚の鳥に近い部分も太腿迄有ると説明を続けた。

龍真はそれを聞いて空から墜落した根本的な理由を大体察知した。


この"勇滅の森"で人族に近い姿。

人族を下等と見なす魔物達。

フェルスアピナが雌しかいない種族。


ここまで揃っていればこの個体が迫害を受けていた事は火を見るより明らかだろう。

恐らくこの個体の親に当たるフェルスアピナは侮蔑の対象である人族の男と交わりを持ち、この個体を産んだのだ。


《アナタは…私達と…話せるの?》


考察している龍真を見上げていた少女が恐る恐る声を掛けて来た。


《一応喋れる…って事になるのか。大きな負傷はその翼だけだな?》


普段通りにしか喋ってない龍真には別な言語を話している自覚は皆無だ。

通じているのだから問題無いと話しを続け、落下した時の影響で内部に何処が不調が見られないか確認する。


《…あの、っ》


《ちょっと待て。話す前に格好を何とかしよう…やり場に困る》


何かを言おうと口を開いた少女の前に手を出して龍真が言葉を遮る。

敵意を持たれて戦いに集中出来るなら格好も気にならないのだがこうして話すとなると異性に対する免疫が少ない龍真には辛い格好だ。

自由保存(フリーストレージ)】からを大きいタオルを2つ取り出して繋げ、少女の胸元から太股迄隠れるように着せる。



《あの、その…助けてくれて、ありがと。弱いって言われる…ヒト族なのに、凄いんだね…》


《落下しているのを見たら取り敢えず敵意が無ければ止めるだろう…とそれは俺個人の常識だけどな。何で落下したんだ?》


たどたどしい喋り方に人見知りなのだと察した龍真はそれでもゆっくり話せば対話出来る魔物だと判断して目線を同じ高さにする為向かい合って座り込む。

見た目の成長具合に反して精神的に幼いと見えたからか、自然と人間の子供と接するような動きになってしまった。


途中で自分の中の常識だと言い足したのはこの世界の他人を知らないからだ。

問答無用で倒したりする連中も居るかも知れないのだし親切だと植え付けるのも気が引けたのだ。


《えっと…逃げてる最中に…後ろから、撃たれたの》


《何かに追われてたのか?》


《んと、そうじゃないんだけど……》


少女は出来事だけを簡潔に答えた。

逃亡していたと聞いた龍真は追手が近くにいると予測して【識別眼】を発動させる。

すると一際大きな敵意が近くに有るのを識別した。

危険を表す赤の意識に視線を向けイビルティグレスの牙を出して手に持ち、臨戦態勢を整える。


《それじゃあ、アレは追手とかじゃ無いんだな?》


茂みの先を睨み付けて暫くすると黒い巨影が近付いて来る。

二足歩行で4本角を持つミノタウロスに酷似した魔物が鼻息を荒くして姿を現した。


《そ、そんな…グラ・ダルガスなんてこんな場所に来ない、筈なのに…》


どうやら出現するのが珍しい魔物な様だった。

少女の動転具合から色々と危ない魔物なのだろう事は把握出来た。


《「アレはミノタウロスじゃないのか…名前は全部違うと見て間違いないな」》


無自覚に呟いた龍真の言葉に反応出来る者は、この場に置いて誰も居なかった。

何か有っては目覚めが悪いのでフェルスアピナの少女の方へ龍真が視線を向けると、少女は今度は龍真の方を向いて両手を塞いで絶句している。


《嘘、なんでティグレス種の大きな牙なんて持ってるの?》



イビルティグレスの強さがどの程度の物か、判断に迷う所だと頭を数回掻いた。







ストーリーの進行状況に挿絵が間に合わない…。

読んで下さってる皆さん、いつも有難うございます。




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