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Sー2話 恋の結果ー神楽結衣side

 24日、今日は俊司くんと付き合いはじめての初めてのクリスマスイブ。私はこの日のために1カ月前から俊司くんに渡そうと手編みのマフラーを家で夜に編んでいた。なんとかクリスマスイブに間に合った。よかった。



 綺麗な包装袋に手編みのマフラーを入れて、鞄を持って、私は俊司くんと待ち合わせしているアミューズメント施設の前に向かって歩いていく。



 日昼12時の待ち合わせだ。時計はまだ11時45分。俊司くんのことだから12時ギリギリに間に合うように、走ってくるに決まっている。だっていつもそうだから。やっぱり俊司くんは12時ギリギリにアミューズメント施設の待ち合わせ場所に走り込んできた。顔から汗ビッショリになっている。



 いつも間に合ってるからいいんだけど、なぜ、いつも駆け足なの。もう少し、時間に余裕をもって準備すれば、楽に待ち合わせの時間に来れるのに、歩いてゆっくりできるのに、どうしてそうしないんだろう。不思議だ。



 私は、鞄の中からタオルを取り出すと、いつものように俊司くんにタオルを渡す。俊司くんは嬉しそうにタオルを受け取ると顔と首の周りの汗を拭う。そして「ありがとう」と私に返してくる。



 普通、エチケットとしては「洗濯してから返すよ」の一言くらいあってもいいと思うけど、俊司くんからそんな言葉を聞いたことはない。だから、既に私は諦めている。私がタオルを洗えばいい。簡単な答えだ。いつものことだから慣れっ子になってしまった。私は俊司くんからタオルを受け取ると鞄の中へ片付ける。



 俊司くんがにへらと笑って「結衣。メリークリスマス!」と元気よく、嬉しそうに笑顔でいう。私も「メリークリスマス」と言って、俊司くんに深々と礼をした。



 俊司くんは私の肩に手を回して、私を抱き寄せると「腹が減っただろう。ラーメンを食べに行こう」という。たぶん、俊司くんがいきつけにしている某有名ラーメン店へ行こうという意味だと思う。俊司くんの隠れた趣味が、ラーメン屋巡りなことは、私の他に誰も知らない。私達だけの秘密だ。



 どこに行くのでも、私は良かった。だって初めて好きな男子とクリスマスを過ごすことになったんだ。それだけで私の胸はときめいて、胸いっぱいで、何もいうことはない。ラーメン屋だっていいじゃない。オシャレじゃないけど、高校生っぽいクリスマスも悪くないよ。



 私は俊司くんに肩を抱かれてラーメン屋まで歩く。俊司くんはいつものことだけど、私の肩を抱いて、顔をデレデレさせて、鼻の下を伸ばしてる。そんなに鼻の下を伸ばしてたら、もっと変な顔になっちゃうよ。鼻の下が伸びてる俊司くんの顔も可愛いかもしれない。



 俊司くんの明るくてストレートな性格が私は大好きだ。時々、暴走して、私を困らせるけど、私のことを大好きだという気持ちが伝わってくる。だからたいていのことは許してしまう。私、俊司くんに甘いのかな?



 そんなことを考えているとラーメン屋に着いた。ラーメン屋の中は満員だったけど2人席が1つ空いていた。私達は空いている席に座って、ラーメンを頼む。私は普通のラーメンを頼んで、俊司くんはラーメンとチャーシュー丼のセットを頼む。



 私は人より食べるのが遅い。でも俊司くんはいつでも優しく食べ終わるのを待ってくれて、今の俊司くんは自分のラーメンを食べ終わり、替え玉を2つ頼んで、それも食べ終わって、チャーシュー丼を口に頬張っている。どれだけ食べるんだろう。



 ラーメンを食べながら、いつものように俊司君の話を聞く。俊司くんの話の中で1番多いのは、俊司くんが大ファンの乃〇坂の話だ。俊司くんはすごい。全員の名前と顔が一致するんだよ。それにメンバーの歌ってる時の癖なども真似をして教えてくれる。それだけ記憶力があるなら、勉強に記憶力をまわせば、すごく頭が良くなると思う。でもそれをすると俊司くんじゃないから、言わないでおこう。



 私にはよくわからないけど、ファンだとこれぐらい知っているのは普通のことらしい。ファンにも決まった踊りがあるらしく、前に1度、踊ってもらったが、あまりの恥ずかしさに私は見ていることができなかった。激し過ぎる。



 明るく楽しく話をする俊司くん、話している内容はよくわからないけど、そんな俊司くんが私は可愛い。私達はラーメンをやっと食べ終わって、ラーメン屋をでる。、すぐにお客が入って、ずっと満員状態だ。さすが有名なラーメン屋だけのことはある。あー美味しかった。



 アミューズメントパークへ戻って、カラオケルームに行く。カウンターへ俊司君が走っていって、カラオケの予約をする。さすがはクリスマス。カラオケは満室だった。部屋が空くまで1時間待ちということだ。俊司くんはカラオケの予約をして、アミュードメントパークの外に出る。



 俊司くんと付き合うようになって、私はカラオケに2人でよく行くようになった。本当は私はカラオケが苦手で知っている歌も少ないし、歌える歌も少ない。だからすぐにカラオケが終わっちゃう。



 でも俊司くんはすごい。カラオケを歌似ながら、ソファの上でジャンプして、自分で振り付けをして、満面の笑みで歌いきる。歌が微妙に下手なところが笑える。



 でも俊司くんはすごい、最近、流行りの歌なら何でも歌うことができる。時々、カラオケが始まってないのに、歌詞を歌いだすこともある。俊司くんに聞くと、流行りの歌の歌詞とメロディーは全て頭に覚えているらしい。それって凄いよ。どうしてもっと、頭を勉強に使ったらいいのに。俊司くん、成績で、掲示板の成績表に名前が載るんじゃないかと思うほど記憶力がいい。



 俊司くんが飛び跳ねて、カラオケを熱唱している姿も好き。だって楽しそうなんだもん。カラオケしている時の俊司くんが、私のことを完全に忘れてしまうのが、少し残念。でも時々、笑顔で手を振ってくれるからいいかな。



 いつも帰り道は、ゲームセンターに寄ることになる。俊司くんはゲームセンターのゲームはどれでも得意だ。凄い集中力だと思う。本当はすごい人なんだけど、使い方を間違ってるだけなんだ。ある意味すごい。



 クレーンゲームも得意で、少しの投資金額で沢山のぬいぐるみをプレゼントしてくれる。いつも帰り道は、ぬいぐるみで一杯だ。ありがとう、俊司くん。俊司くんの優しさが伝わってくる。俊司くんは本当にやさしい。



 学校では、いつも生徒指導室に連れて行かれて、長いお説教を受けている俊司くんだけど、落ち込んだところを見たことがない。生徒会指導室から帰ってきても、いつもの調子で元気いっぱいに明るい。そんな時、私は少し恥ずかしくなる。先生に怒られた後くらい、少しは反省しようね。



 よくクラスの女子から「黒沢のどこがいいの?」「結衣は甘いんだよ」とか言われるけど、生徒指導室に呼ばれているのは私じゃないし、俊司くんだし、それ位のことなら我慢できる。私は俊司くんの明るいところと、元気なところが大好きだ。時には無茶苦茶の行動をして怒られてるけど、俊司君は人よりも喜怒哀楽が激しいだけだと思う。それだけ感情が豊かな人を今まで見たことがない。だから俊司くんのことが大好き。



 恋は魔法、恋は病というけれど、私は俊司くんという病気にかかってるんだと思う。俊司くんを好きになった理由なんて、いくつもあって、一言では言えないし、恥ずかしいから人に話すことなんでできないよ。



 カラオケの待ち時間を待っている間、私達は〇ックに寄って、飲み物を注文して2階の2人席に座った。すると俊司くんが、いきなり笑顔になって、「結衣、クリスマスプレゼントを受け取ってくれ」と言って、包装袋を私に渡す。私は「ありがとう」と笑顔を返して、包装袋を開けるとジュエリーボックスが入っていた。フタを開けると、可愛いシルバーのハート型の指輪が入っていた。



 そういえば、最近、クリスマス前に、ストローの袋で、俊司くんが私の左手の薬指に巻いて、遊んでいたことがあったけど、もしかして、私の指のサイズを測ってたの・・・・・・ストローの袋で・・・・・・そんなの誰も気づかないよ。私も、また変な遊びをし始めたと思って放置していたもの。



 指輪をはめてみると、指輪のサイズが指にピッタリと合った。俊司くんが私にストローの袋で薬指に巻いてた理由を今、理解した。



「嬉しい。大事にするね。ありがとう。俊司くん」



 私は嬉しくてたまらなかった。私も大きな鞄から包装袋を取り出して、俊司くんに手渡した。



 すると俊司くんは嬉しそうに包装袋を破って、手編みの黒のマフラーを中から取り出した。俊司くんは嬉しそうに手編みのマフラーを見て感激してくれてる。



「俺、このマフラーを大事にする。ありがとう!結衣。結衣のこと大好き」



 早速マフラーをつけてくれた。喜んでくれて本当に嬉しい。



 〇ックを出て、アミューズメントパークへ戻る。既に1時間が経っていたので、すぐに部屋に入ることができた。

俊司君はノリノリで、カラオケで飛び跳ねて、歌を歌っている。EX〇L〇、乃〇坂、西〇カ〇、綾〇、安〇奈〇恵、和〇器バ〇ドや沢山の歌を歌ってくれた。私は2曲だけ歌った。苦手だけど、安〇奈〇恵のLoveStoryと米〇〇師の灰色と青を歌った。あっという間に2時間が過ぎ、カラオケを出る。



 俊司くんと私はゲームセンターに行き、俊司くんは私にクレーンゲームでぬいぐるみを取ってくれた。可愛いサンタクロースの恰好をしているクマさんだ。ありがとう。俊司くん。



 夕方6時を過ぎに、俊司くんは私の肩を抱いて、「俺の家に来ないか?」と真剣な顔で誘われた。こんな真剣な俊司くんの顔を見たことがない。何か重要なことでも告げられるのではないかと思って、私は気持ちを落ち着かせて、俊司くんの家へと2人で寄り添って歩いていく。



 どんな話があるんだろう?いきなり結婚してくれとか言われたら、なんて答えたらいいんだろう?だって、俊司くんの家に行くということは、俊司くんのご両親とも挨拶するってことよね。きちんと挨拶できるかな。俊司くんのご両親からどんなことを言われるんだろう。「早く結婚の時期を決めてほしい」とか言われたらどうしよー。私、困っちゃうよー。



 俊司くんの部屋も見たいし、ご両親にも挨拶がしたいので、俊司くんの家に行くことにコクンと頷く。なぜか俊司くんの鼻息が荒くなった。興奮しているみたい。私は緊張してるんだけど・・・・・・



 俊司君は肩に回した手をギュッとして、私ももっと抱き寄せると、ルンルン気分で、急ぎ足で俊司くんの家に向かう。どうも様子がおかしい。なぜルンルン気分になるの?いつも変な俊司くんだけど、いつもより変。



 俊司くんの家について、玄関でくつを脱ぎ、「こんばんわ」と挨拶をするが、返事がない。あれ?ご両親はどうしたの?まずは俊司くんのご両親に挨拶しないと、失礼な子だと思われちゃう。



 あまりに家の中が静かなので、俊司くんにご両親のことを質問する。



「あー父ちゃん、母ちゃん、昨日のから田舎に帰ってるよ。正月過ぎまで帰って来ないんだって」


 

 俊司くんはあまり興味なさそうに、ダルそうに答える。それだったらはじめに言っておいてくれたらいいじゃない。私がどれだけ緊張したと思ってるの。初めて俊司くんのご両親に会うと思ったんだからー!緊張したよ。



「こっちに来て、俺の部屋なんだ」と言って俊司くんは2階の自分の部屋へ上がっていく。そうよね。廊下に立っていても仕方ない。私は俊司くんの後ろを歩いて、俊司くんの部屋へ入る。男子の部屋へ入るのって初めて。緊張する。



 俊司くんの部屋は机にクローゼット、テーブルの上にノートパソコン。棚の上にはテレビが置かれていて、ベッドの天井には乃〇坂のポスターが3枚も貼られていた。よほど乃〇坂が好きなのね。歌も全部、振り付けできるぐらいだもんね。



「疲れただろう。ベッドに座りなよ」と俊司くんが優しく声をかけてくれた。そういえば家にくるまで、ずっと歩きっぱなりだった。私は肩から鞄を降ろして、ベッドにちょこんと座る。



「俺、ちょっと着替えるわ」



 そう言って、私がいるのに、俊司くんが私のことを気にすることもなく、服を脱ぎ始めた。私は両手で顔を隠して、指の隙間から、俊司くんの着替えを覗く。なぜ、俊司くん、パンツがそんなにテントになってるの?すごいテント。



 私がボンヤリとそう思っていると、パンツ1枚になった俊司くんがいきなり私に抱き着いてきた。そしてベッドに押し倒す。そして私の唇にキスをして、右手で胸を触り、左手には「ウスウス」を握り閉めている。



 今日の俊司くんはおかしい。いつも乱暴にしてくることもあるけど、パンツ1枚で襲ってきたことはない。それも左手に「ウスウス」を握り締めているなんて、今日の俊司くんは本気だ。いつもの遊びじゃない。



 私は怖くなって、俊司くんの右頬をビンタし「俊司くんのこと、そんな人と思わなかった!最低よ!」と言い放った。



 そして泣きながら俊司くんからもらった指輪を俊司くんの顔に投げ返す。



「さようなら。私、もう俊司くんと2人で会わない。私、俊司くんと別れる」と言って、俊司くんの家を逃げるように家に帰った。あまりにもショックだった。俊司くんは私の体が目当てだったことがわかった。



 自分の部屋に入って、俊司くんに取ってもらった、クレーンゲームのぬいぐるみ全部を、ゴミ袋に詰めて、私は捨てた。私は朝まで号泣した。25日の夜9時に結菜に電話した。結菜は何も知らず、「どうしたの?」と電話に出る。



「俊司くんをフッた。俊司くん家で、クリスマスイブに襲われた。最低なクリスマス!」



 スマホの向こうで結菜も呆気にとられたような声を出す。



「宗太でもそこまでのことはしないよ。黒沢何考えてるの?最低!結衣、大丈夫だった?」



結菜は優しく私を励ましてくれた。結菜に「俊司くんと別れることにした」と伝えて、電話をきった。



 クリスマスイブのその件で、俊司くんの見方が変わった。私の体を狙う、狼のようにしか見えなくなった。襲われたことで、トラウマになり、怖くて怖くて仕方がなくて、俊司くんに電話して、別れを伝えた。



 俊司くんは号泣されて、謝られたけど、私の別れの決意は固く、大きかった。私はそれから男性恐怖症になった。俊司くんのしたことは絶対に許されることじゃない。クリスマスイブに私と俊司くんとの恋は終わりを迎えた。

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