66話 文化祭
文化祭の日がやってきた。俺達は文化祭の日までに自分達で色々なコスプレ用の衣装を作ったり、レンタル品を借りたりして用意をしてきた。
俺はゴジ〇のキグルミを着て、教室内を歩いているが、無駄に大きくでかい尻尾で教室の中を破壊していくので、みんなに迷惑がられて、廊下に立って呼び込みをすることになった。
凛と結菜は、凛の家からメイドのさんの服を借りてきて、2人はメイドになった。2人もきれいで可愛いが、1番注目をひいたのは神楽のナース姿が。突き出た大きい胸がナース服を突き破るくらいの大迫力だ。
俊司はなぜか白のブリーフ1枚の全裸で、首輪をつけて歩いていた。その横に鞭を持った栗本が立っている。栗本の衣装もかなり際どい。この2人がすずなちゃんに連行されたことはいうまでもないだろう。
慎は朝から姿が見えない、文化祭から逃げたのだろう。できれば俺も文化祭なんて出たくなかったよ。
零は凄いドレスを着て、「僕、シンデレラの役なんだよ」と言って、俺に衣装を見せにくる。その隣には男装の麗人のような赤沢が、立っていた。シンデレラの王子様の役らしい。普通と男女が逆になってないか?2人がいいなら文句はないけど、何かこの2人もおかしい。
俊司と栗本が教室に帰ってきた。俊司は刑務所の囚人の役で、栗本は警察官の恰好をしていた。俊司の首には首輪がはめられている。なぜ、この2人がペアを組んでいるのか意味がわからない。
すずなちゃんは謎のステッキを持って、魔法少女の恰好してしていた。20歳もずいぶん超えているのに、魔法少女の恰好が似合うなんて、すずなちゃん、童顔すぎるだろう。
とにかく文化祭を逃げた慎以外は全てコスプレをして、コスプレ喫茶はオープンする。
今日は一般客も学校に入って来れるので、学校の中は大賑わいだ。俺達のコスプレ喫茶は指名をすることもできるが指名料金が必要だ。。そして写真撮影もオプション料金になっている。
神楽は、指名料金をもらい、写真撮影をしてオプション料金を得て、荒稼ぎをしている、凄まじい売り上げだ。零も一部のコアなファンが相当集まっている。
凛と結菜のメイド姿も好評で、次々と指名が入って、接客している。すずなちゃんの魔法少女もウケている。
一番、人気がなかったのは囚人服を着ている俊司だった。まだ警察官の服装をしている栗本のほうが人気が高かった。男装をしている赤沢も、女性ファンが殺到し、結構な人気をはくしている
俊司は仕方がないので、看板を持たされて、学校中を歩きまわって、コスプレ喫茶の宣伝をすることになった。
俺は相変わらず、教室の入り口に立って、時々「ギャオー」と鳴いているだけだ。楽だけど、ちょっと寂しい。
瑞穂姉ちゃんがやってきた。既に多くの男性が、瑞穂姉ちゃんの周りに群がっている。さすがは魔女。魔女の魅了の力には誰も勝てないのか。
瑞穂姉ちゃんがきたので、俺は「ギャオー」と喜びの声を出すと。「お前、宗太か」と聞かれて、大笑いをされた。瑞穂姉ちゃんが俺達のクラスへ入っていくと、取り巻きの男性連中も全員、コスプレ喫茶に入っていく、売り上げ貢献ありがとうございます。
瑞穂姉ちゃんはさっそく結菜を指名して、2人でツーショット写真を写していた。凛も2人の中に入っていって、楽しそうに話をしている。
次に桜木さんがヨロヨロしながら、コスプレ喫茶にやってきた。高校の中に入ってから瑞穂姉ちゃんに放置されたようだ。俺はゴジ〇のぬいぐるみの手を必死にあげて、手を振るが、桜木さんは俺に気付かない。俺達の居室にいた瑞穂姉ちゃんを見つけて、ホッと安堵の息を吐いて、教室の中へ入っていった。瑞穂姉ちゃんが飲んだり、指名料金、オプション料金は、全て桜木さんが払っていた。2人の関係はどうなっているんだろう。
次に大樹おじさんが南さんを連れてやってきた。俺はゴジ〇の着ぐるみなかで「ガオォーー」と吠える。大樹おじさんは俺に気付かずに、南さんと2人で教室の中へ入っていく。
教室の中では凛が大急ぎで結菜の後ろに隠れているが、凛のほうが結菜よりも少し背が高いから隠れきることは無理だ。大樹おじさんは結菜と凛を指名して、席につく。そして記念写真を撮っている。大樹おじさんは俺のことを探しているようで、凛に聞いている。凛はクスクスと笑って、俺のほうを指差した。
大樹おじさんも、まさか俺がゴ〇ラになっているとは思わなかったのだろう。目を丸して驚いている。俺はこの大きくて硬い尻尾が邪魔で、教室の中へ入れない。
南さんはすずなちゃんを指名して、2人きりで椅子に座っている。魔法少女の恰好をしているすずなちゃんは顔をまっ赤にして、俯いている。南さんはニヤニヤと笑って、すずなちゃんの魔法少女の写真を撮っている。あの写真もまたベンツに飾られるんだろうか。南さんのことだから、いたずら心でやりそうだ。
すずなちゃんに「その恰好も似合っていて可愛いよ」と声をかけているところを、女子達に聞かれて、女子達は「キャー」とキイロい悲鳴をあげて大騒ぎになっている。だから20歳を超えているのに、魔法少女が似合う童顔の女性はすずなちゃんくらいですから。この場合、似合ってるよという言葉は言ってはいけないような気がする。すずなちゃんは顔をまっ赤にして俯いて固まっているが、南さんからすると、その仕草も可愛いのだろう。
由梨さんが現れた。さすが大人の魅力満載の由梨さん、男子学生が次々と虜になってゾンビ状態になっていく。魔性の女である瑞穂姉ちゃんと張り合えるほと色っぽい。俺は「ギャオー」と叫ぶと、由梨さんは俺の前でピタリと止まって「宗太くんね」と言って、着ぐるみの上から頭をなでてもらった。やっと俺の存在をわかってくれる人がでてきて、俺は着ぐるみの中で泣いた。
しかし、俺が頭をなでられている瞬間を結菜と凛が目撃した。2人の目の奥に炎がともる。由梨さんは南さんと大樹おじさんを迎えにきたようだ。由梨さんは教室へ入ると南さんに声をかけ、すずなちゃんと楽しそうに話している。
「南部長からよく話を聞いています。部下の新垣由梨です。よろしくお願いします」
「久保田鈴奈です。新垣さんですか。こちらこそよろしくお願いします」
すずなちゃんと由梨さんはさすが大人だ。お互いににっこりと笑って会釈をしている。南さんは席を立って、すずなちゃんに手を振って、大樹おじさんの元へ向かう。大樹おじさんも席を立って、結菜と凛に手を振って、南さんと合流して教室を出ていく。俺は必死に「ギャオー」と叫んで手を振った。大樹おじさんはにっこり笑って、「ゴ〇ラも似合ってるぞ。宗太君。店の宣伝をがんばってな」と言って廊下を歩いていった。
文化祭はつつがなく終わり、俺はやっと着ぐるみから出ることができた。ほとんど脱水症状だ。こんな着ぐるみ、借りてくるんじゃなかった。俺は着ぐるみを脱いで、椅子にぐったりと座り込んでいると、耳を思いっきり引っ張られた。結菜だ。その隣に凛もいる。
「さっきの美人な大人の女性は誰なの?頭をなでられて、とても仲良さそうだったし。どういう関係か聞かないと納得しないし」
凛も隣で胸の間で腕を組んで頷いている。
「あー、日曜日にバイトに行ってることは話したよな。あの人は新垣由梨さんと言って、南さんの部下だよ。そしてバイトの俺の教育係をしてくれてるんだ。由梨さんは俺をからかうのが好きで、よく可愛がってもらってるだけだよ」
「怪しい」
なんにも怪しくない。完全な誤解だ。確かに由梨さんは結菜と凛から見れば脅威だよな。色々な意味で大人の女性の魅力満載だからな。
文化祭が終わり、教室も元通りにされ、教室の中は俺達3人になり、夕陽が差し込んでいる。疲れている俺は早く帰りたかったが、2人の尋問はまだまだ続きそうだ。勘弁してくれー。2人に尋問されるなんて初めてだ。俺は何もやってない。1日中ゴジ〇をしてただけだ。これで怒られたら、たまらんわ。




