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62話 変わっているようで変わってない

 夜になる前に瑞穂姉ちゃんから連絡があった。結菜がむくれて部屋からでてこないという。何かあったのかと聞かれたので、初めて喧嘩をしたことを告げ、その原因も瑞穂姉ちゃんに相談した。



《やれやれ、結菜の奴、キスくらいのことでむくれてるのかい。だから、私はあんた達がキスするのは反対だったんだよ。歯止めが利かなくなると思ったからね。キスでこれなんだから、これ以上、進むと後戻りできなくなるよ》



 それはマズイ。キスでも結菜に大きな変化が表れているのに、これ以上、進展すると、俺のパパコース確定じゃねーか。最短距離でパパになるのはイヤだ。せめて大学生の間は、きちんとした学生をしていたい。



《私では、結菜を説得するのは無理ね。母さんに連絡してみるわ。結菜、母さんのことは尊敬してるから、母さんの言うことなら、きちんと話も聞くでしょう。だから宗太はそれまで待っていなさい。丁度、中間テストだろう。結菜のことを考えている時間なんて、今のあんたにはないはずだよ。中間テストに集中しな。結菜も自分のテストの点数が落ちたら、少しは頭も冷えるだろう》



 瑞穂姉ちゃんから、結菜を説得しに来るなと言われ、中間テストへ向けて勉強するようにと、強く言われた。結菜のことは結菜のお母さんが説得してくれるみたいだし、結菜のお母さんは信頼できる。任せておこう。



 結菜と喧嘩をしてから、結菜は極力、俺を無視するようになった。そして3人でお弁当を食べていた昼休みも、凛と結菜が2人でお弁当を食べている。それでも結菜は俺のお弁当を作ってきてくれているので、俺は1人、屋上でお弁当を食べた。喧嘩して以来、結菜が屋上にくることはなかった。



 中間テストが始まった。俺は毎週、瑞穂姉ちゃんが勉強を教えてきてくれていたのと、居残りのプリントの効果もあり、自分でも不思議に思うくらい、中間テストは悩まずにすんだ。上手くいったと言ってもいい。



 中間テストが終わり、廊下に学年50位までの成績が、掲示板に張り出される。別に万年、平均点近くの俺には関係ない。俊司が俺の元へ走ってきて、俺を両肩を掴んで、激しく揺らす。



「お前、どんなズルをしたんだ。お前が成績表に名前が載るなんて、あり得ない。仲良し赤点仲間だったのに、俺を1人残して、お前はどこへいくつもりなんだよ」



 そんなに俺にしがみ付くな。顔が近い。唾が飛んでくる。声がうるさい。なぜ、お前はそんなに必死なんだよ。充血している目が怖いって。あまりの俊司の迫力にドン引きする俺。隣では凛も俊司を見てドン引きしていた。



 ・・・・・・俺の名前が廊下の掲示板に張られてる成績表に載っていただと・・・・・・あいつ幻覚でも見たのか。



 HRが終わった後に、教室を抜け出して、凛と2人で掲示板に張り出されている成績表を見に行った。、確かに45位に俺の名前が載っていた。



 ちなみに凛は学年1位に名前が輝いている。どんだけ頭いいんだよ。凛は、きれいで可愛くて、頭も良くて、神様はいくつ、凛に才能を与えたんだ。



 しかし、掲示板に自分の名前が載るのが、こんなにも満足感を得るものだとは思わなかった。快感と言っていい。すごく気持ちがよい。自分が頭が良くなったような気分になる。なるほど、これは中毒症状がありそうだ。



 俺は掲示板を見てニヤニヤしていると、凛が優しく頭をなでてくれて。



「今回の中間テスト、テスト前から色々な問題があったのに、よく集中することができたわね。この調子で成績を伸ばしていけば、大学も夢じゃないわ。よく頑張ったわね。お父様にも報告しておくわ。お父様も喜ばれるはずだから」



 なぜ、大樹おじさんに報告するんだ?なぜ、大樹おじさんがそれほど、喜ぶのか意味がわからないが、凛には凛の家の事情があるのだろ。あまり詳しく知りたくないので、ここはスルーすることにした。



 凛と2人で教室の自分の席へ戻ってくると、1人、席に座って、落ち込んでいる結菜の姿があった。今回、テストの成績は随分と落ち込んで、赤点手前でなんとか止まったと凛から聞いた。それはショックだろう。あれだけ勉強していたのに、キスで頭がぶっ飛んでしまったんだからな。



 結菜に声をかけようとすると、凛に肩を掴まれて、凛は首を横に振る。



「結菜のフォローは私がするわ。もし、結菜が謝ってきたら、宗太は笑顔で迎え入れてあげて、その準備だけして待っててあげて。今回の中間テストで現実を見せつけられたから、結菜もショックを受けているけど、そのおかげで、自分が浮かれすぎていたのも理解できたはずよ。もうすぐ宗太に謝ってくると思うから、それまで待ってて」



 凛の言っていることは正しい。だが、俺はなんとかして結菜を慰めたい。どうすればいいんだろう。どんな言葉をかけても、落ち込んでいる結菜にとって、なんの慰めにもならないだろう。ここは女子同志、凛に任せるしかない。



 俺は自分の席に座って、前を見る。凛は上手く結菜に話しかけて、結菜がテストの愚痴を言って、凛がそれを頷いてきいてあげている。さすがは凛、結菜の上手くコントロールしている。俺では凛のように上手くできないだろう。



 凛が頭をかかえて自分の席に座る。俺は小さな声で何があったのか聞くと、凛は小さなため息をつく。



「大学目指すなら、もっと頑張んないとねって、結菜と話してたんだけどね・・・・・・宗太のお嫁さんになるからいいって言いだして・・・・・・早く赤ちゃんがほしいって・・・・・・私、もうついていけないわ・・・・・・赤ちゃん・・・・・・」



 俺も結菜の考えについていけるはずがない。結婚したいという気持ちはわかる。でも、いきなり赤ちゃんですか。赤ちゃんを作るってことは・・・・・・そういう行為もOKなわけで・・・・・・結菜はそこまで俺のことをOKなのか・・・・・・



 俺の目が段々、ギラギラと輝いてきたのを感じ取った、凛が全力で俺の頭を拳で叩いた。あまりの痛さに目が覚める。もう少しで性欲魔王になるところだった。



「宗太、結菜がOKしても、キスより先に進んではダメよ。あなたと結菜のことだから、止まらなくなるわよ。今、そんなことになれば、結菜のご両親も付き合いを反対するしか方法がなくなるわ。絶対に結菜に誘われても、襲っちゃダメだからね。当分、結菜に近寄るのは禁止。私で我慢しておきなさい」



 凛が真面目な顔で俺に説教をする。・・・・・・私で我慢しておきなさいって・・・・・・凛もOKなのか?



 俺は頭の中を妄想で一杯にして、凛の瞳を見つめると、凛は照れて、顔をまっ赤にして、顔を背けた。



 俺の理性が戻ってくる。凛に手をだしたら、大樹おじさんが喜んで俺を拉致するだろう。そして、凛コース確定だ。俺は結菜が好きだ、凛も好きだけど、愛しているのは結菜だけだ。結菜を裏切ることはできない。



 午後の授業が終わって、HRが始まるとすずなちゃんが教室に入ってきて、「朝霧さん、少し話があります。生徒指導室まで来てください」と言う。とうとうすずなちゃんまで心配して、結菜に直接、説教をするつもりだろう。



 HRが終わると、すずなちゃんの後ろに結菜がついていった。後ろ姿が心なしか、元気がなく、小さく見える。



 それから1週間が経ち、とうとう結菜が俺に頭を深々と下げて謝ってきた。



「ママから電話で怒られたよ。宗太のこと1番大事にしてないって。宗太は私のことを1番大事に思って、キスも我慢して、大学行こうって言ってくれたのに、私がそれをダメにしたって言われた。宗太、ゴメンなさい」



 さすが結菜のお母さんだ。効き目がすごい。



「それでね。ママにキスした気持ちが止まらないって相談したの。するとね、ママが言うの、キス1回したら1点テストの点数をあげなさいって、100回、キスしたら100点になるわよって笑って教えてくれた。100回キスできるなら、私、100点取るように頑張る」



 んー、結菜のお母さん、上手く言ったつもりでしょうが、途中で結菜を説得することを諦めて、上手く誘導しましたね。100回もキスしてたら、唇が腫れ上がって、可愛い結菜の唇の形が変わってしまいますよ。



「結菜、それは少し勘違いしてると思うぞ。結菜のママが言いたかったのは、今回の中間テストの点数分はキスしてもいいってことだと思う。だから、期末テストまでは少し我慢して、中間テスト分のキスの回数だけにしような。期末テストで良い点数を取れれば、キスの回数も増やせるんだから、期末テストをがんばろう」



 結菜は口を尖らせて、文句を言いたそうにしていたが、俺は丁寧にゆっくりと説明を続ける。凛も俺の話を聞いていて、結菜が結菜のママの話を勘違いしていると、俺のことをフォローしてくれた。ありがとう凛。



 結菜が急に思い出したように俺を見つめる。



「パパがね、今度、日本に帰って来た時、覚えていろって、怒鳴ってた。絶対に宗太に伝えるように言われたから、宗太に言っておくね」



 ハイ、俺の即死コース確定じゃん。結菜も笑いながら、何を言ってんだよ。



「ママがね、キスをいっぱいすると唇が膨れ上がって腫れちゃうから、ほどほどにしなさいって言われた。唇が変形するのはイヤでしょうって、言われた。私も唇が腫れ上がるのはイヤだから、これからは唇が痛くならないくらいでキスしようね」



 全く効き目ねーし。結菜のお母さんのいうこと、全く結菜には届いてねーし。まーテストの点数をあげるという意欲を結菜が持ってくれてただけでも良しとするか。



「久々に一緒に帰るか?」


「うん」



 久々に俺達2人は夕暮れ時の道を歩く。以前よりはキスの回数は減ったけど、まだまだ多く求めてくる結菜だった。そんな結菜が俺は可愛く思う。愛しいからキスをしてします。前と変わらねーじゃん。

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