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57話 すずなちゃんの誤算

 クラス委員長が零と赤沢に替わった。そのこで何が変わったことが起きたかと言うと、俺の周りが一段とうるさくなったということだろうか。



 朝、教室に登校すると、赤沢が竹刀を持ってクラスを睥睨していた。竹刀って本気で武器だから、竹刀で威嚇するのはやめような。まぁー赤沢のことは後ですずなちゃんに言えばいい。教室に入った途端に俺の右腕が急に重たくなったかと思ったら、零が縋り付いていた。お前は何をやってんだ?



「宗太、学校に登校する時、あんまり朝霧さんとイチャついたらダメなんだよ。僕の見てる前でイチャつくのはやめて」



 美少女のような顔で、上目遣いで見つめながら、涙目でウルウルと潤ませて、俺に訴えかけてくる。俺は男だ。男には興味はない。それがたとえ美少女のような男子だとしてもだ。俺は無言の視線でそのことを伝えるが、零を余計に涙目にさせるだけだった。



 そして、それを見た結菜が目を吊り上げて、眉をピクピクしている。そういえば、この2人の相性って最悪だったんだよな。俺の精神衛生上、零にはお帰りになってもらおう。



「零、お前がクラス委員長になったことはよくわかった。で俺のことを注意してくれるのもわかった。1つだけ言っておく。俺は男の言うことは一切聞かない。零、もうそろそろ自覚しろ。美少女のような顔をしているいが、お前は男だ。男である以上、俺はピクリとも反応はしない。だから俺に何を言っても無駄だ」



 零はそれを聞くと涙を流して教室から出て行った。零のファン・親衛隊達が零の後を追っていく。前よりも面倒になっているのは俺だけか。



 以前、クラス委員長、今回は風紀委員になった新藤が俺の近くにやってきた。基本的に俺はこいつのことを気に入っている。基本、人畜無害だからな。



「九条くん、今日も朝の登校風景を見せてもらったよ。やはり風紀を乱している。風紀委員として注意するしかないよ」



「新藤の立場からするとそうだろうな。しかし、新藤、よく考えてみろ。今、1人の美少女がいるとする。その美少女は腕を組んで寄り添わないと号泣する。それを放っておいて、自分だけ無事に学校へ通うことが、お前の正義か?その美少女を置いてきたことに、お前は悔やむことはないか?」



「そうだな。自分の保身のために美少女を放って、登校するのは間違っていると思う。」



「そうだろう。だから俺は美少女である、結菜を救いながら、学校までエスコートして登校している。お前の考えにも反していないだろう。だから俺は学校から注意を受けても、新藤から注意を受けても、美少女の結菜を救うために、俺は結菜を見捨てずに学校にくるしかない。俺の行動は間違えてるか?」



「なんだかよくわからなかくなったけど、九条くんの言っている事も、もっともなような気がしてきた。キスは禁止だけど、寄り添って歩いてくるのは仕方がないことだということは理解した。これからも頑張ってくれ」



 さすが、新藤、ちょろい!俺に言い負かされるようなら、まだまだ俺を注意するのに時間がかかりそうだ。俺はそんな新藤が大好きだぞ。頑張れ新藤。新藤は頭を振りつつ、悩みを抱えたまま、俺の元から去っていった。




 次は柏木がやってきた。俺、あんまり柏木のこと知らないんだよな。あんまり存在感の濃い女子ではないからな。



 柏木は黒髪をお下げに三つ編みにして、肩の両側から髪をたらしている。そして度のきつい牛乳瓶の裏のような眼鏡をかけているのが印象的な根暗女子だ。だから、俺は柏木と拘わったことがない。



「九条くん、朝霧さん、朝から寄り添って歩いて、風紀を乱さないでください」



 柏木は小さな声で、俺に訴えてくる。全く迫力がない。でも下手に論破すると、この手のタイプは泣くな。確実に。



 俺は結菜のほうを振り向いた。そして凛にも視線を送る。



「2人に頼みがある。柏木を可愛い女子に変身させてくれないか。柏木は自分の価値に気が付いていないようだ」



 凛が理解したというようににっこりと笑った。結菜も面白そうと笑って、柏木を捕まえる。



「お二人共、何をするつもりなんですか。私は風紀の乱れを注意しにきただけで、私自身をどうにかしてほしいと言ってるわけではないですから、肩を掴むのをやめてください。無理矢理に席に座らさないで」



 面白がって周りの女子も参加し始めた。こうなったら柏木も諦めるしかない。柏木は席にすわって女子達の玩具になっている。まずは三つ編みのお下げを解かれて、ドライヤーで三つ編みの癖を直されている。そしてどこからかエアーアイロンが持ち出されて、柏木は整髪料をつけられて、エアーアイロンで髪を内巻きに軽くカールされていく。そして度のきつい眼鏡は外されて、ハートマークのアイコンをはめられ、女子達は自分達の精一杯のメイクを施していく。



度のキツイ眼鏡を取れば、美少女に見える柏木が完成した。周りの男子から拍手が起こる。女子も口々に「可愛いー」「キレイー」と言っている。柏木も手鏡で自分の顔をみて、満足気ににっこりと笑っている。やっぱり女子は根暗よりもきれいで可愛い方がいい。



 柏木はこうして眼鏡っ子ではあるが、眼鏡を取ると美少女という、男子が欲しがる要素を兼ね備えたキャラに生まれ変わった。



「これで、私にも彼氏ができそうです。九条くん、ありがとう。これからもよろしくお願いします」



 柏木は当初。何を注意しにきたのかも忘れ、俺に礼を言って、自分の席に戻っていき、自分の手鏡を開いて、嬉しそうにウットリとしている。これで柏木からうるさく、風紀のことで言われなくなるだろう。それにあれだけ可愛くなったんだから、クラスの男子も放っておかないだろう。すぐに誰かが告白するはずだ。これで風紀委員の2人を丸め込むのに成功した。俺の生活は安泰だ。



 それを見ていた赤沢が目を吊り上げて、竹刀を肩に持って歩いてくる。



「九条、風紀委員があなた達に注意しなくなっても、私が残っているということを忘れないで」



 俺は赤沢の肩に手を置いて、ポケットからスマホを取り出して1枚の画像を見せてやった。零と赤沢がツーショットで写っている写真だ。



 俺は赤沢が零のこをを気に入っていることを知っている。今度のクラス委員長になったのも半分は零の近くにいたいからだということも知っている。



「赤沢、零と仲良くなりたかったら、なればいい。俺達はからかわないし、お前達を温かく見守ってやろう。協力してもいい。それを選ぶのか、赤沢がクラス委員長の道を歩むのか、それは赤沢が決めたらいい。どうする?」



 赤沢の顔が真っ赤になる。そして口の中ぼそぼそと呟いた。



「新庄くんと仲良くしたい。私も女の子らしくなりたい。女の子に見られたい」


「では竹刀を片付けろ。今、零は俺にフラれて傷心だ。それをお前が優しく諫めてやればいい。今がチャンスだぞ」



 赤沢は竹刀を片付けた。そして顔をまっ赤にして乙女の顔になる。



「ありがとう九条、私も考え方が固かった。お前のおかげで、本当の目的がなんだったか思い出した。今から零をなぐさめに行ってくる」



 赤沢は竹刀を捨てて、零を追って教室を飛び出していった。その後ろ姿は、恋する乙女だった。



「これで、クラス委員長2人、風紀委員2人を撃破だな。これで結菜との甘い生活を守ることができたな」



 凛と結菜が、俺の顔をみて、渋い顔をしている。



「今の宗太、悪徳の詐欺師みたいだったよ。あんなことして、またすずなちゃんに怒られても知らないからね」



 結菜とイチャラブできる生活が俺にとっては一番大事だ。そのためには詐欺師まがいなことも俺はやる。



 HRのチャイムが鳴って、すずなちゃんが教室へ入ってきた。そしてまず柏木の変化に気づいて、驚いた。新藤は何か納得したように頷いている。赤沢は照れて顔を赤くして体をモジモジとさせている。零は号泣して机に突っ伏して泣いている。



「一体、何が起こったの?クラス委員長2人と、風紀委員の2人の雰囲気が変わってしまったんだけど」



 俊司が腹を抱えて笑っている。慎が静かに手を挙げた。



「全員、宗太によって撃沈させられました」


「九条くん、今すぐ生徒指導室へ来なさい」



 俺は教室のみんなに手を振って、満面の笑みを浮かべて、すずなちゃんに生徒指導室へ連行されていった。それを見ていた凛と結菜は額に手をかけて、首を横に振り、ヤレヤレという顔で俺を見送った。



 1時間目の授業中に俺が生活指導室から帰ってくることはなかった。

潮ノ海月でございます。

読者の皆様。読んでいただきありがとうございます。

(毎日、面白い、楽しい作品が書ければと、一生懸命に書いております)

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