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55話 生徒指導室は大賑わぎ

 朝から結菜と登校するが、今日の結菜は上機嫌だ。いつもより頬を上気させて、ピンク色にしている。チラチラと俺の顔を見てはウットリとした顔をしている。たぶん昨日のキスのせいだろう。



 確かにキスの威力は絶大だ。俺もキスしてわかったことだが、あのプルっと感はなんだ。柔らくてプルっとしていて、唇を重ねると程よく温かくて、皆がキスをしたがる気持ちはわかる。



 しかし、結菜のマンションを出てから、まだ500mも歩いていないのに5回もキスをしている。こんなことをしていて本当に学校にたどり着けるのだろうか。



 道を歩いている人々、井戸端会議をしているおばちゃん達の視線が痛い。特に俺と同じ年頃の男子学生からは殺気のこもった視線が俺に向かって放たれている。たぶん「リア充、爆発しろ」と怨嗟の声を漏れ出いるのだろう。



 結菜は腕を絡めて、俺に寄り添い歩いているが、時々、俺のほうへ顔を向けて、上目遣いで目をウルウルと潤ませて、唇を寄せてくる。きれいで可愛い女子からの、こんな攻撃を受けたら、誰でもやってしまうよな。



 俺はついつい、結菜の唇に吸い寄せられる。まだ朝の8時過ぎだというのに、俺は朝から何をやっているんだろうか。



 キスをすればするほど、結菜の顔はトロリンとなりウットリとして、俺の肩にもたれかかってくる。もうすぐ昇天するんじゃないだろうな。それぐらいのトロリン感だ。そんなにキスしたことが嬉しかったのか。



 結菜でさえこうなのだから、俊司の脳は既に溶けてなくなっているな。間違いない。財布の中に2枚の「ウスウス」を既に用意をしているくらいだから、俊司は次のステップアップを考えているだろう。あの猿はそういう生き物だ。



 100mおきぐらいに結菜と軽いキスをしながら、学校へ進む。当然なことだが学校が近づくにつれて、生徒達が多くなり、俺達の周りは一種のエアーポケットのように誰も寄り付かず、周りを囲んで盗み見をされている。



 結菜と登校するようになって、この手の視線に慣れているので、これくらいのことはどうということはない。どうせ俺達のバカップル振りは高校でも有名だからな。



 結菜は夢の中を歩いているらしく、校門が近づいていようと、学校が近づいていようと、校門の所に先生達が仁王立ちしていようと、全く見えていないようだ。まったく幸せな脳の持ち主だ。



 校門を前にして、先生方々もいるのに、結菜は俺にキスをする。それも結構、濃厚なキスを・・・・・・



 校門にたどり着くなり、俺と結菜は先生達に肩を掴まれて、すずなちゃんは涙目で、生徒指導室へ連行された。



 すずなちゃんから涙の訴えがあり、結菜も少しは反省している。すずなちゃんは「私でもあんなにチュッチュしたことないのにー!」と机に伏せて、泣いている。よほど羨ましかったのだろうか。今度、俺でよかったら、すずなちゃんのホッペにくらいだったらチューしてあげてもいいかもと思ってしまうほど、泣いているすずなちゃんは幼くて可愛い。とても先生に見えない。



 俺達が生徒指導室から解放されたのは1時間後だった。既に1時間目の授業は終わっている。教室へ入ると、凛は俺達を見てクスクスと笑っている。



 俊司が走ってきてニヤッと笑った。



「とうとう宗太も朝霧とキスしたらしいな。でも俺は負けない。昨日の「ウスウス」は先生達に取り上げられたが、家の中を探してたらな、父ちゃんの部屋から「イボイボ」が見つかった。



 俊司はニヤリと笑って、2枚の「イボイボ」を見せる。それはお前の父ちゃんの私物だろう。お前の父ちゃんが何に利用しているのか想像もしたくないが、「イボイボ」は「ウスウス」よりも強力そうだな。



 俺は席を立つと速攻ですずなちゃんにチクってやった。俊司は「裏切者ー」と叫びながら先生に両腕を掴まれて生活指導室へ連行されていった。神楽の貞操がかかってるんだ。悪は滅びろ。



 俺達がそんなやり取りをしているのに、結菜が静かだ。俺は何をしているのだろうと後ろを振り向くと、スマホを取り出して、待ち受け画面(俺と結菜がツーショットで写っているやつ)にキスをしていた。かなり重症だ。さすがの凛もドン引きしている。今日の結菜の壊れ方は酷いな。少しずつでも直ってくれるといいんだけど・・・・・・



 そんな俺達の所へ慎が死んだような顔付で歩いてくる。そして俺の前でスマホをタップしはじめた。

 俺のスマホが振動する。目の前にいるんだから口で言えよ。それとも口でいえないことか?



 俺がスマホを取り出してラインの画面を開くと《不能になった・・・・・・男として終わった》と書かれていた。そしてくるりと背中を向けて、自分の席へと帰っていった。その背中には哀愁が漂っている。委員長、慎にいったい何をしたんだ。慎の後ろ姿があまりにも可哀そうで、声をかけることもできない。



 結菜に相談しようと思って振り向くが、結菜はウットリとした顔でスマホとチュッチュ中だ。これは相談できる状態じゃない。



 俺はモンモンとした気持ちのまま、午前中の授業を受けることになった。授業を受けているうちに慎のことは忘れていった。どうせ慎のことだ、自分で解決するだろう。どうせ委員長絡みなことはわかってるし、2人の問題だ。俺はそう割り切って、慎を捨てた。俺は結菜のことだけで精一杯だからね。



 昼休憩になり、俺と結菜は凛とお弁当を食べた後に、いつものとおりに屋上に向かう。そしていつものとおりに給水塔の下で結菜に膝枕をしてもらって、空を見上げる。空には秋の鱗雲が空に浮かんでとてもきれいだ。



 そういえば最近は気温もずいぶんと涼しくなっている。高山の山々では紅葉がはじまる時期だな。最近、登山もいってないな。そんなことを考えていると結菜が俺の顔を上に被さってきて、長いキスをする。



 結菜さん、すっかりキスの虜ですね。唇がタラコになっても知りませんよ。



 誰も来ないはずの屋上の扉が開いた。慎だ。慎が体をユラユラと揺らしながら、こちらにやって来る。そして俺の目の前で体を崩して四つん這いになると、大粒の涙を屋上の床へ零して、床を涙で濡らしていく。



「俺はもうダメだ。男としてダメになった。宗太、これから俺はどうしたらいいんだ?」



 いきなり来て何を言ってるんだ?一応、聞いてあげよう。



「昨日、紗耶香に無理矢理、服を剥ぎ取られた。そして紗耶香が俺に襲い掛かってきた・・・・・・それから俺のピーは反応しない。ピクリもしない。紗耶香が怖い」

 


 いきなり服を脱がされて、襲い掛かられたら、俺でも怖いわ。何考えてんだ馬鹿委員長。女としてのデリカシーはどこへ行った。本能のままに動くんじゃないよ。



 朝、起きても、ピクリとも反応しないと慎はサメザメと泣いている。これはさすがに可哀そうだ。どうしたもんだろう。俺は結菜のほうを振り返る。すると結菜は不思議そうに小首を傾げる。



「スマホ大好き、佐伯なんだから、そういう動画をスマホで見て、確認して見ればいいんじゃないかな?」



 結菜、ナイスアイデアだ。慎の瞳に光が戻った。慎は両手で俺に握手をして、息を吹き返したように、屋上から戻っていった。



 昼休憩の終わりのチャイムが鳴る。それまで俺達は唇を重ねた。急いで教室へ戻って、自分の席に着いて授業を受ける。するといきなり慎が立ち上がってガッツポーズをする。目からは涙を浮かべている。



「やったぞー。俺は生き返ったぞー」



 スマホを片手に持って、大声で慎は復活宣言をした。その瞬間に先生に手首を持たれ、スマホを没収されて、生徒指導室へ連行されていった。慎、とうとうお前もか。



 午後の授業が終わるまで慎は帰ってこなかった。



 HRの時間になり、すずなちゃんが顔をまっ赤にして照れて、教室に入って来る。後ろには慎も付いて来ている。慎は大人しく、自分の席に座った。



「最近、このクラスの風紀が乱れています。思春期だから色々とあると思いますが、まだ、あなた達には早すぎることもあります。だから風紀は乱さないようにおねがいします。後、HRが終わった後に、栗本さん生徒指導室まで来て下さい。大事な話があります。今日は以上です」



 すずなちゃんは委員長を連れて教室から出て行った。とうとうクラス委員長まで生徒指導室へ連行か。いったい、このクラスはどうなっていくんだろう。俺は一株の不安を心に抱いたが、これは慎と委員長の問題だからと割り切った。 凛が一言呟く。



「私もそろそろ参加したほうがいいのかしら?」



 凛、お前が参加すると結菜の精神がもっとおかしくなるし、俺に被害が及ぶから、今のままでいておいてくれ。頼むから、俺は学校生活くらいは平穏無事に暮らしていきたい。



 鞄を持って、結菜と帰路につく。結菜はマンションに着くまで、俺に何度もキスをした。

「隣の幼馴染のお姉さんが、僕のことを好きだって??」完結記念です。

________________________________

潮ノ海月でございます。

読者の皆様。読んでいただきありがとうございます。

(毎日、面白い、楽しい作品が書ければと、一生懸命に書いております)

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