47話 大樹叔父さん
今日は体育祭後の休日だ。体も疲れ切っていることだし、ゆっくり休もうと、俺はも一度ベッドの中に潜り込む。
昼前までベッドの中でゴロゴロしていると、机の上に置いてあったスマホのバイブが振動する。急いでスマホを取って耳に当てる。
《宗太くんかい、久しぶり。凛の父親の大樹だけど、覚えているかな?》
凛のお父さんの大樹おじさんの渋い声が聞こえてくる。
《先日はお世話になりました。今日はどんなご用ですか?》
《用というほどのことじゃないんだけど、君の顔が見たくなってね。今日は休みだろう。家に遊びに来ないか?凛も喜ぶし、君の彼女の結菜くんも一緒に呼ぼうと思ってるんだけど、いいかな?》
俺も大樹おじさんには、今の凛の現状をきっちりと理解してもらう必要があると思う。今日は良いきっかけになればいいな。
《大丈夫です。それでは俺から結菜に連絡して、家に伺う用意をします》
《それには及ばないよ。結菜くんには凛から連絡してもらって、既に結菜くんは用意をしてリムジンで宗太くんの家に向かう手筈になっている。君は自分の用意だけしてくればいい。今日は夕食はこちらで一緒にしようじゃないか。私も凛の男友達と女友達を家に呼べることを、大いに喜んでいるんだよ。一緒に夕飯も食べよう》
《申し出ありがとうございます。それではリムジンが到着する前に、自分の用意を済ませて待っています。毎回、送り迎えをしてもらって、ありがとうございます》
《それじゃ、家で待っているよ・・・・・・プー・プー・プー》
大樹おじさんが連絡を切った。
こうしてはいられない。俺も用意をしなくちゃ。
着替えの下着を持って、急いで1階へ階段を降りていく。そして、シャワーを浴びるために脱衣所で服を脱いで、風呂場に入った。そこには気持ち良さそうにシャワーを浴びている加奈の姿があった。
成長したな加奈。色々と、お兄ちゃんは嬉しくて鼻血が出そうだ。
「キャーーーーーー!変態!何、妹の裸をガン見してるのよ。すこしは顔を背けなさいよ。馬鹿!」
黒くキラキラした髪、色白で細やかな肌。ほんのりピンクに染まった頬。泡でわかりにくいが、形のよい胸。細い腰。きれいな形のお尻と長い脚。加奈が美少女と言われるはずだ。俺は内心で納得した。
固まったままの俺だったが、加奈の声で体の硬直が解けた。急いで風呂場のドアを閉める。
加奈もなかなかのスタイルになってきたな。胸は結菜に負けるけど、脚の長さときれいさは負けていないぞ。
俺は脱衣所でバスタオルを持って、加奈が出てくるのを待った。バスタオルを渡してあげるのも紳士の証だろう。
風呂場から加奈があがってくる。俺は顔を横に向けて、バスタオルを加奈に渡した。
「さっきは悪かったな、悪気はなかったんだ。ゆるしてくれ」
加奈は無言で俺の手からバスタオルをひったくるとバスタオルを体に巻いた。その瞬間に加奈の顔付が変わったのがわかる。なにか、俺は間違ったことをしたのか。
「キャーーーーー!朝から立ってるピーを見せるんじゃないわよ。馬鹿兄貴~。キモイ~」
自分が裸だったことを忘れていた。これはマズイ。
俺の股間とピーが加奈の前蹴りによって粉砕された。俺は白目を剥いて、泡を吹く。そしてそのまま脱衣所に倒れ込んだ。既に意識が遠のいてきている。
「可愛い妹に汚いピーを見せてんじゃないわよ。この馬鹿兄貴」
加奈はあらんかぎりの罵声を俺に向けて浴びせかけ、脱衣所から出て行った。
俺は股間を手で隠して、体をピクピクさせている。本当に潰れたかもしれない。
俺は股間をマッサージしながら立ち上がる。そしてピョンピョン飛びながら、風呂場に入ってシャワーを浴びた。なんとかマイ・サンは無事なようだ。俺はシャワーを浴びながら安堵する。そして体と髪を洗っていった。
俺は下着を着替えてジャージを着て、脱衣所から出る。そしてリビングで土下座した。
「加奈。すまなかった。お前がシャワーしてるとは思わなかったんだよ。本当にごめん。俺が悪かった。俺、全然、加奈の体、見てないから、安心しろ」
加奈はジト目をして冷たい視線を送ってくる。その目は”絶対に見たでしょう”と殺意がこもっている。
「お兄ぃは別に厭らしいつもりで風呂場を開けたわけじゃないんだ。俺もシャワーを浴びようとしただけだ。これは事故だ。わかってくれるよな」
俺は土下座から顔を上げて、ひくつな笑顔で加奈に笑いかけるが、加奈の表情は無表情だ。
「私、男の人に全裸なんて、お兄ぃが小さい頃しか見られたことしかないよ。全部、見られちゃったじゃない。どうしてくれるのよ」
「いや、全部は見てないぞ。泡で隠れていた部分は見えてない。大事な部分は泡で隠れていたから大丈夫だ」
「お兄ぃ、やっぱり全部、見てんじゃん。この馬鹿~」
加奈は2階へ走って登っていった。自分の部屋に入ったようだ。
思春期の妹は扱いが難しいな。俺ももっと加奈に気遣いするようにしよう。今日のは本当に反省だな。
俺は2階の自分の部屋へ戻って、クローゼットからYシャツとスーツ一式を出して、着替える。そして整髪料を使って髪の毛を整える。黒のソックスを履いて準備完了だ。財布とスマホを忘れないようにしなきゃ。
玄関のインターホンが鳴る。急いで1階に降りてインターホンを取ると、元気な結菜の声が聞こえてきた。
玄関を開けるとGジャンとプリントTシャツにチュールスカートを着た結菜がにっこり笑って立っていた。黒崎さんもいる。
俺はスーツ姿でにっこりと笑った。
すると2階から駆け下りてきた加奈が結菜に抱き着いて、泣きわめく。
「朝から、お兄ぃにお風呂場で裸を見られちゃったよ~結菜お姉ちゃん、馬鹿お兄ぃを叱って。とっちめてよ~」
結菜は玄関でパンプスを脱いで、加奈を抱きながらリビングへ戻ってくると2人でリビングのソファに座って加奈が泣き止むまで髪を梳いている。
「ドジな宗太ね。加奈ちゃん、宗太を許してあげてね。私が後でウ~ンと言っておくから、許してあげてね」
加奈は顔を上げると、涙を服の袖で拭いて泣き止んだ。
「お願いしますね。結菜お姉ちゃん。妹の裸を見るなんて最低!」
俺は加奈の前に行って、深々と礼をした。
「加奈、許してくれ。お兄ちゃんの不注意だった。ごめんなさい」
結菜が加奈の前に立って、俺の顔を見る。少し目が吊り上がっている。これは本格的な説教を覚悟するべきだろうか。
「裸が見たかったら、加奈ちゃんの裸を覗く前に、私に相談すべきだよ。私だったらいつでも心の準備はできてるんだから。宗太に裸を見せるくらい平気なんだから、今後は加奈ちゃんの裸を見ちゃダメ。見るなら私の裸を見て」
加奈が慌てて、ソファから立ちあがる。
「結菜お姉ちゃん、それってお兄ぃにとっては、ご褒美にしかならないから、それ説教とは違うから!結菜お姉ちゃんしっかりして」
加奈が大声を張り上げる。すると結菜が加奈を抱きしめる。そして耳もとでささやく
『これで加奈ちゃんの裸を見られることはないよ。私が宗太にいっぱい裸を見せるから、加奈ちゃんは安心してね』
加奈はその場で崩れ落ちた。その目には”結菜お姉ちゃん、変わったよ。変わり過ぎだよ”と語られていたが、結菜には通じなかったようだ。
結菜は加奈から手を放すと、俺の首に手を回して抱き着いてきた。そして耳元でささやく
『みるなら私の裸を見て。私はいつでもOKなんだから、いっぱい見せてあげるから、加奈ちゃんの裸を見るのは禁止ね』
俺は自分の体の温度が上昇するのがわかる。心臓がドキドキする。結菜の裸をイメージして鼻血が出そうだ。今すぐにでも結菜を抱きしめて、押し倒したくなる。ここは制止せねば。甦れ俺の自制心。
「ハハハハハ。これは結菜さんの勝ちですな。兄妹喧嘩も微笑ましいですが、そろそろリムジンに乗りませんか。家では凛お嬢様とご主人様がお待ちになっておられます」
ナイスタイミング黒崎さん。このままいけば、リビングでドタバタが続いているところだった。
俺と結菜は革靴とパンプスを履いて、玄関を出る。リビングのソファでは加奈が3角座りをしてクッションを抱き抱えている。
「今日は凛の家に行ってくる。凛のお父さんが夕食を食べていきなさいって言ってくれているから、夕食は適当にやってくれ」
「・・・・・・」
俺は加奈に呼びかけるが、返事がない。このまま、そっとしておこう。そのうちショックから立ち直るだろう。
俺と結菜は玄関を出て、リムジンに乗り込む。黒崎さんも運転席に乗り込んで、リムジンは発進した。リムジンは高速に入って快調に高速道路を走っていく。
黒崎さんはリムジンを運転をしながら、まだ笑っている。
「九条さんの近くにいると毎日が楽しそうですな。いつも楽しいことで溢れておりますな」
結菜も黒崎さんの言葉を聞いて嬉しそうににっこりと笑って、俺にもたれて座っている。
リムジンは快調に高速道路を走って、一般道路へ戻る。そして一般道をひた走る。すると横幅100mあろうかという豪邸にたどり着いた。凛の家だ。俺と結菜は停止したリムジンから降りて、凛の家の門の前に立つ。
「ヘァ~。私、こんな豪邸みたこともない。こんな豪邸に凛は住んでるんだ。本当のお嬢さんなんだね」
「結菜は来るのは初めてだもんな、俺も2回目だけど、慣れないわ~。迫力あり過ぎるだろう」
俺と結菜はインターホンを鳴らすのも忘れて茫然と豪邸を眺める。すると自動で門が開き始めた。俺達が着いたことを凛が察知したようだ。この玄関にはセキュリティのカメラが何台も設置されているもんな。
俺達は開け放たれた門の中を進んでいく。門の潜ると玄関まで1本道になっていて、両側は日本庭園が広がっている。この間は焦っていて、観察する暇もなかったが、こんな立派な日本庭園だったんだな。
俺達が玄関に到着すると、メイドが玄関の扉を開けてくれた。玄関にはいると玄関の端に5名のメイドが立っていて、俺達に深々と礼をしてくれている。俺も結菜も会釈をする。すると凛が玄関ホールまで歩いてきた。
今日の凛の服装は白カーディガンにレースタンクとフラワーミディ丈スカートの組み合わせだった。お嬢様の凛にはよく似合っている。清楚さが凛から溢れている。
「よく来てくださいましたわ。お父様は書斎でお待ちです。私も結菜と宗太が来てくれて嬉しいです。さ、お父様の元へ参りましょう」
俺達は凛の案内で大樹おじさんの書斎へ向かった。凛が書斎のドアを開けて中へ入る。俺達はその後に続く。
大樹おじさんはソファに座っていた。凛はその隣に座る。俺と結菜はテーブルを挟んだ対面のソファに座った。
暫くするとメイドさんが入ってきて、ケーキとアイスティーを持ってきてくれた。そして各人の前に、ケーキをアイスティーを置いて、一礼をして部屋から出て行った。
「宗太くん、久しぶりだね。隣にいるのが結菜ちゃんだね。いつも凛がお世話になっているね。凛も美少女だけど、結菜ちゃんも凛とは違うタイプの美少女だね。宗太くんは幸せ者だな」
面と向かって第三者からそう言われると照れる。俺は頭を掻いて、照れをごまかした。
「この間の体育祭もとても楽しかったみたいじゃないか。帰ってからも凛は興奮したままで、楽しそうに体育祭の様子を教えてもらったよ。宗太くんは仮装リレーでシンデレラの服で走ったらしいね。それは僕も見てみたかったな~」
俺は頬をピクピクさせて、凛のほうを見る。凛の目が泳いでいる。そして目を逸らせた。どこまで話してんだよ。
「応援団のチアガールもとても楽しかったらしいね。凛がポケットマネーでアンダースコートをクラスの女子全員の分と予備の分を負担したと聞いたが、凛の喜びようをみると無駄遣いではなかったようだ。クラスの女子達にも好評だったと聞くから、僕も嬉しいよ」
凛が大樹おじさんの隣で、顔を真っ赤にしている。
「そういえば、先日は結菜ちゃんの家に泊めてくれて、ありがとうね。凛が友達の家に泊まるなんて、初めてのことだから、私も少し心配したんだけど、帰ってきてからの凛の幸せそうな顔をみて、結菜ちゃんの家に泊まらせてもらったことを私も感謝しているんだ。ありがとう結菜ちゃん」
「特別なことはなにもしてません。凛と一緒に普通にパジャマパーティーしただけですから。凛とはこれからもパジャマパーティを何回もしたいです。凛とは仲良しになったから」
結菜はふわっとした笑顔で大樹おじさんに答える。大樹おじさんも思わず笑顔になっている。結菜マジックだ。
「凛、宗太くんと結菜ちゃんの2人と話がしたいんだ。申し訳ないけど、自分の部屋で待っていてもらえるかい。お父さんは2人に感謝したいことがいっぱいあるんだよ」
「わかりましたわ。お父様。お話が終わったら、呼んでくださいね。それでは私は部屋で待っていますわ。宗太、結菜、お父様のお相手をさせてごめんなさいね。後から会いましょう」
そう言って、凛は書斎から出て行った。
大樹おじさんの顔がいきいなりキリっとした顔に変わる。そして、俺達に向かって深々と礼をした。
「宗太くんと結菜ちゃんには感謝しても、感謝しきれないぐらいだ。ありがとう。凛がこんなに学校生活を楽しめるようになったのは宗太くんと結菜ちゃんのおかげだ。ほんとうにありがとう」
「頭をあげてください。凛が学校を楽しめるようになったのは凛の力です。俺達はキッカケを作ったにすぎません」
大樹おじさんは頭をあげると、ケーキを食べて、紅茶を飲む。俺達もケーキを食べた。
「凛から話は聞いている。いきなり宗太くんと結菜ちゃんに2号・愛人宣言をしたというじゃないか。そのことを聞いた時はビックリして椅子からひっくり返りそうになったよ。意味が全然わからなくてね。娘の頭がどうにかなったのか本気で心配したよ」
それは当たり前だよな。自分の娘が2号でいいんです。愛人でいいんですと聞かされて、驚かない親のほうがおかしいよ。
「凛の話を聞いていると、2人の仲を裂いてまで割って入りたくない。でも2人と一緒の輪に入りたい。だから私はそういう選択をしたんだと、話を聞いた。凛は宗太くんと結菜ちゃんと同じ輪の中に入って、一緒に楽しみたかったんだね。それを聞いた時に納得した」
俺も2号・愛人宣言を聞いた時には気が動転しましたよ。意味がわからなくて、結菜に相談したもんな。
「今では、すっかり結菜ちゃんと宗太くんの輪の中に入って、毎日を楽しそうに暮らしているみたいだ。昔と違って、近頃は私にもよく話しかけてくれる。それも笑顔で話しかけてくれる。そして学校のことを色々と教えてくれるんだ。こんなに変わるとは思わなかったよ」
結菜も変わったけど、凛もずいぶん変わったもんな。結菜に汚染されているともいえなくもないけど、良い方向に向かっているから、俺はそれでいいと思う。
「宗太くんには、相当、迷惑をかけたらしいね。学校の生徒相談室へ呼び出されたり、学校中の男子から反感をかったり、大変だったと聞いている。でも宗太君はそれを面白おかしく乗り切ったと凛が笑っていたよ。
別に俺は面白おかしく乗り越えてなんかいないぞ。けっこう、対処してますよ。山あり谷ありを何とか乗り越えているのに凛からすると楽しんでいるように見えているのか、今度、凛とははっきりと話し合う必要がありそうだな。
「凛ではわからない、色々な難題が宗太くんに降りかかったことは想像できる。それでも凛を結菜ちゃんや宗太くんの仲間に加えてくれてありがとう。親としては嬉しいかぎりだ」
「叔父様、私達は凛と楽しく、毎日を過ごしているだけです。特別なことはしていません。いまでは一番仲の良い友達です。そんなに感謝されると、私のほうが恥ずかしくなってしまいます」
結菜はスカートの端を持ってモジモジしている。本当に照れているんだろう。
「少し、聞きたいんだが、この2号・愛人ごっこは、いつまで続くんだろう。このまま続いていけると思っているのかい?」
「俺もそれは、長期間続けるのは無理があると思っています。今のところは結菜と俺の間に凛が割って入ってくることはありません。俺達の輪の中で学校生活をしていくことに幸せを感じています。でも、俺は結菜を愛していますし、結菜と離れることはありません。だから凛がこのままでいて悲しくなるんじゃないかと不安になる時があります。今となっては凛もかけがえのない親友です。親友の悲しむ顔は見たくないと思ってます。だから、凛が俺達から離れたくなったら笑顔で送り出してあげようと思っています」
「凛は2号・愛人に固執しているのは宗太のことがまだ好きだからだわ。まだ諦めきれないと思うの。でも私と親友になっちゃったから、今の3人の学園生活で満足しちゃったんだと思う。凛の心に変化が起きて、2号や愛人を言わなくなった時、もっと仲良くなれると思うんです。私が思ってるだけですけど」
大樹おじさんは俺のいうことも結菜のいうことも真剣に耳を傾けてくれた。
「2人が凛のために色々と心を砕いてくれていることがわかったよ。凛もよき友人を得たと思う。本当にありがとう。親として僕からのお願いなんだけど、凛がもし、君達から離れたとしても親友のままでいてあげてほしい。凛にとっては初めての親友だと思うから。そして、君達には申し訳ないけど、もう少し、このまま、凛のワガママを許してやってほしい。お願いする」
大樹おじさんがまた、深々と礼をした。結菜がフワリとした笑顔で微笑む。
「叔父様が思っているほど、私達2人は迷惑だなんて思っていません。だって凛はかけがえのない親友だもの。今では凛と私と宗太の3人でいたほうが、しっくりくるくらいなんですよ。私達から凛を放すことはありません。叔父様、考えすぎですよ」
「そうか。そう言ってもらうと助かる。私もホッとしている。前に宗太君が来た時に2人で相談してよかった。君はよい青年だ。そして結菜ちゃんは良い女性だ。2人に任せるよ。これで私も安心だ」
「叔父様は本当に凛のことを愛しているのね。凛も叔父様のことを愛してる。仲の良い親子ですね。叔父様は恰好いいし、凛が羨ましいわ。私の父親のポンポコ親父と交換したいくらい。あ~羨ましい」
結菜、自分のお父さんのことになるとボロクソだな。俺の知らない所でもあの親父さん、何かやらかしているのか。
「宗太くん、今度、私の職場に遊びにこないか、色々と見せたいものがある。君とはいつか1日、一緒に語り合いたいと思っていたんだ。今度、時間を作ってくれないかな。私の会社を案内するよ。」
「是非、お願いします」
大樹おじさんの会社か。大企業の社長さんだからな。色々なところを見学できて楽しそうだ。今から楽しみだ。
「今日はシェフに言って、腕によりをかけた夕食を作らせている。これから夕食を食べよう。凛もよんで楽しい食卓に私も参加させてほしい」
「「はい」」
メイドは凛の部屋へ行って、話が終わったことを告げた。凛はメイドと一緒に降りてきた。大樹おじさんに連れられて、食堂へ向かう。
大樹おじさんと凛は隣同士でテーブルに座る。俺と結菜は大樹おじさん達の対面の席に座った。
テーブルの上には大小大きさの違うフォーク・ナイフ・スプーンが置かれていた。今日の料理はフランス料理のようだ。
メイド達が1品1品をテーブルに運んでくる。静かにディナーは始まった。
途中で大樹おじさんがワインを2本開けた。とても上機嫌で笑いが絶えない。俺も結菜も良く笑い、凛もよく笑った。テーブルには笑いの華が咲き乱れた。




