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39話 代理彼氏

 日曜日の朝早くに俺の家の前に1台のリムジンが止った。黒崎さんと日下部だ。黒崎さんが大きなケースをいくつも持って、玄関前に荷物が積み上げられていく。



「お父様と会うんですもの。普段着では困りますわ。だから黒崎に言って、用意させてもらいましたの。」



 玄関先に現れた日下部がそういって微笑む。最近は、優しい微笑みが普通にできるようになって良かったな。


 

 今の日下部に「氷姫」と呼ばれていた頃の面影はない。



 それでも週に何名かの男子が告白をして、撃沈されているが、日下部に対して不快になるような噂は立っていない。

 


 玄関で黒崎さんと日下部を待たせるのも申し訳ないので、家の中へ入ってもらった。もちろん、黒崎さんが玄関に積んだ荷物をリビングへ運び入れてもらう。玄関に置いておいたら、家の中へ入りづらいからな。



 リビングには黒崎さんが運び入れた、スーツのケースが山積みになっている。こんなに買ってきて、どうすんだよ。俺、これだけのスーツを払うお金なんてないぞ。



「このスーツは全て九条くんにあげますわ。私が無理と言ってお願いした、ささやかなお礼です」



 そう言われても・・・・・・これだけで、俺のクローゼットに入りきらないよ。



 黒崎さんが荷物を運び終わると、にっこり笑ってくる。



「お嬢様から話を聞きました。この度、お嬢様のワガママにお付き合いくださって、ありがとうございます」



「いえいえ、俺も自分で考えてしたことですから。黒崎さんも日下部に付き合って、いつも大変ですね」



「そこの男性2人、私の悪口で、話が盛り上がっているなら許しませんよ」」



 おう、日下部に聞こえていたか、別に悪口を言っていたわけじゃない。黒崎さんのご苦労を労っていただけだ。



「九条様、この中から1番、九条様に似合ったスーツをお選びいたします。九条様の部屋でスーツの試着をしていただけるでしょうか」



 そうだよな。リビングには加奈もいれば、日下部もいる。女子2名いる前で、着替えをする訳にもいかないもんな。



 俺は何個かスーツの箱を持って、2階へあがって自分の部屋でスーツに着替える。黒崎さんもいくつもスーツの箱を持って、俺の部屋へ入ってくる。



 俺はYシャツを着て、黒崎さんが、スーツを箱から出して、色々と色目を合わせてくれる。



「黒崎さんは、今日のことを知ってるんですよね。本当はどう思ってるんですか」



「はい。存じています。ご主人様もお嬢様に無理なことをなさったと感じております。しかし、お嬢様もご主人様を騙そうなどと、無駄なことをしていらっしゃると思っています。九条様がご主人様と会われた後にどうなるのか、私も測りかねます」



「そうですか。会うのは日下部のお父さんですから、俺もそれなりに対応したいと考えています」



「そのほうが無難だと私も思います」



 2人でスーツを選びながら、黒崎さんと雑談する。



 スーツは結局、黒地のストライプのスーツに決まった。俺がスーツを着終えるとスーツに合った。ネクタイを黒崎さんが選んでくれる。ネクタイ、ベルト、靴下、靴まで用意してくれていたみたいだ。ありがたい。それに合った鞄まで用意してくれている。俺、成人式の時、スーツを買う必要ないんじゃないか。



「九条様は、細身の体の割には筋肉がついていらっしゃる。広背筋もそうですが、胸筋も、筋肉がついていらっしゃいますね。少し大きめのサイズを持ってきて良かった。そうでなければ、スーツが入らないところでした」



 そう言えば、道場に通い始めてから2カ月ほどが経つ。少し、筋肉がついてきたのかもしれない。自分のことでよくわからないけど。



 茶系のネクタイを選んでもらって、首に巻いてもらう。俺、ネクタイの巻き方しらないもんな。いつもシャツだけだから。もうそろそろネクタイの巻き方くらい、覚えないといけないよな。



 新品の黒の靴下を履いて、革靴を履く。革靴のサイズもピッタリだ。黒崎さん、どうやって、俺の体のサイズを知ったんだ。少し考えると怖いものがあるぞ。



 黒崎さんが整髪剤をいくつも買ってきてくれた。それを丁寧に髪に塗って、黒崎さんが整髪してくれた。



 俺は新品の靴を履いて、1階のリビングへ降りていく。



 加奈がビックリした顔をして口元を両手で押えている。日下部も少しビックリしたようだ。



「お兄ぃがダサくない。きちんとした大人びた男子に見える。嬉しいんだけど・・・・・・・チョーキモイ」



 おい、加奈、そこは褒めるところだろう。大人びた男子に見えるならいいじゃないか。普段、ダサい恰好をしているから見慣れないかもしれないけど、お兄ちゃんだってやる時はやるんだよ。



「九条くんもきちんとすれば立派な男子に見えますわ。これならお父様も許してくださるでしょう」



「お褒めにあずかり光栄だ。それで、今日は日下部のことを凛と名前で呼ぶからな。俺のことは宗太と呼んでくれ。いちいち名前を呼ぶ時に、挙動不審になるなよ。そこでバレるからな」



「それくらいわかっておりますわよ。宗太」



 おっと、先制攻撃か。



「今日もきれいで可愛いよ。凛」



 日下部は頭からボンと煙が出るんじゃないかというほど、顔を真っ赤にして俯いてモジモジしてしまった。そんな態度だとアウトだろうが。



「その態度だと、アウトだよ。彼氏と彼女なら、これくらいのことは言いあってるよ。もっとリラックスして」



「そんな朝霧さんのように上手くいくわけ、ありませんわ」



 俺は手を伸ばして、日下部の手を握って、手を繋いだ。「ヒャワーっ」という奇声を日下部があげる。



 俺が繋いだ手を、指を絡めるようにすると「ウゥー」という声が日下部の口から洩れる。



「これくらいは普通にできるようになっていないと怪しまれるよ。彼氏、彼女なのに、手も繋いでいないなんて、あり得ないからさ。もっと凛も協力してくれよ」



「そんなこと言われましても、私、男子と手もつないだこともなかったのですよ。それなのに、このような大胆なことをされては、私の心臓がもちませんわ」



 俺が日下部に近寄って、肩に手を回して、日下部の体を寄せると「ハワワワ」と奇声をあげて、日下部は床へペタンと座り込んでしまった。これはかなり重症だな。



「私、耐えられそうにありませんわ。心臓が潰れてしまいます~。いつもあなたと朝霧さんはこんなことをしてらっしゃるのね。私には耐えられませんわ」



 顔を真っ赤にして照れながら、俯いて体もモジモジしている。これはどうしたもんかね~。



「お嬢様、ご主人様が、どのような要望を言われるかわかりません。九条様が言われるようにこれくらいは耐えてもらわなければ、九条様が彼氏ではないと、すぐにウソがバレてしまいますぞ。頑張ってください。お嬢様」



「わかっておりますとも。これは特訓ですわ。宗太。私、頑張ります」



 加奈も加わって、日下部が普通に彼女に見えるように、俺の体に触れる時に、緊張しないように特訓した。それだけで日下部の精神力はガリガリと削られたようだが、俺も日下部のお父さんと会うんだから真剣だ。



 日下部は何回も小さなうめき声をあがて、床に倒れたが、なんとか、俺と普通に体を触れ合うことができるまでになった。



「加奈。それじゃあ、凛と出かけてくる。帰りはわからないから、適当に食べておいてくれ」



 俺は日下部と手を繋いで、玄関を出てリムジンへ乗り込んだ。リムジンの中に乗っている間に軽くサンドイッチで小腹を満たす。日下部は緊張で食べることもできないようだ。リムジンの中に入っても静かだ。もともと静かな女子だし、これが普通なのかもしれない。



 リムジンは高速に乗って走っていく。こんな遠いところから日下部って通っていたんだ。そんなことしなくても、近くに良い高校が沢山あったように思うんだけど。そういえば日下部がどうして、俺達の高校を受けたのか聞いたことがなかったな。



「なぜ、凛みたいなお嬢様が俺達のような生徒が通う、高校に登校しているんだ。いくらでも名門高校はあったと思うんだが」



「それはお父様の方針ですの。お父様曰く、「上流階級の人達とはいつでも大人になれば交流できる。凛は普通の高校へ入学して、普通の感覚を学びなさい」と言われましたわ。どうして今の高校に通うことになったのかは不明です。全てお父様が手配いたしましたので」



 なるほど、「上流階級の人達とはいつでも大人になれば交流できる」か、それにしても凄い言葉だな。俺には一生、縁ないな。



 リムジンは高速道路を降りて大通りを走っていく。そして、一軒の豪邸の前で停車した。俺はリムジンから降りる。なんだこの屋敷は壁の長さだけで100mほどあるじゃないか。壁があるのに建物の上が見える。何階建てなんだよ。あ、リムジンが車庫へ入っていく。スゲーな。リムジンを収納できる。駐車場も完備か。



 なんだか背筋がゾクゾクしてきたぞ。これから会うのは本物のお金持ち。会社の社長様だ。そう思うと。背中から冷や汗が出てくる。俺って上手く演技ができるんだろうか。



 日下部がリムジンから降りてインターホンを鳴らすと、自動で家の門が開いた。自動で開閉する門なんて一般家庭についてんのか。それにどこから見てんだよ。防犯装置もバッチリしてそうだな。



 日下部が俺の腕に自分の腕を絡めて、寄り添って2人で門を潜り抜けて、玄関へ向けて入っていく。



 玄関が開くと玄関の端で5名のメイドさんが深々と礼をしている。



「ようこそ、日下部家へ。君が凛が話していた九条くんかい。意外とスーツが様になってるじゃないか。さ~入ってくれたまえ」



 長身でスーツ姿がよく似合う、ナイスミドルな男性が俺を見て、にっこりと笑った。その清楚感は日下部そっくりだ。



 俺は直立して、深々と礼をする。



「九条 宗太と申します。今回は家に招いていただき、ありがとうございます」と挨拶する。



 俺が普段に姿勢に戻すと、ナイスミドルの男性が会釈をした。



「私は凛の父親で日下部大樹といいます。宗太くんと呼んでもいいかな。学校では凛と仲良くしてくれてありがとう」



 大樹さんは、大会社の社長と思えないくらい気さくな方だった。俺は内心ホッと安堵の息を吐く。



「このまま玄関で立ち話もなんだから、私の書斎で話をしよう。凛、宗太くんを案内してあげて」



 大樹さんはにこにこ笑って、玄関から立ち去った。日下部の体からも緊張が解けるのがわかる。



 玄関で靴を脱いで、日下部に手を繋がれて俺達は書斎へ向かう。書斎の中に入ると俺がイメージしていた書斎よりも随分と違い、相当に大きい間取りの書斎だった。



 書斎の奥には大きな机があり、ノートパソコンが2台置かれている。



 手前には大きなソファが2つあり、その間に大きいテーブルが1つ置かれている。



「さ~、ソファに座ってくれないか。宗太くんもスーツを脱げばいい。僕もスーツを脱ぐから。」



 そっと隅に立っていたメイドへ大樹おじさんがスーツの上着を渡す。俺もスーツの上着を渡した。



 大樹おじさんはソファに座って、俺と日下部に対面のソファをすすめる。俺と日下部は言われるままにソファに座った。



「さて、、君達は付き合っているというわけだが、どんな感じで付き合いが始まったんだい」



 大樹おじさんがにっこり笑って聞いてくる。そんな質問が飛んでくるとは思わなかった。準備しておくんだった。



「はい、僕が凛のことを一目惚れして、高校の中庭で告白をして付き合うことになりました。」



「そうなのかい。僕が凛から聞いていた話では、凛は結構、高校でモテていて、数多くの男子生徒から告白を受けて困っていると聞いていたよ。君もその中の一人だったわけか。なぜ凛を選んだんだい」



 おう、質問攻めだな。



「はい、僕は凛を見たのは1学期に入ってからのことでした。窓際の席で読書をしている凛の姿を見て、1枚の絵画を見ているようで、見惚れてしまい、一目惚れで・・・・・・夏休みになってから告白をしてOKを貰いました」



「そうか、君が凛と付き合いはじめたのは、夏休みに入ってからのことなんだね。僕が話を聞いていたのは1学期の時の話だから、君が登場しなかったのか。なるほどね」



 なんとか切り抜けたぞ。それにしても、よくもこんなウソがペラペラと俺の口から出るな。俺に詐欺師の才能なんてなかったと思ってたけど。



「そういえば、凛が家でも、優しい笑顔を見せてくれるようになったのは、夏休みにはいってからだね。宗太くんのおかげかな」



「ええ、宗太は優しいですから。私もつい笑顔が移ってしまったんですわ」



「君は凛のどんなところが好きなんだい?」



 おお~。そう来たか。これは難題だぞ~。どうする俺、この質問を間違えたら全てがバレる。



「はい、僕が一目ぼれしたのは、凛が1枚の絵画のような雰囲気でした。静かで清楚で、柔らかい雰囲気です。実際に付き合うようになってからは、色々とありましたけど。まずは優しさです。凛の気遣いが僕には嬉しいです。後、はじめは結構ツンツンされていたんですが、それが取れた時に凄く優しかったことです。後、清楚で優しい笑顔が大好きです。ちょっと照れ屋で緊張屋で、憶病なところも可愛いと思っています」



 そっか~、俺って日下部のことを、そんな風に思ってたんだ。知らなかったよ。



「凛は宗太くんのどんなところが好きなのかな?」



「私は宗太の頼りがいのある所よ。だって宗太は私が男性に強引に車に乗せられかけた時も助けてくれたわ。後、とても優しいところかしら。本当に宗太って誰にでも優しいの。笑顔にも優しさが溢れているわ。あと、ドジなところも可愛いわ。けっこう宗太ってドジなのよ。だからみんなにからかわれて。そんな所も好きですわ」



「なるほど、2人が仲が良いということはわかったよ。凛、宗太君と2人で話をしたいから、自分の部屋で待っていてくれないかな」



 おお~。大樹おじさんと2人きりの男同士の話ですか~。これからクライマックスか~



「はい、お父様」



 日下部は書斎を出ていった。



「さてここからは本音で話しをしようじゃないか。宗太くん」



「どういう意味でしょうか?」



「僕は君のことは知らない。でも凛のことなら生まれた時から一緒に暮らしてるんだ。ウソを言っている、ウソを隠している時の癖ぐらいは覚えているよ。それに凛が隣であんなに緊張していたら、誰でもわかるじゃないか」



 俺は話すことに夢中で日下部のフォローができなかったんだな。これは失敗だった。それにしても日下部の癖ってなんだろう。



「あの子はね。ウソを隠している時は、瞳が定まらないんだ。目が泳ぐんだよ。それにすぐに耳たぶを触る癖がある。さっきも何回も耳を触っていたからね。君の嘘だとすぐにわかったよ。その割には迫真だったけどね」



 そんなに簡単にわかるような癖をもってんじゃないよ~。これじゃあ、最初からダメじゃん。



「今回は宗太くんにはすまないことをしたね。実は僕も凛にウソをついていてね。見合い話は全てウソなんだよ」



 なんですと~。



「実はね。夏に別荘に行った頃から、凛がソワソワしていてね。なんだろうといくら聞いても教えてくれないんだよ。だから気になる男子ができたんじゃないのかなと思ったんだ。そして凛に聞いてみたら耳を触ったから確信した。凛に気になる男の子と会わせてといっても、凛は絶対に会わせてくれないと思ったから、一芝居うったんだよ。そうしたら、君が現れたわけだ。言ってることわかるかな?」



 まいったな~。頭の良いお父さんだ。大樹おじさんには敵いそうにない。



「言われている意味は何となくわかります」



「それにしても凛も残念だったね。好きになった男の子に、彼女がいたんのでは、勝ち目ないからな~」



 なんでそこまでわかるんですか~。俺、そんなこと一言も言ってないし。感じさせることは言ってないはずだ。



「君は凛を見て、1枚の絵画のように美しいと言ってくれた。でもそれって憧れだよね。遠くから愛でていたいって気持ちだよね。どうしも、この子を彼女にしたいと思って、君は凛を見ていない。君が凛の内面の優しさを良いと言ってくれいたね。正直、内面をしって、凛の良さをわかってもらって嬉しかった。君は相当、凛と仲が良いんだと思う。でも君は清楚さが好きと言っていた。やっぱり清楚さって見ているだけで良いと思える位置じゃないか。ではなぜ、君が凛に近寄ろうとしないのか、簡単な話だ。彼女がきちんといるからさ」



 はは~。心の中で大樹おじさんに平伏する。そこまで見透かされているとは御見それしました。



「確かに君は凛のことが好きだ。その通りだと思う。でも、君には大事な彼女がいる。だから、凛も大変な恋をしたもんだと思ってね~。これも思春期だから仕方がないけどね~。できれば幸せに一緒になってもらいたかったよ」



 日下部が俺のことを好きだって~。それには気づかなかったよ。



「あれ、宗太くんは凛の気持ちに気付いてなかったようだね。あの意地っ張りな凛が、どこでもいい、だれでもいいで頼むはずないじゃないか。これでも凛は僕の娘だよ。きちんとした心の持ち主に惚れるに決まっている。でも凛は意地っ張りだから、それを言葉にだすことも、行動に出すこともできない。不器用な子だよ」



 はぁ、そんな話、初耳なんですけど~。結菜といい日下部といい、ミスターダサ男の俺のどこがいいんだ。もっと他にも良い生徒がいるはずだろうに・・・・・・女子の基準がわからん。



「君は良い男子のようだね。黒崎も以前、君のことを褒めていたよ。あまり心を表に出さない黒崎がね。君の話を楽しそうにするんだ。だから僕も興味を持ったわけだけど」



 黒崎さんか、黒崎さんが、今回の騒動のキッカケか~。たぶん黒崎さん自身も気づいてなかったんだろうな。



「どうかな。君には彼女がいるのはわかってるが、凛に乗り換えることも考えてもらえないかな?漏れなくこの屋敷がついてくるかもしれないよ。次期社長になれるかもしれないよ~」



「はぁ、大樹おじさん、もうバレてるから、これからはフランクに話しますけど、からかうのは止めてください。僕には結菜という彼女がいます。僕は彼女のことが大好きです。彼女の笑顔が大好きです。だから悲しませるようなことはできません。でも、凛さんに見惚れていたのも事実です。本当に1枚の絵画の中にいるような彼女の雰囲気、清楚で優しい雰囲気が好きなのも確かです。できれば凛さんも悲しませたくないです。でもどちらかを選べといわれれば、僕は即断で結菜を選びます。それにこの彼氏役を引き受けてあげてと言ったのは結菜ですから」



「そうか、宗太君は気づいてなかったみたいだけど、宗太くんの彼女は凛の気持ちを知っていたんだね。そして1日だけでも君を貸してくれたわけか。優しい女の子だね。そして君に愛されてるって、凄い自信だね。これでは凛が頑張っても無理かもしれないな」



「・・・・・・」



「親の僕から凛に、諦めろなんて言葉は言えないよ。だから、これは君達3人で解決してくれないかな。できるなら凛を悲しませないでほしいけど、それは無理だから、きれいに終わらせてあげてほしい。父親からの頼みだと思って頼むよ」



「はい、なんとか、してみます。そして凛さんとは良い友人関係になれたらなと思います」



「君は優しい男だね。僕も君のことが気に入ったよ。また遊びにおいで。僕からまた、誘うから、その時はもっとフランクに話そう。そうだ。君の連絡先とラインIDやメールアドレスなんかも教えてくれるかな。今度、キチンと誘うからさ。凛の近況なんかも教えてほしいし。よろしくね宗太くん」



 俺は大樹おじさんとなぜか、電話番号、ラインID.メールアドレスを交換することになった。



「このことは男同士の内緒だから、凛が来たら、きちんと彼氏役をやってくれよ。頼むよ」



 大樹おじさんはイタズラっぽい笑いをして俺を見る。大樹おじさんには敵わないや。俺は両手を挙げて降参のポーズをした。



 メイドが日下部を呼びにいくと、日下部が書斎に入ってきた。



「宗太くんと色々話したけど、よい男の子じゃないか。交際を許そう。これからも2人仲良くしなさい」



 お~い大樹おじさん、さっき、俺の立場を言ったよね。なぜ、交際を許そうになるのかな~。



 日下部が顔を真っ赤にして照れて、俯いてモジモジしている。お前も照れすぎだよ。



 今回の件って、うまくいったのか、失敗したのかわからないな~。大樹おじさんの手の平の上で遊ばれたような気がするだけだ。日下部のことどうしたものかな~。俺の気持ちは変わらないしな~。うまく友達になれたらいいんだけどな~。今考えてもしかたないや。



 大樹おじさんと日下部に見送られて、俺はリムジンに乗せてもらって家に送ってもらった。

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