30話 パジャマパーティー朝霧結菜side
ママが来て、パパの出した条件は0になった。やったー。これで宗太に会える。さすがママ。ママ大好きー。
ママも当分は日本で休暇を取るんだって、パパが勝手に会社に休暇願を入れたから仕方がないって言ってるけど、私も瑞穂お姉ちゃんも、ママが日本に帰ってきてくれて嬉しい。
あれからパパはママにコッテリと絞られて、今はシュンとしている。宗太を虐めたんだから当り前よね。それにアタシを監禁状態にしてたんだから、コッテリとママに怒られればいいのよ。
今日はママの許可をもらって、結衣の家にお邪魔してる。紗耶香も一緒。結衣の家はお父さん、お母さん、弟の4人家族だ。お父さんもお母さんもおっとりとして、物静かでとても良い人。年の離れた弟くんが可愛いの。
将来は結衣お姉ちゃんと結婚したいんですって、おませなことを言ってんの。絶対にブラコンになること決定よね。
今日は家で夕飯を食べた後に、紗耶香と私は結衣の家へ向かった。そして今、3人でパジャマに着替えて、結衣の部屋でお話中。俗にいう、パジャマパーティだ。久しぶりに女子だけのおしゃべりって楽しいな。
結衣の家に行く前にコンビニに寄って、1.5リットルのジュースを2本、こんな時にポテチとチョコレートは欠かせないよね。うん。ついついシュークリームも買っちゃった。女の子は甘いものは別腹なのよ。うん。
私はお気に入りの猫の着ぐるみパジャマを着ている。暑いと思うかもしれないけど、部屋の中はクーラーがかかっているから問題なし。私のパジャマを見て結衣も紗耶香も大笑いをしているけど関係なし。だって宗太が可愛いっていってくれたんだもの。
今日の集まりは結衣からのお誘い。なんでも黒沢となんだか良い感じなんだって、結衣の顔が綻んでいる。良かったね。本当は結衣みたいな可愛い子、黒沢には勿体ないと思うし、許せないって気持ちもあるけど、宗太が結衣のこと気にしてるっぽいから、結衣が恋敵になる可能性もある。
私の宗太が心移りする前に結衣には早く男子と付き合ってほしい。
万年、発情期の黒沢のことを気に入る結衣も変わってると思うけど、黒沢も宗太の友達だし、悪い奴ではないので、ここは素直に祝福したい。
この間、2人きりでカラオケ行って、ゲームセンターに行ったんだって。確か結衣はカラオケもゲーセンも苦手だったはずだけど、黒沢に合わせてあげたんだね。優しいよね結衣は。
黒沢はそんな結衣の気遣いなんてわからずに、カラオケで面白い歌を歌ってはソファの上でジャンプしてたんだって、女の子とデートの時ぐらい静かにしろよって言いたい。でも黒沢だから仕方がない。
後でゲーセンに行った時は、黒沢は対戦ゲームでアクションゲームに挑戦したらしいんだけど、対戦相手を10人連続で負かして、ガッツポーズをして「ウォー」って叫んでたって、結衣が笑顔で話してくれた。結衣を放っておいて黒沢は何をやってるのよ、まったく。
でも、結衣が欲しいと思ったぬいぐるみをクレーンゲームで取ってくれたらしい。ナイス黒沢。今、ベッドの枕元には黒沢にとってもらった、ぬいぐるみが飾られている。
最後に黒沢と一緒にプリクラを見せてもらったんだけど、結衣は可愛く写っているのに、黒沢の顔が1つもまともな写真がないの。全部へんな顔して写ってる。せっかく2人でプリクラを撮ってるのに、結衣のことも考えてあげてほしい。本当に女心がわかってないというか、ロマンをわかってないというか。
黒沢にそれを言ってもムダよね。だって黒沢だもん。
でも、2人でデートなんていいな~。そういえば私と宗太って2人きりのデートってしたことない。なんで~。私達2人のほうが、早く付き合っているのに~。これは宗太に抗議しなければ。宗太、恥ずかしがり屋だからな~
今は宗太も忙しい。朝6時に瑞穂お姉ちゃんが宗太に勉強を教えにいっている。そして昼から瑞穂お姉ちゃんの通ってる道場へ2人で一緒に行って、道場で体を鍛えるのと、格闘技の基礎を勉強してるんだって。
よく考えたら、夏休みになって、宗太は瑞穂お姉ちゃんとばっかり一緒にいるじゃん。
まさか瑞穂お姉ちゃん、宗太のことを気に入ってるとは思ってたけど、宗太も瑞穂お姉ちゃんのことを気に入ってるし、私の知らない間に相思相愛になってるなんてことないよね・・・・・・ないわよね。
宗太って可愛いから、年上に好かれそうだし、瑞穂お姉ちゃんが宗太を本気で好きになったら、どうしよう。瑞穂お姉ちゃんは私よりきれいだし、スタイルもいいし、本当はやさしいし・・・・・・私に勝てる要素ないじゃん、涙が出てきた。
こんなこと瑞穂お姉ちゃんにも言えないし、宗太にも言えない。私は結衣と紗耶香に相談する。すると2人に妄想し過ぎと笑われた。九条に限ってそれはないと断言してくれた・・・・・・2人のこと信じるからね。
私達はポテチを食べながら、寝転んで話はまだまだ続く。
次は紗耶香の番だ。紗耶香は佐伯のことが気に入って、最近では毎日のように連絡してるんだって。でも佐伯の返事が素っ気ないというか、淡々としているらしい。紗耶香は自信なさそうに俯いて話す。
佐伯ってどこか冷めた感じがあるのよね。イケメンで頭も良いのに、性格が淡々としていて、誰も寄り付かせないような雰囲気をもってる。宗太と黒沢とは仲が良いのに、他の男子とは距離を置いてるし、結構、謎が多いの。
結構な人数の女子から告られてるのに、未だに付き合った彼女がいないっていうも不思議。
何か隠し事をしているっぽいから宗太に聞いてみたら、宗太もあんまり言いたがらない。紗耶香のためだし、無理矢理に宗太に聞いてみたら、佐伯には3つ下の妹がいるらしい。その妹のことを溺愛していて、彼女を作らないんだって、それって本物のシスコンじゃん。
早くシスコンは直したほうがいいわよって宗太に言ったんだけど、それは本人の問題だから、俺達が口を挟むことじゃないと言われた。確かに私と宗太には関係のない問題だけど、紗耶香には問題が大ありだよね。
紗耶香に佐伯はシスコンだって話したら、それなら私にもチャンスはあるって喜んでたけど・・・・・・佐伯のシスコンって重症だと思う。これを直すのって大変だと思うんだけどな~
それを紗耶香に教えてから、夏休みに入って、毎日、紗耶香は佐伯に連絡してるんだって。毎日、嫌な女の子から連絡がきたら、絶対に電話を取らないと思う。でも佐伯は絶対に電話には出るらしい。だから紗耶香は私にもチャンスがあるって思う気持ちはわかる。私だってそう思うと思う。
紗耶香は佐伯がちょっとした楽しいことを言ったら、そのことを全部、覚えているみたい。佐伯があんなことを言ってた。こんなことを言ってたって、嬉しそうに話してるの。
普段、委員長の顔をして真面目な感じの紗耶香がデレデレとそんなことを話してる姿は、本当に恋する乙女。可愛いって思う。
3人そろったのも久しぶりだから日下部さんに連絡した。日下部さんも嬉しそうに話してくれた。以前のお礼をまだ、していないから、夏休み中に別荘に遊びに来ないかと誘われた。
さすが、どこかの会社の社長のお嬢様。お金持ちは違うね。別荘だよ。別荘。チョー楽しそうじゃん。宗太や黒沢や佐伯も誘っていいって。さっそく宗太に連絡して別荘に泊まりにいくことを伝えなくちゃ。
日下部さんって、普段は近づきがたい雰囲気があったんだけど、最近はそんな感じが少し薄れて、接しやすい。もう少し、時間が経ったら仲良くなれそう。とってもきれいだし、可愛いし、頭脳明晰だし、画になる女子NO1だもんね。
日下部さんって、男子から告白されるのが嫌で嫌で仕方なかったんだって。中学の時からそうとうモテてたみたいだもんね。毎日のように告白されてたら嫌になるわよね。それも他校の男子からも告白されてるっていうからビックリ。
そういえば宗太も時々、窓際で読書をしている日下部さんをジッと見てる時がある。
まさか、宗太の本当の好みって日下部さん。あり得る。別荘に誘うのは危険かも。宗太だけ別荘に呼ばないでおこうかな。2人が良い仲になったら、私が捨てられちゃうじゃん。
日下部さんに宗太ってどう思うって、勇気を出して聞いてみた。すると男としては興味ないわねって即決だった。日下部さんが襲われた時に宗太が助けにはいったから、宗太のことは邪けんにするつもりはないらしいけど、男としては見れないって。良かった・・・・・・日下部さんの言葉を信じる。
でも、宗太はどう思ってるのかしら、日下部さんみたいな美少女なら男の子なら何も思わないはずないわよね。宗太に直接聞きたいけど怖くてきけない。あ~ん、どうしよう。心が暗くなってきた。今日は眠れるかな。
日下部さんとは別荘に行く日を聞いて、電話を切った。
結衣と紗耶香にそのことを相談したら、結衣に頭を優しく撫でられた。本当に九条くんのことが好きなんだねって結衣に言われた。キャー恥ずかしいよ~。でも本当のことだし・・・・・・宗太、愛してる~。
紗耶香が突然、佐伯に電話した。日下部さんのこと宗太がどう思ってるか聞いてくれている。ドキドキする。
佐伯は短く《「氷姫」チョー怖え~》とだけ答えて電話を切った。
「氷姫」は日下部さんにつけられたあだ名。男子を言葉の刃でグサッと抉ることから、このあだ名がつけられている。宗太も佐伯も日下部さんのこと「氷姫」と呼んで怖がっているらしい。よかった~。それなら宗太を取られないから安心だね。
紗耶香、グッジョブ。アタシのためにありがとう。嬉しくて涙が出そう。
話はまたプールに戻る。紗耶香も結衣も新しい水着を買ったんだって、私も宗太に選んでもらった水着があるもん。あの水着で宗太を悩殺よ。
え、今度のプールには瑞穂お姉ちゃんを呼ばないでって。なるほど、瑞穂お姉ちゃんがいると黒沢と佐伯が、瑞穂お姉ちゃんの水着姿にデレデレになるもんね。でも瑞穂お姉ちゃん、仲間外れにするとへそ曲げるだろうな。でも紗耶香と結衣の頼みだし、今回は瑞穂お姉ちゃんには辞退してもらおう。
プールに行って、結衣と黒沢、紗耶香と佐伯がくっつけばいいな。アタシはもちろん宗太にくっついてるけど。
あ、そうだ、宗太におやすみの連絡するのを忘れてた。今から電話をしなくっちゃ。宗太、待っててね。愛してる。
最近の宗太って、大学の道場に行きはじめてから横顔が変わった。真剣な時の顔がチョー恰好いいの。これは私だけの秘密だけど、紗耶香と結衣になら話してもいいよね・・・・・・・是非、話したい。
宗太に連絡を入れる。今、3人で結衣の部屋でパジュマパーティをしていることを話した。そして紗耶香と佐伯の話をすると《委員長が恋とか笑える》と言って、大笑いしてる。それって紗耶香に失礼だと思う。
やっぱり聞き耳とたてていた紗耶香が怒った。アタシからスマホを取り上げると宗太と言い合いを始める。これ以上、紗耶香をからかったら、紗耶香、電話を切った後に泣いちゃうって。宗太もからかうのを止めて~。
アタシは紗耶香からスマホを取り上げると、おやすみと言って電話を切った。
宗太も大事だけど、女の友情も大事なのよ。もう少し、宗太も女心をわかってほしい。後でフォローするのが大変になるんだからね。結衣が紗耶香の頭を優しく撫でている。紗耶香は怒って、チョコレートをパクパクと口の中へ放り込んでる。そんなにチョコレートを食べて大丈夫かな。
後で、3人で歯磨きするの、忘れないようにしなきゃ。虫歯で痛いのなんてヤダもんね。
ポテチを食べて、チョコレートを食べて、ジュースを飲んで、3人で布団の上で、パジャマ姿でゴロゴロ。楽しいコイバナは朝まで続いちゃうよね。




