22話 誤解
期末考査のテスト結果が戻ってきた。俺と結菜はいつも赤点だったのに、大幅に成績がアップしていた。俺の通っている高校ではテストが終わった後日から終業式までの間、授業が午前中で終わる。つまり、しばしの間、居残り勉強から解放されるというわけだ。
俺と結菜はハイタッチをして喜んだ。俊司と慎も俺の席に集まってきた。
「授業が午前中に終わるから、久しぶりに遊びに行こうぜ」
「宗太にしては居残り授業は頑張ったと思う。これから終業式までは息を抜いてもかまわないだろう」
俊司と慎が甘い言葉で俺を誘う。俺も久しぶりに遊びたい気分だったので顔が自然と緩む。3人で何をして遊ぶか雑談をしていると、顔を両手で挟まれて、首をグリっと回転させられた。回転した先には結菜の顔がある。
なぜか頬をプウっと膨らませて怒ったような顔をしている。なぜ怒っているのかわからない。
「なぜ、怒ってるんだ?」
「私のこと一瞬、忘れたじゃん」
はぁ、今、男3人で遊びに行く話をしていただけですが。そんな話をしている時に結菜の顔を思い出せと言われても、そんな器用な頭を俺は持ち合わせてないよ。結菜も仲間に入れてほしいということか?
「結菜も仲間に入りたいってことか?」
「違うじゃん、私のこと一瞬忘れたじゃん」
話にならない。何かがかみ合っていないと怒っていることはわかるが、もう少し説明をしてもらわないと、俺にはさっぱり見当もつかない。
「あの、詳しい説明がほしいんですが、結菜さん」
「私と約束したでしょ。どんな時でも私を一番に考えるって」
なるほど、確かに約束したな。ということは、遊びのことを考える前に結菜のことを考えろと言いたいのかな?
「遊びの前に結菜のことを考えろということですか?」
「違うよ~。いつでも私から目を離したらダメ。宗太は私を見ていればいいの」
どういう意味だか全くわからない。ただ怒っていることだけはわかった。
「わかった。一緒に遊びに付いてくるなら、お前のことを見つめていられる。これでいいだろう」
結菜は口を尖らせている。納得していないようだ。
俺は結菜の手を握って席から立ち上がらせて、慎と俊司の近くまで引き寄せる。
「結菜も一緒に遊びに行きたいんだって、一緒に連れて行ってもいいよな」
「もちろん、OKだけど、お前だけ女子付というのが許せん。俺達にも女子を要求する」
「結菜、俊司があんなこと言ってるけど、女子を集められるか。頼めるならお願いしたい」
「何でアタシが黒沢に使われるのよ。宗太を横取りされただけでもムーなのに~」
なるほど、俊司と慎に俺を取られたと思ったわけか。だから怒ってたんだな。女子にやきもちを焼くのはわかるが、俺の友達にやきもちを焼かれても困るんだが、これはどうしたらいいんだろう。
「俺からのお願いということで、頼めないかな。確かに俺だけ可愛い結菜を連れていて、慎と俊司が男2人といういのは悲しいだろう。だから頼む。な、男子救済措置だと思って愛の手を差し伸べてくれよ」
結菜はムッとした顔をしていたが、女性陣が集まる輪の中へ歩いていった。
「今のこと、生きている間、覚えておくからな」
慎が怖い顔をして俺を睨む。
「ちょっと可愛い彼女がいるからってな。勝ち組になったつもりでいるなよ。きっとお前を爆発させてやる」
俊司が大声でわめきたてる。
言い方は悪かったと思うよ。でも、ああでも言わないと結菜は絶対に言うことを聞いてくれなかったと思うぞ。だって、なぜか結菜の慎と俊司に対する態度は雑だから。言わなくてもわかってほしい。
「可愛い女の子が来ると思って、今のことを帳消しにしてくれよ」
慎と俊司はいきなり静かになった。納得してくれたようで良かった。
結菜が神楽、赤沢、栗本を連れてきた。
「午後から遊びにいくんですか~。わたしも是非、参加させてください。テストが終わった後くらい、遊びたいです」
神楽は垂れた目尻をさらに下げて、おっとりと微笑む。
「私も部活が今日は休みだから参加しよう。最近、遊んでいなかったから楽しみだ」
赤沢もにっこり笑って、一緒に遊ぶことに賛同する。
「私は委員長だから、風紀が乱れないように監督する義務があるわ。とくに九条と結菜が一緒なんだから」
委員長は顔を横に向けながら、渋々ついて来るようなことを言っているが、頬がすこし綻んでるぞ。
「僕も宗太と一緒に遊びたいな」
皆の間からヒョイと新庄が顔を出した。きれいな小顔に長くてきれいな黒髪がキラキラしている。女の子と言われても十分、美少女の部類に入る美少年だ。慎もイケメンだけど、零には負ける。
「最近、宗太と遊んでなかったでしょう。宗太、朝霧さんのことで忙しかったから。僕も今日は部活が休みなんだ」
「零も来るか。わかった。丁度、男女も4人づつになるし、一緒に遊ぼう」
零が喜んで俺の腕を掴む。なんでお前はそんなに仕草が女性っぽいんだよ。ただでさえ女性のような顔つきなのに、ドキッとするじゃないか。ん~結菜さん、少し今、目が吊り上がってましたよね。相手は男ですからね。
なぜか赤沢が目を白黒している。いつも冷静な赤沢にしては珍しいな。
俺達は授業が終わってから、教室に集まることにして、授業のために自分達の席に戻った。
◆◇◆◇◆◇
授業が終わり、HRが終わって、クラスメイト達はそれぞれに帰っていった。俺達8人は集まって1階の階段を降りる。校舎を出て、校門を潜って、学校から外に出る。俺達はゆっくりと歩いて通学路から外れて大通りへ向かう。その間、結菜が俺に寄り添おうとすると栗本に説教をされて、仕方なく手を繋ぐ。
結菜と手を繋ぐのはわかるが、なぜ、反対側の手を零が握ってるんだ。結菜の視線が痛いんだが、やめてもらえませんか。
「今日はみんなでボーリングへ行こうぜ。後、カラオケ。最後はゲーセンで終わり」
俊司が手を挙げて、今日の予定候補を大声で提案する。誰も反対する者はいない。
それにしてもボーリングか。
俺の平均スコアは70なんだよな。ボーリングは下手くそなんだよ。結菜はボーリングは上手いんだろうか。結構、運動神経いいからな。絶対に俺よりもスコア高そうだよな。今から言い訳しとこうかな。
俺達はボーリング場についた。このボーリング場はカラオケと併設されているから、後からカラオケに行くにも便利がいい。俺と俊司と慎が昔からよく遊んでいる場所だ。
ボーリング場で4レーンを借りることになった。俺と結菜、赤沢と零の組と俊司と神楽、慎と栗本の組に分かれた。
貸し靴をレンタルして、靴を履きなおして、ボールを探す。俺は13号のボールを手に取った。ボールを探していると零が涙目でボールを持ってきた。
「宗太。ボールに指を入れたら、取れなくなっちゃった~。宗太、外して」
ボールのサイズを見ると7号と書いてある。おい、おい、女子でも7号は使わないぞ。7号って、子供がよく使ってなかったっけ。忘れたけど。高校2年の男子の使うボールではないことはわかる。
それより、よく指が入ったな。どれだけ指が細いんだよ。
このまま無理にボールから指を抜こうとすれば、指をおかしくする可能性がある。俺は零を連れてカウンターへ行き、店員に訳を話して、店員に零のことを頼んで、自分の席に戻った。すると結菜が俺と目を合わせてくれない。
俺は結菜の隣に座り、肩をポンポンと叩くが無視された。仕方がない奥の手を出すか。あれは恥ずかしいんだけどな。俺は結菜の耳に口を持っていって耳元でささやいた。
『・・・・・・可愛いよ。結菜・・・・・・機嫌が悪そうだね。聞いてあげるから言ってみて』
結菜がくるりと俺の方へ顔を向ける。
「さっきから新庄の相手ばっかり。ここに来る時だって手を繋いでるし、宗太はきれいなら男も女も関係ないの?」
誤解だ。それは酷過ぎる。俺に男色の趣味はない。絶対にない。いくら零がきれいで美少女に見えるからと言って、手を出すことなんて天地神明にかけてない。相手は男だぞ。勘弁してくれよ。
「俺が結菜以外に考えたこともない。零は男だよ。さっきはボールの中に入れた指が詰まったから、店員に助けてもらうためカウンターまで一緒に行っていただけだ。完全な誤解だ」
「そんなことはわかってる。でも何か新庄からは匂うの。私と同じ宗太を好きな匂いがするの。私、心配で頭がグチャグチャになりそう」
あらあら、結菜、大粒の涙を流して泣いちゃった。俺は結菜を抱きしめて落ち着かせる。
最近の結菜は感情の起伏が激しいような気がする。急に泣き出すことがあるから困る。怒っては泣き、喜んでは泣き、嬉しいと言っては泣き、悲しいといて泣く。こんな泣き虫だったけ。
「零のことは勘違いだから。俺がいつも見ていたいのは結菜だから」
「九条、結菜、私の前でイチャつくのは、やめてくれないか。なんだか私が恥ずかしい」
赤沢が顔を真っ赤にしてモジモジしている。結菜を落ち着かせるのに必死で赤沢のこと忘れてた。ごめんなさい。そうだ。赤沢は今、1人だ。零のお守りを赤沢に任せよう。
「赤沢。俺、結菜の世話で、零の方まで手が回らないんだ。悪いけど零の世話を頼めるかな。あいつドジだからさ。手間がかかるんだよ。悪い奴じゃないからさ。顔も美少年だし。頼むわ」
「・・・・・・わかった。善処しよう・・・・・・」
あれ、なんで赤沢の顔がさらに赤くなったような気がするぞ。それになんで俯いてるんだよ。モジモジしているのも変わらない。いつもキリっとしている赤沢にしては珍しい反応だな。
店員にボールから指を抜いてもらった零が機嫌よく帰ってきた。今、持っているボールのサイズは9号だった。どれだけサイズの違うボールに指いれてたんだよ。
「結菜と俺がペアを組むから、赤沢と零がペアを組もうぜ」
「え、こんな時って、男チームと女チームに分かれるんじゃないの。僕も宗太とペアを組みたかったな」
零、そんな爆弾発言を落としてどうする。やっと落ち着いてきていた結菜が、またおかしくなってるじゃないか。赤沢もなんでシュンと肩を落としてんだよ。零のお守りはお前に任せたはずだろ。
俺も結菜とペアが組みたいんだ。何が悲しくて男同士でペアを組まないといけないんだ。それだったら男同士でボーリング場に来てるわ。わざわざ、女子を呼ぶか。俺は心の中で絶叫した。頭がおかしくなりそうだ。
「とにかく俺は結菜とペアを組みたいの。だから零は赤沢ペアを組みなさい。拒否権はないからね」
「チェっ、仕方ないな。宗太がそういうなら仕方がないか。赤沢さん、よろしくね」
零が赤沢に手を差し伸べて握手を求める。赤沢は顔を真っ赤にして零の手の上に自分の手を乗せるだけだった。2人で何をしてるのかな。新しい握手の方法か。
結菜は俺とのペアだとわかると復活した。女子から投げることになった。結菜はボールを持つと美しいフォームでボールを投げる。ボールは回転して右から左へ曲がっていき、1番ピンの近くへ向かっていく。惜しい9本だ。1番右端のピンが残ってしまった。
やっぱり結菜はボーリングが上手かったか。
「宗太、頑張って!」
結菜の応援の声がかかる。ボーリング下手くそな俺が右端に1本だけ残っているピンを倒せるわけがない。それに俺が投げたボールは全部、なぜか右側に曲がっていく癖があるんだよ。
俺はヤケクソになって、ガーターをしないためにレーンのど真ん中へ投げた。するとボールはスルスルと右に曲がっていく。偶然、右端に残っていたピンに当たる。ラッキー。スペアだ。
「やるじゃん。宗太。ボーリング上手いじゃん」
ああ、結菜に誤解されてしまった。これでボーリング下手くそだって、とても言えない。だって、結菜が向日葵のような笑顔で俺を見てるんだから。
赤沢、零ペアは、赤沢が投げるのだが、なぜか緊張してギクシャクな動きになっている。剣道部の赤沢にしては珍しい。あ、そのまま投げちゃった。ガーターだ。もしかすると俺と同じで赤沢もボーリングが下手かもしれない。俺は赤沢に親近感がわいた。同志よ。
次に零が投げる。というか足元にボールをポトリと落とした。ボールはチョースローでレーンを転がっていく。1番ピンに当たった。ボールはそのまま止まっている。ピンは次々と倒れて、全てのピンが倒れた。スペアだ。
「やったー。宗太。僕、全部のピンを倒したよ。褒めて~」
なぜ俺にハイタッチを求めてくる。お前がペアを組んでいるのは赤沢だ。赤沢とハイタッチしなさい。ほら、結菜が涙目になってるじゃないか。本当にお前等って相性が悪いんだな。
赤沢は顔を真っ赤にして小さい声で「スペア、おめでとう」と呟いている。零は嬉しそうに赤沢に振りむいてハイタッチをしようと手を挙げている。赤沢はその手にそっと自分の手を添える。それってハイタッチじゃないからね。
それからも俺達はゲームを続けていく。結菜はストライクを出したり、9本だったりするが、大きくボールを外すことはなかった。そして俺だが、もう幸運は降りてこなかった。1本も倒せずにゲームは進む。
赤沢、零ペアは赤沢は連続ガーター記録を更新中。そして零はスペアの記録を更新している。順番が逆だったらストライクの嵐だったな。残念ながらこれはペア戦だ。俺が下手くそなことは今のところ隠せているはず。そう思いたい。
「宗太。さっきから聞きたかったんだけど、なんで宗太が投げると全部ボールが右に流れて行っちゃうの。普通、回転をかけてるボールの場合は右から左へ曲がっていくもんだよ。宗太の投げ方って変じゃん」
チッ、気づいたか。どうやって誤魔化そう。ここは素直に白状したほうがいいだろう。
「俺もなんでかわかんね~。ボーリングをするとなぜか右にボールが曲がっていくんだよ」
「じゃあ、レーンの一番左に立って、真っすぐ投げてみれば、そうすれば真ん中に行くんじゃん」
なるほど、その手があったか。今まで気づかなかったよ。結菜、俺より頭いいな。よいこだ
結菜が投げて、真ん中近くに1本だけピンが残っている。俺は結菜の言う通り、レーンの左端に立って、真っすぐに投げた。ボールは右に流れて、真ん中へ向かっていく。偶然にも立っている、ピンに当たった。今日、2回目の幸運だ。スペアになった。俺と結菜はハイタッチをして喜んだ。
ゲームの途中で赤沢と相談して、点数を競うことは止めていた。だって、俺は下手だし、赤沢はガーター記録更新中だからだ。この時だけは、俺と赤沢は同じ意見だった。赤沢は「こんなはずないのよ。今日は調子がおかしいの」と言って涙目になっていた。
何も言うな。同志よ。お前の気持ちはわかる。俺も見なかったことにしておこう。
武士の情けだ。
俺達がゲームを終わると、俊司達は既にゲームを終えて、席に座って待っていた。俊司が俺の顔を見るとニヤニヤと笑っている。
「宗太。考えたな。ペア戦にしたんだな。それだと宗太がボーリングが下手なのを隠せるもんな」
止めてくれ~。せっかく結菜に隠せてるのに、そんな大声で暴露しないでくれ~。俺は頭を抱えてうずくまった。
結菜が優しく背中を撫でてくれる。
「大丈夫。宗太。私、最初から宗太がボーリング下手なの知ってたもん。だって今まで、右利きなのに、ボールが右へ曲がっていく人を見たことなかったし。下手でもいいじゃん。その分、アタシが頑張ったんだから」
それって全然、フォローになってないぞ。逆に俺に止めを刺しているからね。
俺達はボーリングを止めて、レンタル靴を返して、清算をしてボーリング場を出て、カラオケボックスへ向かった。
俺達はカラオケボックスの受付済ませて、ドリンクバーでドリンクを入れて部屋に入った。俺の右隣には結菜が座り、なぜか左隣には零が座った。ここで結菜の忍耐が尽きた。零に向かって爆発する。
「新庄、あなた、宗太のことが好きなんでしょう。絶対に宗太は渡さないんだから。私が宗太を独り占めにするの。宗太は私のことだけ考えてくれるって約束してあるんだから」
何を言い出すんだ。結菜、頭を冷やせ。相手は美少女のように見えるけど、男子だ。俺はそういう趣味はない。零もそういう趣味はないはずだ。ないはずだと信じたい。ちょっと自信がなくなってきた・・・・・・
「だって、一緒のクラスになった時、1人ボッチだった僕に笑いかけてくれて、話しかけてくれた、最初の友達が宗太なんだもん。宗太といるのが一番安心するんだ。だから僕は宗太のことが好きだよ。その次は慎かな。その次は俊司。だって俊司って面白いんだもん」
「あ~今、宗太のことを好きって言った。好きっていった。絶対に渡さないんだからね」
結菜さんや、よく零の話を聞いてくれ。1番が俺、2番が慎、3番が俊司って零は言ってたよね。そこ重要だから。
結菜は涙を流して怒っている。誤解だといっても耳に入っていない。俺は結菜を抱きしめて落ち着かせる。
「零。俺は結菜の相手をしないといけないから慎と遊んでもらってくれ」
顔を真っ赤にした栗本が目を吊り上げる。隣に座っていた慎もビックリしている。
「美少女のような美少年と、イケメンの組み合わせなんて、いけません。風紀が乱れます。そんなことが起こったら、私は学校へも報告できないわ。どうしたらいいのかしら」
委員長。委員長の言っている、そんなことって具体的にはどんなことだよ。具体的に言ってみろ。このエロ委員長。でも、なんで顔を真っ赤にして委員長は怒ってんだ。意味わかんね~。
神楽の隣で俊司がカラオケに歌を入れながら気軽に呟いた。
「男女4人のペアだと、赤沢と零が残ってる。さっきもボーリングを一緒にやってたんだし、赤沢、零のお守りを頼むよ。零もそれでいいだろう。わがままいうなよな」
「みんながそうしろっていうなら、僕、赤沢さんの横に座らせてもらおうかな。赤沢さん、先と同じお隣さんだね。よろしく」
零は基本的には素直でいい奴だ。誤解をされることもおおいけど。
赤沢の顔がこれまでにないくらいに、真っ赤にユデダコのようになっている。小さな声で「私こそ、よろしく」と挨拶している。今日の赤沢はなんだか、いつもよりも変だ。動きもぎこちない。
みんな、カラオケを選曲して、大盛り上がりで、マイクを奪い合った。
結菜が俺の耳元でささやいた。
『私だけを見ていてほしいの。一瞬でも私から意識を離したらダメなんだからね。宗太、大好き』
大丈夫。今日のお前は全部、誤解してるから。俺は結菜を見ているよ。
俺はそっと結菜の肩に手を回して、自分のほうへ引き寄せた。




