20話 夜景ー朝霧結菜side
今回は少し短めです
わーい。とうとう宗太に告白してもらっちゃった。もう最高に幸せ。
もう天まで昇っちゃいそう。そのまま天国までいっちゃたらどうしよう。そんなのダメよ。まだまだ宗太と色々なことをしたいんだから・・・・・・
色々と色々と・・・・・・キャーーー!あんまり考えちゃダメよ。アタシ。そんなこと、まだ付き合ったばかりだし・・・・・・早すぎる~・・・・・・どうしよう、耳元で宗太に甘い言葉をささやかれたら、もう、ダメ~。
アタシは部屋のベッドで猫のソウタを抱きしめて、宗太のことを想って、ベッドの上で悶える。
「ソウタ。あのね。宗太に愛してるって言われたんだよ。本当だよ。場所は生徒指導室だったから、今考えるとおかしな所で告白されたと思うけど、そこは宗太だから許しちゃう」
あ、そうだ、輝夜に電話をしよう。私はスマートホンを手に持って輝夜に連絡する。
《はい、輝夜だけど、結菜、何回、連絡してきてんのよ。また、惚気話だったら電話切るよ》
《そんなこと言わないで聞いてよ。今、私、一番、嬉しいんだもん。親友にも幸せをおすそ分けしたいじゃん》
《そのおすそ分けが甘すぎて、食欲なくして夕飯も半分で残したっつーの。そんなに九条と付き合えたことが嬉しかったの?》
だって、1年の時から好きだったんだもん。初めて自分から大好きになったんだよ。その宗太と付き合えたんだから嬉しいに決まってるじゃん。
《これからは宗太も結菜って呼んでくれるって。今日も照れながら結菜って何回も呼んでくれたんだよ~。告白の時にね『結菜が大好きです。愛しています。付き合ってください』って言ってくれたんだよ~。愛してるって》
キャー。どうしよう。私、宗太に愛されてる~。愛されてるって幸せ~
《あ~そうですか。それを私に言われてもね~。彼氏のいない私にとっては拷問なんですけど》
アタシは宗太の弱点を見つけた。宗太に抱きついて上目遣いで、耳元で甘くささやくの。するとね、宗太って顔が真っ赤に照れてね。言うことを聞いてくれるの。宗太、チョー優しい~
《宗太は優しいでしょう。宗太のことをいいって言っても、絶対にあげないんだから、私だけのもんなんだから》
《私が九条のこと好きになるわけないでしょう。結菜だけだから、そんな変わった趣味してるのは。私、いそがしいから、電話切るね》
あ~どうしよう、この喜びを誰かに伝えたいよ~。そうだ、直接、宗太に連絡しよう。私はウキウキしながら、スマートホンで宗太に連絡する。
《おう、結菜か。今日はいつもより、電話してくる回数が多いような気がするんだけど、どうした?》
《もう一度、愛してるって言って》
《そんなこと・・・・・・恥ずかしくって何回も言えないわ・・・・・・さっきから電話で何回も言ってるじゃないか》
《もっと言ってほしいの・・・・・ねえ、言って》
私は甘えるような声でささやいた。宗太は私のこの声に弱い。絶対に言ってくれるはず。
《・・・・・・愛してるよ、結菜・・・・・・》
宗太の声で、愛してるって言われるのチョー好き、胸がドキドキする。張り裂けそう。あ~幸せ~
《ありがとう。嬉しい。私も宗太のこと大好き、愛してる。ずっとこれからも一緒にいようね》
《一緒の大学いけるといいな。2人で頑張ろうな・・・・・・下で加奈が呼んでるみたいだ。ゴメン。切るな・・・・・・》
そう言って宗太は電話を切った。もっと宗太の声を聞いていたかったよ~。あ~今から会えないかな~。
早く会いたいな~。早く明日にならないかな~。そうだ、宗太は私といると良い香りがするって言ってくれた。お風呂に入ろっと。体をきれいにして、宗太にきれいって言ってもらうんだもん。
私は部屋を出て、リビングを通り抜けようとする。リビングでは瑞穂お姉ちゃんが缶ビールを飲んでいた。
「何、ニコニコと笑って、どこに行こうって言うんだい」
「ん、お風呂」
「あんたね~今日は3回もお風呂に入ってるわよ。次入ったら、4回目よ。何考えてるの」
だって体をピカピカにして宗太に良い香りがするって言ってもらいたいんだもん。
「今日は学校で何があったんだい。何を聞いてもニマニマと笑ってるだけで、いい加減に教えてくれてもいいじゃないか」
「・・・・・・瑞穂お姉ちゃんは強敵だから、言わない・・・・・・」
「さては、宗太に告白してもらったね。そうでなければ結菜がそんな状態になるはずないからね」
「さすがお姉ちゃん、勘鋭~い。宗太が私に『結菜が大好きです。愛しています。付き合ってください』って言ってくれたの」
「そうか、良かったじゃないか。宗太だったら浮気をされる心配もなさそうだし。私も宗太のことは気に入ってるから、2人が付き合うのは嬉しいよ」
そう言って、瑞穂お姉ちゃんは優しく微笑んでくれた。とても優しい笑顔だ。私は走って行って瑞穂お姉ちゃんの胸に飛び込んだ。瑞穂お姉ちゃんは優しく髪を梳いてくれる。
「宗太が結菜を泣かせたら、いつでもお姉ちゃんに言ってくるんだよ。宗太が足腰立たなくなるまで、格闘技の実験材料にするから。今日はお祝いだ。缶ビールを持ってきて」
私は台所に行って、冷蔵庫から缶ビールを持って瑞穂お姉ちゃんに手渡しする。そして隣に座る。
「結菜はきれいで可愛いんだから、何回もお風呂に入る必要はないよ。今のままでも宗太を悩殺さ」
「宗太が私にメロメロ?」
「そう、宗太は結菜にメロメロ」
キャー、宗太が私にメロメロだって、どうしよ~。嬉し過ぎる~。
宗太は瑞穂お姉ちゃんにも気に入られてるし、私と瑞穂お姉ちゃんも加奈ちゃんに気に入られるから・・・・・・家族ぐるみの付き合いい・・・・・・キャー、これって結婚への道が見えてるかも。・・・・・・・宗太のことアナタって呼ぶのかな・・・・・・子供は2人ぐらいほしいかな・・・・・・大学生のうちに結婚したりして・・・・・・夢の学生結婚・・・・・・キャーー、私の未来って幸せいっぱいじゃん。
「結菜も相当、宗太にメロメロだね。あんた達はお似合いだよ。さ~夜も遅いんだし、自分の部屋で寝なさい」
私は自分の部屋にルンルン気分で戻る。猫のソウタが私のベッドの上で丸まっていた。私は猫のソウタを抱きしめて、じっとソウタの顔を見つめる。クリクリとした目が可愛い。ソウタが私と宗太の糸をつないでくれたんだ。
ありがとうソウタ、明日からキャットフードを倍にしてあげるからね。
私がソウタを放すとソウタはベッドを降りて、器用にドアノブを回して、部屋から出て行った。本当にソウタは器用な猫だ。可愛い。
窓を開けてベランダに出る。ベランダからは街の夜景が一望できる。ビルの明かりがキラキラと煌めいて、地上に星空が降ってきたみたい。とてもきれい。今度、宗太が家に泊まりにきた時、この夜景をみせよう。
宗太はなんて感想をいうかな。宗太のことだから甘い言葉は言えないだろうな。たぶん面白いことを言って、私を笑わせようとするに違いない。だって宗太は私の笑顔が大好きなんだもん。
宗太は気づいてないかもしれないけど、宗太はとても優しい笑顔をするんだよ。このことは誰にも秘密。私だけの秘密。
宗太はどんな時でも私はシュンとなっていると面白いことを言って、笑わせてくれようとする。励ましてくれる。そのことも皆には内緒。
このことは宗太にも内緒にしておくんだ。宗太が気づいて、浮気されるのヤダもん。今は色々ダサいとか言われているけど、それは皆が宗太の良さを知らないだけ。知られちゃってライバルが増えるなんて、絶対に嫌。
宗太には私だけを見ていてほしい。いつまでも私の瞳だけを見ていてほしい。傍にいてほしい。段々、欲張りになっていく自分がわかる。でも止められない。
私は夜景を見て、興奮で火照ている頬を冷ます。夜風が気持ちいい。宗太の家のある方向を見る。どの辺が宗太の家かな。あの辺りが宗太の家かもしれない。小さくてよく見えなくて残念。でも、宗太とつながっているような気がする。心地よい風が宗太の家にも届いていればいいな。
私は宗太の家の方向を見つめる。はぁ、早く会いたいな~。今から宗太の家まで行っちゃおうかな。でも、きっと夜道を女子が歩いたら、危ないって宗太に怒られるね。だからここは我慢しないと。
一面の夜景が街を埋め尽くす。その夜景の中に宗太がいると思うと会いたい気持ちが段々と大きくなる。
私はベランダから部屋に入り、机の上に置いてある財布を持って、自分の部屋を出てリビングへ行く。
「どこに行くつもりだい」
リビングのソファから瑞穂お姉ちゃんの声が聞こえる。
「ち・・・ちょっとコンビニまでジュースを買いに・・・・・・」
「嘘だね。今から宗太に会いに行こうとしてるだろう。それはダメだからね。今、何時だと思ってるの。12時だよ。こんな深夜にコンビニに行ったことなんてないじゃないか。そんなウソはすぐバレるんだよ。何考えてんだか。もし、宗太に会いに行っても怒られるだけだよ」
「・・・・・・怒られたい・・・・・・声が聞きたいの・・・・・・」
「わかった。宗太のかわりに私が怒ってあげる。どんなプロレス技をかけられたい。結菜」
あ、瑞穂お姉ちゃん、本気で怒ってる。目の奥に炎が見える。今までプロレス技なんてかけられたことないけど、今日は本気で技をかけられそうだ。早く、自分の部屋へ退散しよう。私は方向転換して足早に自分の部屋に戻った。
私は机の上にあるスマートホンを取って、ベッドに寝転んだ。
スマートホンをじっと見つめる。電話をするのは簡単だ。宗太は絶対に電話に出てくれるだろう。だから電話をかけたい。でも、電話を切った後に絶対に寂しくなって、もっと会いたくなる。
でもやっぱり宗太の声を聞きたい。私は宗太に連絡する。すぐに宗太は電話を取ってくれた。
《どうした。眠れないのか》
さすが宗太、私のことがわかるの。
《うん、宗太に会いたくて、会いたくて眠れない》
《絶対に夜道を俺の家まで来るんじゃないぞ。危険だからな。約束守れ》
《うん、約束、守る、そのかわり、朝まで電話を切らずにいて》
《途中で寝ちまうって》
《それでもいいの。宗太とつながっているような気がするから。安心して眠れるし》
《わかった。電話を切らなきゃいいんだな。俺ももう寝るし、寝るまでの間、付き合ってやるよ》
やっぱり宗太は優しい。私のことを1番に想ってくれている。私は今、宗太の声が聞けて、とっても幸せ。
私は宗太と色々な話をした。2時近くになるとスマートホンの向こうで、宗太の寝言が聞こえる。可愛い。
私はスマートホンを耳に当てて、宗太の寝言を聞きながら眠りについた。




