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16話 月明りー朝霧結菜side

 海からの帰り、私達3人はマンションに直行した。だって宗太が今、全裸と同じような状態で車に乗ってるんだもん。外で食事なんかできないよ。そんなことをしたら、すぐに警察官が飛んできちゃう。



 さっき、高速道路を降りてすぐに、瑞穂お姉ちゃんがコンビニに寄ってくれた。私と瑞穂お姉ちゃんはコンビニへ。宗太は可哀そうだけど、車の中でお留守番、だってパンツ1枚の上にバスタオルを巻いている状態なんだもん。



 コンビニの中へ連れていけないよ。そんなことをすればコンビニのお姉さんがビックリして警察に通報されるに決まってる。



 私と瑞穂お姉ちゃんはコンビニで宗太が着られるTシャツを買った。そして靴下も。後はパンツを瑞穂お姉ちゃんが選んでる。柄が気に入らないとか、何かブツブツ言ってる。瑞穂お姉ちゃんはニヤリと笑って真っ白なブリーフを手にもっていたけど、そんなの恥ずかしくって、見てられないから、私は「やめて」と言って、瑞穂お姉ちゃんを止めた。



 瑞穂お姉ちゃんは少し残念そうな顔をしていた。でもすぐにニコニコと笑って別のパンツに手を伸ばす。なんで、ワンちゃんいっぱいのプリントトランクスをレジに持っていくの。私もワンちゃんは好きだけど、パンツにワンちゃんいっぱいはちょっと可愛すぎないかな。



 私は宗太と瑞穂お姉ちゃんの分も飲み物を買って、レジへ持っていく。私と宗太の飲み物はもちろんコーラだ。だって宗太はコーラが好きだから。



 瑞穂お姉ちゃんが車に戻ると、買ったばかりのトランクス、靴下、Tシャツを宗太の顔面に放った。宗太はトランクを握って目をキョトンとさしている。



「私達は車の外にいるから、早く、着替えな。パンツも濡れたままだろう。このままだと風邪ひいちまうから」と宗太に言って、車のドアを閉めた。



 車の中で宗太がゴソゴソと動いている。瑞穂お姉ちゃん、なんでそんなに車の窓をニヤニヤ笑って見ているの。車の中、丸見えだよ。私は両手で顔を覆って、指の隙間から少しだけ見ちゃった。だって、男の子の着替えってなんかエロい。



 キャー、宗太、ピーが見えちゃってるよ~。そんなところを必死でバスタオルで拭かないで~。もうそのバスタオル使えないよ~。だってピーを拭いた、バスタオルなんて、洗濯しても使えない。だって恥ずかしいじゃん。



 やっと宗太の着替えが終わった。私は車の後部座席に乗る。宗太を見てギョッとなった。



 だって宗太。白いTシャツを着て、ワンちゃんのトランクスを履いて、靴下を履いてるんだもん。これはヤバいよ。



 すぐに変態で警察官に捕まるレベルだよ。何、着替えて爽快な顔をしているの。私、ちょー恥ずかしいんですけど。隣に座りたくない。まだバスタオルを巻いた状態のほうが良かったような気がする。でもバスタオルは濡れているので、腰に巻くとパンツが濡れちゃうよね。私が我慢すればいいんだよ。私は自分に「ガンバ」と応援する。でも目が泳いじゃう。思わず目を逸らせる。



 私はコーラを宗太に渡した。嬉しそうにコーラのプルトップを剥がして、ゴクゴクと飲んでいく。でもなんで、腰に手を当てて、胸を張ってコーラを飲んでるの。ちょっと格好が変だよ。私でも少し引きそう。今の恰好を考えてほしい。なんでコンビニにはズボンは売ってないのかな。これじゃあ、立派な変態さんだよ。



 車はコンビニから発進して、市街地を快走する。瑞穂お姉ちゃんの運転は相変わらず怖い。私は宗太に手を伸ばして、宗太に手を握ってもらう。少し、心が安心する。宗太がどんな格好でも私は好きだからね。



 市街地に入ってから、洋服店に寄るもんだと思ったら、瑞穂お姉ちゃんはマンションに帰ってしまった。地下の駐車場に入って瑞穂お姉ちゃん、宗太、私の3人は車から降りる。エレベーターが降りてくるのを待つ。その間、誰にも会わないように神様に祈った。



 宗太は何事もないような表情で私ににっこりと笑ってくれる。笑顔は嬉しいんだけど、私の心は複雑だよ。だって白Tシャツにワンちゃんのトランクスに靴下の恰好で、靴も履かずに立っている状態でニッコリ笑われても、ちょっと対処に困るかな。



 エレベーターが地下に着いた。私達は18階のボタンを押す。1階でエレベーターが止まった。おじさんがエレベーターに入ってこようとしたけど、宗太の恰好を見てギョッとそいて後退った。「お先にどうぞ」と言われてしまった。おじさんの気持ちは少し理解できる。怖いよね。



 私達は18階でエレベーターを降りて、瑞穂お姉ちゃんが鍵を開けて、玄関からリビングへ入っていく。私と宗太も続いて中に入る。リビングでは猫のソウタがソファに寝転んで、私達の帰りを待っていた。



「だだいまソウタ」



「一緒だったじゃないか」



「猫のソウタに言ってるの」



 何か宗太がブツブツ言ってる。瑞穂お姉ちゃんが宗太を指差す。



「シャワーを浴びろ。後、洗濯物へ濡れた衣服を入れておけ。結菜も海で宗太と海水をかけあっていただろう。アンタも着替えて、今着ている服を洗濯しな」



 宗太が脱衣所へ向かった。私は自分の部屋に入って、Tシャツとショートパンツに着替える。洗濯物を持って、脱衣所へ行くと既に宗太はシャワーを浴びていた。洗濯機の中を見ると宗太の服が散乱している。もちろん、宗太のパンツも入っている。



 この洗濯機の中に私の衣服を入れるの。なんだか恥ずかしい~。宗太の洗濯が終わってから、自分の服の洗濯をしよう。私は自分の汚れた衣服を洗濯かごに入れる。



 リビングへ戻ると、瑞穂お姉ちゃんが冷蔵庫を開けて、缶ビールを取り出して一気の飲みしているところだった。瑞穂お姉ちゃんはすぐ酔っぱらうのにビールを飲むのが好きだ。酔った後から飲み続けるから質が悪い。



 瑞穂お姉ちゃんがスマートホンを取り出して、どこかに連絡する。



《宗太の妹さん、私は朝霧結菜の姉で瑞穂と言います》



 今日、海までドライブに行ったことを説明する。そして海で宗太がずぶ濡れになって、今、シャワーを浴びていることを説明した後、《そういうことだから、今日は宗太を家に泊めていいかな》と瑞穂姉ちゃんは言う。



《そんな迷惑かけられません》という声がスマートホンから聞こえてくる。加奈ちゃんからすればそうよね。



《この家は私と結菜しかいないから、部屋、余ってるし、大丈夫。それより宗太が風邪をひいたらダメだから、ここに泊めるね》



《え、今から行くから場所教えてください》とスマートホンから聞こえてくる。



《加奈ちゃん、家に来てもいいけど、加奈ちゃんも家に泊まるってことでいいよね》と瑞穂お姉ちゃんはニヤニヤした笑いを浮かべて話している。



 加奈ちゃん、来ないほうがいいと思う。酔っぱらったら、瑞穂お姉ちゃんは男も女も関係ない。加奈ちゃんは可愛いから、絶対に瑞穂お姉ちゃんに気に入られるはず。自分から猛獣の檻の中に入るようなことはしてはダメだよ。私は加奈ちゃんを止めたかった。でも言えない。だって言うのが怖い。



 瑞穂お姉ちゃんはこのマンションの場所を伝えてスマートホンを切った。



「宗太の妹が来るようだよ。今日は宗太の妹も泊めるから」



 瑞穂お姉ちゃんが冷蔵庫から缶ビールをだした。もう2本目だ。加奈ちゃんが来た頃には絶対に瑞穂お姉ちゃん、酔っぱらってるよ~どうしよう。



 私は、自分の部屋へ戻ると、自分のスマートホンから宗太の自宅の電話に連絡をする。すぐに加奈ちゃんが出た。加奈ちゃんは宗太がお世話になっていると謝罪してくる。そんなことはいいの。今は加奈ちゃんのほうが大事。



《加奈ちゃん、今日は宗太、家に泊めるけど、そんなに心配する必要ないし。大丈夫だから。瑞穂お姉ちゃん強いし》



《それでも女の人2人の家にお兄ぃを泊めさせるわけにいかない。あの獣がなにするか。朝霧さんが危ない」



 そうなったら、私は嬉しいんだけど!そんなことを加奈ちゃんには言えない。だって加奈ちゃんはお兄ちゃん大好きなんだもん。



《違うの。瑞穂お姉ちゃん、今、缶ビール飲んでるんだけど、酔っぱらうと酒癖が悪いの。加奈ちゃんに迷惑かけちゃうから、来ちゃダメだよ。加奈ちゃんが危険だよ~》



《心配ありがとうございます。でもやっぱり私、朝霧さんの家に行きます。お兄ぃを一人にできないから》

 私は説得を諦めた。加奈ちゃんはすぐにくるだろう。せめて美味しい料理を出して歓迎しよう。





 私がリビングに戻ると宗太が、上下スウェット姿でバスタオルで髪を拭いていた。瑞穂お姉ちゃんが自分のスウェットを貸したんだ。瑞穂お姉ちゃんは長身だ。だから宗太が来ても違和感がない。でもなんだか腹が立つ。



 宗太、スウェットの匂いを嗅いだらダメなんだから。なんでそんな幸せな顔をしてるの。こんなことなら私の着ぐるみパジャマを貸せばよかった。瑞穂お姉ちゃんの服の匂いを嗅いで幸せそうな顔をするのは止めて~



 瑞穂お姉ちゃんもTシャツにデニムのパンツに着替えている。ソファに座って缶ビールを飲んでいる。これで3本目だ。瑞穂お姉ちゃんはお酒好きだけど、お酒は強くない。だから3本飲めば、もう酔っている。これは諦めるしかない。それよりも夕食の用意をしなくちゃ。



 私は宗太の洗濯物を洗濯機から出して乾燥機へ入れる。そして自分の衣類を洗濯機に入れてスイッチを入れる。宗太のパンツ、触っちゃった。どうしよう。ドキドキする。手を洗わないほうがいいかな。



 リビングへ戻ると宗太が、瑞穂姉ちゃんに腕ひしぎ逆十字固めをされていた。あまりの痛さに宗太が泣きわめいている。瑞穂お姉ちゃんは上機嫌だ。私が料理をしている間、宗太には生贄になってもらおう。私は料理を作らなくちゃ。



「結菜、今日は夕食作らなくていいぞ。さっきピザ屋に電話しておいた。せっかく宗太の妹も来るんだ。腹いっぱいピザを食べたらいいだろう。夕食を作ったら、片付けるのも一苦労だしな」



 瑞穂お姉ちゃんは宗太にプロレス技をかけたまま、にっこりと笑って親指を立てる。



 私は猫のソウタを抱っこしてソファの端に座った。なるべく瑞穂お姉ちゃんと宗太から距離を取る。宗太は次々とプロレス技をかけられて絶叫している。可哀そうだけど声をかけられない。だって、標的が私になったら嫌だもん。



 私も瑞穂お姉ちゃんからプロレス技を教わったことがあるから、宗太が私意外の女子に興味を持ったら、今度、宗太に技をかけてみようかな。



 本当に瑞穂お姉ちゃんは宗太のことが気に入ったんだね。こんなに私の友達をかまっている瑞穂お姉ちゃんをみたことがない。あ、瑞穂お姉ちゃん、宗太が白目を剥いてるよ。あ、宗太が気絶した。



「宗太を気絶させたから、結菜が膝枕しな。そのほうが結菜も嬉しいだろう」



 私は慌てて宗太の元へ行って、膝枕をする。まだ宗太は白目を剥いて痙攣している。大丈夫なんだろうか。



「宗太は案外タフだぞ。私の技をそこまで耐えた男は少ない。だから余計にダメージくらっただけだ。膝枕していたら治る。結菜に膝枕されて宗太も嬉しいはずだ」



 私は宗太の手をそっと握る。そして胸の上に顔を埋める。瑞穂お姉ちゃんはニヤニヤして私達をみている。私に膝枕させることが目的だったんだね。でも、気絶までさせるのはやり過ぎだと思う。嬉しいけど。



 私は宗太の額に頬を当てる。すごく近くに宗太の顔がある。それだけで心臓がドキドキする。私は顔をずらせて宗太の胸に頬を当てる。宗太の温かさが伝わってくる。なんだか安心する。私はそのまま目を瞑った。



 暫くすると加奈ちゃんが家に来た。私と瑞穂お姉ちゃんは加奈ちゃんを迎えるために、玄関へ行った。



「可愛い~」と大声をあげて、瑞穂お姉ちゃんが加奈ちゃんに抱き着く。加奈ちゃんが「え、え!」と驚いている。靴を脱いだ加奈ちゃんを、瑞穂お姉ちゃんは両手でお姫様抱っこして、リビングへ連れていく。リビングの床にはタオルケットをかけられた宗太が気絶したまま放置されていた。



 ソファに座った瑞穂お姉ちゃんは、加奈ちゃんを膝の上に乗せている。そして加奈ちゃんの頬に自分の頬をスリスリさせてにっこりと笑ってご満悦だ。加奈ちゃんは固まったまま動かない。宗太を見て驚いている。



「瑞穂お姉さん、チョー美人。モデルさんみたい」



「加奈ちゃんも後数年もしたら、お姉さんみたいになれるわよ。だって今でもこんなに可愛いんだもん。宗太の妹とは思えないわ~。宗太がお兄ちゃんで加奈ちゃん、残念だったね」



「優しいお兄ちゃんなんですけどね~。残念なところがいっぱいあって・・・・・・恥ずかしいです~」



「今日も宗太、面白かったんだよ~。加奈ちゃんに教えてあげるね~」



 やめて~。加奈ちゃんには黙っていてあげて~。宗太は加奈ちゃんには良い恰好を見せたいの~。



 私の心の声は瑞穂お姉ちゃんには通じなかった。今日、海に行った話を細かく加奈ちゃんに話している。加奈ちゃんは目を白黒して、驚きながら話を聞いている。最後には両手で顔を覆って、首を横に振っている。



 加奈ちゃんは話を聞き終わると、顔を真っ赤にして瑞穂お姉ちゃんの膝の上から飛び降りると、ツカツカツカとリビングを歩いていくと、宗太に体にかかっているタオルケットを手で跳ねのけて宗太を睨んでいる。



 嫌な予感がするけど、加奈ちゃんが怖くて、体が動かないよ。宗太をこれ以上、虐めないで。



 目を吊り上がた加奈ちゃんが「お兄ちゃんの馬鹿。変態」と叫んで、宗太の股間を蹴り上げた。



「ウォーーー!」



 宗太は股間を握って、床を転げまわる。そして動かなくなった。私は慌てて宗太に駆け寄る。宗太を膝枕すると宗太が泡を吹いて気絶していた。加奈ちゃん、容赦ないね。でもここは男の急所だからやめてあげてね。



 私は優しく宗太の髪の毛を撫でる。宗太が目を覚まさない。気絶している姿も可愛い。大好き。



 加奈ちゃんはプンプン怒りながら、瑞穂お姉ちゃんの隣に座った。



「男はあそこが急所なんだよ。どんな男でも一発でノックアウトさ。加奈ちゃんも覚えておくといいよ。護身術で使えるからね。蹴られた男はああなる」



 瑞穂お姉ちゃん、何を加奈ちゃんに教えてるの。加奈ちゃん、うん、うんと頷いちゃダメ。大事なところなんだから。



 インターホンが鳴る。ピザ屋がやってきた。瑞穂お姉ちゃんが加奈ちゃんと手を繋いで玄関にピザを受け取りに行く。玄関から帰ってきた瑞穂お姉ちゃんは、私が思っていたよりも大量のピザを抱えて戻ってきた。加奈ちゃんはドリンクを持っている。



「結菜、ピザが来たから、宗太を起こしておくれ」



 私は宗太の肩揺する。でも、まだ起きそうにない。頬を抓っても起きない。困ったな。えい。私は宗太の耳を噛んだ。



「ギャー!」



 甘噛みのつもりだったんだけど、強く噛み過ぎたみたい。ごめんね宗太。でも目覚めたでしょう。



 宗太はガバっと起きると周りを見回している。そして加奈ちゃんと目が合うと、目を丸くして驚いている。



「なんで加奈がここにいるんだ?」



「私が宗太の家に連絡したのさ。加奈ちゃんは私達2人が宗太に襲われるかもしれないって心配してきてくれたのさ」



「襲われて気絶していたのは俺のほうだぞ。見てわかっただろう」



 加奈ちゃんはソファから立ちあがると片手を腰に当てて、片手で宗太を指差す。なんだか迫力が凄い。



「お兄ちゃん、今日、朝霧さんにキスを迫ったらしいじゃない。油断も隙もないんだから。もう鬼畜。獣。変態」



「あれは・・・・・・未遂だ・・・・・・」



「それに、帰りの車で、お兄ちゃん、海でずぶ濡れになったからって、パンツ1枚で車に乗ってたんだって、本当にデリカシーの欠片もないよ。私、聞いていて恥ずかしかった。こんな変態がお兄ちゃんなんて、私、これからどうやって生活していけばいいのよ」



「それは・・・・・・服がずぶ濡れで仕方なく・・・・・・」



「家に帰ったら、きちんと説教しますからね。瑞穂お姉さんと朝霧さんにはきちんと謝ってね」



 宗太は涙を浮かべて四つん這いになって首を横に振っている。まるで「これには訳があるんです~」と心の中で言い訳をしているみたい。でも言葉に出さないと加奈ちゃんに届かないよ。もし届いていたとしても加奈ちゃんの怒りがおさまるとは思えないけど。



 宗太はクビをがっくりと俯いて、立ち上がった「イタっ」と呟きが聞こえる。いきなり、宗太がピョンピョンとその場でジャンプ始めた。何も言わずに目が真剣だ。何が起こったんだろう。



 瑞穂お姉ちゃんが加奈ちゃんを呼び寄せる。



『加奈ちゃん、宗太のピーを蹴っただろう。だからピーがピーになったんだ。だからピーしてるんだよ』



「お兄ちゃん、朝霧さんと瑞穂お姉さんの前で何やってんの。最低だよ。止めてよ。もう見てられない」



「だって股間が痛いんだから仕方がないだろう」



 宗太はピョンピョンとその場でジャンプしている。楽しそうだから私も宗太と手を繋いでピョンピョンとジャンプした。宗太は気まずそうな顔をして、私から視線を逸らした。なんでなんだろう。



「せっかくのピザが冷めちまうよ。みんなでピザを食べようじゃないか」



 テーブルの上に置かれたピザのパックを瑞穂お姉ちゃんが開けていく。私も宗太もソファに座ってピザを食べていく。加奈ちゃんは瑞穂お姉ちゃんにピザを食べさせてもらっていた。2人とも上機嫌だからいいか。



 時々、宗太がチラチラと私が食べている姿を見る。私はフニャリと笑って、宗太を見る。宗太も嬉しそうに微笑んでくれる。なんだか胸がドキドキする。そんな優しい顔されると顔が赤くなるのがわかる。



 私はピザを食べることに集中した。宗太は男の子だけあってピザを沢山食べた。瑞穂お姉ちゃんも缶ビールを片手にピザを食べていく。時々、加奈ちゃんにピザを食べさせて、雑談をしている。2人共楽しそうだ。



 ピザを食べ終わった頃には夜10時になっていた。瑞穂お姉ちゃんはソファで寝息を立てている。



 瑞穂お姉ちゃんは、放っておいても、起きたら自分の部屋で寝るだろう。いつものことだから。



 加奈ちゃんも眠そうだ。



「加奈ちゃん、部屋に案内するから、パジャマ、ベッドの上に置いてあるから。パジャマに着替えて寝てね」



「うん。そうさせてもらえますか。精神的になんか疲れちゃった」



 加奈ちゃんと手を繋いで、部屋へ連れて行く。「おやすみなさい」と言って、加奈ちゃんは部屋の中へ入っていった。



 宗太はさっきからゴホゴホと咳をしている。今日は夕方から夜まで裸だったから風邪をひいたのかも。



「宗太も咳がひどくなってるから、もう寝たほうがいいよ。部屋に案内してあげるから」



「そうだな。悪いな。今日は泊まらせてもらってありがとう。今日はいろいろあったな。でも楽しかった。本当にありがとうな」



 宗太がにっこりと笑う。そんな爽やかに笑われると照れるよ~。宗太が恰好よくみえる~。



 私は照れた顔を見られないように、宗太の手を取って、先に廊下を歩いて、部屋へ案内する。



「ここが宗太が寝る部屋だよ」



 「ありがとう」と言って宗太が部屋へ入っていく。私はリビングに戻って後片付けをする。それから乾燥機に行って、乾燥した服をカゴに取り込んで、洗濯機に入っていた衣類を乾燥機に入れてスイッチを押す。



 台所、リビングを見回す。きちんと片付けができた。明日、宗太が起きてきても、これだったら恥ずかしくない。



 私は脱衣所で自分の着ている服を脱いで、お風呂場でシャワーを浴びる。今日は海に行っていたから、体が磯臭い。でも嫌いな匂いじゃない。ゆっくりとシャワーを浴びて、脱衣所でバスタオルで全身を拭いて、パジャマを着る。



 お気に入りの猫の着ぐるみパジャマだ。はじめて宗太の家に泊まった時の記念のパジャマ。私の宝物。



 私は、自分の部屋に入ろうと思ったが、宗太が何をしているか気になって、宗太が寝ている部屋をそ~っと開けて部屋に入る。宗太、カーテンを閉め忘れてるよ。月明りが宗太の顔に当たってる。宗太はスヤスヤと寝ている。



 私は宗太の顔の近くのベッドの端に肘をついて、宗太の顔を眺める。起きる様子はなさそうだ。



 私は、宗太のことがどれだけ好きか、宗太の耳元で呟く。宗太と同じクラスになってから、毎日がどれだけ楽しいかを呟く。時々、宗太が「う~ん」と寝言をいう。可愛い。



 もう我慢できない。私は宗太のベッドの中へもぐりこむ。宗太が放り出している腕の上に顔を預ける。



「・・・・・・腕枕してもらちゃった・・・・・・」



 なるべく宗太にひっつきたくて体を寄せていくと宗太がいきなり、私を抱きしめた。驚いて声が漏れそうになった。まさか起きてるのかな。そのまま静かにしていると寝息が聞こえる。



 私は宗太に抱きしめられて宗太の胸に密着してとても幸せ。急に眠くなってきた。このまま寝ちゃおう。おやすみなさい。宗太・・・・・・

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