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12話 朝霧姉妹

今回、少し長くなってしまいました。すみません

 俺、加奈、朝霧、慎、俊司の5人はいつもより朝早くに学校に登校し、加奈とは1階の靴箱の所で別れて、4人は2階の自分達の教室へ向かった。誰もいないと思って教室の扉を開けると、既に1人の女子が窓際の席で読書をしていた。日下部凛だ。



 日下部は俺達を見るとにっこりと笑って席を立って近づいてきた。日下部ってあんなにっこりと爽やかに笑えるんだ。はじめて日下部の笑顔を見たような気がした。周りを見ると慎と俊司も見惚れている。やっぱり、俺と同じ気持ちか。



「昨日は危険なところを助けてもらってありがとう」



「昨日はきちんと帰れたの?」



「ええ、パパに迎えにきてもらって、車で帰ったから大丈夫よ。ファーストフード店で待っている時は、栗本さんと神楽さんがご一緒してくださったから、大変に有意義な時間を過ごさせていただいたわ」



「さすがはクラス委員長と神楽だな」



 栗本は委員長を務めるだけあって、責任感もひときわ強い。それに目端がきく。神楽はおっとりしているように見えるが、気遣いにかけては一級品だ。その2人が日下部の機嫌を取っていたのだから、日下部が好印象だったのもうなずける。



「今度、お詫びとして、私の家にご招待いたしますわ。パパも是非、招待しなさいと言っていましたわ。日程は決まり次第、お伝えいたします。では朝霧さん、九条くん、黒沢くん、佐伯くん、よろしくお願いしますわ。では」



 慎と俊司は「氷姫」が自分達の名前をきちんと呼んだことに目を見開いて驚いていた。俺はにっこりと笑った。俺の横で朝霧もフニャリと笑っている。



 日下部は軽く会釈すると自分の席に戻っていった。朝霧の鞄の中からスマートホンのバイブ音が鳴る。慌てて鞄の中からスマートホンを取り出すと廊下へ走っていった。



 暫くするとスマートホンを片手に持って、朝霧が涙目で走ってきた。何が起こったんだ。



「昨日、九条の家に泊まった時、瑞穂お姉ちゃんに連絡するのを忘れてた~。今、瑞穂お姉ちゃんからなんだけど、昨日、どこに泊まったって激オコで、つい焦って、九条の家って答えちゃった~。瑞穂お姉ちゃんが九条と電話を替われって、今、電話がつながったままなの~。どうしよう九条~!」



 はぁ、なんで女子の友達の家にでも泊ったってごまかさないんだよ。なんでそんな所だけ正直なんだ。男の俺が電話を替わったら、余計に揉めるじゃないか。ちょっと勘弁してくれよ~。俺、替わりたくないよ。



 俺は朝霧から後退ろうとするが、朝霧が俺の服の袖を持っているので、逃げることもできない。もう電話に出るしかない。俺は朝霧からスマートホンを受け取るとおそるおそる電話に出る。



《九条と言いますが、こんにちは。朝霧さんのお姉さん。今日も良いお天気ですね》



《誰が今日の天気の話をするために、わざわざ電話を替わる奴がいる。お前が九条か》



《はい。九条でございます》



《昨日、結菜を泊めたってのは本当か?》



《はい。家に泊めましたが。妹もいますし、一緒に他にも2名の同級生が泊っていましたので、結菜さんは安全です》



《そんな言葉だけで、わかるはずないだろう。今日の放課後、お前が私の家に結菜と一緒に来い。男だったら責任取るつもりで来いよ。その時に事情を聞いてやる。・・・・・・ブチ》



 俺はスマートホンをもって、その場で固まった。男としての責任の取り方って何だろう。まさか朝霧を家に泊めただけで、俺の将来確定になるのか。そんな馬鹿な。これは夢だと誰か言ってくれ。



「お姉ちゃんなんて何て言ってたの?」



 青い顔をして朝霧が聞いてくる。俺は固まったまま、ぜんまいの切れた人形のように首を「ギギギ」と動かして、朝霧の方を向いた。



「男の責任取れって」



 慎と俊司が青い顔をして、俺から目を逸らすと、一目散に自分の席に逃げていった。



「え・・・・・・それって、私、九条のお嫁さんになるの・・・・・・話が急だから驚いたけど、いつでも準備OKだから」



 はぁ、何を顔を真っ赤にして照れてフニャフニャの笑顔をなってんだよ。なんだ、その準備OKってのは。俺が全然、心の準備なんかできてね~よ。頼むから傍でピュンピョン飛び跳ねるのは止めてくれ。頭が痛くなってきた。



 俺は愕然として自分の椅子に座ると朝霧にスマートホンを返した。2度と朝霧のスマートホンの電話には出たくない。



 朝霧も興奮が少し治まったのか、席に座ってニヘラと笑っている。



「今日の放課後に、昨日の事情を話にこいって、お前のお姉さんが言ってたぞ。2人でお前の家に行って、お前のお姉さんに正直に事情を話すぞ。言い訳を考えておけよ」



「え、お姉ちゃん、家に九条を呼びつけたの。私、部屋の中、整理してないよ、どうしよう。九条に部屋の中を色々と見られたらハズい~」



 何でお前は顔を赤くしてんだよ。



「あのな。お前のお姉さんに怒られにいくの。お前の部屋へ遊びに行くんじゃねーよ」



 もはや朝霧は俺のいうことを聞いていない。あれも片付けてない。これも片付けてないと小声で呟いて、頭の中で色々と整理する内容を書き出しているようだ。



 チャイムが鳴り、HRが始まったが、俺の頭は朝霧のお姉さんにどういう言い訳をするかを考えていていたので、まったく頭の中に入らなかった。



 HRが終わり、授業が始まっても、俺も心のモヤモヤは晴れない。俺の家に泊まったことは確かだし、ここは正直に話すしかないだろう。それでも責任取れといわれた時には、加奈に泣きつこう。



 加奈は昨日、俺の家にいた朝霧以外の女性だ。お姉さんも加奈のいうことなら信じてくれるだろう。信じてほしい。信じて。こんな時には頼りになる妹だ。お兄ちゃんを助けてくれるはず。そうだよな。加奈。



 授業の先生の声は右から左へ流れていく。俺は頭の中に描いた加奈に合掌をしていた。



 気が付けば昼休みになっていた。今日は腹が空いていないので、俺は屋上へ向かった。給水塔の日陰に体を寝転ばせて、青空を見る。俺の頭の中では朝霧のお姉さんが発した「男の責任」というフレーズが何回も繰り返しリフレインする。



 俺は何もしちゃいないんだよ。むしろされたほうというか、マイ・サンを見られたというか。そのお返しに黒ビキニは見せてもらったよ。あれは良かった。最高だった。そんなことは口が裂けてもお姉さんに言えない。



 今日の朝もなぜか朝霧が俺が寝ていたソファに寝ていて、一緒のタオルケットの中で、朝霧に抱きしめられて寝ていたな。これって他人から見れば非常にヤバくないか。こんなこと説明すれば「男の責任」へまっしぐらじゃん。



 ヤバいよ。ヤバいよ。ヤバいよ。正直に話せば、話すほど、ドツボにハマっていくような気がする。でも、気の利いたウソというか言い訳を思いつかない。昼の授業が終わったら放課後だ。もう時間がない。



 俺は屋上でゴロゴロと悶えてのたうちまわる。朝霧に相談しようかとも思ったが、脳裏に朝霧のフニャリとした笑顔が浮かんでくる。あいつのことだから何を言い出すかわからない。また場を考えずに俺をからかって、俺がドツボにハマる可能性がある。



 可愛い顔をしているが、俺をからかうことに関しては朝霧は容赦がないことは、昨日から今日までの1件で十分に身に染みてわかっている。



 慎と俊司に相談しても、合掌してお経を唱えられそうだ。これほど窮地に立ったことが、今まであっただろうか。



 ウソがごまかしを言う訳にもいかず、本当のことも言えない。どうすればいいんだ~。



 俺はいつしか目から汗を流していたようだ~。汗が目に染みるぜ・・・・・・クッソ



 昼休みが終わって、昼の授業になった。チラチラとこちらを伺う視線が右隣から感じられる。チラと振り向くと、なぜか照れてデレデレ顔の朝霧が嬉しそうにフニャリと笑って俺をチラ見している。



 お前は何を期待してるんだ。



 お姉さんに上手く言い訳できないと、俺は「男の責任」を取らされて、お前とめでたくゴールインになっちまうんだぞ。お前の一生もかかってることなんだぞ。お前はそれでいいのか。そんなわけね~だろう。



 そんなことをグダグダと考えている間に昼の授業が終わった。朝霧はテキパキと動いて帰る用意を済ませて、俺を待っている。なんで今日に限って帰る準備が早いんだよ。訳わかんね~よ。



 俺がのろのろと帰る準備をしていると、朝霧が机の中の教科書を全部出して、勝手に俺の鞄の中へ詰め込み始めた。なぜか鼻歌も歌っている。こんなに俺が重圧を感じているのに、お前は鼻歌か。俺は胃が痛くなってきたよ。



 ほとんど帰る準備は朝霧にしてもらった。俺はいつもより重くなっている鞄を手に持って席を立ちあがった。せめて慎と俊司だけでも巻き込もう。俺だけでいくのは怖すぎる。



 俺が教室内を見回すと、慎と俊司と目があった。慎と俊司は首を横に振って、教室から逃げ出した。あいつらダッシュで逃げるなよ。慎と俊司を追いかけようとすると、俺の袖を朝霧が持って、フニャリと笑っている。



「今日は2人で私の家に帰るんだよ~。だから黒沢と佐伯を追いかけたらダメじゃん」



 いつもは朝霧のフニャリとした笑顔が可愛いと思えるのだが、今の俺にとっては処刑台に連れていく死刑執行人のように見える。



 俺は朝霧と一緒に階段を降りて靴箱で靴に履き替えて、学校を出て校門を潜る。本能が嫌がっているのか、いつもよりも動きが遅い俺を、朝霧はグイグイと引っ張っていく。



 20分ほど住宅街を歩くと高い高層マンションが見えてきた。たぶん20階ぐらいあるんじゃないだろうか。段々と高層マンションが近づいてくる。高層マンションの玄関の前で朝霧はクルリと回って俺の真正面に立つ。



「ここが私の住んでいるマンションだよ。このマンションの18階に家があるの。瑞穂お姉ちゃんが待ってるから、早く入ろ」



 俺は茫然と高層マンションを上から下まで眺めていた。朝霧がグイグイと引っ張って俺をマンションの玄関の中へ連れて行く。



 エレベーターのドアが開いた。これに乗ってしまえば、後は家に行くしかない。もう後戻りはできない。俺はエレベータの両端を掴んで、エレベーターの扉が閉まらないようにがっちりとホールドする。



「イヤだ~。やっぱり俺、帰る~。なんて言えばいいのかわかんね~。頼むから朝霧、服を離してくれ。俺は家に帰りたいんだ~!」



「うるさい!」



 朝霧のチョップが脳天に叩きつけられる。結構な衝撃だ。目から火花が飛んだ。頭がクラクラする。朝霧がエレベーターの中にヨロヨロになっている俺の体を引きずりこんでいく。エレベーターの扉が閉まった。朝霧はにっこりと笑って18階のボタンを押す。



 エレベーターのモニターが段々と上の階を示していく・・・・・・16・・・・・・17・・・・・・18。とうとう18階でエレベーターが18階に到着した。朝霧は動かなくなった俺を、エレベーターから引きずり出す。



 なんとエレベータからすぐの家の表札に朝霧と書かれている。



「ここまで来たら、九条もちゃんとしてよ。私が恥ずかしいじゃん」



 確かにそうだ。ここまで来たら、諦めるしかない。どんな結果が出るかわからんが、とにかく朝霧のお姉さんと話をしなければ。どうにもならなかった時には土下座で頑張ろう。



 朝霧が家の鍵を開けて玄関の扉を開ける。



「ただいま~瑞穂お姉ちゃん、九条を連れてきたよ~」



 俺と朝霧は玄関で靴を脱ぎ、朝霧が俺と手を繋いでリビングへ案内する。16畳ほどある大きいリビングには、すごく長いソファがあり、ソファーには長いきれいな黒髪の女性が座っていた。朝霧の声をきいて、スッとソファから立ち上がり、こちらを向く。凄くスタイルが良い美女が、ニヤリと笑って俺を待っていた。なぜか手には缶ビールが持たれている。



「やっと帰ってきたか。今日は休みだったから、昼まで寝てたんだけどね。あんまり暇だったから缶ビールを飲んでた。お前が九条か。ちょっと可愛い顔してんじゃん。そんな所で突っ立ってないで、ソファに座りな。話はそれからだよ」



 それだけ言うと瑞穂姉さんはソファに座り直した。



 朝霧が俺の鞄を取ってソファの端に置く。俺と朝霧はソファをグルリと回って、瑞穂姉さんの前に立った。



「俺の名前は九条宗太と言います。はじめまして」



「九条宗太ね~。ソウタっていうんだ~。フ~ン。私は朝霧瑞穂。うちにもソウタがいるんだよ。お~いソウタ出ておいで」



「ニャ~」



 九条の足元に大きなトラ猫が通り過ぎていく。そして、瑞穂お姉さんの膝の上にトラ猫が乗る。クリクリした目が可愛いトラ猫だ。どこかで見たことがあるような気がする。気のせいか。



 朝霧が顔を真っ赤にしてアワアワと手を振っている。



「結菜が1年ほど前に拾ってきた猫でね。確か学校の校舎裏で拾ったとか言ってたよな。結菜」



「・・・・・・」



 あ~、俺が1年の時に校舎裏で餌をやっていた子猫だ~。どこに行ったのか、1年の途中から姿を見せなくなったと思ったら、朝霧に連れて帰ってもらっていたのか~。よかったな~家猫になることができて。



 でも・・・・・・何で名前がソウタなんだ?



「朝霧、今、お前に聞きたいことができた。なんで猫の名前がソウタなんだ?俺と一緒の名前なのは、ただの偶然か?」



「・・・・・・そう、ただの偶然・・・・・・ただの偶然だよ・・・・・・別に九条の名前を付けて遊んでいたわけじゃないし。それに九条と知り合ったのは、この子を家に連れて帰ってから後のことじゃん。九条も疑い深いな~」



 俺の勘違いなのか。それにしてはお前、異常なほど汗かいてね~か。なんでそんなに顔が真っ赤なんだよ。



「そんなことはどうでもいいさ。なんで九条の家に、私の可愛い妹の結菜が泊ったのか、訳を聞かせてもらおうか」

 


 それなら正直に話せるぞ。俺は放課後に皆で遊びに行き、カラオケやゲームセンターに行ったことを話した。そして偶然、日下部が男達に襲われているところを目撃して、助けたのはいいが、俺がボコボコにされたことを話す。それでボコボコにされた俺を黒沢と佐伯が支えてくれて、朝霧も心配して家まで送ってくれたと瑞穂姉さんに話した。



「なるほど、では九条の家に男子友達2人と結菜を泊めたってわけだね。男3人の中に女1人を泊めるとは、なかなか勇気のある行動じゃないか」



「俺には高1の妹がいたので、正式には男3人、女2人で家で寝泊まりをしました」



「結菜、九条の家では大人しくしてたんだろうね?」



「・・・・・・九条のピーを見ちゃった・・・・・・」



 なんで今、それを言うかな~。それ言ったら即死コース確定だろ。お前何言ってんだ。



「違うんです。俺達、男3人が風呂に入っていたら、朝霧が水着に着替えて、いきなり風呂場に乱入してきて、逃げようとしたら、タオルを引っ張られて、ポロリしてしまっただけなんです~」



「でも九条も私のビキニ姿、ガン見してたじゃん。それもエロい目をしてさ~胸ばかり見てたじゃん」



 俺は涙目になって首を振って、自分の無罪を瑞穂お姉さんにアピールした。瑞穂お姉さんは腹を抱えて笑っている。



「そこまで見せ合っちまったんだ。男の責任取るしかね~よな、九条!」



 あ~どうしよう頭がまわんね~こういう時にはこれしかない。



 俺は四つん這いになって額を床につくほどの土下座をした。



「妹さんの水着姿を見てすみませんでした」



「九条、お前って面白い奴だな。気に入った。条件付きで許してやるよ」



 条件付きでもなんでもいい。許してもらえるなら、なんでもします。



「1つ、私が呼んだら、いつでもどこへでも私の元にくること。2つ、いつでもどこでも結菜のことを1番に考えること、そして時には結菜を守ること」



「朝霧を守るとはどういうことでしょうか?」



「結菜は高校でモテモテらしいじゃないか。外でもよくナンパされているらしいしな。だから結菜を邪魔なハエ共から守ってほしいんだよ」



 確かに朝霧はきれいで可愛いしな。寄って来る男子は多いだろう。外をあるけばナンパされるのもうなずける。でも男子生徒からの告白はどうすればいいんだ?



「あの~、朝霧が男子学生に告白されるのを邪魔しろってことですか?」



「それは結菜自身がするからいいさ。結菜のことを1番に考えて行動しろって言ってんの。細かいことは自分で考えな。鈍感なやつだな」



 そんな理不尽な・・・・・・どう考えればいいいんだよ。



 美女だからって、何を言ってもいいわけじゃないぞ・・・・・・美女であっても・・・・・・美女・・・・・・クソっ



「あの~、俺って喧嘩、弱いんですけど・・・・・・」



「喧嘩が弱くても、喧嘩はできるんだろ。さっきの話でも無謀に助けに入ったみたいじゃないか。九条ならできるだろう・・・というか、やれ!」



 瑞穂姉さんの迫力には勝てない。美女が怒ったら本当に怖いんだろうな。怒らせないようにしないと。



「わかりました」



「よし。そうと決まれば、私に電話番号とラインIDとメルアドを教えろ。いつでも九条を捕まえられるようにしておかないとな。結菜、今持ってる缶ビールが空なんだ。冷蔵庫から缶ビールを出してくれ。九条も飲め。今日はめでたい。九条、これからは私のことは瑞穂姉ちゃんって呼ぶんだよ」



 何をいってんだ瑞穂姉ちゃん、俺は未成年だぞ。今まで酒を飲んだ経験なんて、ほとんどないぞ。それに酒なんか飲んだら、どうやって家に帰ればいいんだ。ここに泊まっていくつもりはないですよ。



「俺は未成年なので酒は飲めません。すみません」



「意外と硬い奴だな。それなら、それでいいわ。結菜、早く缶ビール」



 朝霧がピョンピョンと跳ねるように冷蔵庫へ行く。そして冷蔵庫から缶ビールを取り出すと瑞穂姉ちゃんに渡した。プルトップをプシュッと開けるとグビグビグビと一気飲みしていく。あっというまに缶ビールは空になった。



「よかったな結菜。これでいつでも九条を呼び出せるぞ」



「ありがとう、瑞穂お姉ちゃん。九条、これからもよろしくね。これからは私のことを無視したり、邪見に扱ったらダメだからね。私のことを1番に考えてくんないとダメなんだよ・・・・・・エヘヘ」



 なんだか朝霧は照れたように顔を赤くして髪を掻いている。



 朝霧姉妹はソファに2人揃ってフニャリと笑って何やら楽し気に話している。



 俺は猫のソウタに愚痴を聞いてもらった。俺が朝霧姉妹に開放してもらったのは、夜10時だった。

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