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〜生きたがりside〜

〜美咲視点〜



“電車が参ります。白線の後ろに下がってお待ち下さい”



駅構内にアナウンスが流れている。



それなのに、



えっ!



隣りに立っていた、幸薄そうな女子高生が白線を越えようとしている。



待って待って、嘘でしょ!



辺りを見渡した。



どいつもこいつも携帯画面に夢中になっていて、誰も見ていない。



なんで! なんで誰も気付かないの?



手を伸ばせば引き留められるかもしれない。



でも、こういう時って、勇敢な男が活躍して、警察から感謝状とかもらうんじゃないの?



わっ!



女子高生が一歩前へ進んだ。



自殺だ。間違いなく飛び込もうとしてる。やばいよやばいよ。



誰か! 誰か気付いて‼︎



0.00001秒の間に、いろんなことが頭を巡った。



憧れの宝石店に勤務し、ようやく主任に昇格たところだ。



給料も2万円アップするし、ボーナスも上がるはず。



とりあえず、彼氏も2人いる。



1人は大手食品メーカーの御曹司。



もう1人は、同じ職場で働く同期だが、実家は老舗旅館というお墨付きだ。



どちらも経済力はあるし、二股だということは今のところバレてない。



そろそろ1人に絞らなければとは思っている。



遊ぶ友達にも不自由してないし、結構充実した毎日を送っている。



そうこうしているうちに、女子高生の身体がホームから離れた。



もう間に合わない!



手を伸ばせば、助けるどころか巻き添いをくらってしまう。



死にたくない。



このままでは、血とか肉片とか下手すると内臓とかが飛び散ってくるかもしれない。



なんで、よりによって、どうして今日に限って先頭に並んじゃってるの!



このジャケットだってまだ支払い終わってないし、白だし。



素早く後ろのおじさんと入れ替わっ て盾にするか。



ギギギギギーーッ、ギギギーッ、ギギーッ!



電車が急停車する重苦しい音が耳を貫く。



うっそーっ!



とても見ていられない。



思わず両手で顔を覆って、精一杯後ろに下がる。



悲鳴と鉄の唸り声が不気味に重なり合って、鼓膜に突き刺さってくる。



勘弁してよー!



地獄のような絵が広がってるに違いない。



まじか……。絶対、トラウマになる!



突然、何かが変わった……。



まっ、眩しい!



顔を覆ったままなのに、一瞬にして明るくなったのが分かる。



恐る恐る顔を覗かせてみる。



「えっ?」



目の前にスラリと背の高いイケメンが……。



白い民族衣装のようなものを纏い、右肩からは大きな翼が見えている。



左肩の翼は……、痛々しく折れている。



そして、



なんと、先程飛び込んだはずの女子高生を抱いている。



えっ、天使? この子の守護霊?



イケメンがフッと笑った。



なになに! 私に笑いかけてんの?



其方そなたも一緒に参るぞ」



えっ、一緒にって!



私も死んじゃったの?



そんなバカな……。



「あっ、あの、死んだのはこの子で……。 私は電車になんて飛び込んでないし、生きる気満々です」



聞いていないのか、無視しているのか、イケメンが衣装の袖をこちらに向けて大きく翻した。



ふんわりとした絹のような袖に、スッポリと頭まで包まれてしまう。



「ちょっと、何すんの! やめてよ! ふざけないで!」



急に息ができなくなった。



やだ! 連れていかないで! 絶対死にたくなーい!



袖の中で、激しく暴れまくる。

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