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天国の剣  作者: 開田宗介
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ベテランの冒険者達


 どこまでも続く砂の斜面。広大な空と空に浮かぶ太陽。地表の温度が高くなりすぎていて、火炎防御ファイアレジスタンスで凌いだ方が楽な程だった。

 砂粒は軽く、足を一歩動かす事に足首まで埋まる。

 蹴って進むのも容易ではないので、歩くだけでもかなり疲れた。


 遠方には小さな街が見える。南側に壁を立て、そして北側は禿げた岩山が立っていて、その隙間に作られた街だった。

 左を見ると、地平線の彼方に大きな三角形の建造物が見える。あれが俺達の目指すリッチキングの王墓だった。


 今は街に着き、まず休める所を確保したい。

 タルキス船長は町長のマー=ルートに会えと言っていた。

 あの巨大な墳墓を一回の探索で走破できるとは思えない。サングマの時と同じ様に、何度も通う事になるだろう。

 その為にも、この辺りの地理と、街以外にも探索の拠点になる場所があるかどうかの情報が必要だった。


 ブラッドムーンを降りて、約一時間歩き、ようやく俺達はオアシスに着いた。


「これは……魔法障壁か……」


 街に着いてみて分かったのは、南側の壁を無理矢理に立てたのは、北側の岩山を利用して魔法障壁を作る為という事だった。

 街の外門にて、タルキス船長の名前を出すと、すぐに障壁は解除されて街の中に入る事が出来た。


 街には8件ほどしか家が無く、そして街の真ん中には綺麗な湧き水が貯まっていた。

 この水のおかげでこの街は存在し、この水を守る為に障壁が作られているのだろう。


「町長のマー=ルートさんに会いたいんですが」


「はい、お話はうかがっています。どうぞこっちへ」


 冒険者がやってきた事を聞きつけて一人の男がかけつけ、事情を話すと若干卑屈な態度をとりながら、俺達を先導した。


 8件の家のうち、町長の家にはラー=ライラット王の末裔達が4家族住んでいた。

 この町では彼らは未だに貴族であったが、だからといって仕事は普通にしなければならず、ふんぞり返っている訳ではなかった。


「ようこそ、ようこそ、冒険者の方々」


 町長は高齢の老人で、自分がラー家の跡取りだと自己紹介した。

 この付近では、ラーという姓とマーという二つの姓が王と王女の血筋であり、彼は王女の家系なのだそうだ。


「それで、観光のご予定は何日ぐらいでしょうか? まずは私の甥が、キングライラットと、その従者達の墳墓をご案内する予定ですが」


「か、観光?」


 町長の言葉を聞いて、さすがに俺はリュージの顔を見た。

 しかしリュージは俺を見るなよ、と言いたげに首を振るだけだった。


「はぁ……観光でなければ……他に何かございますか? 私はタルキス船長から、あなた方を王家のピラミッドに案内するようにしか、言われていませんが」


「いやあの、観光って……安全なんですか? あのピラミッドは」


「はい。そりゃあ昔は財宝を狙った盗賊達とか、或いは冒険者達が沢山来て、中に入っていきましたがね。まぁめぼしい物は全部無くなってしまって、今ではただの遺跡ですよ」


「リッチキングが居る、という話は聞いた事がありませんか?」


「もちろんあります。我が偉大なる祖先、ラー=ライラット三世は、三代目にして最も強力な魔法使いとなり、不老不死の力を得ました」


「そしてあの巨大ピラミッドを作り、その中で今も財宝と共に眠りについています」


「ああ、居るんですね?」


「正直に言いますと、百年以上はお姿を見ていませんが。でも、居るとは思います」


「居るには居るが、どこにいるかは分からない。という事ですね」


「はい。その通りです。何百人もの冒険者がここを訪れ、そしてその謎に挑戦し、そして何も得る事なく去っていきます」


「ああ……そういう事……」


 これは簡単にはいきそうにない話だった。

 サングマの神殿の様に、邪教がいて、モディウスがいて、とにかく悪をぶっ倒せばいいという、突撃&皆殺しのパターンではない。


「とりあえずは、長期という事でお願い出来ますか。何かを探し当てるまでは帰れないんです」


「まぁ冒険者の皆様はそう言います。今も一組のグループが滞在しておられますから、話を伺ってみてはいかがですか?」


「あ、他にも同業者が居るんですね! 是非、紹介して下さい!」


 同業者と言っても、同じ目的を持つ以上はライバルだった。

 もしかしたら、喧嘩上等の相手で話がややこしくなるかもしれないし、或いは共に協力できる仲間になってくれるかもしれなかった。


 冒険者の一行のリーダーはガールードというらしく、俺達は町長の甥に連れられて、酒場へと向かった。

 この街の酒場には天井が無く、6つのテーブルが置かれていて、好きな所で食べればいいというスタイルになっていた。

 元々住人が少なく、その少ない住人も食べに来るので、冒険者達から簡単に距離をとれる様にという配慮だった。


 そしてガールードご一行様は、酒場の真ん中に陣取っていたのだが……。


「おい、こりゃあ……」


「うへぇ……本物かよ……」


 リュージと俺が閉口したぐらい、伝説級の冒険者様だった。

 俺達が冒険者一年生なら、彼らは10年生ぐらいかもしれない。


「ガールード様。こちら、シェイ様という冒険者の方々です。ご挨拶をしたいそうです」


 甥がそう言って、一礼し、さっさと去ってしまうと、中年の長髪のオヤジが振り向いて挨拶してきた。


「よう! 俺がガールード=グレイフォッグだ。世界中を旅していて、ヤボ用でここに来てる」


 ガールード氏は腰の両側に長剣をさす二刀流の剣士だった。その軽装から見て、テンペストレンジャーと呼ばれる凄腕だろう。


「あと、あっちがクレリックのエルゴルと、魔法使いのファフラン、盗賊のカッシナー」


 エルゴルという優しそうな男性は礼儀正しく僕達に頭を下げてきた。その胸に輝くのは白金の炎と呼ばれる善の神の紋章だった。

 悪即斬と呼ばれるプラチナフレイム教の信徒がいるという事は、紛れもなくこの一行は善い人達だという事になる。そこは安心できる所だった。



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