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打ち明け

思った以上に長くなったので、いつも以上にどこかおかしな部分があると思います。

サブタイトルが思い浮かばない……。

 ロリアで休憩をした僕達は見晴しの悪い森を何度か抜けることになるため、途中魔物に襲われることが行きと同様に度々あった。

 魔物は強くてもDランク止まりと、実力が上がり始めているフローリアさん達がいれば怪我をすることなく倒せた。


 そのまま休息を各街で取り、昨日の昼前にシュリアル王国首都シュダリアへ帰って来た。

 その後今回の会議の結果を伝えるために、フローリアさんを加えた三人で義兄さんのいる執務室へメイドに案内された。

 話した内容は謁見で行われたやり取り、会談の結果とその内容について、召喚獣に治療の話し、それと僕の国宝級の道具についてだ。


 まず謁見の話は不用意に召喚獣の治療を受けたということに渋い顔をされてしまったけど、義兄さんも召喚獣が死ぬのは忍びなかったということで救えたよかったとのこと。

 ただ、結果が良かったので良かったというだけで、安請け合いしてもし救えなかったらと少し説教された。

 やっぱり貴族や権力を持っている偉い人との会話や約束事っていうのは、心は庶民である僕では考えもつかないことなんだと再び思わせる。

 あと、謁見のやり取りは問題がそれほどなかったので良く、皇帝に謝らせ過ぎたのも多少の問題はあれど大丈夫とのこと。

 ただ、僕とフィノが周りに頓着していないのがいただけないらしい。


 周りに頓着と言うより、被害がほとんど出ていないからといって何もなしに許すのはいけないとのこと。

 今回は帝国側がフォトロンに対してしっかりとした処罰を加え、それに関わっていた者にもきっちりと処罰を加えたので良かったが、本当なら他国の王族と貴族当主を侮辱したのは死刑ものだという。

 ただ、学園が権力の効かない場所であること、王国と帝国には子供が成人するまで死刑はないこと、僕達がもう過去のことだと割り切っていることから、生かしはするが厳しく過酷な環境で生きることになった。

 そう考えれば子供にしては少しきついかもしれないと僕は思わなくもない。


 会談の結果は上々であり、義兄さんから貰った条件全てを了承してもらえたことに加え、セネリアンヌの処罰、許可証持ちではない帝国の諜報員等の犯罪者の処罰権も得られたのは良かったらしい。

 やっぱりセネリアンヌに関しては帝国に訊いておかなければならなかったようだ。

 それと帝国と戦争になっていないのは僕達のおかげでもあるけど、皇帝が温厚な性格で、外よりも内に目を向けていることが良かったと言っていた。

 宰相に関しては義父さんから人柄を聞いていた義兄さんも睨んでいたようで、きっちりとした処罰の行方が知れて安心したという。


 ここで召喚獣を安請け合いをせずにきっちりと深い縁と借りを作り、僕のことに対する条件を加えたのは良かったらしい。

 これはフローリアさんと相談したのだから僕だけのおかげではないね。


 召喚獣については魔物について詳しくない義兄さんは話を聞くだけだったけど、やっぱりここでもホイホイ物を作り過ぎだと飽きられながら怒られた。

 今は何となく国宝についてわかっているけど、やっぱり基準が良く分からない。

 フローリアさんがそこで口を出し報告書等を書くことは決定し、今持っている薬等は製法は誰にも教えず、報告書にしてまず義兄さんに見せることになった。

 レコンにあげたペンダントについて口にすると製法を見せないようにしたのはいいけど、そういう時は誰かに相談しないといけないらしい。


 製法を簡単に義兄さんに言ってもよくわからず、フィノとフローリアさんがどうにか理解してくれた。

 ただ、同じことは出来る人は限られ、魔力も膨大に使うためほとんどの人が出来ないだろうと言われた。

 だけど、これが使えるようになると大変なことになるということで、僕が知る結果となったガラリアの街の冒険者ギルドから古文書を買い取ることになった。

 それと似たような本が無いか確認をするということで、ソドム等他の街の冒険者ギルドにも確認が入るという。


 この時は大変お疲れのようで、流石に他の魔法については口にしなかった。

 僕が使わなければ問題なく、小出しにこういうのを使えると相談すればいいと思ったからだ。


 これで帝国は王国に対して頭が上がらなくなったのが、僕に対してだけど余計に上がらなくなったのは良かったみたい。

 シュビーツ殿下の来訪についても約束が出来たのはいいことだったみたいだ。

 来訪する旨を伝える使者を送るのはそうだけど、知っているのと知らないのでは対応の速さが違うということだ。


 最後に僕の持っている道具はすべて検分をした上で、報告書をまとめるのはいいと思う。

 その上で僕が学園に戻るまでは研究員たちと協力して、現代の新しい処方や製法、技術を作ることになった。

 これはフィノも手伝ってくれるらしいけど、フィノには義父さん達の傍にいてほしいため完成する前の実験などで手伝ってもらおうと思う。

 それは魔力が多い僕は古い技術を知っているからあまり役に立てないけど、同様に魔力が多くても古い技術を知らないフィノなら純粋にその技術がどうかと思えるということだ。

 一番は異常が見当たらないか僕と研究員が先にするけど、しっかりとしたものはフィノに手伝ってもらう予定だ。


 それは結構僕も好きなことなので別に拒否するようなことではなかった。

 多分義父さん達の呪いを解いた魔法とかも知りたいだろうし、レコンの治療法も医師達は知りたいと思っているはずだ。

 もしかすると治らないと言われていた魔力過多・魔力欠乏症の治療が出来るかもしれないのだからね。




 で、今は僕とフィノは疲れを取るということで、義父さん達と一緒にテラスで会話をしていた。

 ここのテラスは見晴しが良く城下を一望できる場所だ。

 パラソルというものはこの世界に存在しないため無理だが、軒が出ているというのか出っ張りのようなものがあってその下にテーブル等が置かれている。

 地面は綺麗に舗装されたタイルの様な物で、雨が降っても滑らないような加工が施されている。

 また芝生のエリアもあり、かなり広い空間なので陽の光を浴びる為にロロとエアリをこの場に出している。

 二体は陽の光を浴びてお昼寝中だ。


「この二週間で義父さんも義母さんも顔色が良くなっています。これならあとひと月もすれば元に戻るでしょう」


 僕お手製の杖を突きながらだけど歩くことが可能になり、メイドのお世話を受けずとも少しの移動が出来るようになった。

 これにより部屋の近くにあるテラスで陽の光を浴びることになったのだ。


「太陽の光が身体に良いというのは本当かもしれんな。身体の底からポカポカして気持ちが良い」

「ええ、あなたの言う通りです。心地いい風も吹いて景色も良い、あなた達と会話が出来るのも疲れが取れる良いものです」


 太陽の光は身体に悪いだろうが、長時間浴びなければ問題ない。

 それにこの世界は地球と違ってオゾン層がどうのこうのはまだ何百年も先の話だと思う。だから、陽の光を盛大に浴びても少し肌が焼ける程度だろう。

 でも、身体に良いとは言えないので日向ぼっこ程度にしている。


「シュン、聞き難いことだが前世ではこういった知識は普通だったのか?」


 やや顔色が良くなり始めている義父さんが、近くに置かれた健康ドリンクを飲みながら訪ねてきた。

 それには義母さんもフィノも気になるようで、僕の方を向いて話してほしそうな表情をする。


 前世との見切りを付けるのは容易なことじゃないから無理だけど、フィノ達がいれば話すくらいは大丈夫だ。


 少し深呼吸をして地球について少しだけ話す。


「そうですね。普通かどうかはやはり国によって変わります。王国と帝国の文化が違うように、僕の世界でも様々な文化がありました。僕の住んでいた国は技術が進んだ先進国でしたね。勉学、科学、医学、教育や生活まで想像もできないほど発展していました」

「この前聞いた魔法が無いから機械や科学とやらが発達しているというのもか?」

「はい。科学と魔法は表裏一体の様な物だと僕は思います。フィノに教えましたが科学……この場合化学と言いますが、それを理解しているしていないでは魔法の規模が極端に違いました。まあ、これをこの世界で広めるのは危険なので言いはしませんが」


 それには義父さん達も賛成のようで大きく頷かれた。


「例えばこの世界で学校に行けるのは裕福な人達が殆どですよね?」


 あまりいい思い出はない学校生活だけど、制度で考えると素晴らしい物だと実感できる。


「そうだな。まず奴隷は学校にも学園にも入れないだろう。平民はそれなりの裕福さが必要だ。貴族は入れなければ白い目で見られてしまうだろう」

「今は少し変わっているようですけど、私達の時代は平民はほとんどいませんでしたよ。奨学金という制度は数年前に作られましたから」


 そうだったのかぁ。

 フィノも驚いているところを見ると知らなかったみたいだ。

 まあ、貴族や王族にとっては奨学金とか、学園に入ってからじゃないと関わらない物だったりするだろうからね。


「僕がいた国では大体七歳になると学校に通うようになります」

「七歳でか? それはかなり危ないということか?」


 義父さんは多分子供を育てないといけないと考えたのだろう。

 僕はそれを首を横に振って答える。


「いえ、僕達の国では戦争は数十年前の話で、子供を幼い内から教育し、将来のために教えるということです。学校に通うことが法律で決まっていますから、それに十五歳ぐらいまでは教育費は国が負担してくれるのです。まあ、その分は国民の税金から成り立っていますが、多分想像もできない仕組みで成り立っていますよ。貴族とか王族は居ませんからね」

「貴族や王族がいないのか? では、どうやって国を統治しているんだ?」


 やっぱりそこに食いつくのか。


「国民が選ぶんですよ。そこはまた難しくて僕にもよくわからないところなので言えませんが、大臣とか国のトップを支える人はいますよ。ただ、そのトップが掲げるスローガンの様なものを議員が支持し、議員が支持した一番多い人がトップになります。ある程度の差はありますが、皆平等だという感じですね」


 しっかりと話すとなると日が暮れてしまうのでこれぐらいしか話せない。

 それに王制であるこの世界に民主制の話をしてもあまり意味がないと思う。

 小さな村でも村長という村の王がいて逆らわないようにしてるんだし、それが街や国となるともっと無理だろう。


「まあ、その辺りは難しいことですからね。――他にも食材は全て管理され、衛生面も徹底的に管理されています。孤児等もいますがきちんとしたお世話を国がします。道はどこまでも舗装されていますし、海の上も高速で動き、空さえも数千人を乗せた機械が飛びます」

「それが科学という奴か……。この世界では難しいのだろうなぁ」

「そうですね、実現は出来るでしょうが、僕には作り方も原理もわかりません。調べればわかったでしょうが、細部に関しては極秘にされているところもありますし」


 義父さん達は途方もない話に天を仰ぎたくなる様子だ。

 僕も聞かされれば途方もないと思うだろうし、両方知っているからこそ実現は難しいと思える。

 それに空を飛ぶとか魔法で可能だし、海の上を船が動くと魔物に襲われて沈没だね。

 神話で出てくるクラーケンとか普通に出てくるみたいだし。

 タイタニックにはならないだろうけど、海の地図も無ければ、海底がどうなっているのかさえ分からない。

 必ず暗礁に乗り上げるだろう。


「ですが、それは僕のいた国が凄いのであって、全ての国がその技術や考えを持っているわけではありません。この国よりも貧しい砂漠や荒野で生きる国もありますし、極寒の大地で生きる部族もいます。魔法なんてありませんから、防寒着を着こみ動物と共にどうにか生きるのです」

「それもまた途方もない話だな。だが、技術を放出しないのはこの世界でも同じだ。人の世話をするのはいいだろうが、国の世話をするのは筋違いというものだから仕方ないだろう」

「この世界にも寒い地域で生きる部族やその地域に特化した種族もいますからね」

「アルとシャルは寒いの苦手って言っていたはず。それも何か関係しているのかな?」


 それも関係しているだろう。

 日本は良い気候の国だったけど、イギリス方面やカナダなど寒い地域の人が日本に来たら冬でも半袖の人とかいたし。

 見てるこっちが寒くなるのにね。


「まあ、世界が変われば国以上に変わることがあるからね。人の差なんてすぐに生まれると思うよ?」

「そうだよね。種族ごとでもできることが違うもんね」


 最後に地球に行ってみたいと零すフィノに僕は苦笑するしかなく、いくら転移を使えても地球に行くのは無理だろう。

 それに、僕はあまり地球に帰りたいとは思わない。

 体自体が新しいものになっているから大丈夫だろうけど、やっぱり良い思い出が殆どない地球に帰りたくないんだよ。


 転移魔法というのは言ったことが無い場所には行けないというのが正しいけど、実際は言ったことのある景色を思い出して、そこを空気中に漂う魔力を異次元のトンネルのように見立てて飛ぶような魔法なんだと思う。

 だから、魔力の無い地球にその次元のトンネルが作れないから無理なんだ。


 時空魔法を剣に纏って斬り付ける空間を飛び越えた斬撃も、会得しようと日々頑張ってはいるけど、この技もやっぱり魔力が満ちているから振った斬撃が空間を飛び越えて行ってるんだと思う。

 剣が目標を切り裂いているんじゃなくて、振った剣の周りが目標の空間に出現して切り裂いてるんだと考えてる。

 じゃないと岩とか普通に振っただけですっぱりと切れるとは思えないんだもん。


「話は変わりますが、学園に戻るまで少し時間がありますから、どこか出掛けませんか? この状況で城を開けるのは難しいと思いますが、義父さん達が健康に戻るには軽い運動も必要だと思うのです」


 話題を変えて、出来る限り体調が戻りやすいだろうと思えることを提案する。


 僕の話もしないといけないんだけど、それは義兄さんが仕事中だから終わった後に話すことになってる。

 話の内容を伝えた時はやっぱり驚かれたけど、薄々は何かを感じ取っていたみたいだった。

 どれも僕に関わっていたし、僕の称号についても知っていたからね。

 僕と邪神の関係までは分かっていなかったみたいだけど、神様達から何か言われているのではないか、ぐらいは推測していたらしい。

 そのぐらいしか話してないからまだわからないけど、協力してくれたらこれ以上になく心強い。

 だから、僕ももう一度勇気を振り絞って話さないといけないんだ。

 でも、隣にはフィノがいるから前の時ほどではないね。


「うーむ……。確かにこの身体では仕事をすることもほとんど出来ないからな。シュンが言う通り回復に努めるのが一番の仕事だとわかってはいる。分かっているのだが、城を開けるというのはなぁ……」

「あなた、良いではありませんか」

「アリア……。どうは言うが、私が出かけるとなると護衛の問題がな……。それにローレレイクを置いて行くのもどうかと思うのだが」


 そうだなぁ、家族旅行とまではいかないだろうけど、確かに義兄さんだけ除け者になる。

 それに他の義兄弟は別としても、シリウリード君は連れて行ってあげたい。

 僕は何もしてないと思うけど、何か睨まれたりするし。

 これを機に仲良くなりたいんだけど。


「裏山のロードベル山にピクニックに行けばいいのではないですか? 幸いシュン君の領地ですし、一度くらいは見に行った方が良いと思います。魔物もほとんどいないですから、護衛の心配もそれほどしないで良いです。それにシュン君がいますから大丈夫だと思います。あと、お兄様はまた今度落ち着いたときにでも誘えばいいと思います」


 まあ、フィノが言うことにも一理ある。

 ただ、僕の領地と言うところに違和感を覚えてしまうけど、これはずっと言われ続けないとなれない気がする。

 我が家とか、一国一城(家)の主とか言われるのならまだいいけど、領地っていうのは地球だと庶民は使わない言葉だから余計にね。


「フィノの言う通りかも……。何か開発できるものがあるかもしれないし、山の頂上に家を構えるのも楽しそうだ。王城を眺めながら食べたり遊んだりするのは初めてだよね?」


 まあ、城下町を除ければ、という注釈はつくけどね。

 義父さんはまだ渋っているけど、義母さんとフィノは段々乗り気になり始める。

 そう言えば義母さんは大人しそうな夫人に見えてフィノと同じ性格だったんだっけ。

 フィノと一緒ということは純粋だけど、面白いことをしたがる感じかな?


「シュン君の言う通り、静かな場所に屋敷を建てたいものですね。そうだわ! シュン君の世界の屋敷を建てましょう。それくらいなら構わないでしょう?」


 義母さんが手を叩きながら名案だわ、と僕に決定しているかのような笑みを浮かべて聞いてきた。

 フィノの方を向くとそれに賛同しているようで、僕は否定することは出来ない。

 それには義父さんも興味があるようで、下見という名目でいくべきか悩んでいる。


 こういうところを見ていると何処にでもいる家族と同じように見える。

 まあ、それは僕の想像上というのになるんだけど……。


 ただ、僕は地球での屋敷を良く知らない。

 この世界は西洋城に近い作りだから、和風な物と言う意味だろうと思う。

 でも、そうなると作りが極端に変わるから、どうしたものか……。


 うん……模型でも作って製作者や担当者に手渡すしかないな。

 多分ガンドさん達に聞けば手伝ってくれそうだし……家は作ったことあるのかな?


「僕の世界のですか……。素材や作りは僕の方でどうにかするので大丈夫ですが、作り方が少し問題になりますね。後気候に合わせないと難しいです。ただ、がらりと変わるでしょうから完成すると珍しいものになると思いますよ?」


 最後に興味を引き出すような言い方をして僕も援護射撃をする。

 僕の場合は二人の体調を考えるのと、やっぱり家族と一緒にどこかに出かけてみたいという私情がある。

 いやね、この関係が壊れるとは思ってないけど、何か起きる前にたくさん思い出を作っておきたいと思うんだ。

 過去の恐怖とかが女々しく残ってるけど、払拭するには良い思い出で塗り替えるしかないと思うんだ。

 時間が経てば癒してくれるかもしれないけど、早いに越したことはない。


「……いいだろう。私の方からローレレイクに話を通し、いや、今日会うのだからそこで話しておくか」

「あなた、ありがとうございます。では、二人が学園に帰るまでに一度行きましょう。それと昼食はシュン君の世界の料理をお願いできるかしら? 屋敷をそうするのならやっぱり料理もその方が良いでしょう?」


 あなたは僕の料理を久し振りに口にしたかったんですね?

 はい、分かりました。料理長たちにも教えておきましょう。

 ついでに季節外れてるけど、異空間のあれも使わないといけないから郷土料理にしようかな。

 ちょっと楽しみになるね。


「良いですよ。作るのに数日仕込みで掛かるので早めに教えてくれると有難いです。あと、シリウリード君も連れて行きたいのですが……」

「そうね。あの子も寂しい思いをしているでしょうから、息抜きも兼て連れ出しましょう。来年は学園に入る予定ですから外を見てみる経験にもなります」

「それには私も賛成だ。フィノには可哀想な思いをさせたが、シュンが連れ出してくれたからな。シルには家族で出かけるとしよう」

「ふふふ、それは楽しみです。シル君には私の方から伝えておきます」

「それが良いだろうね。僕は何だか嫌われているみたいだし、この機会に仲良く出来たら嬉しいと伝えておいてくれる?」


 難しい顔に皆がなるけど、シリウリード君の母親や兄弟を捕まえたのは僕だからね。

 分かっていても仕方ないんだと僕は思う。

 シリウリード君は関わってないけど、やっぱり家族が犯罪者として捕まれば周りの目はきついものとなる。だから、今の境遇は過去の僕と似ているところもあるから、放っておけないんだよ。

 でも、それを僕が口にしても仕方ない。

 こういう時は黙って相手から近寄って来るのを待つしかないんじゃないかと思う。

 同情とか分かってるよっていう言葉がいけないとは言わないけど、やっぱり自分で整理を付けた方が楽になれると思うんだ。

 僕の今もそうだし。


「仲良く出来るように私も手伝うね」

「ありがとう、フィノ」


 この後僕達はピクニックの話を進め、僕は地球での話を交えながら会話は学園での話になった。

 学園に入学してすぐに変えることになり申し訳ないと謝られたけど、僕とフィノはすでに目標である友達作りは出来ており、行事に参加できなかったのは残念だけど義父さん達の命には代えられない。

 それに行事は一年に一回あるのだから、来年を楽しみにしていればいいだけだ。




 そして、その日の夜となり、僕は防音設備の整った部屋へ移動して身の上話を詳しく話す。

 話している内に不安が込み上げて来るけど、フィノが隣で手を握り勇気を与えてくれた。

 義父さん達も邪神の集団を調べていたようだけど、やっぱり足取りは掴めなかったそうだ。

 例の件に加担していた者の取り調べでもいい情報は出ず、あの組織は自分達から売り込んできたそうだ。

 それにそんなことを企てる為、深いところまで調べも聞いてもいないらしい。

 お蔵入りしそうだった事件だけど、僕の話を聞いて義父さん達は眉間に皺を寄せた。


「――と、言うわけで、僕は邪神の集団を戦っています。まだ時間はありますが、それでも二年と半年しかありません。もしかするとそれよりも早い段階で攻めてくる可能性があるのです」


 そして、フィノに話したところまで話すと義母さんが涙を流しながら僕を優しく抱きしめ、義父さんと義兄さんは悲痛な顔で何度も頷いていた。


「シュン君。とても辛い人生をこの世界でも課せられていたのね? どうしてもっと早く私達に言わなかったの?」

「そうだぞ。もうお前と私達は家族なのだ。苦難は共に立ち向かう物だ。それにシュンにちょっかいを掛けただけでも国を挙げて叩きのめしたいのに、国にまで被害を出したのだから最早無関係ではない」

「それがシュンが中心であろうと変わらないことだ。言っては何だが、それは言わなければ誰にも分らないことだ。まあ、シュンのことだから罪悪感を覚えるだろうが、こうなったら国民だってシュンのせいではないと思う筈だ」


 口々に慰めるように、怒りをぶつけてくる義父さん達に呆気に取られた僕は隣にいるフィノを見た。


「シュン君、言った通りでしょ? 家族なんだからね」

「うん、やっぱり僕が間違ってたんだね。家族って良いものだね」


 フィノにそう言われた時、何かに満たされ温かくなる心に涙が流れ、それを拭き取ることなく今の余韻に浸った。




「それで僕はこれから学園に通いながら周りの国の協力と対抗できる力を付けて行きたいと思っています」


 僕の話が終わり、落ち着いたところで対抗策について考えていることを話していく。

 僕のステータスもまた伸びているところもあり、そこで驚かれはするものの先の話からこれでも足りないと思わせてしまう。


「そうだな。帝国とは私が話を付けよう。勿論シュンにも後に階段が必要となるが、それはその時になって教えることにする」


 そう義兄さんが任せろと帝国を引き受けた。

 隣で義父さんが強く頷き、


「では、私は顔の効くガーラン魔法大国や諸国に使者を送り、世界会議を行えるように整えよう」


 義母さんと一緒に今までの伝手を使っていくことを受けてくれた。


「残るは四大国の一つ聖王国だな」


 義兄さんが顎に手を当て、脚を組み替えながら難しい顔で言った。

 義父さんと義母さんも少し厄介だという顔をしている。


 やっぱり聖王国は何か違うんだろうか?

 宗教国家であることは知ってるけど、まだ勉強不足で深いところまで知らないんだ。

 僕がいつも行く世界教の教会は良さそうなところだけど、光神教や一神教の教会はちょっとあれだと聞いたからなぁ。

 光りの神は存在しないようなことをロトルさん達が言っていたような気がするし、一神教はどの神様を祀っているのか知らないけど、加護を多く受けていることがばれたら大変なことになるはず。

 まあ、よく考えれば加護で神様の名前が幾つもある時点でおかしい話なんだけどね。


「やっぱり、僕のことがばれると厄介なことになりますか?」


 恐る恐る訊ねると三人が僕を見て深く頷き肯定した。

 やっぱりかと肩を落とす僕だけど、返って来た答えは微妙に違った。


「シュンのことがばれると祀り上げられるだろう」

「え? ぼ、僕を祀り上げる?」

「そうだとも。シュンは六つの加護を持っている。一つの加護でも祀り上げられる可能性があり、回復系の加護ならば聖女として祀られたこともあるほどだ。それが六つだぞ? 聖人どころではない」


 まさかと思うけど、三人は否定してくれず、隣にいるフィノはさすがだね、みたいな笑顔で自分のことのように喜んでいる。

 フィノもどういうことなのか分かっているんだろうけど、僕のことになるととんとダメになるよね。


「それに称号がさらにやばい。異界の魂というのは異端だと思われるだろうが、それを帳消しにできる称号が山のようにある。神様から寵愛を受けた者にちょっかいを出そうと誰も思わんだろう」

「そうですよ。それにあなたは神様に会えるのでしょう? その真偽の仕方は分かりませんが、教皇や聖王は神の声を聞いたことがあると聞きます。もしかすると神託が降りるかもしれません」


 そうなったら……。


「ええ、かなりやばいでしょう。ですから、出来る限り穏便に済ませないといけないのですよ? 幸い聖王国は精鋭部隊聖騎士がいますから多少遅れても大丈夫でしょう。慎重に事を進めるほかありませんね」


 義母さんの言葉に義父さん達は頷く。

 違った意味で脅威になる聖王国は僕の中で上位に位置された。

 フィノは何か怒りぶつぶつと言っているけど、聞き取れるのは何やら異端になったら潰すとか、祀られたら一緒にいられないんじゃとか、有名になったらシュン君がモテるとか何とかだ。

 ヤンデレにならないように今のうちにどうにかしよう……。


「武力に関しては会議などを開きどうにかするしかないだろう。幸い戦争は数十年起きていない。冷戦状態の所が無いとは言わないが、しっかりと見極めることが出来ればそんな場合ではないと理解できるだろう」

「シュンには悪いが、様々な物に着手してもらうことになるだろう。ただ、やり過ぎは困るから報告書と相談は必要だ。というより、こちらがどのようなことをしてほしいからその案を実行できるか判断してくれ。あと、軍に施している練習方法は協力体制になった国に伝えるべきだと思う。ただし、条約をきちんと結んだうえでな」


 義兄さんが言うことは正しいと僕も思う。

 ただ、僕は分からないんだけど条約はどの程度まで有効なんだろうか。

 僕としてはこのまま平和なときが進んで行ってくれれば嬉しく思う。

 地球でも戦争をしている国はあるけど、戦争をしていない国は技術が進んで行っているんだもの。

 だからこの世界でも切っ掛けがあれば技術が進んでいくんだと思う。

 帝国は武から文を伸ばそうとしているしね。

 今まで伸びなかったのは一国の力で行おうと考えていたし、やっぱり魔法という便利なものがあるから技術はあまり進まないんだよね。

 地球では魔法が無いから科学技術というものが進んだんだ。

 いくら科学と魔法が似ていると言っても、魔法は水道にはならないし、車のようにもならない。

 場所によって科学を取り入れた方が良いのだろう。


 まあ、その辺りは僕が口を出しても良くわからないことだ。

 何か拙いことが起きればどうにか分かってもらえるように頼めばいい。

 もう僕はこの世界の住人なんだからね、地球の文化や知識を使って急激な成長を施すのはいけないんだよ。

 自分達で気付かないとその原理もわからないだろうし、そういった物だと納得されると失敗も多くなると聞いたことがある。

 歴史があるからこそ後ろを見て気付けるんだからね。


「最後ですが、僕は近いうちに魔大陸へ行ってこようと思います」

「ま、魔大陸だと!? な、なにを……。まさか、邪神は魔族の……」

「いえ、魔族は関係……ないとは言いませんが、魔物が攻めてきた時に魔族と会話することがありました。その時にどうにか和解することができ、現在の魔大陸の状況を知ったのです」


 僕はバリアルから聞いた話を義父さん達に話す。

 誰にも話したことが無く、これを聞けばその時なぜ殺さなかったのかと思われるかもしれない。

 でも、バリアルを殺してしまうと再び魔族達との戦争になっていたかもしれない。それを回避するためにも殺してはいけなかったんだと思う。

 その時はそんなこと考える暇もなかったし、死なないように死力を尽くすことで精一杯だった。

 最近になってバリアルを活かしておいてよかったと思うんだ。


 それとやっぱり魔大陸に行くと言うのは衝撃的だったようだ。

 フィノも不安そうに僕の手を握り、心配ですという顔をしている。

 でも僕が話を付けに行くしかなく、約束をしているので仕方なかった。


「義父さん達も知っている通り現魔王はかなり温厚な人物のようです。今繁栄を迎えている僕達ですが、あちらも国を統治し始め、魔王を中心に繁栄を迎えようとしているようです」

「そうは言うが、魔族とはな……」

「それと魔族も一枚岩ではない様で、早めに魔王と渡りを付けていた方が良いと思うのです。それに僕には転移が使えますから危険な場合すぐに逃げることが可能です」


 フィノは少し安堵するけど、掴んでいる僕の腕に震えているのが分かる。

 義父さん達も僕にそんな無茶をしないでほしいのか、思い悩んでいるようだ。


「何かあるのは分かります。ですが、これも僕でないといけないと思っています」


 僕の言葉に訝しむような、本当に僕ではないといけないのかと目で問いかけられる。


「魔族と友好であるのは僕しかいないです。それに魔王を見たことありませんが歴代最強だと聞いています。己惚れているかもしれませんが、対抗できるのは僕しかいないと思うのです。幸い、魔族との渡りと念話も使えますから、どうか僕に行かせてください」


 僕は深々と頭を下げ、家族みんなに無茶なお願いを聞き入れてほしいと願う。

 すると息を吐く音が聞こえ、「顔を上げなさい」という義父さんの仕方ないなという思いが聞こえた。


「シュンは意外に頑固だからな。仕方ない、聞いた話ではお前にしかできないことだろう。だが、一人で行くことは許さん。私も付いて行きたいところだが、それは無理だろう、だから、王族であるフィノと失礼でない程度の騎士を連れて行くことが条件だ」


 義兄さんと義母さんは少し驚くが、義父さんが言ったこともわかっているので目を閉じながら頷いた。

 フィノは喜んでいいのか心配するべきなのか悩んでいる。

 仕方ないので頭を撫でて、絶対に護り切ってみせると再度誓う。


「騎士と言うとフローリアさんですか?」


 もう一度帝国組の騎士達と旅が出来ると少し喜んだけど、首を横に振られた。


「今回は騎士団長レオンシオを連れて行ってもらう。武力で敵わないかもしれんが、状況に応じて臨機応変に動けるだろう。周りの騎士も手練れを選ぶつもりだ」


 レオンシオ団長か……。

 僕がシロであることは教えていたはずだから大丈夫だよね。


「分かりました。魔族と協力関係になれるように努めますが、問題は他の国や国民の気持ちです」


 そう口にすると空気が硬くなり、誰もが難しい顔になってしまう。

 魔族のことを悪いやつ等ということしか知らないのならまだいいけど、家族を殺されていたり、今回の魔物騒動や種族によっては長寿の者もいる。そう言った人達は許せるものじゃないと思う。

 それは魔族でも同じだと思うけど、やっぱり一緒に行動するのは難しいのだろう。


「……そうだな、我が国は基本的に人族が占めている。だが、今回の魔物騒動で魔族に良い感情を持っていないだろう。いや、それ以上に増しているはずだ」


 義父さんが国王としての顔で言った。


「シュンの話を聞けば魔族と争うべきではないことが分かるが、それを分からない者にはどうしようもない。私ですら魔族と協力するのは不可能だと思っているほどだ。シュンが言うから信じようと思うのだ」


 義父さんの言葉が胸に突き刺さる。

 信用してくれるのは嬉しいけど、やっぱり不可能だと言われて悔しく思う。

 フィノが心配してくれるけど、人を洗脳するわけにもいかないし、こればっかりはどうしようもないことなのだろう。


「だが、シュンの言うことが本当で凡そ二年後に攻めてくるとなると、そんなことを言っている場合ではなくなる。王国は二度に渡りその邪神の集団に暗躍された国だ。それはシュン、お前がいなければ多大な被害を被っていただろう。魔物の襲撃に関して言えばお前がいなければ国が滅亡していた可能性もある」

「忘れかけていたが、シュンがいなければフィノの命も危なかった」

「もし、邪神の集団が数か国を一気に攻めてきた場合、護り切れるか不明なところが大きいだろう。シュンはそれを踏まえて魔族と協力をしたいと言っているのだな?」


 義父さんは真剣な眼差しで見つめてくる。

 僕はそれを真正面から受け止め、義父さんに頼むのではなく、国王に進言するかのように答える。


「はい、僕は守るために魔族と協力するべきなのだと思います。現在二百年に渡る休戦が起きています。次は少しずつ歩み寄ることがあってもいいのではないでしょうか? 確かにお互いに良い感情を持っていないと思いますが、いつまでもこのままではいけないとも思います」


 お互いのことが分からないままだといつまでも亀裂が生じたままだ。

 別に仲良くしてほしいとは思わないけど、少しでもお互いの関係を知った方が良い。

 それはどんな思惑があってもいいと思う。

 相手のことを知らないから強くなって再び滅ぼしに行こうと考えるだろうし、歳月が経つほど憎悪は膨れる可能性が高い。

 相手のことをどんな意味でも知っていればお互いに攻めないように牽制し合うだろうし、その間に友好的な関係が作れるかもしれない。

 その逆もあり得るけど、そんなことを言えば王国と帝国の関係も同じだったはずだ。


「そのためにも僕は魔族と話し合いに行きます。幸い魔族は実力主義ですから魔王は無理かもしれませんが、反感のある者を屈服させてもいいと考えます。僕が知り合った魔族はそのような感じでした」


 大変な作業になるだろうけど、バリアルとは最後ライバルのような関係になったのだからそう言って間違いないだろう。

 バーリスは……微妙なところだけど、多分普通に大会に参加してたのだから大丈夫だろう。

 そういえば、バーリスのことを皆に伝えてなかった……。

 今言うべきかな……?

 うん、言うべきだね。


「それに言い遅れましたが、魔闘技大会に魔族が参加していましたよ?」

「「「「えっ!? (はっ!?)」」」」


 爆弾発言だと思っていたけど、やっぱり想像通りフィノも含めて驚いた。

 いや、フィノは驚いているというより、僕の体に異常がないか少しペタペタと触っているから、心配なだけだろう。


「シュ、シュンよ。そ、それは本当のことか?」


 義父さんが噴き出た涎を拭き取りながら、僕に掴み掛らんと訊ねてきた。

 義兄さんと義母さんも何を言っているんだ、と今にも問い詰めたい気持ちなのか、僕に目を剥いている。


 だけど、これは言って良いものかどうか僕には判断できなかったのだから仕方ない。

 騒動をあれ以上大きくしたくなかったし、あの時は言うべき状態でもなかったし、僕はそもそもまだ新参者だったし、大体僕に会いに来るために抜け出したみたいだったし、魔族がバーリス以外居ないことを知っていたから問題ないと思ってた。

 と、理由をつらつら考えてみるけど、結局忘れていた僕が悪いのだろう。


「え、ええ、本当です。僕が決勝で戦った相手バーリスは、義父さん達は竜人だと思っていたようですが、あれは魔族の竜魔族という種族です。前回魔物の侵攻で来ていた魔族はその父親でバリアルというのですが、族長みたいです」

「「「…………はぁ~」」」


 な、何だ、その反応は……。

 いや、分かってはいるけど、怒られるのかと思ってたんだけどなぁ。


「シュン君! 危ないことをしないでって言ったよね? あの時は仕方なかったかもしれないけど、相手は魔族なんだよ? 何かが起きてからでは遅いんだよ?」


 ああ、フィノに怒られちゃった。

 しかも心配し過ぎて泣きそうだ。


 僕はすぐにフィノを抱きしめ、頭を謝るように撫でる。


「ごめんね。ちょっとバリアルからも懲らしめてほしいと頼まれてたし、あの会場は特殊な結界も張られてたから死ぬことはなかったよ? それに怪我をすることなく勝ったじゃない。だから泣かないで」

「でも、シュン君に危ないことをしないでほしいかった。あの時は無理だったのは分かるけど、ハラハラしていたのは変わらないもん」


 僕の正体はわかっていなかっただろうけど、薄々感じ取っていたのだろう。


「ごめんよ、本当にごめん。でも、あの時はフィノとの約束を守るために頑張らないといけなかったんだよ。フィノを誰にも渡したくなかったんだよ。告白した三日後くらいだったんだよ? それで離れるなんて嫌じゃない」

「そう言えば……。今では良い思い出だけど、あの時私の裸見たんだよね?」

「え!? い、いや、見てないよ! み、見えそうにはなったけど、すぐに気付いたから見てない!」

「本当?」

「うん、本当だよ。フィノには嘘を付かないって言ったからね」

「なら許してあげる。その代り、今度ラ・エールに食べに行きたいな」

「それくらいならお安い御用だよ。久しぶりに顔も出した方が良いだろうしね」

「コホン。御二人、仲睦まじいのは良いが、今は魔族の話をしような。だから、現実に戻って来い。……俺もそろそろお妃を決めないといけないかも」

「「お兄様(義兄さん)、それが良いと思います」」

「はぁ~」


 現実に戻ってきたのはいいけど、何やら義父さん達は苦笑している。

 そして、義兄さんは盛大な溜め息を吐き、何やらぶつぶつと喋っている。


 そう言えば義兄さんのそういった話を聞かないけど、そろそろ適齢期に入るのではないだろうか?

 まあ、僕が選ぶわけじゃないし、義兄さんにはいい人と結婚をしてほしいと思う。


「仲が良いのは良いことだ。暗かったフィノがここまで明るくしてくれたのはシュンだからな。だが、時と場合は弁えなくてはならん」

「あ、はい、心得ておきます」


 義父さんの言葉にすんなりと頷き頭を軽く下げる。

 義母さんは微笑ましい物を見るかのようにフィノを弄っているので、フィノはトマトのように顔を真っ赤にして縮こまっている。

 それがまた義母さんの気に留り、更に弄られる結果になるのはご愛嬌。


「コホン。話を戻すが、その魔族を見た限りはそう変わらない印象を受けたな。まあ、過激な部分はあるが、あれは竜人族も同じと聞くから仕方のない部分なのだろう」

「はい、竜人族と竜魔族は似た様な種族らしいです。魔族と人かの違いはありますが、根本的に竜の血が流れている部分は同じらしいです。特性も同じみたいですね。ただ、魔族に竜の血が流れているため誇り高さと力の誇示の面が竜人よりも強いでしょう」

「まあ、そこのところは理解できる。それにしても竜魔族だったとは……」


 確か竜魔族は決定的な瞬間は他の魔族に取られていたと言っていたはず。

 圧倒的な力で壊滅はさせていないけど、何か違う意味で取られている可能性があるかも。

 例えば圧倒的な武力を誇るけど、最後まで戦わないから瞬間だけとか。


「シュンはその竜魔族と連絡が付けられるのだな?」


 少し考えていた義父さんが顎に手を当てた状態で聞いてきた。


「はい、このネックレスが通信の魔道具になっています」


 僕はそう言って首元に掛けている青色の宝石を持ち上げた。

 大会が終了してからは連絡があっては遅いと、いつも身に付けている。


 義父さん達は少し見た後、現在耳に付けている通信の魔道具のことを思い出したように触った。


「ええ、その魔道具もこれを応用して作りました。ただ、こちらの方が高性能ですけど」


 このネックレスは魔力を補充することなく使える特注品なのだろう。

 数も少ないと言っていたからかなり希少な素材が使われていると思う。

 僕が作ったのは普通の宝石とその中に考え似た魔方陣を刻み込んだだけの物だ。

 空気中の魔力を吸収しても良かったけど、それをすると宝石が耐えられないし、耐えられるような大きさにすると電話レベルになってしまう。


「シュンはどこかで何かをしているようだな。――わかった。この件に関しても同時に進めておこう。まずはシュン、お前が魔族との懸け橋となれ。その後私達が手を取る」


 義父さんにはどこまでも迷惑をかけてしまうな。


「分かりました。難しいでしょうが、必ず魔族と和解してきます。義父さん達もよろしくお願いします」


 僕は立ち上がり、机に手を付いてしっかりと頭を下げて願った。

 義兄さんがこれからは大変だとこぼしたが、どこかやる気に満ちていた。

 義母さんも困った様子で笑っているけど、否定はしていない。

 フィノはどこまでも付いて行くと囁いている。


「とりあえず、魔族と友好になれれば後のことはどうにでもなるだろう。最悪、否定的な国には問答無用で助けに入り借りを作ればいい。あと、SSランクの冒険者にも頼まなければならないだろう」


 そう言えばそうだった。

 師匠以外のSSランクの冒険者には会ったことが無いからわからないけど、協力してくれるのならこれ以上ないほど心強くなる。

 ただ、SSランクは灰汁が強いと聞くし、僕も結構なものみたいだから何かるかもしれない。

 まあ、その時はそのときだろう。


「師匠には僕の方から伝えてみます。あと、他種族にも僕が交渉に行きたいと思います。エルフ族には少し用もありますから。ドワーフ族は名工と縁があるので伝手を頼ってみます」

「わかった。獣人族や残りの種族はこちらでどうにかしよう」


 まだ問題が山のように残っているけど、今日の所はこれ以上は身体に触ると判断し休むことになった。

 この先世界を回るようになったが、僕は全ての種族と協力を得ることができるのだろうか。

 学業も疎かに出来ない為大変だけど、休みを使ってどうにかするしかないだろう。

 まずはバリアルと知り合いだという師匠の下へ行ってみよう。

 師匠はかなり有名な人だから周りに示すのに丁度いいかもしれない。


 義兄さんにピクニックの話をすると、自分の生きたかったとグチグチ恨めしい顔で文句を言われ、最後に屋敷が完成した時は家族皆でいくという約束をした。


王妃(フィノの母親)の名前をどこかで言っていたらすみません。

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