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村1

 魔法を習い始めて今日で二年になる。

 最初は火の玉やそよ風程度しか起こせなかった魔法が、今は火球を飛ばしたり、強風を起こしたりいろんなことができるようになった。

 魔力も最初の数倍まで上がった。

 これも毎日の練習と魔力切れを起こして寝た成果だな。

 最初の頃は起きたら視界が揺れて気持ち悪い思いをしてたっけ……。

 最近は魔力切れに慣れてきたから目覚めすっきりだよ。

 今も僕は魔法の練習をしている。

 最近の目標は森に行けるようになることなんだ。

 半年ぐらいが経った頃、食糧庫の中身を全部使い切っちゃったんだ。それを師匠に言ったら森の中から、いろんなものを持ち帰ってきてくれたんだ。

 魔物の肉が多かったけど他にも、果物や木の実など食べられるものがたくさんあった。

 料理はできない師匠だけど、いろんなことを知っている頼りになる人なんだ。

 森に行きたいって言ったら、「魔物に食われるからまだ駄目だ」言われちゃった……。

 すぐに行きたいけど、実力が足りないなら仕方ないよね……。

 森にひとりで行けるようになるまで頑張るんだ!


「シュン、ちょっといいか」


 師匠がいつもと違う格好で呼んできた。

 いつもはシャツとズボンを穿いてラフな感じでなんだけど、今は魔物の皮でできたコートとズボンを着ている。腰にはきれいな剣を差している。

 どこかに行くのかなぁ……。


「なんですか? 師匠」

「今日はこれから、森を抜けて村に行こうと思うんだ」

「僕はお留守番していればいいんですか?」

「いや、シュンも来てもらう。今回はシュンの身の回りのものを揃えに行こうかと思ってな」

「わかりました。……でも、森は危ないんじゃ……」

「私がいるから大丈夫だ。魔物に関しては私が対処するから、そんなに心配しなくていい。自分の身を守れるようにはなっただろう?」

「はい、自分の身を守るぐらいなら、なんとか……」

「では、準備をしてきてくれ」


 僕は急いで準備をする。

 初めての森かぁ、どんな感じなのかな……。

 魔物は怖いんだろうな、まだみたことないんだよね。死んだ奴なら何回もあるんだけど……。



 ――森の中に入って三十分が経った。


 未だに森の中を走っている。途中で倒した魔物を捌いたりして立ち止まることもあるので、疲労は少ない。

 師匠は捌き方、必要な部位、使用方法等いろんなことを教えてくれた。

 それにしても師匠、あなたは魔法使いじゃなかったのですか?

 道中、全長五メートルほどの黒い狼が飛び掛かってきたんだけど……師匠は一瞬で倒してしまった。

 あんなに強そうな魔物が、腕の一振りで真っ二つになっちゃったよ……。

 他にも、弱い魔物は睨んだだけで逃げていく……。

 ……師匠、あなたは何者なんですか?

 それから一時間ほど経ち僕達は村に着いた。


「ここが目的地ですか?」

「そうだ。ここはファチナ村という。ここで買い物をする」

 村かぁ……人がいるんだよね。師匠以外の人に初めて会うんだ……。緊張するな……。

 それにしても買い物か、お金は大丈夫なんだろうか。


「あの、師匠。お金は大丈夫なんですか?」

「大丈夫だ。そのために魔物を狩ったり、採取をしたりしたんだから」


 そのために、魔物を倒してたのか。

 売るためだったとは思わなかったな……。


 師匠は商人? に毛皮などを売り、お金にしていた。

 結構高く売れたみたいで、僕の身の回りのもの以外に香辛料や調味料、野菜など森では手に入らないものを大量に買った。

 結構広くて店も多かった。村というより町って感じがするところだな。

 途中でアクシデントが何回もあったけど、特には何もなかったかな。撫でられたり、可愛がられたり、撫でられたり以外は……。


「シュン、最後にあそこに寄っていく」

「どこですか?」

「鍛冶屋だ。以前、かき混ぜるものが欲しいとかなんとか言っていただろう。その道具を作ってもらいに行こうかと思ってな。他にも、シュンの剣を作ってもらいたいからな」


 ……確かに言ったな。

 マヨネーズを作りたかったけど、混ぜるものがなくてできなかったんだよなねー。

 それと、剣か……僕も師匠みたいに使えるようになった方がいいのかもな。


 そんなことを考えている間に鍛冶屋へ着いたようだ。


「おーい、ガンドいるかー」


 店に入ると師匠は大声で誰かを呼んだ。

 ガンド? その人が作ってくれる人?


「誰だ? わしを呼ぶ奴は」


 奥から厳つい声がしてきた。

 奥から出てきたのは白いひげを蓄えた、小さいおじさんだった。小さいと言っても僕より高い。大体百三十センチぐらいかな。

 ドワーフだよね? 初めて見たよ。やっぱり、小さいんだね。それに、……少し酒臭い。


「ん? アリアではないか。どうしたんだこんなところへ」

「ああ、今日はこの子の剣と作ってほしい物があってきたんだ」

「この子って、その後ろにいる……坊主? のことか?」

「そうだ」


 ガンドさん? 今、男か迷ったよね?

 僕は正真正銘、男ですよ。


(シュン、話を合わせてくれ)


 不意に、師匠の声が頭に響いて聞こえてきた。

 師匠を見ると目が合った。


(これは念話だ。直接頭に話しかけているんだ。後で教えてやる。今は、シュンが何者なのか話すのは拙いから、話を合わせてくれ)


 師匠はそう言ってきた。

 ……そうだな、言わない方がいいだろうなと思い、師匠に頷く。


「この子は私が森で拾った子なんだ。何でも、森に捨てられたらしい。朝起きるとこの森の中にいたっていうんだ。そのまま歩いて森の中を彷徨っているところを保護したんだ」

「そうか……坊主、名前は?」

「シュ、シュンです」

「そうか、シュンか……。辛い思いをしたんだな。頑張れよ」

「は、はい、頑張ります」

「わしはガンド=ガンスターという。ガンドと呼んでくれればいいわい。よろしくな、シュン」


 そう言って手を差し出してくる。


「はい、よろしくお願いします。ガンドさん」


 そう言って、握手をする。


「ふむ……こんな感じか」


 ガンドさんはそう言って刃渡り四十五センチほどの細身の剣を持ってきた。


「これは、スモールソードだ。これがお前さんにはしっくりくるだろう」


 そう言ってガンドさんは剣を差し出してきた。


 ずっしりとした重みが伝わってくる。

 これが剣か……これって人も切れるんだよね……。


「シュン、この剣は戦うために使うんじゃない、自分の身を守るために使うんだ」

「自分の身を守るため……ですか」

「そうだ、君は魔法が主体になるはずだ。君の剣は魔法が使えなかった時のためにある」

「師匠もそうなんですか?」

「ああ、私の場合もそうだ」

「でも、僕、剣なんて使えませんよ」

「私が教えてやる。だから、魔法の練習と込みでやるつもりでいる」


 師匠は生き生きと言ってくる。

 師匠……お手柔らかにお願いします。


「で、作ってほしいものとは何だ」


 そうそう、作ってもらいたいものがあったんだった。


「それはですね。料理器具を作ってもらいたいんです」

「料理器具か、包丁か? 鍋か? 何が欲しい」

「いえ、僕が欲しいのは調味料を作るために泡立てるものが欲しいんです」

「泡立てるものか……。それはどんなものなんだ?」

「こうグリップがついていてですね。そこからこうたるんだ輪っかの様なものが下向きに、いくつも交差するように付いているものです」

「ふむふむ。……こんな感じか」


 そう言って板に描いた絵を見せてくれる。


「もうちょっと縦長で、グリップの方から絞って膨らませている感じです」

「……こうか?」

「そんな感じです。……作れますか?」

「これぐらいならすぐに作れるだろう」

「本当ですか!? お願いします!」

「おう! 任せとけ!」

「どれぐらいでできる」

「そうだな……試作品も作るから三日、四日ってとこだな」

「わかった、四日後にもう一度来る。それまでに作っておいてくれ。金はいくらだ」

「まあ、銀貨一枚って言ったところだな」


 ……一万円ぐらいか。オーダーメイドになるからそんなものかな。


「よし、いいだろう」

「また今度な」


 朗らかにガンドさんは見送ってくれる。

 最初はなんだか厳つい人だと思ったけど、結構気さくで話しやすい人だったな……。


「では、シュン。帰るとするか。帰りは全部避けて帰るからしっかりついて来いよ」

「はい、師匠」


 僕達は村を出て家に帰る。

 行きは一時間半もかかったのに、帰りは一時間もかかっていない。

 師匠に置いて行かれないようにするので精一杯だったよ……。

 途中で何回転びそうになったことか……。

 早く大きくなって、体力をしっかりつけなきゃ。

 明日からは剣の修行も始まるんだ、頑張るぞー!




 四日後に無事、泡立て器が完成しマヨネーズ製作に入ることができるようになった。

 マヨネーズは三日かけて作り、やっと成功した。

 なかなか一体化しないし、腕は痛くなるし大変だったよ。

 


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