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魔法

思ったように書けぬ……。

 ――異世界に来て数日が経った。

 僕の体調も回復し、今日から魔法の講義が始まる。

 これまでの数日間、辛かったな……。動けないのはまだよかったけど、食事があれだったからな……。

 基本焼く、焼く、焼く! せめて、切ってと毎回思ったよ。


 でも、それも今日までだ。今日からは自分で料理を作れる。テンションが上がってきた!


 僕は気持ちを昂らせたまま、アリアさんの元へ向かう。


「おはようございます。アリアさん」

「おはよう。動けるようになったんだね」

「はい、今までありがとうございました」

「ああ、約束通り今日から魔法を教えてやろう。その前に、朝食を食べよう。今から作るから待っててくれ」


 アリアさんは外へと向かう。

 ……? ……!?


「ちょっと待って、どこに行くの? 朝食を作るんじゃないの?」

「そうだよ。今から肉を焼きに行くんだ。魔法で簡単に焼ける」

「僕が作ります! いえ、作らせてください! お願いしますっ!」


 僕は必死にお願いする。


「そ、そうか。じゃあ、頼む。台所はあっちにある。食糧庫にあるものは、好きに使ってくれて構わない。水は、裏にある井戸から汲んでくれ。火は、私が点けてやろう」


 アリアさんは僕の剣幕に押され、了承する。

 アリアさんの許可も得たし、急いで台所へ向かう。

 水を汲んでくることも忘れない。

 台所には、包丁や鍋などの器具と戸棚、取っ手付きの金属でできた箱があった。


「食糧庫はこれかな。何があるかな」


 僕は取っ手を持って開けてみる。

 パンに肉に野菜、卵など見慣れたものがぎっしりと入っていた。見たことのないものもあるけど、大きさや形、色が少し違ってるだけだ。――これなら、問題ない。いろんなものが作れる!

 それにしても、この中ってどうなってるんだろう……?

 ……考えても仕方ないか、今は料理を張り切って作ろう。

 戸棚から塩と香辛料を見つけた。

 朝食だから、軽めなものでいいよね。


 箱から卵と野菜、肉の腸詰らしきものを取り出す。

 野菜を洗って、手ごろなサイズに切る。点けてもらった火に鍋とフライパンを置く。卵を焼くと同時に腸詰も焼いていく。鍋には水を入れ、塩と香辛料で味を調え、切った野菜を入れる。

 目玉焼きにサラダ、肉の腸詰、スープ、主食はパンだ


 ――いい匂いがしてきた。


 出来上がった朝食をテーブルに持っていく。


「シュン、できたのか。待ち遠しかったぞ。早く食べさせてくれ」


 アリアさんはこの匂いにやられたようだ。


「今、置きますから待ってください」


 テーブルの上に置くと勢いよく食べ始めた。


「うまい、シュンは料理上手だな」

「おかわりもありますから、そんなにがっつかなくて大丈夫です」


 アリアさんは食べながら褒めてくれる。

 そういえば、誰かに食べてもらって「おいしい」って言ってもらうのは初めてだっけ……。

 前世だと怒られないかびくびくしていたな……。

 おいしいって言って食べてもらうとこんなにも嬉しくなるのか。もっと頑張っていろいろ作ろうかな。



 朝食を食べ終え、片づけを始める。


「片づけ終わったら座ってくれ。魔法を教える前にこの世界につい説明していこう。シュンの知っていることもあるかもしれないが、知らないこともあるだろう。復習と思って聞いてくれ」


 ――そうだな。知らないこともあるだろうし、確認しておいて損はないだろう。


「わかりました」


 僕が手早く片付けて椅子に座ると、すぐにアリアさんが話し始める。


「この世界の名前は知っての通り“アルセフィール”という。この世界には、私達の住んでいる大陸“エルファレン”と魔大陸“ガレンシア”の二大陸がある――」



 長いので僕がまとめてみた。

 エルファレンには四つの主要国があり、それぞれジュリダス帝国、ガーラン魔法大国、ドミアス聖王国、シュリアル王国という。他にも小さい国がいくつかある。この森はファチナ森林といい、シュリアル王国に属しているらしい。

 ガレンシアには魔族が住んでいる。魔王もいるらしいが、今期の魔王は穏健派みたいで侵略は起きていないそうだ。


 通貨は一つしかないらしく、石貨、鉄貨、銅貨、銀貨、小金貨、中金貨、大金貨、王金貨、白金貨の硬貨の順で価値が上がり、十枚ごとに貨幣の種類が変わる。単位はガルで、石貨一枚が一ガルで十円ほどに値する。白金貨で十億円となる。


 そして、この世界の種族は大きく分けて四つある。

 僕みたいな人族、身体能力が高く動物の耳や尻尾の生えた獣人族、自然を愛し、魔法や魔力に長けたエルフや打たれ強く魔法などにも抵抗力があるドワーフなど寿命の長い亜人族、魔力・身体能力ともに優れ、寿命も人族の数十倍はある魔族に分かれる。身体的な特徴もあるので見分けがつきやすいそうだ。


 魔獣、魔物と呼ばれる生き物がいる。

 魔獣と魔物の違いは、ドラゴンなど知的生物のことを魔獣といい、それ以外を魔物という。基本的には、全て魔物ということになっている。

 この魔物を倒して、お金を稼ぐ冒険者という職業もあるり、そのあたりは地球のゲームや小説と同じもののようだ。



「――こんな感じになる。……何か質問はあるか」

「ここには季節はあるんですか」

「季節はあるが、あまり変わらないな」


 四季はあってないようなもののようだ。


「では次に、魔法について教えよう。魔法とは――」



 魔法は魔力を使って起こす現象のこという。

 魔力とはどこにでもあるもので、世界中に存在している。


 魔力を使う方法は二種類ある。

 自身の内にある魔力を使うか、魔石から吸い出すか、である。


 魔法を発動するには四つの方法がある。

 【魔方陣】、【詠唱】、【無詠唱】、【魔道具】だ。

 魔方陣は、魔方陣に魔力を通して発動する方法。

 詠唱は、イメージと特定の詠唱をして放つ方法。

 無詠唱は、イメージだけで放つ詠唱の上級版の方法。

 魔道具は、その物自体に魔力と魔法が収められ、鍵を言うことで放つ方法。

 どの方法にも一長一短あるようだけど、詠唱法が主流になっているようだ。



 魔力量は、魔法を使えば使うほど増えていくが、成人(一五歳)を過ぎると止まるらしい。

 僕の場合は、ロトルさんに努力すればするほど伸びるようにしてくれたため、努力をやめない限り止まることはないそうだ。


 魔法の属性についてはロトルさん達に教えてもらったとおりだった。



「――と、まあ、魔法に関してはこんな感じだ。最後に魔法の適正についてだが――」

「ちょっと待ってください。魔法に適正ってあるんですか? 僕は誰でも全属性使えるって聞いたんですけど……」

「――ああ、誰でも使える。だが、扱えるわけではない。複数の属性を使うものは少ないと聞かなかったか? それは、得手不得手が存在するからだ。火が得意なものは戦闘で使えるが、不得手なものは火種にしかならないという感じだ。努力すれば使えるようになるかもしれないが……時間の無駄だな。それなら、得意な魔法に時間を割いたほうがいい。だから、一般的に適性があるかないかとなる」

「そうだったんですか……安心しました」

「魔力量と適正のある属性について知るには、この魔道具を使わないといけない。この魔道具はギルドにあるものよりはっきりとはわからないが、適性を知るだけなら大丈夫だ」


 アリアさんは水晶玉を取り出した。

 今どこから出したの!? さっきまで持ってなかったよね!? これも魔法なのか……?。


「これは、ここから出したのさ」


 そう言ってアリアさんは腰に下げていた袋を見せてくれた。


「この袋には、収納の魔法がかけられている。見た目よりも容量は大きく、時間も止まっている。いくら入れても重くならない優れものだよ」


 それはすごい! しかも時間が止まってる! 食べ物が腐らない! ぜひとも欲しい道具だ。


「この水晶の上に手を置くと魔力を読み取って量ってくれる」


 アリアさんはそう言って手を置く。

 白い淡い輝きを放ち始め、強くなって止まった。

 眩しい……目を細めないと直視できない。

 ん、次第に色が変わり始めたぞ。

 緑色、白色、赤色、黄色、とても綺麗な色だ。


「最初の光が魔力量を現し、次の光が適性属性を示している。光が強ければ強いほど魔力量はあり、適性もある。適性の光は適性値を超えたものを現す。緑は風、白は光、赤は火、黄は地を現している。私の適性はこの四つということになる。これは多いほうだ」

「四つですか。……普通はどのくらいなんですか?」

「普通は一つか二つだろう。魔力量もあそこまで光らない。――では、シュンもやってみよう」


 僕は水晶に手を置く。

 体の中から何かが吸い取られる感覚がする。

 光は電球ぐらいの明るさで停まった。……最初の光は魔力量だったな。アリアさんとは差が大きい……。

 次第に色が変わり始めた。辺りを虹色に照らし、最後に一際強く輝いた。

 ――カラフルだ。

 そういえば、ミクトさんから全属性の適性を貰ったんだっけ……。


「ふむ、シュンはすごいな。うん。魔力量はそれでもないが、全部の適性があるとはな……。最後の光は特殊魔法の光だな。あの方から加護をもらったのかい?」

「はい、もらいました。最後の光は加護の光なんですね」

「そうだ。強く光るほど神に愛されているといわれている。基本的に加護の詮索をする者はいない。神と受けた者以外がとやかく言うと神罰が下るかもしれないからな。特にシュン、君は神と直接会っているのだから尚更だな」

「加護を隠すことはできないのですか?」

「加護を隠すことはできないな。でも、言わなければわかることじゃない。それに、ギルドにある魔道具は私のものより優れているはずだ。加護もわかるが。詳しいことは教会で教えてもらうんだ」


 よかった。

 言ってしまった後のことを考えるとぞっとするもんね。言わないに越したことはないな。

 ギルドや協会があるのか……いつか行ってみたいな。



「では、実践に入ろうと思う」

「はい、頑張ります」

「まず魔力を感じ取るところから始めていこうと思う。――外に出て試してみようか」


 アリアさんは外へ向かう。

 僕も後をついていく。


 初めて外に出るんだ。

 外はこんな風になっていたのか。

 家は大きく感じていたけど、外から見るともっと大きいや。

 周りは木々に囲まれているけど、家の前には広い庭があって、今は陽が当たって気持ちいい。寝転がって、日向ぼっこしたいや……。


「まずは、私が実際に魔法を使ってみる。 『火よ』」


 アリアさんの指の先からポンッという音とともに小さな火が出た。

 おお、これが魔法か。何とも言えない感じだな。

 そのあとも、『水よ』、『風よ』、『地よ』といって魔法を使ってくれた。


「これは魔法の初歩の初歩だ。特定の言葉と魔力を使うことで、魔法が発動する。これが詠唱法だ。無詠唱と違うところは、発した言葉とイメージが違うと発動しないことだ」

「発動しない? 火を思いながら、水よとか唱えることですか?」

「そうだ、詠唱の言葉の中に発動するのに必要な鍵があるからだ」

「そうすると、無詠唱のほうが簡単なのですか」

「いや、そうではない。詠唱法の言葉は鍵の他にイメージの補助にもなっている。イメージが曖昧でも発動する。無詠唱は完全にイメージを必要とするため難しい。それに、一人ならいいが二人以上になると連携が取りにくくなる」

「わかりました。……では、詠唱の言葉は覚えないといけないのですか?」


 僕は覚えるのがあまり得意じゃないからな……。


「いや、覚える必要はないが、発動させる必要はある。発動させるとその詠唱が魂に刻まれ、忘れなくなる」


 よかったー。ホッとしたよ。


「詠唱の言葉は人それぞれだから、決まっていない。

属性、形、性質、数等の補助がそれにあたり、鍵の前に付くことが多い。破棄することで詠唱破棄と呼ぶようになる。鍵は、火球(ファイアボール)風の刃(ウィンドカッター)等、魔法そのものを示すものを言う」

「では、オリジナルの魔法も簡単に作れるのですか?」

「それは……難しいだろうな。原理、イメージ、魔力、鍵、実践等すべてができていないといけないからな」


 アリアさんは難しい顔で言う。

 オリジナル魔法は難しいようだ。



「シュン、魔法を使ってみよう。目を閉じて感じ取ってみてくれ。――魔力はお腹の下あたりにある。それを感じ取ってみてくれ」


 アリアさんは目を閉じて言う。


 僕も目を閉じ言われた通りにしてみる。

 お腹の下……丹田かなぁ……。

 …………。

 ……ん? 何か温かいものがあるぞ。これが魔力かな?


「感じ取れたみたいだな。――次は、それを体全体に循環させてみよう」


 そのまま、次の指示をもらう。


 循環させるか……。

 ……血液を意識してみよう。

 お……動いた!


「その感じだと、どうやらできたみたいだな。次に、それを指先に持ってくる。持ってきたら『火よ』と言ってくれ」


 指先に持ってくる。

 ……持ってくるよりは……血液の流れを塞き止める感じかなぁ……。


「……『火よ!』」


 ポンッと、軽い音がした。


 目を開けてみる、できた?

 そこには十センチほどの火が浮かんでいた。

 アリアさんを見てみる。


「よくできたね。それが魔法だ。おめでとう」


 アリアさんが褒めてくれる。

 やったぁぁぁー!

 できた、できた!


「他にも水、風、地をやってごらん」


 僕はやってみることにする。

 僕の前に小さい水が浮き、そよ風が起き、土が少し隆起する。

 これが魔法を使う感じか。

 なんだか、ちょっと疲れたな……。


「シュン、疲れたかい? その疲れは魔力を消費したからだ。体内の魔力が減ると疲労が溜まってくる。脱力感から始まり、気絶する。最初のうちは気絶するまでした方がいい」

「それって危なくないんですか?」

「魔力は生命力ではないから大丈夫だ。魔力とは精神力に近いもので、気力に値する。寝れば戻るものだから、魔力が減れば体が寝ようとして気絶するんだ」


 大丈夫なのか。

 なら、安心して気絶できるね。安心できないけどね。

 寝る前に使い切ればいいかな。


「今日はこれでおしまいだ。昼からはシュンのことを聞かせてくれ」


 アリアさんは待ち遠しそうに言う。

 約束だったな。

 何から話したもんだろうか……。

 その前に、昼食も考えないといけない。


「あ、それと今度から私のことは師匠と呼ぶように」


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