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講義開始

 決闘が終わった後、僕とあの子はアイネさんの後を付いて行き、反対側にある通路の部屋、客室に入った。

 客室には魔物の毛皮で作った絨毯の上にソファーと長机が置かれているだけ。


「さあ、座って。まずは自己紹介から始めましょう。私は王都の冒険者ギルドのギルドマスター、アイネと言います。あなたの名前を聞かせてくれますか?」


  アイネさんは笑顔を浮かべて、僕の隣に座っている子に問いかけた。


「わた……僕はファノスと言います。年は十一です。よろしくお願いします」


 ファノス……君? というのか。

 でも性別はどっちだ? 最初、私と言い掛けなかったか?


「僕はシュンです。年は同じで十一歳。さっきも言ったけどAランク冒険者だよ。こちらこそよろしくね」


 僕はアイネさんとお互いに知っているから、ファノス君でいいのかな? に向いて自己紹介をした。

 ファノス君は微かに頷いてくれた。

 それを見たアイネさんは一つ頷いて話を進めてる。


「では、依頼内容を確認するわね」


 依頼内容は、この子に実践レベルの魔法を教えること。属性は火、闇、回復だ。

 僕としては他の属性も覚えてもらいたい。


 期間は一か月ほど。

 二か月後が売られる日らしいが、何にやら話が胡散臭くて実際はもっと複雑なことなんじゃないのかと思っている。


 依頼はAランク扱いとなり、報酬は中金貨五枚。

 Aランクにしては低い値になるが、この子の所持金がそのぐらいしかなかったためだ。本当ならできないが僕からということもありこれも特例で決めてもらった。


 依頼達成は一か月後に試験を行うことで決まる。実践レベルの魔法は風魔法で言うと『ウィンドボール』や『ウィンドカッター』、闇魔法は『シャドウボール』や『スリープ』、回復魔法は『ヒール』や『キュア』となる。それぞれが五つずつ、計十五個の魔法を覚えれば依頼達成となる。


 依頼失敗はその数が足りなかったり、威力、実践レベルではないと判断された場合だ。罰則はシュンとしてのギルド除名と罰金大金貨一枚。

 また、この依頼は僕への指名依頼となる。


「こんなところね。何か質問はある?」

「教え方は僕のやり方でいいんですよね?」

「ええ、そのあたりは任せるわ。だけど、無茶をさせないように。あなたも無理なら無理というのよ?」

「はい、わかっています」


 ファノス君は真剣な顔つきになって答える。

 そんなに気張らなくても大丈夫なんだけど……。逆に気張り過ぎると失敗しやすいんだよね、魔法は。


「他にある? まあ、何かあったら私に取り次いでくれたらいいわ。この後はどうする? 今訓練場を使ったら大変なことになるわよ」


 く、やっぱりか。

 あまり考えずにやっちゃったからな……自業自得か。

 うーん、どうしよっか。

 王都の外に出るのはまだ早いだろうし、王都の中に広そうな場所はないしな。


「(ぐきゅるるるるぅ~)」


 と魔法の指導場所で悩んでいるとファノス、君からお腹の音が聞こえて来た。

 僕がチラッと見ると丁度同じタイミングで目が合い、顔を真っ赤にしてそっぽを向かれた。


「えっと、お昼食べた?」

「(ふるふる)」


 どうやら食べていないようだ。

 依頼を頼む前に食べればよかったのに。


「じゃあ、お昼を食べに行こうか。僕が昨日まで依頼を受けていたお店があるんだ。まずはそこで魔法について話し合おう。……それでいいかな?」

「え? で、でも、お金ない……」

「心配しなくていいよ。僕が奢ってあげるから。それにお腹空いたままだと集中できないよ?」

「……わかった」

「と、言うことで、あの店に行って魔法の授業をします」

「ええ、わかったわ。あの依頼はどうするの?」


 アイネさんはもう一つの依頼について聞いてきた。


「あちらは今のところ何もしてきていないので泳がせています。前の報告から分かったことなんですが、依頼品はお店の地下にありました。空の魔石百個ほどでしたよ」

「ひゃ、百個。そんなにあったの?」

「はい。それでその魔石はどうしましょう? 半分ほどお店の改築に使っちゃったんですが……。と言っても石ころサイズの物ですけど」


 できれば僕がもらいたいんだけどな……。

 でもこれって証拠品になるのかな?


「そうねー……シュン君にあげちゃうわ。そういうものは依頼以外で見つけたのなら、見つけた人の物になるから」

「そうなんですか。では、ありがたく貰っておきます。それではこれで失礼しますね。さ、行こうか」

「……うん」


 客室を出ると冒険者から羨望と畏敬、恐怖の入り混じった視線が送られてきた。その視線を背に僕とファノス、君はギルドを出てセドリックさんのお店に向かう。




 今は二時過ぎぐらいだから、昼食メニューを作っている時間帯だな。昼の時間も大幅に過ぎているから席も空いているだろうし、騒がしくもないから丁度いいだろう。


「シュン君が行っていたお店はどこにあるの?」

「ああ、お店はこことは反対、大広場を挟んだ向こう側にある大通りにあるんだ。ちょっと前に開店したばかりなんだ。料理の味は保証するよ」

「うん、楽しみにしておく」


 ファノス、君の声が僅かに上がり、歩きがスキップに近くなった。

 これはもしかすると、僕と同類で料理が好きなパターンでは……。

 それにしても男の子かな? 女の子かな?

 見た目は女の子なんだよね。だけど、着ている服と口調が男の子なんだよね。

 うーん、どっちだ?


 僕が性別で悩み答えが出る前に、セドリックさんのお店の前まで来てしまった。


「あ、このお店ね。空いているようだから早速入ろうか」


 思った通り、この時間帯はお客さんが減っているようだ。


「こんにちは、昨日ぶりですが昼食を食べに来ました」

「いらっしゃい……って、シュン君。昨日ぶりだね」


 厨房の奥の方から料理を運んできたセドリックさんが僕を見つけて声をかけて来た。


 僕とファノス、君は空いている席に座って注文をする。

 ファノス、君はこのお店のやり方に興味津々で、説明している僕に「これは?」「あれは?」等と質問してくる。

 とても微笑ましく見える。


「このお店はお客さんが席に座るとフォークとナイフの入った容器を持って来てくれるんだ。ありがとうございます。……で、このメニュー表から食べたいものを選んで。決まったら教えてね」


 僕は二つあるメニュー表の一つをファノス、君に渡す。

 僕もメニュー表を広げて何を食べるか決める。

 今日はチキンピラフと野菜ジュースにしよう。

 僕が顔を上げるとファノス、君が困ったように見てきていたから、一つずつ料理の説明をしてあげた。

 ファノス、君はあっさりとしたオムライスとフルーツジュースを頼むことにしたようだ。


「で、料理が決まったらこの白いボタンを押すんだ。押してみて」


 ファノス、君は小さく頷き腕を伸ばして白いボタンを押した。すると、


 ピンポーン


 と、気の抜ける音が店内に響いた。

 ファノス、君はその音にビクッと体を震わせたが何も起きなかったことに首を傾げた。


「さっきの音は『メニューが決まったから店員さん来てください』って知らせるものなんだ。で、店員さんが来たらどこのお店でも同じように食べたいものを言う。「これとこれを僕に、これとこれをこの子に、お願いします」。……あとは料理が出来上がるまで待つだけだね」


 注文を聞き取りに来たのはネネさんだった。

 僕は軽く挨拶をして料理を頼んだ。その代りに食券を貰う。

 説明を聞いていたファノス、君は一つ一つ噛み締めるように頷いていた。


 因みに代金を払うのは食べ終わってからだ。食券には砕いた魔力の込められた魔石が埋め込まれていて、食い逃げをしようとすると二か所のドアに付けられた魔石が反応してドアが開かないようになっている。

 食券を置いて行こうとしてももう一つの魔石が反応して、相手の魔力を読み取り記憶してしまうからすぐにわかる。

 と言うより、この世界では食い逃げは何よりも重い罪の一つで、見つかった時点で鉱山に送り届けられてしまうし、詰所には真偽の魔道具があるため嘘を付けないから、わざわざ銅貨一枚くらいを節約する人はあまりいない。

そんなリスクを負ってまで食い逃げをしないということだ。


「お待たせしました。シュン様がチキンピラフと野菜ジュースですね。こちらの方があっさり系オムライスとフルーツジュースです。ごゆっくりくつろいでくださいませ」


 料理を持ってきたのはリーリャさんだ。

 僕が作った服と銀色のお盆がマッチしている。完全に地球で言うとコスプレ喫茶のウェイトレスさんだ。


「さあ、食べようか。熱いから気を付けてね。いただきます」

「……いただきます。……おいしい」

「でしょ?」


 僕とファノス、君は軽い会話をしながら、おいしい料理に舌鼓を打った。

 ファノス、君はやっぱり上級階級の人間だろう。食べるのがとても上品で、食べると言うより咀嚼するっていう感じだ。舌も肥えているのか料理の材料やいいところをズバリと当ててくる。


「ねえ、君は本当に売られるの? 本当は違うんじゃないの?」


 とは、さすがに聞けない。

 せっかく僕の魔法の授業を受けてくれるって言ってくれたんだから。このチャンスを不意にはできない。

 と、とりあえず、一番気になっていることを聞いてみよう。


「え、えっと、ちょっと聞いてもいいかな?」

「……なに?」


 ファノス、君はスプーンを置いて食べるのをやめ、僕の方を見た。

 そんな目で見ないで、聞きにくくなるから。


「し、失礼だとわかっているんだけど、き、君は男の子かな? 女の子なのかな? ごめんだけど僕には判断がつかなくて……」


 僕は椅子の上で土下座しそうなくらい体を丸ませて、チラ見をするように顔色を覗く。

 ファノス、君は目を見開いて徐々に顔色を赤くしていく。

 ああ、やっぱり男の子だったのか? それで怒っているとか。……いや、逆もあり得るか……。


「……おt……」

「え? もう一度言ってくれる? よく聞き取れなかったんだ」


 ファノス、君は下を向き真っ赤にさせた顔を振わせながら答えてくれたけどよく聞き取れなかった。

 今度は顔をバッと上げて、聞き取れるぐらいの大きさで言ってくれた。


「お、男……」

「あ、うん。ありがとう」


 て、何に対してのありがとうだよ!

 どっちかというと謝れよ僕ぅ! しかももう遅いよ! ファノス君はそっぽを向いて食べ始めたじゃないか……。


 どどどどどうしよう。何か気の利いたことを……。何も思いつかないーっ!


「シュン君、こちらの子は誰だい?」


 僕が混乱するように悩んでいると一息ついたセドリックさんが厨房から出てきて、助け舟を出してくれた。

 あ、ああ、(セドリック)よ。


「こ、こちらの子はファノス君っていうんだ。今回受けた依頼の依頼主だね。魔法を教えてあげるんだ」

「へえーそうなんだ。ファノス君、でいいのかな? 君はついているね。こんな凄腕の魔法使いに教えてもらえるんだから」


 セドリックさんはファノス君の肩をポンポンと軽く叩きながら、僕のことを褒め称える。

 ファノス君はよくわかっていないのかキョトンとしている。

 僕が訓練場で見せた魔法は戦闘用だからな。普通の人の魔法のイメージは戦闘用、あるいは生活用(火種等)で、僕のように使うことはほとんどない。


 ガラリアの修復のときみたいなことは緊急時以外はしないことになっている。強度が魔力に依存し、進行度や完成度が技術に依存するからだ。


「知らないのかい? シュン君はこのお店を作ってくれたんだ。まあ、作ったと言っても全てじゃないけどね。外装や内装、この椅子やテーブル、クリスタルのライトや植物等だね。他にもここの料理は全部シュン君に教えてもらったものなんだよ?」


 セドリックさんはそれぞれ指差しながら、ファノス君に説明する。ファノス君は一つ一つに驚き、僕に対する羨望度が上がっていく。


「まあ、そう言うことだからしっかりシュン君に魔法を習ってね。そして、僕のお店を贔屓にして下さい」


 セドリックさんはそう言って厨房の方へ戻っていった。

 なんだか、セドリックさんが輝いて見えるよ。最初の頃のダボッとした死人のような料理人からシャキッとした紳士の料理人に変わり、まるで人が変わったようだ。

 まあ、そのおかげでファノス君のご機嫌を取れたからマジ感謝します。


「では、ファノス君。魔法について話そうか。まず、君がどこまでの知識があるか聞かせてくれる?」

「うん、わかった。


 魔力は万物に宿るもの。人や動物、魔物だけではなく、石や木、水や空気に宿っている。その魔力を体内で練り込み、放出させ、変換させると魔法になる。魔力量は使えば使うほど伸び、成人するぐらいで止まるが個人差があるため、その年になる前に止まる人もいる。また、逆もいる。


 魔法は一般属性の火、水、風、地と派生属性の焔、氷、雷、木がある。その他にも特殊魔法の回復、召喚、無等と加護魔法がある。魔法は有利性が決まっている。火は水に弱く、風に強いと言うように。加護魔法は神々の加護を受けた者がまれに使えるようになる魔法のことで、生れ付きである先天的な場合と神に好かれた場合の後天的な場合の二種類がある。また、その魔法は既存の魔法よりも強力で、単体で国とやり合えるほどと伝えられている。例えば、癒しの女神の加護である大回復魔法が当てはまる。


 属性は大体二つが目安で四つ以上ある人は稀。着けば使うほどその属性の魔法に長け、魔力消費が少なくなる。自分の適性属性以外の魔法は魔力消費が大きく発動もしにくい。本当に悪い場合は発動もしない。

 これらのことは冒険者ギルドの判定の魔道具で知ることが出来る。


 魔法を発動するには高める、煉る、集める、放出する、変換させるが大事で、イメージが一番必要となってくる。魔法の発動方法は魔方陣、詠唱、無詠唱、魔道具の四つに分かれ、詠唱法が一番よくつかわれ魔方陣が一番少ない。魔道具は魔法が使えないものでも使え、魔剣や魔具もその分類となる。手に入れるには迷宮の奥地に行かなければならない。


 ぐらいだと思う」


 ふむ、結構知っているみたいだけど肝心な部分が知られていないようだな。

 まあ、師匠も知らなかったって言っていたから仕方がないことなのだろうな。


「わかった。ありがとう。次に、なぜ自分が魔法を使えないのか理由が分かる? 分からないのならば、どこまで魔法が出来ているか教えてくれる?」


 酷かもしれないけど、そこが分からないと教えようがない。

 両方分かればいいけど、片方だけでもわかれば御の字だ。


「僕はなぜ魔法が使えないのか分からない。魔法は煉り込んで魔法が発動するところまではできる。だけど、その後にすぐ消えてしまう。いくら魔力を煉り込んでも結果は同じ。威力も持続時間も上がらない。ただ単に魔力を消費して魔力量が上がっただけだった。これでは意味がない。あと二か月でどうにかしないと、わt……僕は、僕は……」


 ファノス君は目に涙を浮かべ、鼻を啜り出してしまった。


「ごめんね、酷い事を聞いて。でも、そこが分からないと解決できないと思ったからね。だけど、安心して。多分問題が分かったから」

「え? ほ、本当なの?」

「うん、まだ確証がないから言えないけど多分これだろうなというのはあるよ? だから、泣かないで」

「――っ!?」


 僕はファノス君の目から流れて来た涙を拭きとりながら、優しく言ってあげた。

 ファノス君は顔を真っ赤にさせて拭き取った僕の指を拭いた。


「あ、ごめん」


 あ、ファノス君は男の子だったな。いやー、きれいで可愛いからつい女の子扱いしちゃうんだよね。気を付けなきゃ。


「い、いや、謝らなくていいよ。わ、僕も急だったから慌てただけで……(嫌じゃないし……)」

「そう? わかった。で、指導の方なんだけど、まずは魔力と魔法についての講義をしようと思う。ここをしっかり理解出来ていないと魔法をうまく使えないんだ。それでいいかな?」


 僕は魔法のない世界からこの世界へ来た。だから、その物事を第三者、つまり赤ちゃんよりも空っぽの状態の視点から見ることが出来る。赤ちゃんと違うところは思考力や理解力等が大人であること。

 それに僕のいた世界では科学技術が進み、大概の自然現象や成り立ちが解明されていて、魔法の神髄であるイメージをより詳しく想像することが出来た。


 この世界の人に『なぜ火が灯るのか?』と聞けば、精霊や神の力だと答える。知らないから、周りが生まれた時から教えてきたことだから、それが本当なんだと信じる。

 でも、僕の場合は違う。火を灯すには最低でも酸素と木等の燃料と温度即ち熱が必要となることを理解している。


 これを知っているかどうかで魔法の威力や消費魔力、発動速度等が変わってくる。

 より良いイメージはより良い魔法を作り出すということだ。


 それをこの一週間ぐらいで教え込もうと思う。

 そのことを僕の出生を誤魔化しながら、簡単に説明した。


「……うん、わかった。それでいいよ」

「じゃあ、今日は時間がないから魔力と魔法について簡単に説明するね」


 僕はそう言うと収納袋から真っ白な紙数枚と羽ペン二本取り出して、ファノス君に渡した。

 ファノス君は紙を受け取ってまじまじと見ている。


「この紙、高くないの? こんな真っ白な紙初めて見た。サラサラで手触りがよくて、とても薄い」


 ああ、この紙が珍しかったのか。

 この紙はもちろん木片からできている。地球の紙と比べたらまだ雲泥の差があるけど、この世界なら最高品質の紙と分類される。

 作り方は簡単で、木片を風魔法で細切れにする。それを水魔法と火魔法で煮込み続ける。白くするために木魔法で染抜きのようなことをした。木魔法は植物を操る魔法だからね。で、その後に地魔法で型を作って地魔法と闇魔法の重力魔法でプレスして、最後の仕上げとして地魔法のローラーで平らにして風魔法と火魔法で乾かして切り分けるだけだ。

 何回も思うけど魔法って便利だな。


「この紙は僕が作ったもので、ほぼ費用が掛かっていないから気にしなくていいよ。費用は木片代だし、労力は僕の魔力だから、どうってことないね。作ろうと思えばいくらでも作れるし、まだ千枚以上収納袋の中にあるよ」

「これを売らないの? 一枚だけで百ガルはすると思うよ」

「売る気はないよ。作るのは簡単だけど時間が掛かるし、作るには最低でも僕が決闘で見せた炎の竜が作れるぐらいの魔力操作能力がいると思うからね。多分、僕以外には無理なんじゃないかな? それに、お金には困っていないし……」


 僕が思ったことを正直に話すと、ファノス君は紙を置いて目を伏せるとやれやれと溜め息をついた。


「もしかして、シュン君は凄い人? そんなことを平然とやるなんて普通じゃない。しかも、ぼ、僕と同い年でお金に困っていないってどのくらい持っているの?」


 ファノス君は元気になった。

 やっぱりファノス君は落ち込んでいるより、明るく笑っていたほうがいいと思う。笑顔がかわいいし……って、僕は変態じゃない、変態じゃあ……。


「僕はそこまですごくないと思う。僕の師匠の方がすごい人だよ。お金は依頼を受けていたら自然と増えたんだ。うん、増えていたんだよ」


 うん、僕は嘘は言っていない。

 (シュン)がすごいんじゃなくて、シロがすごいんだし、お金は依頼を受けて貰って我武者羅に街を護ったら金額が跳ね上がっただけだからね。

だから、嘘はついていない。


「そうなの? シュン君よりすごい師匠って誰?」


 ファノス君はフルーツジュースに口を付けながら、小首を傾げて言った。


「うーん、あまり驚かないでね。あと言いふらすこともダメだから。師匠との約束なんだ。これを護ってくれるのなら言ってもいいよ」

「うん、誰にも言わない。冥府神ミクトラン様に誓って約束する」


 ファノス君はコップから口を話して真剣に言った。

 ミクトさんに誓ってくれるのか……。ということは、ファノス君が加護を持っている可能性が高くなったな。

 助けるのは魔法が使えるようになるだけじゃないと思う。ミクトさんの頼みは『救ってほしい』だったからね。それだけでは、問題の解決じゃなくて手伝いだ。救うには完全に自由にしてあげないといけないだろう。

 自由と言っても(しがらみ)から解放するぐらいしかできないけど。


「わかった。信用するよ。僕の師匠は救国の英雄雷光の魔法使いだよ」

「え? 雷光の「静かに」……雷光の魔法使い様が師匠って本当?」

「うん、本当だよ。証拠を出せと言われても何もないから信じてもらうしかないね」


 僕は信じてもらえるかビクビクしながら、引き攣りそうな笑顔で言った。


「信じる。だから、悲しそうな顔をしないで。なんでか、僕も悲しくなるから」


 上手く隠したつもりだったけど、ファノス君にはばれてしまい心配させてしまったようだ。

 僕は首を振ることで気を取り直した。


「ありがとう。もう大丈夫」

「何かあったの?」

「いや、言えないけど過去のことを思い出しただけだから気にしないで」


 僕はこの話はおしまいという感じに野菜ジュースを飲み干した。ファノス君は「そう……」と一言だけそう言ってフルーツジュースを飲む。


「じゃあ、講義を始めようか。まず、魔力についてなんだけど……ファノス君が言ったことでほぼ間違いはないよ」

「そうなの?」

「うん。詳しくいえば違うところがあるし、たらないところもある。だけど、それは魔法の指導の時に言うよ」


 先に行っても忘れるだろうからね。あとから言っても変わらないだろうと思う。


「わかった。でも、違うところがあるんだよね?」

「今から言うことは誰にも教えないでね?」

「なんで?」

「僕の知識は師匠に口止めされているんだ。考えが斬新すぎて異端だと言われるってさ」


 僕は真実とうそを織り交ぜて言った。

 ファノス君はそれをすんなりと受け入れてくれた。


「わかった。誰にも言わない。だから、教えて」


 ファノス君は胸の前で両手を組み、祈るようにお願いしてきた。

 んんー、とってもかわいいよ。

 何でだろう? 僕はあっち系じゃないのに……。


「わ、わかった。ゴホン、魔法に属性や性質があるように、魔力にも性質があるんだ。もちろん属性も存在するよ」

「え、本当? 僕は聞いたことないよ?」


 ファノス君は眉を細めて疑う。

 ふっふっふっふー、嘘じゃないんだな、これが。

 このことは世界に二人しか知らないことだ。多分。

 あ、僕と師匠ね。


「それがあるんだ。ここからはよく聞いて、いつでも見直せるように書き取ってね。まず、魔法の性質についてだけど純度と質に分けられるんだ」

「純度と質?」


 ファノス君は書く手を止めて、顔を上げて聞いてきた。


「うん、純度っていうのは使いたい魔法のイメージに対する魔力の濁りがないか、ということ」


 僕は羽ペンを持って白い紙に図を書いていく。

 断面図の頭を二つ書いて、脳がある場所にイメージを書く。右のイメージは火だけを、左のイメージは酸素(記号)と木片と火種が入り混じったように描き、真ん中に炎の絵を描いた。


「シュン君は絵が上手だね」

「そ、そうかな? 初めて言われたからわかんないや。……で、この絵の違いが分かる?」


 僕は照れくささを誤魔化して図の違いが分かるかどうか聞いてみる。恐らくわからないだろう。

 ファノス君は腕を組んで体ごと左右に振って悩んでいる。

 少しの間黙っていると、ファノス君は眉を細めて悔しそうに分からないと言ってきた。


「わからないよ……」

「ははは、わからなくて当然だよ。僕の師匠だって最初はそうだったんだから」


 師匠も最初の内はそうだった。何を示しているかは分かっていたけど、どうなるのかを理解していないといった感じだった。


「え? あの方もわからなかったの?」

「うん、知っていなかったよ。なぜ僕が知っているかはあまり聞かないでくれると助かるよ。で、この図の違いだけど、この図に何が書かれているかは分かるよね?」

「うん。右の図は炎だけで、左の図は木と火が描かれてる。これは……文字かな? 火は二種類あるから……火と炎かな? ……合ってる?」


 ファノス君は僕の顔を覗き込む。

 僕は頭を撫でて正解だよと答えた。

 あ、またやってしまった。

 ファノス君は顔を真っ赤にさせてしまったけど、さっきまでみたいにそっぽは向かなかったから、セーフと思いたい。


「合っているよ。右の図は一般の魔法使いだけじゃないけど、まあ一般の人が考える火魔法のイメージだよ。簡単に言うと何もないところから火が出るといった感じかな?」

「うん、そんな感じだと思う」

「でも、左の図はいろんなものが描いてある。これは火が作られる、出来るまでの過程と最低限の材料が描かれているんだ」


 ファノス君はよくわかっていないのか考え込む。


「火をつけるのに魔法を使わずに灯そうとしたら、ファノス君はどうする?」

「うーん。…………蝋燭から火を移す?」


 ファノス君はじっくり考えて答えたけど、その答えだと答えになっていない。


「それだと、蝋燭に火と着けないといけないよ?」

「あ、そうか。なら……火打石? だったかな? それを使う」

「うん、それなら正解だね。もっと言うなら、その火打石の他に燃える物と空気が必要なんだ」

「燃える物と空気? 燃える物は分かるけど、なんで空気がいるの?」

「まずは左の図を見て。まず火打石はこの小さい火、火種のこと。燃える物はこの木片。でこの文字は空気を表しているんだ。その三つが混じり合うことで火が出来上がるんだ」


 僕はそこまで言うと収納袋から蝋燭と透明なケースを取り出して、台の上に置く。


「この蝋燭が木片の代わりで、このケースが空気の分かる物だよ」

「それで空気が分かるの?」

「うん、空気っていうのは僕達が生きる為に吸っているものっていうのは理解できる?」

「生きる為?」

「うんそうだよ。息を止めれば苦しくなるし、狭い場所に居れば息苦しくなっていくよね? それが、空気というんだ」


 厳密には違うけど今はこれでいいだろう。


「うーん、大体は分かった。吸わないと生きられないのは知っているから。でも、ゾンビみたいなアンデットはどうして生きていられるの?」


 ファノス君はあれ? といった感じに目を動かして訊いた来た。


「アンデットは既に死んだものだから呼吸を必要としないんだ。詳しくいうと生物は、ここ、心臓が動くことで生きているんだ」


 僕が左胸を触りながら言うと、ファノス君も自分の胸を触って「動いてる」と呟いた。


「でも、アンデットは動かなくなっているんだ。その代わりとして魔石や魔核と呼ばれる心臓の代わりとなる物があるんだ。いい例だとスケルトンの肋骨に守られている赤く光る石のことだね」

「それなら、図鑑で見たことがある」

「あれが壊されると機能停止して死んでしまうんだ。あとは光魔法だね。だから、アンデットは動いていられるんだ」

「そうだったんだ。シュン君は物知りだね」

「いや、それほどでもないよ。知っている人は知っているし……」


 僕が謙遜するとファノス君は手を口に当ててクスクスと笑った。

 この笑顔と仕草がどうしても女の子に見えるんだよね。

 平常心、平常心。


「それでもだよ」

「まあ、ありがとう。……話を戻すけど、この蝋燭に火をつけてこのケースを被せるとどうなると思う?」


 僕は右手の人差指に小さい火を灯して左手で覆う仕草をして聞いてみた。

 まあ、わからないだろうな。


「ずっとついたままじゃないの?」

「じゃあ、やってみようか」


 僕は蝋燭に火を灯して透明なケースを被せる。

 最初の内は煌々と火を灯していたけど、次第に火が小さくなり最後には火を消して煙を撒き散らしてしまった。

 僕がケースを開けると中の煙が霧散して、糸が焦げ付き少し融けた蝋燭がそこにあった。


「消えた。シュン君、どうして?」

「これはね、火を灯す、その火を灯し続けるために必要な空気がなくなってしまったからなんだ。さっき、狭いところに居たら息苦しくなるって言ったよね?」

「うん。毛布に(くる)まって寝ていたら苦しくなる」


 ファノス君の家には毛布があるのか。

 貴族であるのは確定したな。それか豪商だ。


「それは、空気の中にある『酸素』と呼ばれる物がなくなるからなんだ。生物はその酸素を取り込むことで生き続ける。火はその酸素を供給することで燃え続けるんだ」


 ファノス君には少し難しかったみたいですごく悩んでいる。少し頭も痛そうだ。


「そのサンソ? がなくなったから火が消えたって言うこと?」


 悩みまくった結果、何とか正解を導けたようだ。


「うん、大正解だよ。まあ、最初の内は空気が必要だと思っていればいいよ。これがイメージによる魔力の濁り方だよ。詳しいイメージは純度を上げる」

「イメージによるって言うことは他にもあるの?」

「うん、いいところに目を付けたね。もう一つ、気持ちによる濁りがあるんだ」


 ファノス君は何か思い出したようで口に手を当ててあっ、と声を漏らした。


「うん、訓練場に入る前に言ったことだよ。ファノス君は相手の魔力を感じ取ることが出来る?」


 僕は出来ないかもと思いながら聞いてみたら、どうやらファノス君は魔力感知を使えるようだ。


「うん、相手の魔力を感じられるよ」

「そうなんだ。なら助かるよ。悪意のある人の魔力を感じたことはない?」

「ある。なんだかドロッとしたような、粘つくような、気持ち悪い感じがした」


 ファノス君は両腕を体に巻き付けてさする。多分鳥肌が立ってるはずだ。

 それほど、悪意のある人の魔力は気持ち悪いのだ。特に自分に向かってきている魔力は特にそうだ。

 そう考えるとファノス君は誰かに命を狙われているのかもしれない。売られると言うのは嘘だな。売られるぐらいの悪意でそこまで嫌悪感は出て来ない。そこまで行くと殺意が含まれているはずだ。


「それは悪意があるからなんだ」

「じゃあ、悪意がある人の魔法は威力がないの?」

「いや、違うよ。その人のイメージが悪意のあることなら良くなる。でも、あの時のあのファノス君は使えるようになりたいのに哀しみや焦り、絶望、自分には出来ないと何処かで決めつけていたんだ。僕にはたぶんとしか言えないけど、合っているだろう?」


 僕はファノス君に確信を得たように言った。

 ファノス君はハッとしたように驚いて目を瞑り、自分の気持ちを考えているようだ。

 うん、その感覚が大事なんだ。

 魔法は自分の気持ちを表す。荒れていると荒々しい魔法になり、清らかに澄んでいると精密な威力の高い魔法が放たれる。

 そこをしっかりコントロールできれば、Bランク程度の実力は出てくる。


「……うん、確かにそう思っていた。だけど、今は違うよ。シュン君のおかげで自信が出てきたから」


 ファノス君は首を振って否定した。


「うん、僕もわかっているよ。僕の魔力感知にはまだ濁りを感じるけど、そこまでのものじゃないしね」

「そうなの?」

「そうだよ。魔力感知にもいろいろあるからね。まあ、これが純度というものだよ。わかった?」

「うん、よくわかった」

「では次に質について教えるね。質というのは明確には言えないんだけど……言葉で言うと精神力、かな? 後は冷静さや感情の制御とか?」


 うーん、なんて言ったらいいんだろう。上げ方は分かるけど、その物を言うのは難しいな。

 魔力感知が使えるみたいだから、実際に見てもらうのが手っ取り早いか。

ファノス君はよくわかっていないみたいだからね。


 僕は両手から白色の『魔力弾』を出した。右手の『魔力弾』は質をわざと落としたもの。僕としてはわざと落とさないといけないから難しくなっている。左手はそのままの『魔力弾』だ。


「どう? この魔力の塊の違いが分かるかな? 魔力感知で確かめてみてよ」

「やってみる」


 ファノス君は目を瞑って右手から確認していく。

 左手の魔力感知に移るとすぐに目を開けて、驚いている。


「何かわかったようだね」

「うん、右手の魔力から感じる魔力はグニャグニャとしてるような統一性のない魔力で、左手の魔力はぐるぐる綺麗に回っていて規則性を感じる魔力だった。それに込められた魔力かな? が多くて、なんだかすごい威圧感を感じた。で、でも、いやじゃないよ」


 ファノス君は手を振って焦った。

 ん? どうしたんだ?


「感知で感じる魔力は人によって一概するから何とも言えないけど、違いが分かったのならそれであっていると思うよ。右手の魔力はわざと質を落としたもの。普通の魔力に感じたと思うけど、どうだった?」

「うん、他の人から感じる魔力と同じだった」

「そうでしょ。でも左手は違う。さっき込められた魔力が多いと言ったけど、込めた魔力は同じだよ」

「本当?」

「うん、これが質の違いになるんだ。質は魔法の威力を上げるし、制御・操作能力も上げてくれる。魔力消費も下がって低コストで魔法を使えるようになるんだ。だから、同じ魔力量で違いが出たんだよ」

「そうだったんだ……」


 ファノス君は初めて知った計り知れない真実に絶句した。

 まあ、これほどの技量を得るには相当の努力がいるけどね。ファノス君は僕と同い年だから時間もあるし、魔力量もまだ伸びそうだ。素直そうだから教えるのも楽だろうな。

 僕はほくそ笑みながら、そう考えた。


「で、その質の上げ方なんだけど、手っ取り早く上げるには精神を統一させること」

「精神を統一させる? それは集中するって言うこと?」


 ファノス君はファノス君なりに考えて答えを出した。

 考えることは魔法以外にとっても大事なことだから大切にしてね。


「半分合ってるってところかな。精神を統一するにはその考えに雑念を無くすこと。例えば、静かで風通りのいいところ、森とかで座禅をするとか、お風呂に入った後にリラックスするとか。あとは草原に寝そべって息吹を感じるとかかな?」

「よくわからないよ」

「もっと簡単に言うと、体の力を抜いてリラックスさせること。無用な力や考えは魔力を歪ませてしまうって言うことだよ」

「それならわかった」


 ファノス君は十一歳にしては理解力が結構あるようだ。

 僕の中身は大人だからそうでもないけど、ファノス君は違うからな、脱帽だよ。


「まあ、魔力についてはこんな感じかな。次に移る前に何か食べる? この時間帯はデザートの時間だと思うから」

「デザート! (コクンコクン)食べる!」

「そ、そう? ちょっと待っててね」


 ファノス君の食い気に当てられた僕は厨房の方へ入って行く。

 お店の中は徐々にお客さんが増えてきていた。講義をしている間に結構な時間が経っていたようだ。

 厨房の中に入るとララスさんが僕に気が付き挨拶をしてきた。


「これはシュン様、今日は何をされに?」


 その声にセドリックさんが顔を上げた。


「おや、シュン君。何かようかい?」


 僕は今着ている服の上に調理服を着ながら、何がしたいか言う。


「ララスさん、今時間ありますよね? 少しでいいので見ていてください。セドリックさんはすみませんが料理の方をお願いします」

「まあいいけど、あまりと長時間は拘束しないでね」

「わかっています」


 僕は収納袋から牛乳と生クリーム、砂糖、卵、バニラの香りのする木から採った蜜を取り出す。


「ララスさん、今から新しいデザートを作ります。しっかりと見ていてください」

「はい、わかりました」


 まず、ボウルに全ての材料を入れて風魔法式ミキサーでかき混ぜる。卵は卵黄のみだ。

 生クリームがドロッとするまで混ぜるとボウルを両手で挟み氷魔法でゆっくりと冷やしていく。

 ある程度固まったところでいったん止め、大きなボウルに氷魔法で小さな氷と塩を入れる。そのボウルに先ほどのボウルを入れ、ミキサーで良くかき混ぜる。

 すると黄色味を帯びたドロッとした液体が固まり始め、若干柔らかい個体が出来た。

 僕はそれを金属でできたプリンパフェ用の器に盛り、上にハーブを置いて完成だ。


「これで完成です。このデザートの名前は『アイスクリーム』を言います。この料理はまだ発表しないでください」

「私が氷魔法を使えないためですね?」

「はい、だからと言って新しい人に頼むのもあれなので、ララスさんに覚えてもらおうと思います。その店で僕が聞こうとしていたことはこのことです。ララスさんは氷魔法を覚える気がありますか?」


 まあ、覚えてもらわないと困るんだけどね。

 このデザートはこの後配ろうと思うから。


「え? ど、どういうことでしょうか? 私が氷魔法を覚える? 私は水魔法しか使えませんし、魔法の才能もないんですよ?」

「魔法に才能はあまり関係ありません。勉強と同じなんです。しっかりやればやるほど自分の身になってくれます。才能がないと思うのは最初の基礎能力が劣っていただけです」

「で、でも、いくら練習しても上手く……」

「そんなことはありません。言っては何ですけどセドリックさんはこの二週間で劇的に料理が上手くなりました。それはその人に合った練習法を僕がさせたからです。自分に合っていない練習は身になりません。だから、僕の指導を受けて氷魔法を覚えてくれませんか? 気乗りしないのであれば一口これを食べてみてください。絶対に乗り気になります」


 僕はそう言ってボウルからアイスクリームをスプーンで掬い、ララスさんの口に運ぶ。

 ララスさんは戸惑いながらも体を傾けてアイスクリームを口の中に入れた。その瞬間、体を仰け反らせて旨さを体現してくれた。

 どうだ、アイスクリームが嫌いな人は少ないからな。それにこういった食べ物がないこの世界では絶対にはやるはずだ。


「どうですか?」

「はい! 覚えます! ぜひ教えてください!」


 ララスさんは目を輝かせて僕の手を握って答えた。


「わかりました。その時になったら声をかけます。大体一週間後ぐらいでしょうか。その時の休みの日に教えようと思います」

「わかりました。一週間後ですね。……この残りはどうしましょうか?」

「ああ、それは無料でこの場にいるお客さんに配ってください。『二か月後に発表する新作のデザートです。感想を聞かせてください』とでも言って」

「はい、わかりました」


 僕はそう言うと器を二つ持って厨房から出た。

 お店の中は先ほどよりも人数が増えていたけど足りるだろう。


「お待たせ、ファノス君。これがデザートね」


 僕はファノス君の前にさっき出来たばかりの新作デザートを置いた。スプーンも忘れずに置く。

 ファノス君は初めて見る料理に困惑しているようだ。匂いを嗅いだり手に持ったスプーンで突っついたりしている。

 それを見た僕は意地悪気味に言う。


「そのデザートは早く食べないと溶けちゃうよ?」

「――っ!? (ガツ)……んーッ! おいしい!」


 ファノス君は大きく口を開けると一気に一口食べた。足をバタバタと動かしてそのおいしさを僕に伝えてくれる。

 僕もそんなに喜んでくれるのなら、作った甲斐があるというものだ。


「シュン君! このデザート冷たいよ! それに甘い! 何でできているの? 初めて食べたよ!」


 等々とテンションが上がり、頬をほんのりピンク色に上気させて僕に迫る。

 僕はその感想を微笑ましく思いながら、ファノス君を見守る。


「それはアイスクリームという料理で、牛乳に砂糖や卵黄を入れて作るものなんだ。冷たいのは氷魔法で固めて作ったものだからだよ。ゆっくりと冷やしながら混ぜることでこんなに滑らかなものになるんだ」


 僕は口にアイスクリームを運びながら答える。

 ファノス君はアイスクリームを持ち上げて、その冷たさや食感を楽しんでいる。


「まあ、食べすぎたらお腹を壊しちゃうけどね」

「え?」


 僕の一言にファノス君の顔が一気に青褪めてしまった。

 しくったなー。冷たいものを食べる習慣が少ないからお腹を壊すことを知らないのか。

 僕は安心させるために大丈夫だと言う。


「ああ、このぐらいなら大丈夫だよ。あと、お腹を壊すっていうのは実際に壊すわけではなくて、お腹が冷えて痛くなることなんだ。寝るときにお腹を出して寝ていたら、目を覚ました時にお腹の調子が悪かったりというのがそうだよ」


 僕の説明を理解したのか、実際に同じ目に遭ったのか分からけど顔色が元に戻った。


「シュン君はやっぱり物知りだね。この料理もシュン君が作ったんでしょ? 話を聞いていたらそんな感じだったから。もしかして、わた……僕はとんでもない人に指導をしてもらおうとしている?」

「いやいや、それほどでもないって。僕よりもうまく教えられる人はたくさんいると思うよ。僕の場合は一から知ったことだね。しかも、師匠があの人だから」


 僕とファノス君は談笑しながらアイスクリームを食べる。食べ終わる頃には周りのお客さんがアイスクリームを食べ始め、大きな歓声と初めて食べる感触に涙を流しながら舌鼓を打っていた。


 これだけ好感触なら結構人気料理になりそうだな。

 そう思いながらお店に設置した時計を見ると既に四時半になっていた。


「ファノス君、今日はここまでにしようか。日が暮れる前におうちに帰ったほうがいいよ?」


 抜け出してきたんでしょ? とは言わずに帰ったほうがいいんじゃないかと聞く。が、ファノス君は首を振った。


「帰れない。帰りたくない。魔法が使えるようになるまでは帰りたくないの」


 ファノス君は駄々を捏ねるように言った。

 僕は困りながらもどうしようか考える。


「お母さんやお父さんが心配しているんじゃないの?」

「……してると思う」

「なら「だけど、魔法を使えるようにならないと……」」


 ファノス君は恐慌状態に戻ってしまった。

 やっぱり何かあるんだな。

 あまり関わりたくないけど、関わらないとファノス君を助けられないからな。それに、魔法を教えるって言ったからこのぐらいは助けてあげよう。ミクトさんの頼みでもあるんだから。


「ふぅー……わかったよ。僕が止まっている宿に一緒に泊まる? お金がないのなら僕が払ってあげるから」


 僕は仕方ないなぁといった感じに、ファノス君が安心するように言った。

 ファノス君は泣き出そうとしていたけど、僕の言ったことを理解すると小さく頷いて了承してくれた。


「それじゃあ、宿を取りに戻ろうか。早く行かないと部屋が取られちゃうかもしれないしね」


 いや、多分空いていないだろうな。結構有名だからなぁ。

 まあ、空いていなかったら僕の部屋でもいいや。どうせファノス君も男の子なんだし。

 ドキドキするのはなぜだ?


 僕とファノス君は代金を払うと僕の泊まっている宿、“安らぎの旨味亭”に行った。




「ごめんなさいね。今さっき宿がいっぱいになっちゃったのよ」


 女将のレーベルさんがすまなさそうにファノス君を見て言った。

 やっぱり満員だったか。

 仕方がない。あの案でいこう。


「……わかりました」

「ちょっと待って、ファノス君」


 僕はファノス君を呼び止めるとレーベルさんに向き直って先ほど考えた事を聞いてみる。


「僕の部屋に泊まらせることはできますか? お金はちゃんと払いますから」

「それならいいけど、シュンちゃんの部屋は一人部屋でしょう? 狭くなっても構わないのかい?」

「はい、僕は構いません。ファノス君は家庭の事情で家に居られなくなってしまったみたいですから。それに、僕の初弟子ですから。しっかりと面倒を見ます」

「そうかい。なら、ファノス君も一緒に泊まっていいよ。朝食夕食付き一泊銅貨三枚、一週間で銀貨二枚だよ」

「……はい」


 僕は銀貨二枚支払い、ファノス君の手を握って僕の部屋に連れていく。

 途中に「え? え?」「心の……」等の声が聞こえて来たけど、よく聞き取れなかったからスルーしておいた。




「ここが僕の部屋だよ。これからは好きに使っていいからね。持っている荷物は部屋の隅にでも置いて。それと、お風呂はないからどうする?」


 ファノス君はまた顔を赤らめて、というよりもとから赤く俯いていた。

 あれ? 何か質問が悪かったかな? お風呂がないから体を拭くか、僕が魔法で綺麗にするかって聞いたつもりだったんだけど……。

 あ、そうか。僕がそう言った魔法を使えるって知らなかったんだっけ。


「ああ、伝え忘れていたね。僕が編み出した魔法に洗浄魔法っていう魔法があるんだ。その魔法は威力が全部魔力に依存するけど、術者がゴミだと思った存在を消してくれるんだ。だから、さっきの質問の意味は水を貰って体を拭くか、僕が魔法をかけるかっていう意味なんだ」


 ファノス君は僕の言葉が耳に届いていないのか先ほどと変わっていない。心なしか体が震えている。

 あ、これは、あれか。


「やっぱり、僕と一緒の部屋っていうのは嫌だった? 聞かなかった僕が悪かったよ。ごめんね。ファノス君がこの部屋を使いなよ。僕は「待って! いやじゃないの! だから、だから、待って! ……」……じゃあ、どうしたの?」


 部屋から立ち去ろうとした僕の右腕を挟むように掴んだファノス君は、俯いた状態で僕に縋ってきた。

 僕は突然のことで戸惑いながら、少ししゃがんでファノス君の背中を楽にさせるために優しく撫でる。僕は嗚咽を漏らし始めたファノス君が落ち着くまで、背中を撫で続けた。


「もうだい、じょうぶ。……シュンくん、あり、がとう……」


 ファノス君は目を充血させ目の周りを赤く腫らせてつっかえながら、僕にそう言った。

 僕はファノス君をベッドに座らせて先ほどの理由を聞くことにした。


「ファノス君? いったいどうしたの? 僕が何か悪いことをしたのなら言って。すぐに直すから。それじゃないのなら何があったの? 信用できないかもしれないけど、僕に話してくれないかな?」

「…………」

「無理に聞こうとしないけど、これだけは答えてくれる? 僕と一緒の部屋でもいいの?」


 僕はファノス君の意思を尊重させる形になるような言葉を選んで言った。

 別に僕はお金を持っているから他の宿に泊まってもいいし、野宿をしても構わない。でも、ファノス君はお金を持っていないし、身分の高い人みたいだから危ないと思う。顔も綺麗だから不埒ものに攫われてしまうかもしれない。

 だから、僕としてはファノス君の近くに居たいんだけどな。


「……グスン。一緒の部屋でいい。一緒にいてほしい。お願い、シュン君」


 ファノス君はぼそぼそっと僕に聞こえる声音(こわね)で思いを伝えてくれた。


「わかった。夕食の時間になったら起こしてあげるから今はぐっすり寝てていいよ」


 僕はファノス君が疲れているように見えたから横にして休んだらと声をかけた。

 ファノス君は一瞬迷うような仕草をしたけど、僕が横になって目を閉じたから観念して寝ることにしたようだ。

 僕は無魔法の『アラーム』を六時半にセットして一眠りすることにした。


 耳元で鳴りアラームによって起こされた僕は、隣でスヤスヤと整った良い寝息を立てているファノス君を起こすのが忍びないと思いながら、頬を突っついて起こした。

 ファノス君は、


「……ッ、フニャッ!?」


 と奇声を上げてシーツに包まった状態で、ベッドから飛び降りた。

 その姿は寝起きを見られた女の子みたいだった。

 その姿の状態で顔を真っ赤にして、「な、何で君が!?」と言われたら否応にそう思ってしまうだろう。

 その後ファノス君が自分の状況を理解して先ほどよりも顔を赤くしたのは言うまでもない。




 僕とファノス君は一階へと降り、空いている席に座った。すぐにレンカちゃんがオーダーを聞いてきたので、僕は今日のお勧めを頼み、ファノス君はよくわかっていなかったので僕と同じものにした。

 僕とレンカちゃんが話している間、なぜかファノス君の機嫌が悪かった。


「はい、お待たせ。今日のお勧めはピッグボアのハンバーグとラビーのクリームシチュー、採れたてサラダと自作ドレッシング、白いパンだよ。シチューのお代りはいくらでもして良いからね。たくさん食べて大きくならないと」


 僕がファノス君にレンカちゃん達のことをなんとなく話している間に、レーベルさんが頼んだ料理を運んで来てくれた。

 帰り際に僕とファノス君の背中をバンッと叩いて笑いながら去っていった。


「さあ、ファノス君食べよう。早くしないと肉が硬くなるよ?」

「――ッ!? いただきます! (ガツガツ、モグモグ……ゴックン)。とってもおいしい! お昼に食べたおむらいす? もおいしかったけど、このハンバーグも同じくらいおいしい!」

「そうでしょ。ここの宿の系列の料理は、この国では有名なんだよ。それプラス、僕が新しい料理を教えたからバリエーションが増えたんだ」


 料理を頬張って未知なる味を知ったかのように目をキラキラさせているファノス君を微笑ましく思いながら、僕も一口食べて軽く自慢をした。

 それを聞いたファノス君は僕に尊敬の目を向けてくれる。

 なんだか鼻が高くなるよ。これが師匠の気分か……。師匠もこんな気分だったのかな?


「シュン君は魔法だけじゃなくて強いし、料理が出来るし、物知りだね。……(それにカッコ可愛いし、頼りになるし、逞しいよ)」

「うーん、僕はそうでもないと思うけどなぁ? 知っているのも、知らないと生きていけなかったからだし。料理は師匠が作れなかったからだしね」


 ファノス君がもじもじしながら、ゴニョゴニョしゃべっていたけど独り言と思いスルーした。


「知らないと生きていけなかったの?」


 ファノス君はナイフで一口サイズに切り分けたハンバーグをフォークに刺し、口に入れようとしたのをやめてそう訊いてきた。


「まあ、そうだね。僕は五歳の時にファチナ森という森の中に捨てられていたんだ。そこを彷徨っていた僕を拾ってくれたのが師匠だったんだよ」

「じゃあ、その師匠が居なかったら今のシュン君はないって言うことだよね?」


 ファノス君は確認するように言った。


「うん、そうなるね」

「なら、僕はその師匠に感謝しないといけないね。その師匠のおかげでシュン君と会えたし、いろんなことを教えてもらえるし……(一緒に居られるしね)とっても感謝しているよ」

「僕も師匠には言葉に表せないほど感謝しているよ。今生きていられるのは師匠のおかげだ。(他にもメディ、ロトルさん、ミクトさんのおかげだ)」


 最後にそう心の中で祈るように感謝の念を伝えた。

 あの三神さんが僕のことを救ってくれなかったら、この世界にすらいなかったわけだし、魂自体もなくなり地球を消滅させてしまうところだった。


 僕が感慨深そうにしているとファノス君が心配そうな顔になっていた。


「捨てたお父さん達のことを思い出したの? もしかして恨んでいる? もう一度会いたい? 理由が知りたいの?」


 どうやら僕が両親のことを思い出し、悲しんでいるように見えたようだ。

 僕は笑ってファノス君に言う。


「いや、僕はそんなこと思っていないよ。はっきり言って僕は両親のことなんてどうでもいいよ。よく覚えていないし。それに、僕の親は師匠だから」

「で、でも、悲しいよ……」

「うーん、そう言われてもなぁ……。よく言えないけど多分もう会えないと思う。もしかしたら、死んでいるかも」


 地球がこの世界と同じ速さで流れているかわからないし、僕がこの世界に来たのが少しの誤差なのかもわからない。魂の数がたくさんあったから結構な時間が掛かっていると思う。神域の時間が止まっているとは考えにくいだろう。


「どうして?」

「うん? それは……僕が家族の家事をすべて引き受けていたんだよ。いや、やらされていたんだ。僕を捨てたから見つけたのかもしれないけど、あいつらの食事を作れるとは思えない。何でもかんでも文句を付ける奴らだったからね」


 ラビーの肉団子をフォークに突き刺して口の中に入れ、モキュモキュと食べながら僕がそう言うとファノス君はより悲痛そうな顔をした。

 僕のために悲しんでくれるのはうれしいけど、ファノス君が悲しむのは僕としては辛くなる。


「そんなにファノス君が悲しまないで。君がさっき言ったけど、捨てられたから君と会えたんだ。それは僕としてはとてもうれしいことだよ。僕はこの年で冒険者をしているから、同年代の友達がいなくて初めてなんだよ。こんな気持ちになるのは」


 ファノス君は食べようとして大きく開けた口のまま停止した。目は僕の目を捉えている。

 そのまま顔を真っ赤にしてキュ~と口から漏らして、体の力を抜いたかのように背凭れに体を預けてしまった。


 僕は慌ててしまったけどすぐに手に持っていたフォークがピクリと動き、ものすごいスピードでハンバーグを食べ始めた。


 僕はそれを見て何か誤魔化したいのかなと思いながら、全て完食する。


「ふぅー、食べた食べた。もう、お腹いっぱい」

「うん、おいしかった。いいな、こんなおいしい物が毎日たくさん食べられて」


 ファノス君が何か漏らしたのを僕は聞き漏らさなかったけど、その言葉と声に悲しみを感じて心の中に仕舞っておくことにした。


「さて、僕達も部屋に戻って簡単な魔力の特訓をしようか」


 僕は立ち上がりながらファノス君に言う。

 ファノス君は眉を上げた。

 さっき二時間ほど寝たからいいかと思ったんだけど、まだ寝足りないのかな?

 そう言えば十一歳だったんだっけ……。


「え? 休むんじゃないの?」

「いや、休みたいのならそれでもいいよ。だけど、少し眠い時や幸福感が出ている時は集中しやすいんだ。だから、魔力の質を上げる特訓をしようかなって思っただけ」

「そうだったんだ。なら、やる」


 ファノス君はそれを聞くと両手をグッと腰に溜めてやる気を出した。


「じゃあ、僕の部屋に戻ってやり方を説明するね。と、その前に体をきれいにしようか」

「――(ボフンッ)ッ!? か、体を、あ、洗う!?」

「う、うん、そうだけど……寝る前に言ったよね? 聞いてた……よね?」


 僕はファノス君の焦りように驚きながら、寝る前に言ったことを確認した。

 あーもう、本当にかわいいよ。なんでファノス君は男の子なんだろう? どっからどう見ても服装と性別以外は全部女の子なのに。

 僕を、地団駄を踏みたい気持ちにさせるファノス君はそんなことをつゆ知らず、寝る前の状況を思い出しているようだ。


「あ、言ってた。ごめんなさい。で、でも、変なことはしないでね」

「し、しないよ!」


 変なことってなにさ。

 僕はどんなにかわいく思っても男に手を出す趣味はない!


 部屋に戻り来ている服と体全体に洗浄魔法をかけた僕とファノス君は、ベッドの上で横になり気を静めている。

 今行っているのは体をリラックスさせることだ。僕はそれを促すために水、風、回復魔法を使っている。

 風魔法で心地よいそよ風を起こし、水魔法でマイナスイオンのようなものを発生させ、回復魔法で鎮静化させている。


「スー……ハー……スー……ハー……」


 と規則正しい深呼吸のような息の音が聞こえる。


 やり方として目を閉じて、自分の体内の魔力を感じ、綺麗で清らかな川の流れのように頭から足先を通り頭に戻る、といった循環法だ。血液の流れに似ているけど心臓に戻らないところが違う。

 質を上げるだけだから魔力を循環、魔力制御や魔力操作をしながら、精神を統一させているのだ。


 はっきり言えば難しい。

 まず精神を統一できない。今は僕の魔法で最適化されているためしやすいが、一週間もすればこの魔法をやめるからしにくくなるだろう。


 次に循環を規則正しくさせること。一気に川の流れが大きくなると決壊するように、魔力も大きく流れた場合そこの組織を破壊してしまう場合がある。僕で言う魔力通しのことだ。

 それを避けるために振れ幅を無くさせてゆっくりと規則正しい魔力を流させている。これが出来るだけで一気に魔法の扱いが上手くなる。

速さ、量が大事だ。


 僕はそれを感じ注意しながら、同じことをしている。

 僕はこの修行法を見つけて二年程になる。だからと言って僕がすぐに出来るわけではないけど。


 それから二時間ほど経つと僕とファノス君は自然と眠ってしまっていた。


次の投稿は今日の二十一時に予約しています。

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