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神々との遭遇

小説を書くのは難しい……。

 なぜか、意識が戻ってきている感じがする。

 ここはどこだ?

 辺りを見渡しても、真っ暗でここがどこなのかさっぱりわからない。

目を開けているのか、音が聞こえない、何も見えない、立っているのか分からない。


 ここはどこだ?

 僕はいったいどうなっているんだ?

 誰かいないのか?


 僕はそう思うと急に怖くなりはじめた。

 暴力をする家族、いじめてくる学校の皆の声が聞こえてくる。


 やめて、もうしないでっ!

 何でもするからっ!

 殴らないでっ! そんなこと言わないでっ!

 お願いっ!


 怖い怖い怖い、ここにいたくない。

 僕はまた逃げ出した。

 逃げるだけでは何の解決にもなっていないと知っていながら……。


 …………。

 ……どれくらいの時間が経ったのだろうか。

 気づけば声が聞こえなくなっていた。

 僕は辺りを見渡した。

 そこで僕は暗闇中に小さな明かりがあるのを見つけた。


 ん? あの明かりはいったいなんだろう?


 ここにいてはまたあの声が聞こえてくるかもしれない。

 とりあえずあの光があるところまで行ってみよう。


 少しずつ近づいているようだ。

 近づいていくにつれて、かすれた声が聞こえてくる。

 またあの声か!

 逃げ出したい。

 …だけど、この光から逃げてはいけない気がする。

 ここで逃げたら取り返しのつかないことになる。

 そんな気がする。

 僕は震える心に鞭をうち、あの光に向かって行ってみようと勇気を振り絞った。

 わからない声がはっきりと聞こえるようになってきた。

 透き通っているとてもきれいな声だ。

 今まで聞いてきたどの声でもない。

 とてもきれいな声だ。


「……シュン…」


 ん?

 今、僕を呼んだ?


「そろそろ起きなさい、シュン。目覚めなさい」


 やっぱりそうだ。

 このきれいな声は僕を呼んでいる。


 僕は、優しく包み込んでくれるかのような何とも不思議な気持ちになる声のもとへと急いだ。

 あと少しというところまで来たところで、急に光の方から近づいてきた。


 わっ! 吸い込まれる!


 抵抗虚しく、僕はその光に吸収されるかのように吸い込まれていった。





「起きなさい、シュン。もしもーし」


 あの声が僕の耳元から聞こえてくる。

 それと同時に、僕の頬を突っついている感覚がある。

 それがくすぐったくて身動(みじろ)ぎしてしまう。


「ん? シュン、気が付きましたか? 私の声が聞こえますか? 私が見えますか?」


 僕に矢継ぎ早に聞いてくるので、僕は目を開けてみることにした。

 そこには絶世のという言葉が頭に着く、とても綺麗な女の人がいた。

 足もとまで届く髪は、黄色がかったプラチナブランドで軽くウェーブがかかっていてとても綺麗だ。少し垂れた優しげな瞳と小ぶりながらもスーと通った鼻筋、サクランボを連想させるようなきれいな色の唇が小柄な顔に完璧なバランスで収まっている。

 

 なんで僕の名前を知っているんだ? とか、聞きたいことがあったけど言葉にすることができなかった。


「――? ――!?」

「ああ、しゃべれないから考えるだけでいいです。私が思考を読んであげますから。名前を知っているのは神だからです」


 と、優しい笑みを浮かべて言ってきた。

 考えたことを読み取ってくれるのかありがたいことだ。

 ……ん? ちょっと待てよ。

 思考を読む? どういうこと?


「そのままの意味ですよ。なんてったって私は、神なんですから!」


 きれいな女の人は腰に手を当て胸を張って、異様に神を強調して言ってきた。

 えっとー、この人は……何言ってんだ。

 確か、カミって言ってたよね?紙じゃなく、髪でもない?神話に出てくる?いるかいないかわからない神?


「そうです、その神なんです」


 満足そうに頷きながらそう言ってきた。

 そっかー、神様なのかー。

 神様っておじいちゃんじゃなかったんだね。

 初めて知ったよ。


「えっ、信じちゃうの?」

『えっ、嘘なの?』

「い、いや、嘘じゃないんだけど…」

『なら、いいじゃないですか』


 なぜか微妙な空気が流れ始めた。

 ま、理由はわかるけど。


「な、ならこれでどうでしょう。俊? あなたは車に引かれて死にました」


 これでどうだ、とでも言いそうな感じで言ってきた。

 そんなこと僕は知っているので答えは決まっている。


『あー、死にましたね』

「えっ!? これもダメなの!」


 神さんは僕の返答に体を反らせてオーバーな反応をした。

 ちょ、ちょっと神さんそれはないんじゃないかな? さん付けになっちゃった。

 傷ついちゃうよ、僕。


「え、あ、ごめんなさい」


 自らの失態に気が付いたのかすぐに謝ってくれた。


『いや、まあいいですけど』

「そ、そう? (で、でも何なら驚いてくれるかしら。あなたの魂が消滅しそうだったとか? あなたのせいで世界が崩壊しかけていたとか?)」


 今、聞き捨てならない事を聞いた気がする。僕の魂が消えかけていた? 僕のせいで世界が壊れかけていたとかなんとか。

 本人は聞こえないように呟いたつもりなんだろうけど、僕の耳にはしっかりと聞こえていた。


『ちょっとまって、それどういうこと?』

「え、なに?」

『だから、今言った僕の魂が消滅とか、僕のせいで世界が壊れるとかだよ!』

「あー、聞こえてました? それがどうかしましたか?」

『「どうかしましたか?」じゃないよ! どういうことか説明して!』


 何でもないかのように言ってくる神さん。

 それに対して僕はどういうことか知りたくて声が大きくなる。

 そんなこと気にないとばかりに神さんは少し考える仕草をし、魂の仕組みについて話し始めた。


「まず死んだ者の魂は天まで昇って神々の審判を受けます。そこで生きていた間に犯した罪が審議にかけられ、罪の大きさが決まります。ここまではいいですね」

『はい』

「罪は魂の濁り方で決まります。もちろん、濁っているほど犯した罪が重く、償う時間がかかってしまいます。他にも大きさ(許容力)、強度(存在力)、明度(意志)と分類されます」


 神さんは右手の指を立てながら言っていく。

 その仕草はとても様になっている。

 そのうち最後に立てた三本の指を左手で掴んだ。


「この三つのうちどれか一つでも欠けてしまうと、その魂が消滅してしまいます。魂の消滅は、世界のバランスを大きく変えてしまい、崩壊させてしまうこともあります。ですが、普通は欠けることなんてありえません」


 そういってつかんでいた手を放し、真剣な顔で僕の方を見てきた。

 ん? どういうことだ?

 普通は欠けない?

 僕は普通じゃなかったってことか?


「はい、あなたの場合住んでいた環境のせいで魂が欠けてしまいました。悪意に苛まれ続けた魂は欠けてしまうことがあります。」

『でも僕よりも悪い環境にいる人だっているんじゃないんですか?』

「環境といっても住んでいる地域だけではありません。家族や周りの人、時代、同じ境遇の者、心、味方の有無、死に方等数えきれないほどあります」

『……僕は…死ぬまで最悪だったってことですか』


 なんだかやるせない気持ちになってきた。

 僕は死ぬまで最悪な環境にいたんだな。


「いいえ、最後だけは最悪ではありません」


 え?

 神さんは満面の笑みで僕を見ている。

 何か死ぬ前にいいことでもあったかな?

 僕が思い出そうと悩んでいると神さんが嬉しそうに言ってきた。


「あなたは死の直前に私たち神に願いました。『生まれ変わることができるなら自由に生きたい』と心の底から願いました」


 確かに、死ぬ前にそう願った気がする。


『でも、そんなことで魂の消滅は免れるんですか?』

「それだけではだめでしょう。あなたに足りないものは明度、意志の強さでした」

『――意志の強さ、ですか』

「意志の籠っていない願いは抜け殻と一緒です。願いに意志を込めるには心の底から願わなければなりません。最後に心の底から願ったことが消滅を免れたのです」


 そっかー、今までなされるがままにしているのがいけなかったんだろうな。

 ちゃんと訴えればよかったのか。


「ですが、あなたは消滅を免れただけで安全な状態になったわけではありません。今も徐々に消えかけていっています」


 …………。

 それってかなりやばいんじゃ――。


「かなりやばいですね」


 ちょっ、どうすんの! このままじゃ世界が崩壊するよ!

 神さんは僕がどうしていいのか分からず、オロオロしているのを見て笑っている。

 神さーん。

 何笑ってんの。

 僕、消滅しちゃうよ。

 世界が崩壊しちゃうんだよ。

 わかってんの。

 なんかこの神さん抜けてるっていうかなんというか……。

 非難がましい目で神さんを見ていると、なぜか拗ねてしまった。


「私、考えてることが読めるって言いましたよね」


 神さんは頬をパンパンにふくらまし、怒ってますよアピールをして言ってきた。

 背後にはなぜかハムスターが見えるんですけど…。

 そんな顔をしてもきれいな人は綺麗なままなんだな……。

 急に、神さんの頬が萎んで笑顔になってきた。

 あ、読めるんだった。


「ありがとう。もっと褒めてくれてもいいんですよ」

『そんなことより、どうにかならないんですか? 早くしないと世界が崩壊しちゃいます』

「むぅ、大丈夫、大丈夫です。そのために私がいるんだから」

『じゃあ、早くどうにかしてください』

「そんなに焦らなくても大丈夫なのに」


 神さんは愚痴を言いながらも両手を僕の方へかざし、「えーい」と何とも気の抜ける掛け声をかけた。

 手から光が出て、僕の体を包み込む。

 ああ、温かくて心地よい気持ちのいい感覚がする。

 生き返るー。


 ボンッ


 僕の周りから何か現れるような音が聞こえてきた。


「え、何? 何が起こったの? しゃべれてる? 何で?」


 先ほどまでほとんど体が動かなかったのに、今は普通に動けるぞ。

 なぜだ。

なぜなんだ。

 解せぬ。

 僕が、何が起きたのか分からず混乱していると神さんが急に笑い出した。


「フフフ……。…ごめんなさい。あなたの反応がかわいくて、つい」


 僕がジト目で見ているのに気が付いたのか、神さんが謝ってきた。

 かわいいだって? 何言ってんだ? 僕がかわいいわけがない! 痩せてたし、髪もぼさぼさだったしかわいい要素がどこにもない。


「それで、僕は一体どうなったんですか?」

「あなたに私の力を与えたので消滅を免れました。これで大丈夫です」

「先ほどの光ですか? あと、力とはどういった…」

「そうですよ。力と言ってもただ、魂に肉体を与えただけなんですけどね…。ただ、……なんか、ごめんなさい」


 神さんが急に謝ってきたぞ。

 なぜだ? 何かされたかな?

 とりあえず聞いてみるか。


「どうして謝るんですか?」

「えっと、怒らない?」

「よくわかりませんが怒らないでおきましょう」


 神さん、素が出てます。

 まぁ、よくわからないが怒らないでおこう。

 僕を助けてくれたわけだしね。

 僕の言葉に安堵したのか、神さんはやってしまったことを打ち明けてくれた。


「えっとね、肉体を作ったのはいいんだけど……、あなたの体、どう見ても…五歳児に見えるんだよね」


 あはは……、と神さんは僕に言った。

 …………。

 は、はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?

 そう言われて差し出された鏡を覗き込んで、僕は自分の体をよく見てみる。


 そこには身長が百センチ弱の子供がいた。肩までの長さの黒髪は癖がなく、幼さが残る顔にはクリっとした黒目が特徴的である。


 確かに生前と比べて背が低いし、腕も短い。声だってもう少し低かったはずだ。

 この原因である神さんに理由を聞いてみる。


「え、なんで! これ、どういうこと?」

「怒らないでって言ったじゃん」


 神さんが涙目になった。

 おっと、声が低くなってしまったか。

 怒らないって言ったしな。

 はぁー、一つ溜め息を入れ、怒らないようにもう一度聞いてみる。


「で、なんで体は小さくなったの?」

「それはね、肉体を構築する際に魂の状態に合わせちゃったから――かな」


 かなって頭を傾げながら言ってきた。

 かわいいな。

 いやいやいや、騙されないぞ。


「もうちょっと早くできたよね?」

「…はい」

「どうして先にしなかったんですか?」

「……会話をするのが楽しくて忘れてました。ごめんなさい」


 申し訳なさ過ぎたのか、神さんが土下座をしてきた。

 うわー、土下座しちゃったよ。僕、神さんに土下座されてるよ。人類初じゃない、これ。

 と、とりあえず頭を上げてもらおう。


「僕は怒ってないですから、頭を上げてください」

「いえ、申し訳ないんでこのままで」


 ……めんどうくさー。

 もう怒ってないから頭を上げてって言ってるのに。

 どうしたもんだろうか。

 このままじゃいけないよね。

 誰も見ていないよね。

 思い悩んでいると、背後から声がしてきた。


「あなたはいつまでそんな恰好でいる気ですか?」

「よし、踏んでやろう」


 僕は、声がした方へ振り返ってみる。

 そこには、先ほどまでいなかった二人の男女が現れていた。


「▼ここから先、俊の言葉を『』で表します。」を消しました。

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