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本物の邪神レヴィアの居場所

聖剣や聖杯、神が創った物。

語彙が少ないので何と言えば良いのか分かりません!

 邪神レヴィアを倒した僕とフィノ。

 でも、本当の邪神レヴィアじゃないってすぐに分かった。

 あれだけ強くて、邪神っぽくて、黒い靄を使って、言動がそうだったとしても。


 だから、ローレ義兄さん達の声を聞き即座に否定した。


「それはどういうことだ?」


 止まる気配も、戦局が変わる気配もない外の様子から予想はしていたみたい。

 焦りながらも冷静に状況を飲んで、周囲にそれを伝えさせない。


 フィノを椅子に座らせて回復魔法をかけてもらい、魔力回復のポーションを飲む。


「邪神レヴィア、いえ、あれは邪神レヴィアが作り出した限りなく本体に近い分身体……だと、思います」

「倒した後分散するように消えました。戦った感触も神の力と疑問を感じざるを得ません」

「分身体……偽物ということか」


 顎を擦り、ローレ義兄さんは繰り返す。

 それに僕とフィノはストローから口を離して頷く。


 信じられない、信じたくない気持ちは十分わかる。

 でも、直接倒した僕達だから本体じゃないと気付けた。


「私もそう思うぞ。外にいるとそれがよく分かる」


 そこへ戦場から引き揚げ、休息に入っていた義父さん達が会議室に入ってきた。


「父上、それほどですか」

「うむ、ここは感知されぬようシュンの結界で入念に守られておる。その弊害で邪神の気配が肌に伝わらん」

「あなた、こちらに」


 若干息を切らす義父さんの肩を支え、何時の間にか準備されているマッサージチェアの方へ移動した。


 義父さんは帝国でレムエストルさんが放ったような強烈な攻撃をしたわけじゃない。

 体力や魔力の問題で無理だったから。

 その代わり義父さんは国民から慕われてるから前線に立つだけで士気が高まる。

 装備もお守りの力を利用する支援特化。

 結界と同じ仕組みで魔力を徴収してお守りが増幅、剣から広範囲に渡って支援魔法が発動、更に支援魔法は敵に効果を与えないようにお守りを通じて効果が出る仕組み。


 義父さんの魔力は大分回復しているみたい。

 でも、普段と違うやり方だ。

 自分が魔力を集めてばら撒く柱になるわけだからね。

 精神的な負担が相当なものになるんだ。


「聞いていたような醜い姿でもありませんでした」

「黒い靄や気配が無ければ流石は女神だ、と思えるほどです。も、勿論フィノとは比べ物にならないよ」

「へー、ふーん、ほー」


 し、失敗した!

 フォローが逆にフィノの目を座らせてしまう。

 それどころか邪神より怖いオーラが噴き出てるよ!


「全く……。戦ってみてもあれで倒せるほど弱いとも思えません。強いのは強いのですが、まるで人形のような相手でした」

「加護の力を使っていたとしてもダメージがあり過ぎでしたね。邪神の攻撃も人間の範疇に入っていたと思います」


 それが真実であるかのように生き残っている映像機に邪神の集団の姿が映る。

 まだ洗脳が解けていない人達が多く存在し、ファミリアの兵士達が困惑の色が見える必死な顔で戦っている姿も。


 否応にまだ邪神は倒れていないのだと分かる映像だ。


「現にあれは自分が邪神だとは一言も言ってませんでした」

「そう言えば、うん。確かに邪神っぽい事は言ってたけどそれは聞いてない」

「だが、気配や実力の一端は邪神その物だった」

「だから、限りなく本体に近い分身体なのであろう。恐らく、動けない自らの代わりを作り送ったのであろう」


 義父さん達はそう推測する。


 邪神レヴィアの本当の姿はこれから本体がいる所に行けば分かることだ。

 分身体を作ったのは動けないって他に醜い姿だからってのもあると思う。

 邪神の集団の様子を見る限り心酔してそうで、あの姿だから惑わされるとか思ったんだ。

 現に姿を見て邪神だと思ったわけだしね。


 フィノには言えないけど、キスされそうになった時も美女だからってのもあるんだ。

 醜い奴に迫られたら、いくら黒い靄で心が駄目になってても覚めるってもんだよ。


「こほん」


 ひゅっ!

 た、ただの咳、そうただの咳!

 ちょっと飲み物が喉を刺激しただけなんだ。

 ここで狼狽えてぼろを出すからダメなんだよね、うん。


「とりあえず、各地にまだ戦いは終わっていないと指示を出せ。想定よりも被害は出ていないはずだ。それと帝国、魔法大国、聖王国、世界教と通信だ」


 ローレ義兄さんの指示に、通信班の人達が同じセリフを口にして情報を送る。

 理由としては『邪神はぎりぎりのところで逃げてしまった。追撃を行うからそれまで食い止めろ』ってところ。

 事実は大分変ってるし、邪神を倒せるか分からない。

 でも、倒さないといけない、倒せないと救えないんだから言ってることは変わらないんだ。


 そのことが伝わらないようにローレ義兄さんが挙げた通信相手以外に声が漏れないように魔道具を切り替える。

 もしもの時の為に作っておいた専用の通信回線だ。

 四大国と世界教だけで話し合うこともあると言われたからね。


『ローレレイク殿、一体何がどうなっている? 邪神は倒せたのではないのか』


 回線が繋がると同時にフェルナンドさんが少し早口で言った。


『光神教の邪教徒達の勢いも止まりません。遅れて到着した剣聖のおかげで持ち堪えてはおりますが』

『キメラが消えたことで大分有利にはなったがな。だが、高ランクの魔物は厄介なのは変わらん』


 それに同意するシルヴィアさんとダグラスさん。


 声にどこか責める様な焦りが見え隠れしている。

 大結界が修復されてほとんど被害は出ていないように思える現状。

 だけど、一瞬の大結界破壊は数百体の魔物の侵入を許し、地中からもワームが侵入して、虫の魔物は卵を産んで大繁殖。

 発明家の改造も加わってて、仕事を終えたアルカナさんから愚痴交じりの忠告が届いたんだ。


『クロス様からも事情説明を至急頼むと届いております』

「ララ様、シルの……皆は無事でしょうか?」


 と、ギュッとコップを握りしめたフィノが心配そうに尋ねた。

 僕もそれは心配だったりする。

 でも、報告では渡り合ってるっていうし、誰かが怪我をしたらローレ義兄さんが言ってるはずだ。


『そのことが一つ。シュン様とフィノリア様が邪神を倒したのは各地で見られたことでしょう。ですが、影響を持っているはずの邪神の集団や煉獄に変化がありません。シル様以下ご友人方はクロス様とフェルメラ様と共に戦っております』


 フィノは胸に手を当ててほっと安堵する笑みを浮かべた。


 戦闘自体は渡り合っている状態だという。

 僕とフィノが放った魔法が邪神レヴィアの分身体が出て勢いづいた煉獄を抑え込み優位に立っている。

 でも、決定打を与えることが出来なくて、邪神が倒れれば変化があると思ったのにこれはどういうことだ!? って急ぎ聞いて来てるわけ。


 それは各国も同じで、ローレ義兄さんが限りなく正解に近い分身体の話を伝えた。


『う~む……そこまでは考えていなかったが、あり得ぬ話ではない』


 動けないとは思っていなかった。

 隠れていたんじゃなくて、動けなくて狙い撃ちにされないように潜んでいたんだ。


『分身体ですか。では、振出しに戻ったということなのでしょうか?』


 シルヴィアさんが困った口調で、邪神を炙りだすのが困難になった額に手を当てている姿が分かる。

 だけど、その心配は無用だ。


「居場所が分かっているのか?」

「確証はありませんが、邪神が現れた時の雲の広がりから推測できます」

「そっか! その中心に邪神がいる可能性が高いんだね。お兄様、報告は来ていないのですか?」


 皆もその可能性が高いと口にして、それぞれ雲が広がった方角を思い出す。


 一瞬で空を覆い尽くし漆黒の雲。

 戦闘を行っていたファミリアからは気づいたら覆われていたという報告が多いけど、空を見ていた住民達から方角の情報が寄せられていた。

 それは王国のある方面。


『広すぎる! もっと特定できる情報はないのか!』

『そんなに焦っても仕方ありません。何か搾れる情報があるはず』

『邪神、居場所、隠れる、特定……あっ! あるじゃない! 邪神は神々の力でも見抜けない神が創った場所に隠れているのでしょう?』

『そうか! その周辺の――』

「王国にある遺物の場所から特定しろ!」


 ローレ義兄さんの指示が飛び、遺物に派遣した兵士達に確認を取る。


 場所は、僕が思っている通りならあそこだ。

 神が創ったといわれ、誰も到達したことが無い試練の塔。

 頂に到達した者には神自らが褒美を与えると言われる迷宮。

 その巨大な塔の迷宮を中心に築かれた街――迷宮都市バラク。


「分かったぞ! 場所はバラク、バラクの神級迷宮から魔物が溢れ出し、強い力を感じるということだ! 間違いない!」


 バラクは王国の領内にあるわけじゃない。

 でも、各地から見たら王国方面にある。


『近場の者達を支援に向かわせましょう』

『うむ。厳しい状況ではあるが、キメラが消滅した今なら部隊を送れる』

『SSランクが必要だろう。帝国からはアシュラを行かせる』


 師匠とアルカナさんが発明家を倒してくれたからキメラも力の供給が出来なくなって消滅。

 正しくは邪神の力も分身体を倒したことで削れて、キメラの力が下がった結果コアを破壊しやすくなったって感じだと思う。


「誰も来れないから潜伏するにももってこいってことだね」

「遺物自体強力な魔物や守護者がいたりするからね。その中でも誰も攻略したことが無い迷宮ならって思ったんだ」


 分身体は空間を超えてきたのに高速移動しかしなかった。

 迷宮は異世界のような物で、迷宮から外に、外から迷宮に転移することは出来ないんだ。

 少なくとも人の身である僕には無理だった。


「それで高速移動しかしなかったんだね」

「使えないことはないだろうけど、捉えられない速さなら瞬間移動と大差ないからね」


 それに、空間を察知すれば魔力や波動で読み取ることができる。

 転移の方が楽だったりするんだ。


「堕ちても神なら迷宮からも時空を超えて来れる」

「一番安全な神級迷宮に隠れられるってわけ」


 そこから敵を送り出せるし、迷宮の法則を無視して魔物を外に出すこともできる。

 邪神の手口からしてやりそうだ。


『ですが、今まで一人も攻略者を出していない塔です。どうやって上まで行くつもりですか?』


 神級迷宮はお伽噺になるほど世界的に有名で、他国の人間であるララさん達が知らないはずもなく、そもそも国の上層部は把握しているはずだ。


『破壊する、というのは無理だろうが、塔なのだから飛んでいくというのは不可能なのか?』

「文献で『神の結界に護られた塔。その塔は試練に挑む者を歓迎する。そうでない者には神罰を与えん』と古い文献で読んだ覚えがある」


 ローレ義兄さん曰く、機密書庫に飛行魔法を使ってみたお馬鹿さんの報告書があったそうだ。

 一定の距離まで行くと見えない壁に阻まれ、それを無理矢理越えようとすると魔法が強制解除されて怒りの声が届いた、ってね。

 誰かは知らないけど、武術神のクレアストルさんとかがしてそうだ。


『攻略しろというのか! 一体どれだけの時間、いや、日数がかかるか……』

『すぐに部隊を編成しなければなりません。物資の方も足りるかどうか』

『それ以前に今度は倒せるのか? かなりギリギリだったのであろう』

『しかし、手をこまねいている暇はありませんよ』


 邪神レヴィア本体の居場所が特定できたのに、ここに来て遠ざかるとは何事だ。

 魔物が一向に減らないのは迷宮から無限に出ているから。

 時間がかかれば優位は覆り、人類の滅亡が訪れてしまう。


「シュン君……。何か方法はないの?」


 神様に聞けないの、とフィノは僕の手を握って頼ってきた。

 確かにそれは僕も思った。

 この場で聞く、加護の結界で覆っている此処だからやりやすい方法も一応あるんだ。


「一応試してみるよ。ついでにフィノも加護を意識してやってみてくれる?」

「やっぱりできるんだね。でも、何で私も?」

「いや、単に二人でやれば確率が上がるかなぁ、と」


 あと、こんな時だけどメディさん達にね。

 こんな時だから顔合わせ? 声合わせ? をして少しでも勝率を上げようかと。


 ごほん。

 どうやって邪神レヴィアの場所に行くのか、その方法は単純明快。

 作った本人、神様に直接許可を得ればいいだけ。

 ただ、試練の塔というぐらいだから人類の力を見るものと考え、設定を覆す特例を作るのは神のルールに反してしまうかもしれない懸念はある。


 今回は最上階に邪神レヴィアがいて、褒美が目的じゃないからね。

 神級迷宮もさほど神々の中で重要視されるところじゃないと思うし、世界を護る為なら結界を消すぐらい出来ると思う。

 神様と知り合いで、頻繁に直接会えたり、話したりできる僕なら、と思わなくも無かったりするんだよね。

 ぎりぎりグレーゾーン的なら『あ! 手が滑った!』的なさ。


『もしもし? メディさん、ロトルさん、ミクトさん、聞こえてますか?』


 等と思いながら加護の力を神域に繋げるように意識して通話を試みる。

 この方法はシンシアさんが神託を得る方法を聞いて、僕なりにアレンジした通神? とでも言う方法だ。


 そして案の定、その効果は思った通りだった。


『はい、こちら創造神メディです! あん、久しぶりのシュンの声にドキドキするわね。ただ、顔が見えないのは変な気分? アタッ!』

『貴方は何をやっているのですか!』


 思わずといった様子でフィノが振り向いたけど、いつもこんな感じだから違和感はない、ないったらない。


『フィノリア、俺の声が聞こえてるか? 姿は見えないだろうが、俺が加護を与えた冥府神のミクトランだ』

『あ、貴方様が! ずっとシュン君のことでお礼を言いたいと思っていました! ありがとうございます!』

『聞いたか、お前等! いや~、加護を与えた奴からの感謝は良いものだな。俺の加護を与えた奴が感謝することはあまりない事だし』


 またフィノが振り向いた。

 皆マイペース過ぎでしょ。

 今の事態分かってる?


『大丈夫ですよ。神域と同じで時間が捻じ曲がっています』

『そうよ。神々の中でもトップに位置する私達にかかれば時間を圧縮するぐらい可能なの』


 褒めて褒めてというようにメディさんの声は弾んでいた。

 多分、普段これぐらいでしか力の一端を見せられないからだろうね。


『ねぇ、シュン君』

『聞きたいことは分かるよ。でも、いつもこんな感じだから。神様って言っても生きていることに変わりない。メディさんやフレイさんに至っては仰々しくするの嫌うから』


 そう言うと、メディさんの嬉しそうな声が続く。


『そう! 創造神なんてしてると対等に喋ってくれるのはロトル達だけなのよね。肩こっちゃってさ』

『貴方は威厳が無さすぎです。良い事を思いつきました。貴方が仕事をさぼるなら、私達も仰々しくしましょう』

『うえ!? それはやったらだめでしょ!』


 うん、やっぱりいつも通りだ。


 そもそも神様とか言われても分かんないんだよね。

 一応敬語とか敬ってるきもちはあるもん。

 僕にとってはそっちよりフィノの方が大切で大事だ。


『シュン君ったら……筒抜けだよ』

『はっ! しまった!』

『……どういうこと?』


 ……。


『こほん。申し遅れました、私がアルセフィールの管理神にして、生命神のロトルデンスです』

『初めまして、フィノリアです』


 ナイスです!

 後で何か言われそうだけど。


『私は創造神メディ。シュンを異世界に転生させた神になります。邪神の件に関しましては、神の名を冠する私達の落ち度です。申し訳ありません。……威厳あったでしょ』


 台無しだよ!

 フィノが少しだけ遠い目になっちゃったじゃん!


 もう!

 そんなことよりも、僕達の考えてることも御見通しなんでしょ?


『もう少し話して痛い!』

『状況を考えなさい。ミクト』

『はい! 私が説明します!』


 一体何が起きた!?

 最強はロトルさんというのは分かってたけど、恐ろしい。


『結果を言うと可能だ。試練の塔と言ってはいるが、人間達の可能性を見る場でしかない。今回のことを考えれば結界を消さない選択肢はないだろう』

『では――』

『だがデメリットもある。あそこに邪神がいるということは、神の結界が力の一部を遮断しているとも考えられる。それを消すということは、考えなくても分かるな?』

『今以上に邪神側の力が増す、ということですね』


 ついでに言えばお守りの効力を上回る可能性もあるってこと。

 でも、これしか方法は思いつかないし、パッとやって短期戦で決するしかない。


『ふぅ……。結界を消すのは容易ですが、もう一度張るには少々時間がかかります。まず、それを周知させておくことが必要です』

『そこは通信でどうにかします。見たところお守りも少しなら堪えられるでしょうし』

『いててててー……。後は邪神を倒す方法だけど……思った以上に厄介なようね。想定よりも狂っているせいできついかもしれないわ』


 分身体が時空を超えてきたことでメディさん達は見切ったのだろう。

 そうなると、僕達の推測が正しいことになる。

 試練の塔にいるのも確定した。


『やはりシュン、お前が考えている奥の手を使うほかないだろう。俺とロトルの方は準備が整っている』

『どうにかして時間を稼いでください。私達の方で守護は多少なりとも手を出しましょう』

『ちぇっ! 私は居残りかぁ。でも、二人のお祝いはさせてもらうから。そういうことで、絶対に負けちゃダメだよ! 私の、メディの加護があるんだから!』


 メディの加護。

 それは今一本人にも効果が分かってなかった加護。

 でも、僕を護ってくれていたのはこの加護のおかげだと思う。

 物作りに関しても、心に関しても、全部やり遂げられたのは。


『分かってますよ。僕はいつもメディさん達に護られていましたから』


 温かさを感じてたんだ。


『む、ちょっと妬いちゃうなぁ』


 そ、そういう意味じゃなかったんだけど……ごめん。


『ふふふ、私達はお二人を祝福します』

『だから必ず勝て。お前達ならやれる』

『そろそろ時間のようね。この会話自体は分かっていないはず。でも、私達が介入したことには気づくはずよ。一時的に心を覗かれないようにしておくから、その時間が勝機だと思って』


 至れり尽くせりだ。

 すぐにメディさん達の気配が薄まり、次第に周囲に喧騒が戻ってきた。

 止めていた時間が戻りだしたんだ。


 握っていた手を離して立ち上がり、皆にメディさん達の話を言う。


「そうか……。二人には一番危険な目に遭わせてしまう」

「お兄様、私達は負けません。そう信じてください」

「ああ、そうだな、そうだった。勝って戻って来い。シュンはすでに大英雄だが、フィノ、お前も英雄となって戻って来るんだ」


 フィノはくすっと笑って頷いた。

 ローレ義兄さんと目が合い、フィノを護る、そして僕も生き残ると力強く頷いた。


『ここが正念場だと周知させる必要がある』

『教会の者達には聖句を唱えさせましょう。少しでも力になるはずです』

『民達にはこのまま盛り上がってもらう』

『最終決戦には生きる者全てが一丸となります。シュン様、フィノリア様、よろしくお願いいたします』


 そこで通信が途切れ、彼等は早速動き出した。

 僕とフィノも最後の準備を行い、魔力を温存するためにも迷宮都市バラクへロロとエアリの背に乗って向かうのだった。


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