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各地4

誰をどこに登場させるべきか相当迷いました。

一見どこに誰が行ってもおかしくない様で、違う人物が現れると話がおかしくなる。

伏線というわけではないですが、もっとキャラの過去話や因縁などを作っておくべきだったと反省しております。

改めてプロットやキャラ設定が大切だと学びました。


毎日が勉強の日々とはよく言ったものです。

例え家の中で過ごしていても同じなんですよ。

身になっているかはわかりませんが……が、頑張ります!

 ガーラン魔法大国


 突如真っ黒雲に空に覆われました。


「な、何だ? 空がいきなり真っ暗に……」

「この世の終わり、なのか……」

「ここまできて……クソ!」


 それはキメラの数が減り、こちらに追い風が吹き勢いが上がってきた時です。


 ちらほらと邪神の集団の力となる声。

 戦場の勢いが眼に見えて減ります。


「狼狽えるな! それこそ敵の作戦なのだ!」

「これは終焉ではなく、真の意味での決戦が始まる合図!」

「ここが踏ん張り時だと手に力を込めろ!」


 そんな中、諦めず闘志を滾らせて気を屠る者達もいます。

 選ばれた隊長や司令官達です。

 司令官には通信の魔道具が渡してあり、状況が逐次送られていることでしょう。


 僕のイヤリングにもローレ兄様から連絡がありました。

 シュン兄様が察知し、つい先ほどフィノ姉様と共に転移したと。

 王国では同時に邪神の手下、まだ出ていない精鋭部隊が出現したとも。


 その時、こちらでも視界を埋め尽くすほどの邪神の集団が現れました。


「絶対に黒い靄に接触するな! 先ほどの比ではないぞ! 武具の効果を上げろ!」


 神の紋章が刻まれた輝く杖で煉獄の放った黒炎を吹き飛ばしたクロス陛下。

 前を向いたまま僕達に注意を促しました。

 頷いた僕達はその隙に煉獄を取り巻く様に移動します。


 吹き飛ばされた黒炎は大地を侵食し、生えていた草木を枯らし消し去ります。

 これが僕達に当たると、そう思うだけで冷汗が止まりません。


 火の粉の様な塵でも、今身に着けている装備が無ければどうなっていたことか……。


「アルさん達は防御主体に変更してください!

「僕達が援護します! フェルメラさんは援護魔法をお願いします!」

「もうやっているわ! 無理せず少し時間を稼ぎなさい!」


 アルさん、レンさん、アルタ、レックスが前衛。

 フェルメラさん、シャルさん、僕シリウリードが中衛。

 クラーラさん、レイア、リリが後衛。

 クロス陛下は臨機応変に前衛で動きます。


『チガラ、イガラガワグゥゥウウッ! オレヲ、ゲヒャヒャ、コロスぅぅアァアアアァ!』


 真っ暗になったことで煉獄も呼応するように巨大化、そして威圧感が増しました。

 身体が浅黒く発光し、暗くともその姿が見えます。

 それだけが救いでしょう。


 クロス陛下が防いだ黒炎は邪神の力を得て生き物のように動きます。

 報告によれば体内へ侵入して恐怖や苦痛を邪神レヴィアに送っているとか。

 効果的な手段過ぎて邪神だとしか思えません。


「今度は負けねえ! 『焔吸収』!」

「闇夜、我が糧となれ、『闇吸収』!」


 襲い掛かる黒炎と僕達の間に飛び込む二人の影。

 赤く光る小手を掲げたアルさんと黒く光る剣を掲げたレンさんです。

 二人が使った魔法によって黒炎を赤い炎と黒い闇に分かれ、小手と剣に吸い込まれていきました。


 吸収魔法と呼ばれ、焔吸収は炎属性を、闇吸収は闇属性を吸収する魔法です。

 しかし、吸収するということは自らに集めるということと同義。

 かなり集中しなければ自滅します。

 どうにか半年で自分の物にしましたが、今の段階では吸収ではなく小手や剣に集めて無効化している状態です。


「散りなさい! 浄化の光よ、『聖浄』!」

『グォ!? ソノヒガリヲ、ヤメヴォオオオァ!』


 そして、残った邪神の力の塊、黒い靄をフェルメラさんが消し飛ばします。

 その余波で煉獄は怯み、黒い靄が止まった所をアルタが突っ込みました。


「水よ、光よ、清き力となりて悪を正せ、『天使の聖水』! アルタ!」

「分かってるよ!」


 僕の魔法とアルタの声。

 黒炎が消え去った中央を走るアルタ。

 神々しく輝いていた剣の輝きに青が混じり、さらに光が強くなりました。

 煉獄はフェルメラさんの神聖魔法に苦痛の声を漏らします。


 邪神の加護により常軌を逸した能力を持つ煉獄。

 怯んだのは刹那の一瞬でしかなく、突っ込んだアルタが赤い瞳が捕えました。

 黒炎が噴き出しアルタを襲います。


『ナメルナァァアアアッ!?』


 が、轟音が起き、誰もいない大地に着弾。


「あんたこそぉぉ、舐めるんじゃないわよッ! もう一発、『水爆弾』!」


 怒りの声を轟かせたシャルさん。

 放たれた水の塊が煉獄に当たると同時に大爆発。

 巨体の煉獄にたたらを踏ませ、ただの水魔法なのにダメージを与えています。


『クソガァアアアハハハハハッ! 『黒炎刃』ォ!』


 怒りの咆哮を上げ、無理矢理振り下ろされた刃。

 シャルさんは魔法を放った反動で硬直し、魔法で防ごうにも魔力を練る時間が足りません。


「「『水流壁』!」」


 ですが、間に水の壁が現れ、黒い炎の刃を一瞬食い止めました。

 その一瞬に近くにいたレックスが間に合い、刃が背後を通り過ぎます。


「やらせません!」

「大丈夫ですか!?」

「レックス、良くやったわ! でも、手!」

「やわ……すみませんッ!」


 水の壁はクラーラさんとリリが放ったものです。

 同時に同じ魔法を放ったことで堪え切れない威力の攻撃を食い止めたんでしょう。


 そこへアルタが到着し、完全な死角から首へ剣が振り下ろされます。


「シュンさんお借りします! 見様見真似『一刀両断』!」

『グォォオオオオアアアア、キクガアアア!』


 が、とてつもない反射速度によって躱されました。

 もう人間の枠から完全にはみ出てます。

 魔物とかとも違う領域ですよ。


 それでも避けきれず煉獄の身体に剣が届きます。

 ですが、黒い靄が防御に回り、剣を防ぎ切りました。

 アルタの魔力と、僕の魔法と、加護の力が籠った一撃が、です。


「チィィ! 厄介過ぎる! このままでは魔力が持たんぞ!」

「せめてあの黒い靄さえなくなれば!」


 吹き飛んだアルタをクロス陛下が抱き留め、フェルメラさんとリリが回復させます。

 直に触れていなくともその影響は計り知れません。

 黒い雲が出てから影響が跳ねあがっているので尚更です。


 僕達は一斉に遠距離から攻撃を加え、少しでもダメージを蓄積させます。

 シュン兄様曰く、黒い靄は邪神の力で、それを攻撃して消耗させることは邪神レヴィアの力を減少させることに繋がる、と。


「いくら強くなろうが人であることに変わりはありません。力も無限ではないんです」

「そういうが、俺達もそうなんだからな。それも圧倒的に不利だ」

「そっち行ったわ! 『水氷鞭』!」


 煉獄の弱点はその身体にあります。


 いくら異形となっても人間であることに変わりありません。

 急所の位置、心臓や首を跳ねれば死ぬ可能性が高い、と言われました。


「兎に角! 動きがあるまで耐えればいいだけなんですよ!」


 そして、その時はすぐにやってきました。

 遅いんですよ全く……はっ! シュン兄様は、です。


 王国がある方向から突如、温かい光りが上空へ上がっていきます。

 光は遠目にも二つ。

 二つはすぐに一つとなり、光の波となって広がり出しました。


 どう考えてもシュン兄様とフィノ姉様です。

 一つになるとか、ぐぬぬぅ……そこまでは許せません!

 僕にシンシアさんを押し付けて自分は……うがー!

 ま、まあ、シンシアさんとはいろいろと話が合いますし、一緒にいてポカポカしますから、悪くはないです。

 ないんですけど、この納得できない嵌められたような気持ちは何なんですか!


「声が……聞こえる」

「えぇ、温かい歌のような声です」

「きっとシュンとフィノがやってくれたんだ! やるぞ、皆!」


 響き渡るのは詠唱です。

 その言葉と光で僕達の消えそうな心の灯を再燃させます。

 詠唱は力強く続き、気付けば邪神の集団に影響を与えていました。


 視界一杯に現れ進軍していた精鋭部隊は軒並みふら付き、足並みが衰え出します。

 キメラも動きが止まり始め、空を飛ぶ魔物は墜落。

 煉獄も黒い靄が減り、発光していた身体のオーラが収まり出しました。


「見ろ! 雲が……晴れていくぞ!」

「おぉ! やれる、やれるぞ! 神は見放していなかったんだ!」

「総員、あの希望に奮起せよ!」

「「「「「うおおおおおおおお!」」」」」


 輝きは更に増します。


 誰かがシュン兄様とフィノ姉様を希望と称しました。

 まさにその通りです!

 知らないうちに僕も叫んで、不思議と魔法の威力が上がります。

 いえ、これは愛がなすパワーなんですよ!


「これならいける! ほんとやってくれるな、シュンとフィノリア王女は」

「ふん、褒めなくもないわ。でも、私だって頑張ればそのぐらい……」


 ……なんか、自分を見ているような気分になったのは気のせいです。


 ついにシュン兄様とフィノ姉様の魔法が発動。

 そして、世界に光が溢れました。


 空を覆っていた真っ黒雲が、邪神の集団や魔物から噴き出ていた靄が、一面に漂っていた気配が、全てが浄化されてきます。

 その光景はまさに神が自愛の涙を零したかのよう。


 大地に光が差し込み、再び形勢が逆転。

 再度ファミリアは勢いを無くす邪神の集団に突撃します。


『ア、イヅカ! グソガァァァアアアアッ! ブッゴロサレルガイイィィャヒャヒャヒャヒャハハハ!』


 光景に目を奪われている暇はありません。

 今度こそ、煉獄を倒して褒めてもらうんですから!

 シンシアさんとも絶対に悪を倒すと約束しました!


 僕は、負けられないんですよ!



 ジュリダス帝国


「『剛神拳・正拳』ぃぃぃッ!」

『あげぼっ!?』


 赤銅色の燃え上がるオーラを纏った男アシュラの拳によって上半身を肉片に変えたライオンキメラ。

 肉片はアシュラの纏う赤銅色のオーラが付着し、一気に燃え上がり消し炭になる。


「見たかッ! 俺様の新たな力! キメラなどスライムと変わらんわッ!」

「コアはあれだ! 破壊しろ!」


 それに混ざって現れた小さなコアに向かって魔法使い達の魔法が一斉射撃される。

 魔法は混ざり合い相乗効果を生み、丈夫なコアを破壊した。


 アシュラは暴れる。

 その名の如く鬼神となり暴れる。

 低ランクの魔物を物ともせずに移動するだけで吹き飛ばし、高ランクの魔物を拳や蹴りの肉体技で肉片に変える。


 シュンが教えた魔力操作を本能で昇華させたのだ。

 魔力をただ纏い身体強化するのではなく、濃縮することでさらに効果を引き上げることに成功。

 さらにアシュラは火に対して高い適性を持ち、それが赤銅色のオーラとなって表れ追加ダメージを与えている。


 シュンの視点から見ると魔力の無駄遣いで、肉体的に耐えきれないと判断する技術になる。

 それを知らないアシュラは次の獲物を見つけ走り出す。


「よぉし! 次ぃぃぃ『柔神拳・灼砲』!」


 キメラの高速再生は異常の一言に尽きる。

 コアさえ生きていれば肉片になっても瞬く間に再生してしまうからだ。

 邪神の加護を持っているらしく、際限なく何度も再生してしまう。


 が、アシュラが現れてからはそうもいかなくなった。


 まずコアが無事なことがないからだ。

 打撃にも耐性があるコアだが、アシュラの内部攻撃には耐えきれていない。

 体内で魔力が暴走するため、コアが体内で動こうが関係なかったのだ。


 そして、一撃が重く、手数が多く、性格から靄が効き難くい。

 キメラにとって天敵とも言える人間だった。


「アシュラ様ぁぁ! 暴れるのは構いませんがぁ! 広範囲に渡って攻撃しないでくださいぃぃ! 手が足りませんよぉぉ!」

「ぬおおおお! 『剛神拳・嵐豪』ぉぉぉおおおあ! 知らん!」

「テメエも敵か!? そこの脳筋止まれぇぇぇええ……あっ!?」


 その時、再び情勢が動き出す。


 王国方面からとてつもない気配が現れたのだ。

 その気配は膨れ上がり、勢いが削がれたはずの邪神の集団の目に光が戻った。


 アシュラはその力に足を止めた。

 止めさせられたのだ。


「ぬふぅ……この凄まじい力は覚えているぞ! 俺様に冷汗を掻かせた邪神の気配にそっくりだ! いや、それ以上に強い! ぬはははは!」

「はぁ、はぁ、何笑ってんですか。そうだとしたら大変ですよ!」


 心配する部下の背中を強く叩き、豪快に笑う。

 背後から音も無く近寄ってきた黒いスライムのようなキメラは、一瞥されることなく吹き飛んだ。


 邪神の気配に当てられ先ほどよりも威力が上がっている。


 上空遥か先では白と黒の光が輝きぶつかり合った。

 遅れて音が響き、地鳴りとなって衝撃が轟く。

 戦っている者達の背筋を伸ばす。


「やはり、シュンか。もう一つはフィノリアだな」

「ふぅー。加勢に行かれますか? こちらはアシュラ様のおかげで落ち着いていますが」

「いや、ここに残る。俺様の勘がこれだけで終わるはずがないと囁いているんでな!」


 アシュラは笑い声を上げると、再び赤銅色のオーラを纏い大地を駆け始めた。

 それを身体強化を駆使して追い掛ける部下。

 周囲の者は彼に同情の視線を向け、頑張れと心の中で応援していた。



 ドミアス聖王国


 丁度壊れていた大結界がシュンとフィノの魔法によって修復された。

 余裕を持った広範囲の大結界のおかげで内部へ侵入した者は限りなく少なかったが、それでもゼロにすることは出来ていない。

 各国でも同じようなことが起き、一時通信が混乱していた。


「大結界が修復されたぞ!」

「あの光は神の奇跡に違いない!」

「どうでも良いから敵を倒せ! 祈っている場合かッ!」


 防御主体の聖王国はキメラの攻撃は防げても決定打を与えられる人材が乏しく、少々手こずっていた。

 聖騎士長バランと聖王国が誇る神聖軍の陣形を中心にどうにか削っているのが現状だ。


「次壊れたらおしまいだと知れ! 大結界からキメラを離すんだ!」

「バラン様! 新たに現れた人型の化け物が防御陣を食い破ろうとしています!」


 無茶な命令だと分かっていても無い袖を振ることはできない。


 バランは拳を振うゴリラキメラを躱し、脅威となる剛腕を切り飛ばす。

 剣を返し顔面を斬り付け、痛みに暴れるゴリラキメラから距離を取った。

 着地すると怒りで思考が鈍り追い掛けて来るところを逆に返り討ちにする。

 その間に魔法使いがコアの位置を特定し、横から強化した槍が投げられコアが破壊された。


「こちらはキメラで精一杯だ! 何としても食い止めさせろ!」


 空が黒に染め上げられた時一番被害を受けたのも聖王国になる。

 信仰深いがために、太陽の光が遮られた時の恐怖が人一倍大きくなったのだ。


 何より、目の前に現れた邪神の集団精鋭部隊は光神教だった者達。

 謳い文句は邪神レヴィアは世界にこびり付く害を浄化する唯一神で、それ以外は邪神であり悪である、それを崇める者達は世界に仇成す異端者だ、という横暴なもの。


 全員が煉獄と同じ異形と化し、狂信者の集団となって襲い掛かってきたのだ。


『こうなってしまっては元に戻らんそうだ』

「そうなの、ですか」

『ああ。身体の一部ならまだしも、全身に回ってしまうと人では不可能だと報告があった。神に願うのはおかしかろう。とうよりも、戻っても繰り返しだろうから浄化してしまえ』


 判断を仰ぐ聖女シンシアに現実的で無慈悲な回答が送られた。

 いや、それこそが望まず異形となった者達への救いになり、望み混沌を撒き散らす者達への天罰になる。


 シンシアも相対して分かっていたことだ。

 少し目を伏せ、すぐに覚悟を決めた厳しい目つきとなった。


「聖女として命令します! 彼等は人に非ず! 悪魔に魂を売った異端者、世界教強いては神々の怨敵だと思いなさい!」


 その気迫にファミリアも覚悟を決め、兵士一人一人が天まで届く雄叫びを上げた。


「何を言うかッ! 貴様等こそ誰に戦いを挑んでいる! 我々は神の代行者なるぞ! この世を汚す者共よ、我等に歯向かえばどうなるか見せしめにしてくれるわ!」


 光神教は黒い靄を噴き出し、どす黒い感情を剥き出しに襲いかかる。


 戦場は再び動き出す。


 聖なる光を纏った白い軍と邪悪な光を纏った黒い軍。

 両者は混じることなくぶつかり合い、上空から響く邪神とシュン達の衝撃に劣らない地鳴りを起こす。


「神を信じ、己を信じ、仲間を信じるのです!」

「殺せ殺せ! 神は涙されている! この黒き光は奴等の心だ!」


 衝撃で地面がめくれる。


 とあるファミリアの兵士は自分を信じ、剣を振り下ろす。

 とあるファミリアの兵士は護りたいと願い、四股を踏んで盾を構える。

 とあるファミリアの兵士は家族を救いたいと、涙を流し立ち向かう。


「私には愛する人がいます! 貴方達にもいるはずです!」


 とあるファミリア兵士はその話を聞いてこう叫んだ。


『聖女様! オラは振られちまったよ!』


 と。


 が、その悲しみは純粋な怒りへ変わり、目の前で邪魔をする奴に向けられた。

 完全な逆恨みだが、周囲の者達の心に余裕を与え、程よく身体の硬さが取れる。


 それに似た叫び声がちらほらと上がった。


「振られたのなら仕方ありません! ですが、これに勝てば皆英雄です! 英雄になればモテます! 勝たねばモテません!」


 シンシアらしい発言に涙を流す男達の叫び声が轟いた。

 魂の叫び。


 振られた恨みが単なる怒りなら負の感情になるかもしれない。

 しかし、シンシアのセリフで勝利して女、若しくはイケメンを得るための願望にすり替えられる。

 中には嫁に逃げられた、二股がばれた、貢ぐ男貢ぐ女、彼等彼女等はお前達にせいだと逆切れ。

 僻みは必ず邪神の集団のお腹を壊す切っ掛けとなるだろう。


「それは貴方達が悪いのです! 天罰が当たったと心を入れ替えなさい! しかし、その怒りを怨敵に向けることを許可します! それを懺悔としなさい!」


 それでいいのかとツッコミを入れたいやり取り。

 しかし、お守りから流れる力は増す。


 邪神の力を受け異形化しているだけあってなかなか倒しきれない。

 聖水もその数を減らし、魔力も残りが心もとない。


『ォォ……ーン……ォォオォオオォォン!』


 そこに来て新たなキメラが異空間から出現する。


「諦めるな! 上では邪神と英雄が戦っている! 邪神さえ倒せば切り抜けられるのだ! 今が踏ん張り時だ!」

『おおおおおお!』


 キメラを切り刻みながら鼓舞するバラン。

 だが、バランにはわかっていた。

 このままでは近いうちに切り崩され、突破されてしまうと。


 一か所崩れるとそこから侵入され、兵士は焦りが生まれる。

 焦りが生まれると人の意識はそちらに移ってしまい、その隙を突かれてさらに崩れる。

 広がると収拾がつかなくなり、結果総崩れからの滅びという二文字が浮かんでしまう。


 頭を振ってその考えを振り払い、迫り来る巨大なキメラに向かって剣を構えたその時、キメラは動きを止め無数の軌跡が奔った。


「遅れた。でも、私悪くない」


 逆再生するかのように高速再生するキメラの腹部から剣が生え、呆然と立つバランに淡々とした女性の声がかかった。

 バランはその声に驚き、眉尻を下げて安堵を浮かべる。


「そいつは――」


 バランがキメラのコアについて教えることなく、お師匠――SSランクの一人剣の申し子剣聖レンはコアを見抜き破壊した。


「まだまだ弱い。これぐらい見抜けないでトップが務まる?」

「はぁ、遅いですよ。それと、無理言わんでください。そんなことができるのはお師匠のみです」

「うん、褒めると良い。後は引き受ける。遅れたから」


 こうして攻撃の切り札が参戦し、戦場は一気に聖王国側へ傾いた。


クロスは魔法使いですが格闘をこなせる人物です。


視点が滅茶苦茶で申し訳ありません。

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