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ファミリア会議終了

最近書き方が分からなくなってきました。

いや、これはどうなのだろうか……。

変な伏線とか多く作ってしまった弊害だと思うのですが、決戦で回収されていない物が出てきた時は申し訳ありません。

決戦自体はまだ先の話なんですが。

「シュン・フォン・ロードベルです。シュンと呼んでください。魔法の発展は、したいようにした結果、としか言えません。ですが、僕一人では無理だったと思います」


 フェルメラさんの整った眉がピクリと動き、落ち着くためにワインを大きく一口。


 フィノがいたら緩衝材になったんだろう。

 本当に僕は何やってんだろうね。

 でも、今回ばかりはクロスさん達の面子? とかあるから絶対に戦いはしないよ。


「それはそれは、大英雄にとっては数十年もの発展も些細なことのようですね」

「お、おい、フェルメラ! すまんな、シュン。デトレスが認めた天才児と言われ続け、その自負も高かったんだが……」


 あー、何となく理解した。

 何で敵意を持ってるのかなって思ったけど、そういうことだったのなら納得。


 有体に言えばぽっと出の僕に嫉妬してるってことだ。

 しかもデトレスさんと肩を並べる雷光の魔法使いが師匠だもんね。

 クロスさんは口が軽いっていうか、考えて良く話す人だから僕のこともいろいろ言ったりしたんだろう。


「分かってます。僕の発展は技術の昇華にすぎません。造形魔法もその一つです」


 開いた右手に氷グラスを作り出し、透き通ったジュースを入れると、模様に光が反射して綺麗なアートを作る。


「いつ見ても綺麗なものだ。最近は学園で流行っていると聞く。全体の技量も上がって何よりだ」


 と、どうにか治めようとクロスさんは言う。


「ですが、この魔法は魔力操作や制御といった魔法を使う上での基礎を重点的に高めた魔法なんです」

「それぐらいわかっているわ。それは初歩の氷魔法を応用した魔法。無詠唱なのには称賛を送るわ。でも、調子に乗らないでくれるかしら」


 何でこんなに敵意丸出しなんだろう。

 才能とか得手不得手は人それぞれなんだから良いと思うんだけど。


「私にだってそのぐらい出来るわ。だから、なんだというの?」


 時間はかかってるけど、フェルメラさんは器用に氷のグラスを作り出した。

 でも、僕のと違って手に持っているシンプルなグラスと同じだ。

 氷魔法使えたんだね。


 でも、少しだけわかった。

 本当に僕に対抗してるんだ。


 僕が大人だったらよかったかもしれないけど、子供っていうのが拍車をかけた。

 中身は既に二十を超えたんだけどね。

 造形魔法は青天の霹靂だったんだろう。

 対して自分はって感じ、かな?


「僕は気付いてほしいから広めなかったんだけど、造形魔法にはいろいろな目的があります」

「基礎の向上だろ? 俺も半年で苦手だった威力調整や消費魔力を抑えられるようになったからな。フェルメラもそれは分かっているだろ?」

「え、ええ、だから称賛しています。ですが、それなら新魔法にはなりません」


 それは誰もが実感してくれている。

 でも、僕が本当に気付いてほしいのはそこじゃないんだ。

 気づきというのは自分の発想や考察や想像力に関わる重要な部分で、自分で考えるというのをやめてほしくなかった。


「確かにここ最近無駄な研究成果しか上がってなかったなぁ。魔力を多くすると火力が上がるとか、火は風によって威力が増すとか」


 そういうこと言っちゃまた……睨まれたじゃん。

 僕、関係ないよね?

 クロスさんを睨めないのも分かるけど、逆恨みしないでよ。


「じゃあ、何だというの? 貴方の真意は何?」


 一歩踏み出し詰め寄るフェルメラさん。

 悪い人じゃないけど、短気? 違うね。

 うーん……そう、ありがちな研究者って感じ。


「真意というほどのものじゃないですよ。例えば氷のグラス。同じ初歩の魔法でも、グラスにしないとジュースは注げませんし、飲めません。ついでに氷だから溶ける反面、注いだものは冷えます」

「なるほどな。造形魔法は用途に応じた使い方が出来るということか」

「炎の竜なら威圧感がありますし、水は見て楽しめ、風はクッション代わりに、地はお金が稼げます。造形魔法は形が残る属性の方が効果的ですね」


 木魔法で地面から植物を作り出し、蔦をぐるぐる動かし椅子にする。

 氷は溶けるけど、土の像や木の椅子は普通に使っている限り壊れないからね。


「くっ……。た、確かに凄い魔法なのは認めるわ。認めないといけないほどのものだもの」


 ん? 思ったより冷静だった。


「でも、普通に魔法を使えばいいじゃない。基礎能力が上がるのは大切なのはわかるわ。だけど……だけど!」

「あー、分かったから落ち着け。そう突っかかっても自分の醜態をさらすだけだ」

「クロス様!」


 うん、僕もその言い方はないかなって思う。


「僕が何を言いたいかっていうとですね。新魔法かどうかは僕達が決めるんじゃなくて、周りの人が決めるんだと思うってことです。そして、何にでも言えることだけど、魔法を使い研究するのなら、攻撃だけでなく人々の生活を豊かにするように視野を広く持ってほしい。魔法は無限大なんです」


 一つのことを研究するのは当たり前だ。

 だからといって、視野を狭めるというのは違う。


 目の前に物体があって正面から見て四角でも、右から見ると三角かもしれないし、左から見ると曲がってるかも、尖ってるかも、後ろは空洞かも、色がついてるかも、もしかしたら生き物かもしれない。


「多角的といえばいいのかな? 今の氷グラスの件でも思考を止めたらダメです。氷魔法を使えるのは氷や水について深く理解したからだと思います」

「……ええ、その通りよ」

「なら、そこで思考を止めないでください。氷と雪は同じでも違います。雲と雨、海と水と酒とジュースは同じ液体でも違います。見えている物が全てとは限りません。研究者ならあらゆるものを試してください」


 そして、危ない事をするのなら報告が必要です。

 怒られちゃうので。


「これで一魔法使いなら研究所にって誘うんですが、フェルメラさんはクロス陛下の護衛なので誘いません。来たいと言われても困りますけど」

「い、行かないわよ! 見てなさい。あっという間に追い越して、背中なんて見せてあげないんだから!」


 なんか幼くなって……素が出てきたんだね。


「うん、競い合う相手がいた方が向上心が生まれますからね。まずは、目先のことを乗り越えられるよう頑張りましょう」


 僕、頑張った。

 見てた、フィノ?

 戦わないで上手く乗り切れたよ。

 ふふ、僕も成長してるってことだね。


「これはシュンに一本取られたな。いつまでも意地張ってないで素直になれ」

「ふ、ふん! 私は負けているとは思っていません!」

「そういう問題じゃなくてだな。……はぁ、シュン。何かあったら頼むわ」

「ちょ!?」


 そう声を荒げたのは仕方ないと思う。


 フィノ……あんまり成長してなかったよ。

 調子に乗ったらダメってことだね。


「相変わらずシュン様はシュン様ですね」

「そこが可愛くていいんですよ」

「ふふふ、惚気ですか。初々しさが懐かしいですよ。最近はエロ親父となりかけ、いえ、なってますか」

「ララ様もクロス様と仲が良さそうでいろいろとお話を聞きたいです。シュン君はどうだろう?」


 聞かれてた。

 まあ、それは良いんだけど、ララさんと話してあまり毒されないでよ?

 何にかは僕も分からないけど。


 後、エロ親父にはなりたくないです。




 そんなこんなで、ちょっとした騒ぎはあったけど無事に会議は終わりへ向かって行く。

 ポムポムちゃんが城下へ行きたいとか言って騒いでたけど、サテラさん達に頑張ってとしか言えない。


 具体的な方針と目標が定まった所で、一応僕の役目は終わりとなる。

 基本的に僕とフィノは戦力に分類されて、世界教が集めてくれた加護持ちにその力の使い方や道具を揃えないといけない。

 足りないってのはとても困る物だから、時間いっぱいまで作るのが役目だ。


 加護持ちは全員で二十人ぐらい。

 多いのかどうかわからないけど、邪神の集団と比較すると圧倒的に少ない。

 それに加護もいろいろあるし、強さも異なるからね。


「シュン様、一つ疑問なのですが……神様と会えるのなら加護を授かるとかできないのですか? 一時的にでも」


 と、音楽の加護を貰っている女性の質問。


「そういうことはあまり口にしないようにね。神様達が気にするっていうより、加護を崇める人や感謝する人達が怒るからさ」

「も、申し訳ありません!」

「分かってるよ。答えだけど、神様達にもルールってのがあってね。例えば邪神相手でも神は強大ゆえに世界を護るために手出しできないとか、加護や神器を与えて試練として支援するとかね。加護もおいそれと与えて良いものじゃないんだ」

「良い方は悪いかもしれませんが、加護というものはそんなに安い物ではありません」


 メディさん達を恨む人はいないだろうけど、家族とか亡くした人が救ってくれなかったから恨むとかよく聞く。


「そのために私達が頑張らないといけない。何も皆に最前線で戦ってとは言いません」

「加護の力はその加護の効果に合った方法が一番強く発現する。僕なら戦闘と邪神に、フィノは闇魔法と主とした戦闘に特化してるかな」

「なら、私は……この楽器で演奏すればいいと?」

「うん、それを今から練習するんだ」


 魔法以外でもメディさん達と繋がれば力を流せるらしい。


「魔法や音楽ならいいだろうがよ。だが、俺のような鍛冶や、こいつの様な」

「幸運の加護です。お金を拾うとか薬草の群生地を見つけたぐらいですけど」


 鍛冶の加護を貰ったのはドワーフ族で、幸運の加護は大人しそうな人族の青年だ。


「それは簡単な話。鍛冶なら加護を意識して何か作れば良い。多分、作った物に一時的に加護の力が宿るはずだからね」

「なるほどなぁ。骨が折れそうだが、面白そうだ」

「幸運の加護だって使い方次第だよ。行動で効果があるのなら、加護の力を信じて避難誘導するとかね。それだけで神の力が守ってくれるはずだよ」

「で、出来るでしょうか? いえ、やるしかないんですね」


 そう、それが加護を貰った使命だと思うしかない。

 実際の所怪しいけど。


「魔法と同じってことだね。勉強になる」

「ま、僕は前世の影響もあるからね。威張れるようなことじゃないよ」

「それを有効的に使えるのが凄いんだよ。宝の持ち腐れにならないのがね」


 クスクスと笑って褒めてくれた。

 そんなフィノだから良いし、フィノが言うんだったらそうに違いない。


 加護を持っているからといって、すぐすぐ僕達のように使えるようになるわけじゃない。

 僕は神様と直接会ってるし、フィノは僕の魔法や直に聞いて接している影響が強いんだ。


 昼食後、一度邪神の力の一部を感じ取ってもらい、本当の脅威を肌で知ってもらった。

 それでも魔道具に閉じ込めた一部は煉獄の魔力と混じった小指の先もないぐらいの力だ。

 そこのところを念入りに注意して、全体の危機状況を見直してもらった。


 それもあってか、加護持ち達は想像より早く上達して、国に帰るまでには取っ掛かりが得られそうって感じ。

 魔力を流して操作を覚えさせるように、僕とフィノで加護の力を同じように使って覚えさせたっていうのもあるかもね。


 その間にローレ義兄さん達は会議を進めた。

 そして、決まったことがいくつかある。


 一年の余裕があるかどうかだから、転移を使い全体の底上げをするために人材交流を行う。

 同じ手法で魔族とも交流し、お互いの溝を埋め信頼関係を構築する。

 国民の調査を行うのは当たり前として、真実を知って暴れないように神器に描かれていた神の紋章付きお守りを渡していく。

 その製作は多めに予想して、すぐに取り掛かる。

 目の前で邪神の力を消し去るデモンストレーションも行う。

 その他のギルド関係や道具も事細かく決められた。


 各国の様子を逐次把握するために通信の魔道具を使う。

 今度は妨害されないように加護の力と妨害を打ち消す魔道具も作って、最悪緊急事態を伝える装置も組み込んでおいた。

 妨害を受けるってことは何か起きるってことだからね。

 シルに渡して置いたペンダントと同じだよ。


 ついでにお守りを渡す時に住所と名前の管理もして、後に有効利用できるようにもする予定。

 お守り回収や生存者と死傷者の管理、終わった後の国の体制や状況も分かるからね。

 手間だけど考えておくことも気持ち的に生き残る糧になる、と僕の提案も通った。


 まあ、地球程じゃないにしても、奴隷や種族や召喚獣も全て含めれば何百万じゃきかないだろうからね。

 ちょっと技術を進め過ぎになるけど、文字を打って印刷できる魔道具を作った。

 ここぞとばかりに貯め込んだお金も使って備える。



 そして、四日ほどかけて第一回ファミリア会議が進み、五日目の午後前に全ての予定が終わった。

 これから祭が本格的になり、ローレ義兄さんの結婚式が開かれる。

 多くの人はそれを見る為に王国を訪れているはずだ。

 その時に邪神のことが知らされるんだけど、結婚式で安心させる腹積もりでもある。


 晴やかな日や行事をこんな風に使いたくないんだけど、効果的なのは一番だ。

 だからこそ、僕とフィノは精一杯祝うし、絶対に負けないと誓える。


 そんな僕とフィノは一時的に学園へ戻り、復興の為休校中で特訓をしているだろうシル達を迎えに行っていた。


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