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道のり ソドム

遅れてしまいました。

最近書き方も困惑するようになり、かなりへたってます。

シュンの感情しか地の文で書いてない気もし、少し行動というか動きの面も書くべき……と思わなくもありません。

一応最後までこのまま書き続けます。

「シュン、もう出発するのか?」

「うん、今回は冒険者じゃないですからね。休みも有限ですし」

「そっか。ま、冒険者じゃなくとも人の出会いは一期一会だ。お前に助けられてから頑張ってるからよ、今度一緒に迷宮潜ろうぜ」


 デジャブを感じるけど、間違いないね。


「フィノちゃんは成長した? 女の子らしくなったわね」

「ありがとうございます」

「冒険者していると肌や髪の手入れが難しいのよね。その点羨ましいわ」

「そこはシュン君のおかげです。私のために何でもしてくれますから」

「んまぁ~! あれだけ強くて女を立ててくれる献身的な男性はいないですよ! 何て羨ましいんですか!」


 あっちはあっちで盛り上がってる。

 フィノと女性騎士達もどこか仲が良くなったみたいだし、女の子は笑って仲良くしてるのが一番いいよ。


「良い御身分ですね、シュン様ぁ」

「その言い方はないだろ。だが、女性から人気があるというのは……爆発しろ」

「フィノリア様ほどじゃなくてもいいから可愛い系の彼女が欲しい!」

「大体ですなぁ、最近の女性は逞しくなって、我々男性陣は違った意味でも戦々恐々なんですよぉ」

『何でもしますんで、俺達にどうか、どうか彼女の作り方を!』


 そ、そんなの知らないよ。

 確かにフィノから僕の周りにはくっ付く人がたくさんいるって聞いたよ?

 でも、それて僕がしたんじゃなくて、何かを掴んだり、運命とか、自分でやったから出来てるわけだよ。


 間接的には皆にやってるわけだし、後は自分次第だね。


 それとこう言ったらなんだけど、まずそれを止めようよ。

 僕から見てても情けない。


「はいはい、時間になるから出発するよ。――ロロ、今日もよろしくね」

「ウォン! ハッ、ハッ、ハッ!」


 可愛い奴だね。

 後で好物の甘い物を少しだけ上げよう。

 特に問題ないみたいだしね。




 馬車の中では一応男女に分かれて座ってる。

 人の目があるから間違いは起きないけど、いくら良くした馬車でも車よりも早く動けば振動でよろけるからね。

 僕とフィノなら、うんいいけど、フローリアさん達は違うからね。


 僕とフィノはお互いに膝枕したり、耳掻きしたり、昼寝したりする。

 フローリアさん達は旅人の服とでも言えばいいのか、いつもの鎧は着てないんだ。

 だから、身体のラインが強調されるし、接触したらお互いに分かる。


 ガノン達は一度事故を装って突っ込んだ馬鹿(ゆうかん)者だけど、フローリアさん達は普通の女性じゃないからね。

 ぶつかる前に一睨みされて、それ以降男性陣はどこか小さくなってる。


 どこの世界も嫌われた男は肩身が狭くなるんだよ。


「だから、僕は嫌われないようにしないとね。はい、チョコ入りマシュマロだよ」

「あ~ん……チョコレートはイチゴ味?」

「うん、僕はこれが好きだからね。柔らかい味わいで、紅茶に入れても良いよね」


 これは僕が作ったんじゃなくて、昔からあるお菓子の一つだよ。

 まあ、これは僕が作り方を聞いてアレンジした奴。

 前までは白一色で、少し硬かったよ。


「マシュマロは唇の柔らかさって聞くけど、ちょっと硬いよね」

『え?』

「したことあるの?」

「ないよ。でも、自分のを触ってみればわかるじゃん」


 手を差し出してくるガノン達に無言で渡す。

 でも、キスするのは止めた方がいい。

 それをやるから彼女が出来なんだよ?

 あ、でも、フィノがしてたら可愛くていいかも。


「しないよ? ……今は」

「うん。……夜に二人っきりの時に、ね」

「も~う、仕方ないなぁ」


 フローリアさん達にも渡す。

 これは女性がするか男性がするかで違うんだね。


 不意に思ったけどポッキーゲームとかあったね。

 僕とフィノは一度もキスしたことないからしないけど。

 やっぱり一番最初は思い出に残るやり方が良い。


 何度も言うけど、あれはノーカンだから。




 それから三日ぐらいかな。

 少し怪しい動きの人がいたからソドムには迂回することにして向かった。


 怪しい動きってのはこっちをじっと見てたり、こそこそしてたりって感じ。

 ただ、邪神の集団に感じた悪意のような物とか、貴族達のねっとりした思考じゃない。

 盗賊みたいな感じだったから、見た目商人で護衛力の無いように見える僕達を狙った窃盗犯ってところ。


 僕よりも気配に敏感で煩わしいと感じたロロが吠えたら止まったからね。

 僕達の方に用があるのなら止まらないって意見が一致したんだ。


 でも、手際を考えるとよく分からないってところ。


 ソドムには荒野を通って向かった。

 荒野と言えばランクアップ試験で通った所で、細い道が印象的だね。

 でも、僕達が通ったのはベヒーモスと戦った森の奥に広がっている荒野地帯。


 あそこの荒野はかなり広くてね。

 ソドムは森と湖が隔てた向こう側にあるんだ。

 荒野をもっと進めば貴重な薬草とかが山ほどある場所に着くんだけど、そこまで行くのに距離があるし魔物もちょっと強い。


「ソドムには一日滞在とします。明日の朝に直ぐ出発しますので、そのつもりで準備をお願いします」

「また三日ぐらいかけて獣人族の集落に入る予定だよね?」

「はい。獣人族の範囲内に入れば迎えが来るとのことで、私達は道があるのでそこを通っていればよいと」


 なんか使節団って感じがする。

 実際そんな感じなんだけど、お迎えが来るのは初めてじゃないかな?


「ま、行ってみればわかることだね」

「多分俺の知り合いが来るてはずなんで、匂いで分かるかと思います」

「あ、そのためにガノンが来たんだもんね」

「……」


 べ、別に悪い意味で言ったんじゃないよ?

 役割的にはロビソンと同じじゃん?

 た、たださ……うん、そうなんだよ。


「慰めてないよ? フォローにもなってない」


 この分かりやすい顔が憎いよ!

 逆に考えれば、フィノに思いが通じやすいんだ!


「あ、が無ければよかったのにね」


 そ、そんな意味で言ったんじゃないからほっといて!

 フィノが意地悪だ。

 ちょっといいかもしれないけど、やっぱり普通にしてくれた方がいい。


「そんなことよりも」

「そんな!?」

「宿屋に行こう。一度泊まったことのある『赤熊の宿』がいいかな」


 ランクアップ試験は夏前だったから二年以上経ってるってことになる。

 濃く長いと思ったけど、時が経つのは早いね。

 矛盾した思いだよ。


「普通の宿屋だけど、宿の中にレッドベアーの剥製があってね。食事も結構美味しかったよ」


 ロロは泊まれないから見かけだけの召喚魔法陣で亜空間に入っててもらう。

 馬車は専用の所に止めておいて、お金をちょっと多めに払っておけば兵士が管理してくれる。


「私は旨味亭の料理が食べたかったけど……」

「残念だけど、ここにはないんだよ。転移でガラリアに飛んでもいいけど、あっちはまだ騒々しいって聞くし」


 ガラリアの復興自体は済んでるんだけど、周辺の被害が戻らないんだ。

 僕が出発する前に木魔法で元に戻してもいるけど、元と同じようにするのは難しくてね。


 特にあの魔物侵攻によって周辺の魔物がごちゃごちゃになったんだ。

 平原が焼けて人が死んだからゾンビが生まれたり、生き延びた魔物が巣食ってリーダーになってたりってね。


「ううん、言ってみただけ。今度、シュン君の生まれた所の村、ファチナ村だっけ? 連れて行ってくれたらいいよ」

「そのぐらいお安い御用だよ」


 ファチナ村は大丈夫って師匠が言ってた。

 ま、あそこは元冒険者が多くて、それ以外の人も一芸に秀でてる変な村だからね。


 そういう僕もその一員なんだけどね。




 赤熊の宿に荷物を置いて、少し時間があるから街を探索することにした。

 探索といってもぶらぶら歩くだけだけどね。


 一応フローリアさんが保護者としてついて来てる。

 この街には僕のことを知ってる人はほとんどいないし、知っててもギルドマスターのバーグンさんだしね。


「ソドムも魔物に襲われたんだよね?」

「そうだよ」

「その時シュン君が丁度いたんだよね? どんな感じだったの?」


 当時のことはあまり話してなかったかも。

 結構きつい戦いだったし、僕は常に最前線の中でも一番前にいたから悲惨さをそこまで見てないけど、ガラリアに転移した時の悲惨さは……言葉に出来なかった。


「そうだね……ソドム自体はそこまでの被害は出てないんだよね」

「シュン君が全体に付与魔法と広域殲滅魔法を使ったからだよね?」

「うん。今ほどの力はなかったから倒せたのは半分程度。上位の魔物――Cランク以上は手傷を負っても耐えてたね」

「シュン様は十分やってくれたと思います。結局はシュン様が魔族を引き上げさせ、その後倒れたと聞きますからね」

「そうだよ。私達が無事なのはシュン君のおかげで、誰ももっとなんて言わない」


 そこはあまり気にしてない。


「それでもB、Aランクの魔物全てを対処できるわけもなく、ソドムの被害は規模からいうと軽かったと思うよ」


 声を大にして言えないから小声で話す。


「一番の被害はガラリアですね。あそこは街の機能が壊滅状態になるまで行きました。派遣した騎士団がタイミングよく駆け付けたため混乱は起きなかったようですが」


 師匠も着てたし、僕も身体が治った後は魔法で復興を手伝ったからね。

 魔法が使えなかったらガラリアは衰退を辿ってただろう。

 街の影響だけじゃなくて、前に言ったと思うけど周囲の影響が凄まじかったんだ。

 薬草を取りに荒野の果てまで行ったのもそのためだ。


「その後僕を、っていうよりシロを探してるレオンシオ団長と会ってね。今思えばあの時名乗ってれば、とか想像しちゃうね」

「シュン君はそう思うの?」


 フィノが何処か深刻そうだ。

 ここは、というよりいつもより真剣に応えよう。


「そうだね。早く会いたいのならそう思うけど、今の関係はフィノが城を抜け出して、ギルドでお願いして出会ってって、そういう過程があるからなんだと思う」

「……そっか」


 正解だったみたい。

 返事は短かったけど、頬が緩んで心持ち足が弾んでる。


「普通にあの時会っててもフレイさん――恋愛神が言うにはそういう運命みたいだったけど、僕が今みたいな立場になったかっていうのは怪しいよね」

「やっぱりシュン君もそう思うんだね。私は苦しい判断だったけど、今思えば勇気出してやって正解だって褒めたい。過去の自分ナイスだよってね」

「ははは、あの時は大人しいイメージだったけど、よく考えれば変装して城を抜け出す破天荒さがあったんだね」


 それを手伝ってた義父さんもだけど。

 聞いた話ではフィノに何もないよう監視者だけは放ってたみたいで、街の外とか危険な目に遭いそうだったら介入する予定だったらしい。

 僕のことを知ってたのかって疑問とか残るけど、僕が魔法の修行をさせた時間と大会当日までの期間はほとんど無かったからね。

 たぶん、あの後僕のこととか知ったんだと思う。


 魔物の襲来や大会とかで手も話せなかっただろうし、報告もギルドで何とかって程度だったんだろう。

 ま、結局どうなっててもフィノと一緒になれてたんだからいいと思う。


「あー、そんなこと言っちゃう? シュン君だっていろいろやり過ぎちゃうじゃない。結構ハラハラするんだよ?」

「だってフィノのことが大切だし、怪我でもされたらどうなっちゃうか分からないもん」

「シュン君は過保護すぎるよ。私の為にシュン君が怪我したら私も悲しいんだからね」

「うん、分かってるよ。だからどんな時も全力なんだよ」

「シュン君……」


 一瞬やばいと思ったけどセーフ。

 まだ尻に敷かれてない。

 うん、セーフ。

 アウトが二、三本入ってると思うけど。


 ……あれ?

 アウトって三本セーフだっけ?


「こほん。お二人とも自重してください」

『……なんで?』

「お二人の仲が良い事は大変嬉しく思いますが、このような人の多い往来でいちゃつくのはどうかと。現に独り身の方は……」

『チッ……爆ぜろ。……俺だってエカテリーナちゃんと……!』


 こういうのは周りから見てないとわからないものだね。

 僕とフィノにとっては普通のことなんだもん。


 勿論ちょっとは恥ずかしいけどさ。




 お腹が空いてきたから適当な場所で済ませて、冒険者ギルドに顔を出した。

 別に何かあるわけじゃなくて、この先の情報とか何かしらのことが聞けないか確認するためだね。


 街が違えば情報も多少違うし、より良い確信や噂が手に入るからだよ。


「現在オウル地方には何もありません」

「盗賊も?」

「はい。ガラリア方面には二年前の騒動で一時魔物と盗賊の被害が大きかったのですが、オウル地方の被害はそこまでではありません」


 オウル地方ってのは、獣人族の集落がある方向にある国や山のこと。

 オウル国の関所は通らないんだけど、近くを通るからもしかすると盗賊とかがいるかもしれないってことになる。

 人がいないからあまり盗賊もいないってことになるんだけどね。


 因みに、獣人族の集落の名前は総称として『ビスティア』、一つずつの村としてはビスティアの何とかってあるらしいよ。


「魔物に関しては多少の環境変化に伴い混乱しましたが、奇術師の異名を持つシュン様なら問題ないでしょう」

「うん、ありがとう」


 魔物に関して気を付けた方がいいってことだね。

 まあ、あっちは元々魔物が強いってのもあるし、魔物相手なら慣れてるから問題ないかな。

 人相手ってのは出来なくはないけど、心の問題がね。

 フィノも経験はあるけど、進んでしたいってもんじゃない。

 僕達程度の実力差があれば捕えられるけどね。


「特に騒動は起きてないみたいだね」

「ローレお兄様はああ言ってたけど、実際襲撃があるって情報はないわけだからね」

「二年空いてそろそろ動き出すから注意してねってことだよね?」

「ふふふ、シュン君ふうに言ったらそうなるね」


 ぼ、僕ふうって何!?

 いや、ズバッと言ってくれた方がやりやすいからそうなんだけど。

 シュン君だから、とか、シュン君ってるね、とかって言われるよりはまだいい……同じくらいかなぁ。


「バラクから追ってきた者達のこともあります。用心するに越してないかと」

「それもそうだね。これからは人通りも少なくなるし注意を払っておこう」

「ロロちゃんにも頼まないとね」


 うん、ロロの索敵能力は僕以上だから頼りにしてる。




 翌日、僕達はソドムを出発し、獣人族の集落ビスティアへ向かった。

 天気が怪しくなる若干の予想外が起きたけど、雨が降ることはなく無事着くことが出来た。


 途中やはり同じような追っ手を感知したけど、ロロの威嚇で足を止めてた。

 やっぱり獣人族の方にも手が入っていると考えた方が良いのかも。


 近くの森に入ると空気が変わり、ロロが近づいてくる反応に気付いた。

 それが迎えの獣人族の人で、ガノンの知り合いでもあるらしく森の中は馬とロロで進むこととなった。


 エルフ族の住むフェアルフローデンみたいに結界に護られているわけじゃないけど、僕達がきた方向は馬車が通れる道がないからね。

 迎えに来た使者の獣人族は僕のことを聞いてる人達らしく、馬車を亜空間に収納しても特に問題はなく好奇な目で見てたくらい。


 獣人族は魔法がそこまで得意じゃないからね。

 見てるだけで結構楽しかったりするらしいよ。


 そんなこんなで僕達はビスティアに到着した。


二年前の大規模魔物騒動ですが、カンテとセリオルという残り二つの街に関しても復興は済んでいます。

あちらにはSランクの冒険者がいたと書いていた気が……。

襲撃も少なかったです。

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