天賦の少年③
ことは一瞬、
総司や佐之助が目で追う暇もなく、小柄な誠の足元で誠の倍ほどの背丈がある平助が膝をついたのであった。。
「あっ、ごめんなさい。軽くたたいたつもりだったんですけど。」
足元で倒れる平助に慌てて謝意を述べる誠。
「おめぇー、」
うつむいたままだった平助が低い声を上げる
「おえぇーすげーじゃん、全然太刀筋見えなかったしよ」
ムクッと体を起していきなり誠を抱きしめる平助。突然のことで身構える事が出来なかった誠が平助の上の中で苦しそうに声を上げる。
「とっ藤堂さん。」
「そんな他人行儀じゃなくて良いぜ。平助って呼べよ。」
「じゃ、平助さん。苦しいです。」
平助の腕の中で今にも息絶えそうになる誠
「うわぁ、すまねぇー、つい」
その様子を見て総司と佐之助は目を丸くする。
「今、一瞬人が代わったみたいだったね。」
「あぁ、ありゃ相当のやり手だぞ」
「あれだけの腕がありながら、どうして小姓なんか…。」
平助、佐之助、そして総司はいずれも腕に覚えのあるつわものである。そんな3人がまだ元服して間もないであろう少年の太刀筋が見えなかったのである。ましてや、平助は膝をつかされた。それだけでも脅威であるが、とうの本人からはその危険性は全く感じられない。
まったく、恐ろしい餓鬼だ。
佐之助は心の中で呟いた。
この時は誰ひとり知りえなかったこの少年、誠を中心にこの先浪士組が、幕府がそしてこの国が大きな渦に巻き込まれていく事を。