表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼方への手荷物  作者: 涼詩悠生
第一章 めんどくさい
3/81

第三話

ルイに振り回されることが決まった翌日、シャルは様々な食品が入った紙袋を両手に抱えていた。

向かうは調理室である。

使用許可を取りに行き教師に事情を簡単に説明した時は、その場にいた教師だけでなく生徒までも一斉に振り向いたのには流石に驚いた。

とはいえ、無事に使用許可ももらえたのでシャルはルイを呼び出した。

その時も周りから驚いた顔で見られたのは言うまでもない。




「おっまったっせーーー」


バーン!と音をたててドアが開く。

入ろうとした時、降ってきた布で視界が遮られた。

慌てて布を取って正体を確かめる。


「……何するの?魔法陣のこと教えてくれるんだよね?」

「ソレ、着けて」

「これエプロンだよね?」

「それ以外に何が?」

「……魔法陣教えてくれるんじゃ……?」


もういっその事シャルが組んで、私が一生懸命やりましたーって感じにしてくれてもいいくらいだ。

とか思いながらエプロンをつけ不審に思って調理台を見ると、粉を練ってまとめた生地が薄く円形に伸ばされて置かれていた。


「……何それ」

「パン生地」

「そんなこと聞いてるんじゃなああああああああああああああい!」


ドン!と足を踏み鳴らす。

シャルはため息をついてルイを見る。

……そんなにじっと見られたらドキッとするじゃないかこんちくしょう。


「……魔法陣で何かをする場合、基礎の選択をする前にまずどういった発現をさせてどういった結果を導くかの計画を立てる。次に発現にあう効果の公式を挙げていき、必要であれば属性の指定とその管理法をある限り挙げる。そして挙げた公式の相性や別の効果を照らし合わせ、より良い組み合わせを」

「わかるかあああああ!しかもなんかベラベラ喋るし!ドキッとした私はあほですか!あほですよばかああああ!」


地団太を踏むルイを横目に、シャルはパン生地の横に色とりどりのビンや食品が並べていく。


「ピザ食べる?」

「食う」


ピタっと止まって即答した。


「ソースはトマトも捨てがたいんだけど、バーベキューソースとかも好きなんだよねぇ。クリームソースもすきー。具はチキンとオニオンは外せないよね。チーズの代わりにマヨネーズかけて焼いてもおいしいし。あ、パイナップルは邪道」


シャルはナイフを取り出して食材を切りながら好みを聞く。


「生地はパン生地もいいけど、クリスビーも好きだなー。みみんとこにウインナーとかチーズとか巻いてあるやつも美味しいんだよねぇ。勿論耳をソースとかチーズにつけてフォンデュで食べるのも好きなんだけどねぇ」


ひとしきり話してシャルの手元を見る。

食材が器用にスライスされ並べられていた。


「……魔法陣も似たようなもの」


ビンの蓋をあけてスプーンで赤色のソースをすくい、パン生地に塗る。

その上にオニオンスライス、スモークチキン、マッシュルーム、スライストマトをのせ、さらにその上からスライスチーズをのせた。

そしてオーブンに入れる。


「基礎公式は生地。属性はソース。その上にいろんな具である公式を乗せる。味や見た目食感のためにソースや食材を変えたり合わせない組み合わせあるだろ。あんたでいうところのピザにパイナップル」


シャルは椅子を二つ持ってきてオーブンの前に置いて座る。


「似たような公式でも結果が微妙に違ったり全然違ったりする。たとえばピーマン。同じような色形でも味が甘いから苦い辛いまである。形が似てるからって選ぶんじゃなくて、よく調べて適材適所で使うといい」


オーブンに開いてある小窓から中をじっと見ていたルイは、顔をシャルに向けて嫌そうな顔をした。


「つまり何が言いたいのよ」

「……めんどくさいけど必要だと思う公式、出来るだけたくさん調べるところからやるしかない」

「えーーーーーーーーーーーーー!やだあ、めんどくさいー」


本気で嫌そうな顔をして身体をぶんぶん横に振る。


「俺は手伝えって言われただけだから、呪文唱えるだけの状態にはしないし。今も教えるって言ったから教えてるだけ」


基礎すらわからなかったら今回のことに限らず、呪文唱えるだけの状態でも暴走させそうだし。

という言葉は今は言わないでおいた。

シャルは未だ何か言いたそうにしているルイを見てため息をつく。


「俺が組むのは別に構わないんだが」


その言葉にルイは、ぱあっと明るく笑う。

正しくは、喜びかけた所でトドメを刺された。


「バレたら今度こそ学園長じきじきに怒られると思うぞ。あの人誰が組んだかとかすぐわかるだろうし」


あれはめんどくさい……

ルイはがっくりうなだれる。


「……成功したらすごいご褒美もらえるかもな」

「うん、ピザ食べたら調べる分担決めようか」


エイエイ、オー!とかやっているルイを見てシャルは苦笑しかける。

気づいて止めたのだが、なつかしさは消えない。


あの人も変な意気込みとかなければ嫌いじゃないんだけどなぁ……





できたピザをはふはふ言いながらルイは貪りながら文句を言った。

「魔法もできて料理もできるとかなにそれー!万年寝坊助落ちこぼれって嘘じゃん。神様ひどーい。私もそういう才能ほしいー。特に料理!それで男ゲットだこんにゃろう!料理も教えてよね!」

……料理も教えることになったようだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ