わがままがふたり
「部活、行かないの。」
「・・・・。」
「グラウンドばっかり見て楽しいことでも?」
「・・・・。」
「別段おもしろいことはないみたいだけれど。」
「・・・・。」
「・・・・なんで無視するの。」
「あいしたいな。」
「は?・・・・・・やっと口を開いたと思えば。」
「僕が何を言ったって勝手だろ。」
「はいはい。それで、なんだっけ。」
「あいしたい、って言った。」
「・・・・・・何を?」
「何でもいいけど。いや、今のは語弊があるな。人だ。僕は、人をあいして、あいされたい。」
「わがままなのね。」
「そうかい?人間誰もがそう思うんじゃないかと思うけど。人っていうのは誰かの特別になりたいし、誰かを特別扱いしたくなるものなんだろう。」
「暴君のあなたが人をあいすることなんてできるのかしら。」
「出来るんじゃないかな。僕があいしたいと思ったなら、きっと僕はそうするだろうし。」
「そう。じゃあ、その相手がどこにいるかが問題ね。」
「身近にいるんだけどね。」
「へえ、そうなの?」
「あぁ。」
「そう・・・そうなの。」
「さみしい?」
「そりゃあ。あなたがその誰かをあいするっていうなら、私は何だか宙ぶらりんだもの。」
「ふうん、そうなの?」
「そうなの、って。そうでしょう。あなたの人間関係のカテゴリの中に友達って有るのかしら。」
「失礼だね、有るよ。」
「私もそこに入れてくれる?」
「いいや、多分そうしてあげられないな。」
「ほら、やっぱり。宙ぶらりんだわ。」
「そうなの?」
「だから、そうなの?って何なの。」
「僕があいしたいのは君なんだけど。」
「・・・・・・・え?」
「だから、君が僕をあいしてくれれば万事解決って所じゃないかな。まぁ、僕は君が僕をあいさなくたってあいしてやるけどね。」
「え、。」
「大体僕があいしてもいないのに口答えだらけ、逆らいまくり、自分勝手で生意気な君と一緒にいられるわけないじゃないか。そんな奴側に居たらきっと我慢出来ずにどうにかしてしまうね。」
「どうにかって、具体的には?」
「そうだね。結果的に、僕に話しかけるどころか僕を視界に入れるのも恐ろしくなるような、そんな痛い目に合わせてやる。」
「・・・・・・もちろん有言不実行よね?」
「失敬な。僕は有言実行する男だ。」
「ちょっと考え直そう。ブタ箱の中じゃバスケは出来ないよ。」
「話が逸れてるよ、至宮。」
「え、あ、ごめん。」
「だから、君はおとなしく僕にあいされてよ。君だって僕のことすきなんだろう。」
「・・・・・・そ、そうだけど。」
「じゃ、そういうことで。部活行ってくるね。」
「・・・・・・・・・・・・あ、あのっ、ねえ!」
「なに、至宮。」
「・・・・・・・・・図書室で、まってるから。迎えにきてね。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・なに、その顔。」
「・・・いや、」
かわいいところもあるものだ、と言いたそうに彼は笑って、ひらりひらりと手を振った。
「僕も君を待ってるよ。」
告白ひとつも素直にできない暴君は、どうやら恋ではなくて愛がお好みらしい。
さて、どうして愛をつたえてやろう。
口答えだらけで逆らいまくり、自分勝手で生意気なわたしは荷物を持って、教室のドアをガラリとひいた。
空は抜けるように青くて、夏も終わるというのに爽やかだ。
きっと時間は遅くなるし彼は疲れているだろうけど、帰り道にはコンビニに寄ってサイダーが飲みたいな。
だってそんな風に我がままを言えば、彼は笑ってくれるに違いないもの。
今日は何の本を読もうかな。
わたしは大きく伸びをして、図書室へ続く廊下を駈け出した。




