出会いと共に
ある朝太陽の陽と共に、俺イアン・サルヴァドーリは目を覚ました。朝焼けがまだほのかに見える今、俺は砂漠のド真ん中に居る
何も好きで居るわけでは無い。この砂漠のどこかにあると云われる、クゥーリと呼ばれし宝を探しにこんな所まで来たのである
そのクゥーリと呼ばれし宝は俺も街のどの人間も名前しか聞いた事が無いと言う、胡散臭い代物であるがために、面倒くさく、行きたくないなどと思ってしまう。しかし、俺にはそんなワガママを言う資格や権利なんて存在するはずも無く、このクソ暑い砂漠を放浪させてもらっている...
何故俺がそんな存在するかも分からない胡散臭い代物を探さねばならないかと言うと、実を言うと俺は宝玉と呼ばれる伝説の魔法玉を世界各地で探さねばならぬ旅に駆り出されたからである。勿論王様のご命令あっての事でだ
俺の髪と瞳は生まれつき紅く、周りの人間共から意味嫌われていた
理由は一つ。俺が紅族の末裔だかららしい
紅族というのは、文字どおり紅い一族らしい。髪や瞳の色は紅の如く紅く、とんでもない戦闘能力や、精神力や胴体視力に長けていると云われている
まぁ、とっくの昔に滅んだらしいが...
と言うのも、実は紅族の話は幼い頃、両親が死に独り身となった俺を引き取って下さった王様から聞いた話なだけにただの受け売りなのである
とりあえず、俺はその昔、城の図書館で一通り調べた所、宝玉と呼ばれる魔法玉を見つけだした暁は願いが叶えられる、といったまたしても胡散臭く、怪しい伝説をバカ正直に信じて、ある一つの『願い』を胸に旅に出たと言うわけなのだ
その旅に出てかれこれ4年。15歳の頃に城を出た俺は19歳になっていた
街人の聞き込みで知り得た情報を元に砂漠を歩き回って、丸一週間
紅族の末裔なために体力は昔から有るのだが、さすがに一週間砂漠を歩き回るのは酷過ぎる
動体視力と共に少々良い視力で、辺りを見渡しても、何も見当たらない
残り少ない少量の水を大切に飲みながら、ただひたすら歩く
しかし、何も無い。そして道中気付いた
...帰り道が分からなくなってしまった...
そう、いわゆる迷子というやつになってしまったのである。これで俺はどれをこうしても家には帰れなくなってしまったのである...
そんな中に汗を大量に消耗している俺の背中に、巨大なサソリが現れた
なんと空気の読めない...
お前がクゥーリだったらどれだけ嬉しいか
さて、という訳で、巨大サソリが遅い掛かってくるわけだ。見た目10m以上の巨体をうねうねと動かしながら、こちらに向かってくる
しかし、先程にも言ったが、紅族というのは大層な戦闘能力をお持ちだそうで
その昔、城の訓練を受けていた。身体と戦闘センスを磨くために。そして、紅族は嬉しい事に、どんどん戦闘能力を高める事が可能なのだ
そう。こんなサソリなんて屁でも無いのだ。サソリは毒を持っている。その毒を食らうとさすがの俺も死んでしまう
しかし、当たらなければ済む
得意の動体視力で、デカイ身体の割に素早い攻撃をしてくるサソリの動きを全て読み、高くジャンプし、後ろに回る
ザザッと地面に着地し、デカイ尻尾らしきものを掴む。さすがにこの巨体を持ち上げるとなると大層な筋力が必要なために、ふんばる
全身全力の筋力でググッと上に上がったサソリをバッと投げる
サソリは砂の山のおかげで、砂に背中を着け、転けてくれた
ジタバタと悶え苦しんでいる間に、俺は逃げた
無駄な体力は消耗させたくないからな