楽園?→軍王邸(仮)
あー、極楽極楽。
本当に、極楽だよ。
あれさえなければね...。
「ユーリさん、お茶をどうぞ。」
グローリエさんが美味しいお茶を入れてくれた。
「ありがとうごさいます。」
私は寄りかかっていたソファーから身体を起こそうとした。
「いいんですのよ、怪我にさわりますわ。」
グローリエさんがわざわざ私の手元まで持ってきてくれた。
「すみません。」
私は言った。
こんな、戦時下なのに
こんなに優雅な暮らしがあるんだっていう
感じだ...これで仮住まいなら
本宅はどんな感じなんだろう?
「ユーリさんがうちに来てくれて良かったわ、ケイル様の良さをアピール出来るもの。」
グローリエさんが言った。
ケイル軍王陛下は昨日のうちに
グーレラーシャの黒猫軍師に
話を通したらしい。
黒猫軍師から、嫌なら迎えにいく
という連絡がきたけど...。
それしたら、アキュア聖王国と
グーレラーシャ傭兵国とのなかが崩れそう
なのでこないでもらった。
平和崩壊の礎になりたくないもん。
「ユーリさんが本当にケイル様の側室になってくれればいいのに。」
グローリエさんが言った。
「私は婚約者がいますので。」
私は言った。
冗談じゃないよ、ケイル軍王さんなんて
女性の影が見えまくりの人の側室なんてなってら...。
苦労するのが目に見えてるよ。
本当に優雅なくらしだよ。
お菓子は有名店の焼き菓子だし。
食事は缶詰ご飯じゃない
料理人が作った食事だし。
ロビンさんには謝られた。
ロビンさんのせいじゃないのに。
「五十嵐軍師...優黎おとなしくしていたか?」
ケイル軍王さんが帰ってきた。
「ええ、まあ、おかえりなさい。」
私より先にグローリエさんに言いなよ。
「そういう格好もいいな。」
ケイル軍王さんが言った。
確かにいつもと違うワンピースとレギンスだけどね。
「私の事はいいんです、それより、ファモウラ軍国との和平はどうなりましたか?」
私は聞いた。
各国代表と話し合ったはずだ。
「まあ、腹の探りあいだ、やはり、ファモウラ軍国の総統が出てこないとどうにもならないようだ。」
ケイル軍王さんがさりげなく私の隣に
座った。
「そうですか...。」
私は言った。
「ファモウラ軍がヘチファデ集結しつつあると言う情報がある...雫老将軍のもとに。」
ケイル軍王さんがさりげなく私の手を握りながら言った。
「老将軍ですか?」
ロビンさんが言ってた老害の一人だな。
「ああ、フオストは優黎を作戦会議に出すようにといつものごとく叫んでた。」
ケイル軍王さんが肩を抱いてきた。
「優黎、今日こそ、一緒に...。」
ケイル軍王さんが甘く微笑んだ。
「...別に誘惑しなくても静かにしていますよ。」
傷にさわるし...そういえばなんで、軍王さんに呼び捨てされてるんだろう?
「私を惑わせるそのつれなさ。」
ケイル軍王さんがますます甘く微笑んで迫ってきた。
狩りの衝動かい!
私はケイル軍王をふかふかの
ジュウタンに沈めながら思った。
極楽だけど、この生活してると
傷がなおんないよー。
なんかまた、医者にしかられる。
ケイル軍王さん迫んないでよ。
私は怪我人なんだからさ。
ロビンさんに会いたいな...。




