思いと想い
━aru━
案内された寮はすごく大きかった。
2LDKが一軒入るであろう大きさ。俺は門の前で止まる。
「でかっ…!」
その驚きように松岡さんは笑う。
「やっぱり驚くのね、皆」
「だって…」
言葉にならず口を魚のようにパクパクさせる。そんな俺を気にしないで松岡さんは歩いていく。
━もう少し説明してほしかった。
その意味は五分前に戻る。
「なんで松岡さんたちと一緒の寮なんだろう…」
俺はため息を吐いた。
「わたしも嫌よ、男子と一緒なんて。気持ち悪い」
その言葉が胸に突き刺さる。
軽く肩を落としながらトボトボ着いていく。すると松岡さんが急に止まって言う。
「そうそう、わたしたちの寮見ても、驚かないでね?まぁ、無理だと思うけど…」
そうして嗤う。
その意味がよく分からなかった。
で、現在に至る。
俺はまたため息を吐く。
女子と一緒の寮なんて何があるか分かったものじゃない。
━どうしよう…何にもなく三年間過ごせるといいんだけど…
寮に近づくにつれ、何だか胸がざわざわする。
━何だろう?この不安…
胸のざわざわが治まらないまま寮に着いた。
「ここよ」
「げっ…!」
そこはまるで何処かのお嬢様の家並みにデカかった。
驚くのを予想していたのだろう、松岡さんが笑う。
「あはは。やっぱり驚くわよね、こんな馬鹿みたいに大きい寮なんて」
俺は激しく首を縦に振る。
誰だってそうだろう。驚かない人は根が座っているか、もしくはこの大きさが当たり前だと思っている良いところのお嬢様ぐらいだ。
さっきまで通って来た道には何処にでもある大きさの寮ばかりだったのに、これだけ違う。
「なんでこんなにデカいんだよ…」
「…文句あるならどっか行けば?」
松岡さんの声が冷たい。
「い…いや、ない!……文句なんてあるわけないだろ?あははは…」
顔の筋肉が一気に引き攣る。
松岡さんはじっと俺を睨んでいたが、すぐに目線を逸らして笑う。
「行きましょう」
「はい…」
誤魔化せたと思えなかった。
━yui━
それから寮の中を案内した。
或くんはとても素直に接してくれた。驚いたり、笑ったり、考えたり。コロコロ変わる或くんの表情を見ていると飽きなかった。
全部案内し終わり、部屋へと連れていく。
「ここが或くんの部屋よ」
ドアを開け、中に入る。
「うわぁ…広い!…すげぇ!」
或くんは部屋に飛び込むなりベットにダイブする。子供みたいだ。
「…すげぇ……俺の家と比べ物にならねぇ…」
わたしはゆっくり近付く。恐い気持ちよりも、彼の笑顔を見たかったからだ。
「…帝緋くん…」
或くんがゆっくり起き上がり、わたしの方を向く。
「……嫌じゃないの?女の子しかいないところに男子一人なんて…」
本当は訊く気はなかった。でも訊きたくなった、或くんの本音を。
無邪気に笑う或くんが、わたしのことを……わたしたちをどう思っているのか。
「んーーーー」
或くんは難しい顔で考える。やっぱり訊かない方が良かったのだろうか?
あまりに不安で或くんのことを凝視する。
ふいに視線が合う。
そして…或くんは笑った。今まで見なかったふんわりとした笑顔を、わたしに向ける。
「そんなに見つめるなよ。…安心しろ、嫌なんて思ってないから。むしろ…」
或くんが立ち上がり、わたしの傍に来る。心臓が激しく脈を打つ。
「……嬉しいよ。だってこうして、松岡さんと…いやあなたと出逢えたから」
「え………」
頬に熱が溜まっていく。
何も言えず固まるわたしの頬に、或くんが触れる。
「……顔真っ赤。別に告白してるわけじゃないんだから…」
「あ!…べ……別に…そういうわけじゃ…ないことくらい…わか…知ってるわよ!」
くるっと後ろを向く。
━なんで触れるのよ……
触れられた頬が、別の意味で熱を持つ。
━やっぱりわたし…変だ。こんなことで赤くなるなんて…
「松岡さん…」
ふいに名前を呼ばれて驚く。
「あのさ……よかったら…名前で呼んでも……いい?」
断ろうと思った…筈なのに、わたしは…。
「…いいよ…」
即答していた。
「…うん、じゃあ……由維…」
恥ずかしかったが、嬉しかった。
そしてわたしも言う。彼に…。
「行こう………或」
最近いそがしくなってきていて、すぐに次話を書けません…。