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【短編】企画参加作品

長さを測ろう

公式企画『冬の童話祭2012』投稿作品です。



長さを測ろう!




鉛筆の長さを測ろう。


机の長さを測ろう。


回覧板の長さを測ろう。


布団の長さを測ろう。


部屋の入口の幅を測ろう。




長さを測ろう!




何で測ろう?


ものさしで測ろうか?


メジャーで測ろうか?


指を広げて手を広げて測ろうか?




長さを測ろう!




回覧板は郵便ポストに入るかな?


布団は背の高さとどれくらい差があるかな?


椅子は部屋から出し入れできるかな?




長さを測ろう!




今日は庭に花だんを作ろう。


丸い形の花だんを作ろう。


周りにブロックを並べよう。


でも、どれだけ並べればいいのかな?


どうやって花だんの周りの長さを測ろう?




長さを測ろう!




丸は『円』とも言うよ。


そして円の周りの長さを調べるために昔からいろんな人が頑張ってきました。


『円の大きさ』と『円の周りの長さ』が関係あるのはもう知っていたみたい。


でも数字で表わすのが大変な作業でいろんな人が挑戦しては挫折していきました。


円は曲がっているから測れないんだ!


そんな理由で円の内側と外側に三角形・四角形・五角形……と少しずつ増やして円に近づけて測ろうとする人たちもいました。


次第に『円の大きさ』と『円の周りの長さ』の関係が簡単には表現できないことに気が付きました。




長さを測ろう!




円周率って知ってる?


円の直径(円の真ん中を通って円に接する直線)と円周(円の周りの長さ)の関係に関わるものだよ。


円周率=円周÷直径 という式で表現できるんだ。


その円周率がやっかいで数字で表わそうとすると無限であることが今わかっているんだ。


ためしに数字で書いてみるね。


円周率=3.14159265358979323846264338327950288419716939937510

58209749445923078164062862089986280348253421170679821480865

32823066470938446095505822317253594081284811174502841027019

38521105559644622948954930381964428810975665933446128475648

23378678316527120190914564856692346034861045432664821339360

72602491412737245870066063155881748815209209628292540917153

64367892590360011330530548820466521384146951941511609433057

27036575959195309218611738193261179310511854807446237996274

956735188575272489122793818301194912…………


ここまで書いても500桁。


実は100000桁も覚えた日本人もいるんだよ。




っと、話がそれて良い子は寝てしまったみたいだね。


では、まだ起きている少し悪い子には問題を出してみようかな。




        ◇        ◇        ◇




とある一軒家で盗難・傷害事件が発生しました。

被害にあったのはそこに1人で住んでいる画家の江尾賀久子(えお かくこ)。

倉庫で何者かに襲われ、倒れていました。

そして倉庫からコレクションの1つであるブロンズ像が盗まれていました。

江尾は頭を殴られおり、命に別状はないも軽い意識障害状態。

事件当時の事は覚えていみたいです。

しかし意識を失う前に犯人へのヒントとなるメッセージを残していました。


3.1415926535


盗まれたものなどから容疑者は被害者と交流があった人物に限られました。


【容疑者】

升井 武代(ますい たけよ) 数学を担当としている高校教師。

灰原 円(はいばら まどか) 洋菓子店のパティシエ。

丸井 律子(まるい りつこ) 眼鏡店のショップ店員。


3人とも江尾の客であり、直接家に行ったこともあり、アリバイはありませんでした。

さて、現場のメッセージから犯人を見つけてください。




        ◇        ◇        ◇




メッセージである数字は円周率。


犯人は数学を教えているから升井武代……ではありません。


犯人は名前に『円』があるから灰原円……ではありません。


犯人は『丸』や『りつ』があるから丸井律子……ではありません。


では犯人は誰なのでしょうか?


実は単純な話だったのです。


そもそもただの画家が円周率をあそこまで覚えていてなおかつ書く余裕があったのでしょうか?


となると自然な答えは『犯人がメッセージを書いた』『犯人は円周率を覚えている』という条件に引っかかるのが数学を教えている升井武代です。


犯人の升井武代は言いました。


「客として出会ったのが一昨年。それから個人的にも親しくなって家にも通うようになったわ。友人……ううん、友達以上の関係だと思っていたの。でも向こうからはただの客だったみたい。それを知った瞬間に全て今までの出来事が音を立てて崩れていったわ。……あとはそのまんまよ。コレクションにしていた像をとって困らせようとしたら見つかって、反射的に……」


升井は警察署へと連行されていきました。




長さを測ろう!




犯人の升井と被害にあった江尾はどれだけ距離が遠くてどれだけ近かったのかな?


君たちの周りにいる人との距離はどれくらいだろう?


人との距離はどうやって測ればいいのかな?


測れるものを測ろう。


測れないものを探してみよう。


そして測れないものを測る方法を考えてみよう。

『童話=絵本』と勘違いして書いた作品でした。

童話は絵本になるけど、絵本は必ず童話ではない不可逆的なやつですものね。


1作目は『こんな話が書きたい』という感じで特にテーマがありませんでした。

今回はタイトルとお話最後の言葉を繋げるためにこんな作品になりました。

とくに子供向けとか大人向けとかそれは意識していません。子供にはここまで見せる、大人は全部――といった感じで良いのではないでしょうか。

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