第二章:ネオンの下の裏表と「3本8発」のルーティン
本当の恋人になってからも、亜美の専門学校の学費という現実は重くのしかかっていた。蓮の手取りだけでは到底賄えない。亜美は蓮への愛を胸に秘めながら、「これはただの資金調達の作業」と割り切って出勤を続けていた。
その日は、店を挙げてのコスプレイベントだった。前半はどこか背徳感をそそるレトロなセーラー服、後半は弾けるような若さを演出するチアガール姿。亜美はその完璧なプロポーションで、群がる男たちを冷徹に品定めしていく。心の中にあるのは蓮の笑顔だけ。目の前の男客たちは、ただの「動く財布」に過ぎなかった。
1人目、2人目の客を、亜美は手慣れた技術で翻弄した。
客たちは一様に、蓮と同じような自嘲を抱えていた。「自分の1日分の給料が、この1時間で消える」という絶望。しかし、アミの圧倒的な肉体的魅力とお口の愛撫、太ももでの締め付け、そしてバストの谷間にペニスを挟み込む完璧な挟保技術を前に、理性は簡単に吹き飛ぶ。
「アミちゃん、もうダメだ……!」
男たちは絶頂の閃光の中で、己の命のきらめきであるタンパク質を激しく放出する。亜美はその瞬間、冷めた目で男を見つめながら、手や体についた精液を男に気づかれないよう素早くティッシュに吐き捨て、あるいは包み込んだ。そして、男が余韻に浸っている隙にお風呂場へ向かい、口に含んだ他人の唾液や手の汚れを、直接排水口へ「ペッ」と冷酷に洗い流すのだった。
そして、この日のイベントの最後を飾る3人目の男客。
事後、強烈な賢者タイムと自己嫌悪に陥り、ベッドの上で頭を抱える男に対し、亜美は後半の衣装である黒いレザーの胸元を大胆に揺らしながら、ベッドサイドへ歩み寄った。
妖艶な笑みを浮かべ、男の耳元に唇を寄せる。
「ねえ、知ってる? 今日はあなたで3本8発よ。……そのうち、あなたが3発ね♡」
それは、男のプライドを完璧に支配する悪魔の殺し文句だった。自分がいかに特別か、いかに彼女を満足させたかという偽物の全能感を与えられた男は、恍惚とした表情で財布を差し出し、高額なオプション料金とチップを支払って空の財布で帰っていく。
客が部屋を出た瞬間、亜美の表情から一切の温度が消えた。
「御愁傷様」
心の中でそう冷笑しながら、手に入れた莫大な現金をバッグの奥深くへと仕舞い込む。この汚れた金は、いつかこの泥沼から抜け出し、最愛の蓮の元へと帰るための「往復切符」なのだ。亜美は鏡に向かってミントの洗口液を口に含み、他人の気配を徹底的に消し去った。




