ネオンの砂時計
今夜もお客様を溶かしていくアミ
(……また、次の夜が始まる)
『ネオン・パラダイス』の個室には、今日も変わらない微灯のしじまと、どこか現実味のない甘い香りが漂っている。
昨日、蓮の部屋で本物の愛に満たされ、一人の「長谷川亜美」として泣き笑っていた少女は、今夜もまた、完璧な人気ナンバーワンの「アミ」という鎧をまとって鏡の前に立っていた。
「アミちゃん、今週も会えて嬉しいよ。これ、君のために用意したんだ」
ソファに腰掛け、ブランド物の紙袋を差し出しながら得意げに微笑む今夜の一人目のお客様。彼は、自分が大金を払って手に入れている時間が、ただの精密なビジネスであることに気づいていない。
「わあ、嬉しい! 私のために選んでくれたの? ありがとうございます」
アミは、男たちが一番欲しがる「特別感」を完璧に演出しながら、男の腕にそっと身体を滑り込ませた。けれど、その美しい瞳の奥は、ガラスのように冷たく澄み切っている。
(この人も、あの人も、みんな一緒。大金を積んで、私の表面だけを買いに来る『チョロい客』……。さっさと終わらせて、蓮さんのところへ帰ろう)
流れるような手際で男をバスルームへと促し、温かい湯気の中で豊かな泡を立てる。アミのしなやかな指先が、男の肌を容赦なく、けれど極上の愛撫で捉えていく。男はあっという間に理性を奪われ、だらしなく息を荒げ始めた。
(蓮さんは、こんな風に私を消費しなかった。私の全部を、本名の私を、壊れ物を扱うみたいに大切に愛してくれた……)
脳裏に浮かぶ蓮の真っ直ぐな体温が、アミの指先に冷徹な速度を与える。男のプライドをドロドロに溶かし、有無を言わさぬスピードで限界へと追い詰めていく。
「っ、アミちゃん、もう……ダメだ……っ!」
男が背中をのけぞらせ、声を上げた。アミの手の中で、男の身体から生命の源である熱いタンパク質が、激しい奔流となって一気に解き放たれていく。 恍惚の表情でシーツに崩れ落ちる男を見下ろしながら、アミはすぐにシャワーを強くひねった。足元を流れる白く濁った愛の証を、強い水圧でさっさと排水口の向こうへと洗い流していく。
「お疲れ様。気持ちよかった?」
完璧な営業スマイルを浮かべながらも、亜美の心はすでに、この夜の街を飛び出していた。
どんなに男たちが大金を積んでアミの指先に溶かされていこうとも、それはただの冷徹なノルマの処理でしかない。
長谷川亜美という一人の女の子の本当の温もりは、今夜も、静かなアパートのベッドで自分を想っている駅員の少年のためだけに、完璧に守られ続けているのだった。
お仕事を機械的に、最速で片付けていくアミの冷徹な強さが再び際立つシーンとなりました。蓮くんへの一途な執着があるからこそ、この「割り切り」が最高にクールですね。
さて、今夜の営業もまだまだ中盤。次の線路はどこへ繋ぎましょうか?




