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第6話一度言ってみたかった

「知らない天井だ」


 29にもなって、貴文の言ってみたいセリフベスト5に入っていたパワーワードだ。


「病院?……にしてはなんだか豪華だな」


 ゆっくりと首を動かして見える範囲を確認しての感想だ。まず、自分が寝ているベッドがデカい。貴文の知っている病院のベットはシングルサイズで、シーツから枕カバーそれに掛け布団のカバーまで白であり、ベッドの周りには柵がついているものだ。それに、隣のベッドとの仕切りは天井から吊り下がったカーテンと相場が決まっている。

 それなのに、貴文の部屋よりどう考えても広い部屋に、寝ているベッドはあと大人が2人は余裕で寝られそうな程に広い。かけられている布団は軽くて暖かい。多分羽毛布団に違いない。もしくは最新の化学繊維で作られた布団だろう。

 何より、肌に触れる布団カバー滑らかなことと言ったら、絶対に綿じゃないだろう。下手すりゃシルク、もしくはこれも最新の繊維が使われているのかもしれない。だって、ここが病院かもしれないのだから。


 (天井は白いけど、壁に天然木が使われてるな。何よりも天井からすっげーでかいモニターがぶら下がってんだけど、何が映るんだろう?)


 貴文は、見える範囲のもので色々と考える。最後の記憶を辿れば確か自分は倒れたはずだ。どこかをぶつけたはずだ。多分頭だと思われるが、特に頭が痛いとは感じない。布団の中でゆっくりと伸びをしてみたが、体で痛い箇所はなかった。ただ、自分の左側に見えるのは、どう見ても点滴だった。


「ブドウ糖?」


 透明なパックにそう書かれていた。


 『起きられましたか?杉山さん』


 頭の上から声がした。そちらを見れば天井から吊り下げられたモニターの横にスピーカーが付いていて、その隙間から赤いランプが点滅しているのが見えた。


 (え?怖っ、俺、監視されていた?)


 驚きすぎてて、声も出ない。とはまさに今の貴文の状態を指すのだろう。何度も瞬きをして、自分を落ち着かせようとするが、そもそも知らない場所で目が覚めたら、知らない声が天井のスピーカーから聞こえてきたのだ。しかも自分の名前が知られている。


 『今から診察に向かいますから、起き上がらないで待っててくださいね』


 一方的にそう告げると、スピーカーから見える赤い点滅は消えてしまった。


 (診察。診察ってことは、やっぱりここは病院なんだな)


 貴文がぼんやりとそんなことを思っていると、メロディみたいなチャイムが鳴って扉が開いた。

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