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第二章 奪い奪われ


 私は、どうやら周りの人よりも優れているらしい。

家の人間のほとんどに言われてきた。私は優秀だと

 

 私は、小さな時から戦闘術を教え込まれた。自分の身を守るためだと言われた。

でも、叩き込まれたのは魔族から身を守る方法だけだった、人間から身を守ることは教えられなかった。

正直使う場所というのは、あまりないだろう。でも、私は一応は両家の人間であるため、人に命を奪われる可能性だってあった。でも教え込まれたのは、魔族を退治する方法だけだった。

 

 後に知ったのだが、レッドヴェイル家は代々、魔族・悪魔法使い退治を行ってきているらしい。

そしてその次期党首が私というわけだ。


 私は、魔法学校には通わなかった。

でも家庭教師が付いた、かっこいい先生だった。成績もかなり優秀で21歳でミリオンランク魔法使いと魔法使いとしての素質もあった。

私も、かなりなついた。教えるのも上手で、面白い魔法をたくさん見せてくれた。


 でもいつからだろう、先生は私との距離が近づいていった。悪い気はしなかった、でも先生と生徒という関係性ではなくなろうとしていた。

この時、まだ私は恋愛というものを知らなかった、先生が私に好きだと言っているが、それは愛情だと思っていた。

 でも違う、そのすきだという言葉にはどす黒い、闇を含んだ恋愛感情からクス好きだったのだろうと今では思う。


 それから、先生の行為はどんどんエスカレートしていった。

時に、キスまで要求されたもちろん断った。最初の方に合ったかっこいいという感情はなく。

ただただ、気持ちが悪い。お母さんに言おうとした時もあった。

でも先生に何をされるのかわからない。何も言えなかった。

この時は、まだ私がこの男よりも強いだなんて微塵も思わなかった。なぜなら外の世界を知らなかったからだ。


 とある日、とうとうその男は私を襲おうとしてきた。必死にその小さな体と小さな手で抵抗した。

でも、止まらない。

この時に、教え込まれた戦闘術を思い出した。でもこれは魔族に使うもので人間には使ってはいけないと教えられていた。

それでも、私にはこの男が悪魔にも魔族にも見えた。

考える間もなく、男は私の魔法により、苦しみだした

ほどなくして、死んだ。

この時に私は一瞬だけ、快楽を覚えた。嫌いな人間を殺したから?それとも血筋なのだろうか


 その快楽は、今まで味わったことのない快楽だ。

複数の絵の具を水の入った、筆洗に入れかき混ぜたような、ぐちゃぐちゃな快楽。

色が定まらない、快楽。ほどなくして、恐怖が襲った。

人を殺したという行動から来る恐怖ではない。

人を殺せてしまう、という力を私が持っているという恐怖を。


 人間は、簡単に死ぬのだなと、6歳にして思った。


 私が使った魔法は、基礎攻撃魔法のゾリュ―トだ。

本来ならば、相手を吹っ飛ばす程度の能力だ。

でも私は男を吹っ飛ばしは、したのだが壁に打ち付けられ、死んだ。


 私は、こんな力を持っているのかと、手のひらを見て、恐怖から疑問へと変わった。

やはりおかしい、本で読んだ人が死ぬと悲しい、殺すと苦しいと

でもなぜだろう、悲しくも苦しくもならない、ただただ冷静だ。


 私には、心がないのだろうか…昔から泣かない子だと言われていたから、悲しみという感情がないのだろうか。

私は、この男を殺してから2時間ほど、殺人とはどういうものなのか考え続けた。


 誰かが階段を上る音が聞こえてくる。

きっと、家政婦か執事だろう。

いずれにしろ、私がこの男を殺したのは、見つかる。隠したっていつかは見つかるのだ。

ならもう、いっそのこと気にせずそのまま、見せればいいだろう。


「リリア様、お時間になられたのにお茶の席にいらっしゃらなかったのでお呼びに参りました」


家政婦だ、この光景を家政婦に見せるのは少し酷だろう。

慣れていない、もちろん私だって人が死ぬところを見るのは初めてだし、殺したことだってない。

でもなぜだが、何度も見た光景のような気がしていて、慣れていて。

でも、恐らく家政婦は慣れていないだろう、幼心にそう思った


「執事を呼んできてくれる」


執事は、この家に勤めて長い。母上の仕事にもついていったことがあるらしい。

なら、魔族殺しも悪魔法使い殺しも見てきただろう。

慣れているはずだ。

執事なら、黙ってこの現場を掃除してくれるだろう。まぁ母上にばれても特に問題はないだろうけど


「お呼びいたしました、ちょうどそこにいらっしゃったので」

「ありがとう、執事だけ入ってきて、家政婦のあなたは、元の仕事に戻っていいよ、お茶は後で行く」


執事は、何かを悟っているようで、何もしゃべらず部屋に入ってくる。

でもそれが殺人だとは思うまい。

執事も、部屋に入った途端。少し顔をしかめた。

それでも、執事は私の顔を見て、男を抱えて、出ていった。何も言わずにだ

きっと、私の顔を見て分かったのだろう、死を恐怖だと思っていないということを。

母上と同じ目をしていたのだろう、人殺しの目だ


 母上は、このことについてなんて言うだろうか、怒るだろうか

それとも、殺人を正当化するだろか

いずれにしろ、母上の判断だ


 誰もいないはずの、私の部屋に風が吹いている。

窓が開いているのだ。


「あなた、人を殺したわね」


母上だ。その声のトーンは少し低く恐怖感を感じた。


「なんで殺したの」


これは、質問ではない尋問だ。強制的に答えを出させようとしている。


「私を襲おうとしたから、殺す気はなかった、でも殺した」


言葉がすらすら、出てくる。いつも母上とお話をするときは緊張して、キョドってしまうのだが

今は、とても冷静だ、冷静すぎるくらいだ自分が気持ちが悪い、自分じゃないみたいだ


「そう、ならいいわ、理由なく人を殺さなければ、価値はある。覚えていなさい、価値のある殺しと価値のない殺しがあることを、今回は価値があった。それだけよ」


やはり、正当化してきた。仕方ない、自分もやってきたことだ、これからもやっていくことだ。

殺しを正当化しないと、まともに人なんて殺せない。


つまりは、私はまともではないということだ。


私は、誰よりも優秀ではない、なぜなら人を殺して快感を覚えたからだ。


自分に恐怖した。人を殺して冷静でいられたことを。

今でも、恐怖している。だから、殺すことができる魔法は二度と使わない。

そう心に誓い、魔術因子を自分で焼いて消した。

いまでも、左手にはやけどあとがあるので、包帯でぐるぐる巻きだ。



 私は、死にかけたことがある。

それは、私が殺しをしてから2年後の8歳の時。

初めて魔族に遭遇した。最初は全く分からなかった。

目の前にいる、男が魔族だということを

私は、攻撃されて初めて、その男が魔族だとわかった。

男が放った攻撃は、デスペラード(最上位闇魔法)だった。

まだ、小さな私にも容赦はない。それが魔族だ。

防御動作も回避動作も行えていない。まさに、死ぬんだなと思った。


 人は死ぬときに、走馬灯というものが見えるらしい。

私も例外なく、走馬灯が見えた。

今までやってきたこと、これからやりたかったこと、今すべきこと。

楽しい、嬉しい、悔しい、悲しい、苦しい

様々な感情が、流れ込んできてあふれる。

でも一滴の涙も流れることなく殺されるのだろう。

もう、相手の攻撃がこちらに届きそうだ。

目を瞑る。視界が暗くなる、何も見えなくなる。


その刹那、低く鈍い音が私より少し前から聞こえる。

目を開けてみると、目の前にはお腹に、真っ赤に穴が開き立っている、男の人の姿があった。

即死だったのだろう、でも最後まで私を守ろうとしてくれた、立ったまま死んでいる。

この男は、誰なのだろうか…顔を見る

今思うと、魔族が目の前にいるのに大胆な行動だったと思う。


「はっ…」


執事だ。その顔を見て、息のできないような苦しさを覚えた。

それと同時に少し安堵した。私にも、人が死ぬと悲しく、悔しいという感情があるのだなと、怒りまでわいてきた。


「勇敢な男だな、しかしただ死んでしまっては、お前は助からないな」


魔族が何か言っている、でも私にははっきりと聞こえない、執事を抱きしめ服を真っ赤に染めて涙を流した。大声で泣いた

この間、魔族は殺してこなかった。意外と慈悲深いのだろうか、いや

私のことをみて、口角を上げ笑っている。

私の姿を見て、楽しんでいるのだ。

どこまでも屑だ、殺しても何も言われず、むしろ喜ばれる理由がしっかりとわかった。


「そろそろ、見飽きたな、殺す」

ヴァルナクティス(魔族専用禁忌魔術)お前はもう、死ね」


ヴァルナクティス、家系魔法の一つで、使うことを厳しく禁止されている魔法で、魔族にのみ使用可能

使用した場合、あいての全身の血液を逆流させ、肉体を内側から破壊する

代償として、その日一日間魔法が使えなくなる。


 ここまで強力な魔法でなくても、よかっただろう

正直弱い魔族だ、でも一番苦しむ死に方で殺したかった。

殺したときは、全身の血が逆流するような怒りと快楽と、悲しみと憎悪があった。


 私は、もう人を死なせないと心に誓った

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