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Successive Space

0.プロローグ


太陽が白色矮星になってから、数世代の宇宙が終焉を迎えていた遠い未来。宇宙連合の管轄組織である宇宙環境省は、遥か遠い過去の終焉していった歴代宇宙の解明を目指していた。



1.ひとつ前の宇宙


「今回、調査する宇宙です」

七海ななみは資料を見せる。彼女は古生物学者である。宇宙環境省に所属し、終焉していった過去の歴代宇宙の解明を任されていた。

「なるほど。太陽が存在していた宇宙のひとつ前の宇宙ですね」

一基かずきは紙の資料を受け取った。彼は宇宙物理学者である。彼も七海と同じ宇宙環境省の職員だ。マルチバース宇宙論が証明されてからは、様々な宇宙の研究をしている。もちろん、サイクリック宇宙論により、証明された現存の宇宙が出来る前の一世代、二世代、それ以前の歴代宇宙の研究もしている。

「では、早速、重力波の観測をしましょう」


「どうですか?」

「もうすぐ、完了です。再現した宇宙を立体映像で表示します」

立体映像が出現する。

「わぁ」

七海は目を輝かせた。


「どうやら、Big Crunchによって、終焉した様ですね」

 一基は立体映像を動かす。

「そのようですね」

 七海も立体映像の画像を覗き込む。

「グレートウォールが形成されていますね。この様子だと、生命体も誕生していたかもしれません」

「なんと!」

七海は目を輝かせた。


「この宇宙を誕生させて、実際に生命体を保護するかどうか、上に報告しないと」

 七海は資料を見る。

「そうですね」

「報告書をまとめましょう」

「はい」


「どうだった? 上層部」

 一基は上層部へ書類を提出しに行った七海が帰って来ると、急いで返答を尋ねた。

「再現して、生命体を保護するって!」

七海は笑顔で報告した。

「それは、良かった」



2.隣のひとつ前の宇宙


「今回の対象宇宙です」

七海は一基に紙の資料を見せる。

「なるほど。この宇宙は人為的に強制終了されているのですね」

「はい。寿命が長すぎて、陽子崩壊していたようです」

「ほぼ何もない……」困惑。


「では、重力波の観測をしましょう」

 一基は七海と作業を始める。

ピー。作業完了の電子音がした。

「どうでしたか?」

 七海は一基に聞く。

「どうやら、グレートウォールも生命体も存在していたようですね」

「やりがいありですね」笑顔。

「寿命が長い宇宙だったもんね」笑顔。


「では、上層部に報告書を出しておきますね」

 七海は資料を整える。

「よろしくどうぞ」

「今回は、上層部も人員をさいてくれるといいけど」

「きっと、人工知能の応援人員だろうな」

「え」

七海は困惑した。


「そうなる?」

 七海は首を傾げる。

「人工知能は大体がミスをしないからな」

 一基は少し、微笑む。

「そうだね。ヒューマンエラーは生命体のみだからね」笑顔。

「システムエラーが起こったら、全滅だけどな」

「え」困惑。



3.ふたつ前の宇宙


「今回、調査する宇宙です」

 七海は紙の資料を差し出した。

「どうやら、ふたつ前の宇宙ですね」

 一基は資料をめくる。

「観測を始めましょう」


「どうでしたか?」

 七海は尋ねる。

「生命体は存在していたようですね」

 一基は観測結果を伝える。

「なるほど」

「それから、真空崩壊の痕跡があります」

「ほぼ全滅」困惑。


「真空崩壊のあとの宇宙空間にも生命体はいるからな」

 一基は呟く。

「ということは、作業が倍?」

 七海は首を傾げる。

「あ」フリーズ。

――真空崩壊前の生命体も保護だろうな。


「そんなに都合よく、真空崩壊するかな?」

 一基は少し、困惑する。

「再現した宇宙でもってこと?」

 七海は頬杖をする。

「うん。それそれ」

 一基は指さす。

「上層部なら、きっと強制」

「え」困惑。



4.三つ前の宇宙


「今回の対象宇宙です」

七海は資料を見せる。

「なるほど」

一基は資料を見る。

「では、早速、観測しましょう」


「どうでした?」

 七海は聞く。

「生命体は存在しています。そして、この宇宙空間に別次元の宇宙空間が誕生しており、元の宇宙空間が滅亡しています」

「全滅!?」困惑。


「今回も作業が倍だね」

 七海は頬杖をしながら、苦笑する。

「確かに」

「上層部、今回も強制滅亡かな?」

「滅亡後に誕生した生命体の保護の為かも」

「な、なるほど」困惑。



5.四つ前の宇宙


「今回、調査する宇宙です」

七海は紙の資料を手渡す。

「ありがとう」

一基は資料を受け取る。

「なるほど。では、早速」

一基は立ち上がる。

「重力波の観測ですね」

 七海は頼もしく、返事をする。


「どうでしたか?」

「グレートウォールも生命体も存在していないみたいですね」

「そうですか」

「Big Crunchまでの時間が短すぎたのでしょう」

「私の出番がない……」しょんぼり。



6.隣のふたつ前の宇宙


「今回、調査する宇宙です」

「なるほど」

 一基は七海から、受け取った紙の資料をめくる。

「どうやら、強制終了させられた宇宙のようです」

 七海も資料を見る。

「意外と強制多いね」

「確かに」困惑。


「観測結果、どうですか?」

 七海は立体映像の画面を覗き込む。

「Big Ripの痕跡がある。きっと、グレートウォールが維持出来なくなり、強制終了にしたのでしょう」

「ということは、……」

 七海は一基の顔を見る。

「既に宇宙生命体は保護されている」

「何!?」困惑。


「じゃあ、どうして……」

 七海は考え込む。

「あ。一番下の備考欄! 宇宙自体の発見が遅く、前半の時代の生命体が未保護らしい」

「え!?」

「どうした?」

 一基は七海の驚き方に驚く。彼が七海を見ると、彼女は目を輝かせていた。

――出番があって、嬉しいのか……。


「上層部に報告して来ます!」

「はい。いってらっしゃい」

 一基は七海を笑顔で見送った。七海は廊下を走って行く。

――歴代宇宙の解明まであと少し。

――おもしろくなって来ましたね。

 一基は七海を送り出した後、頬杖をついて、微笑んだ。

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