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Permanent Inflation

0.プロローグ


 太陽が白色矮星になってから、いくつもの宇宙が世代をいくつか変えていた未来。生命体は永久インフレーションをコントロールし、新たな宇宙を人為的に生み出していた。

 そんな時代、宇宙環境省には宇宙のコピーを作る空間開発課が設置され、宇宙環境により危機に追い込まれた生命体たちを保護していた。



1.地球の存在していた宇宙


「おはよう」

向井陽葵むかい ひまりは手を振る。

「おはようございます」

人工知能のASAHIあさひは立体映像で手を振った。

「今回の宇宙だそうです」

「あ、本当だ」

陽葵はデスクの上の情報端末に送られてきたデータを見た。

「今回は地球の存在していた宇宙」

「えぇ」

「宇宙の一部が真空崩壊しているのね」

「そのようです」

「よし! 現場を目視しに行こう」

「はい」


「あれかぁ」

陽葵は可視光線に変更されたパネルを見た。

「そのようですね」

「真空崩壊が三分の一にまで達している。急ぎましょう」

「はい」


「装置の準備はいい?」

 陽葵はASAHIに問う。

「はい。人工宇宙の設定はあの宇宙と同じ物理法則になるようにしました」

「分かった。今、スタートさせる」

陽葵は情報端末の画面を押した。

「どうですか?」

陽葵は隣のパネルの画面を見て、答える。

「大丈夫。目視でも」

ASAHIは同じ画面を見る。

「大丈夫のようですね」



2.物理法則が多い宇宙


「今回の宇宙です」

 ASAHIは立体映像で姿を現す。

「今回は空間の相転移みたいだね」

「はい。今までの物理法則に加えて、新たな物理法則が誕生してしまいます」

「相転移はもうすぐ。ということは、もう相転移の抑止は出来ない」

「そのようですね」


「しかし、なぜ、今になって」

 陽葵は少し、困惑する。

「まぁ、わざわざ文明が誕生してから、起こっていますからね」

「ダークエネルギーが関係はしてるんでしょうけど。宇宙の晴れ上がりまでには安定していてほしかったかな」

「少し、我がまま」

「え!? そ、そうなの!?」


「まぁ、生命体は少しわがままの方がいいかもしれないですね」

「もしかして、怒ってる?」

陽葵は心配そうに聞く。

「文明も発展するし」ぷー。

「ごめんって」苦笑。

「ま、そういうところがいいのですがね」少し和み。

「え!? さっきまで怒ってたよね」困惑。



3.膨張が止まっている宇宙


「今回の宇宙はこれだそうです」

陽葵は、ASAHIの立体映像の画面に映された資料を見る。

「なるほど。人口爆発により宇宙生命体たちの住む空間が次第になくなっていっているのね」

「はい。宇宙自体の膨張が停止しているので、巨大な宇宙コロニーが段々と増加して、宇宙空間を埋め尽くしていっているのです」

「そうだったのね」


「巨大な宇宙コロニー。間隔はどのくらいなのだろう」

 ASAHIは少し、考えてみる。

「気になるの、そこ?」

「うん。0ミリ」

「それ、くっ付いてるよね」困惑。


「元の宇宙に危機はないけど、一応の宇宙のコピーなのね」

 陽葵は、呟く。

「うん」

「元の宇宙は膨張が停止しているけど、人工宇宙はどうするのかな」

「同じところで、また停止」きっぱり。

「そうよね」遠い目。



4.Big Crunchへ向かう宇宙


「今回の対象宇宙です」

「なるほど」

陽葵は、情報端末の画面を見る。

「宇宙が縮んで行き、ある一点で潰れるBig Crunch」

「そのようですね」


「最近、発見された宇宙」

 陽葵が呟くように言う。

「はい。それにより、対応が遅れてしまい、コピーを作ることに」

「そうだったのね」

「科学の限界だぁ!」泣く。

「落ち着いて……」困惑。


「Big Crunch見てみたいな」

「それじゃ、見る? 可視光線に変更してあるよ?」

 陽葵は、画像を見せてあげた。

「あ、本当だ。内部映像もある?」

「そこまで、見たかったの!?」ガチだね。



5.Big Ripが始まりかけている宇宙


「今回の宇宙です」

「Big Ripが始まりかけているのね」

「はい。膨張が加速しすぎて、宇宙の大構造であるグレートウォールが崩れ始めているみたいです」

「分かったわ」


「Big Ripのその先って、第二のインフレーションなのかな?」

 ASAHIは、考えてみていた。

「うーん。どうなんだろう」

「まだ、研究結果出てないもんね」

「気になるの?」

「全く、0ミリ」

「なぜ、聞いた!?」


「今、全宇宙コロニーの避難が完了したようよ」

 陽葵が報告する。

「これで安心だね。ということは、今、宇宙に人工物はない?」

「あ、言われてみれば。珍しいね」

「ま、これが元々でしょ」溜め息。

「いきなり、辛口!?」



6.4次元宇宙空間


「今回、対応する宇宙です」

 ASAHIは立体映像の資料を見せる。

「4次元の宇宙空間に6次元の宇宙空間が重なってしまったのね」

「はい。それにより、元々の4次元宇宙空間が侵食され、被害を受けています」

「分かった」


「6次元宇宙空間のBig Crunchへの誘導は出来ないの?」

 陽葵はASAHIへ問う。

「手遅れだったようです」

「そうだったのね」

「ううう」

ASAHIは泣く。

「どうしたの!?」

「科学の限界だぁ!」叫ぶ。

「もう、分かったから」困惑。


「宇宙をコピーしよう」

 陽葵は作業を開始する。

「はい」

「物理法則が意外と多いね」

「6次元の方も多いですね」

「本当だ。興味深いね」

「全く、0ミリ」

「何で何で!?」焦る。



7.陽子崩壊が進んだ宇宙


「今回の対象宇宙です」

 ASAHIは資料を見せる。

「陽子崩壊が進んでいるのね」

「はい。生命体にも危機が訪れています」

「分かりました」


「陽子が比較的安定したレプトンへ崩壊して、陽子が無くなってしまうのね」

 陽葵は呟くように言う。

「はい。原子が存在出来なくなってしまうのです」

「そうか」

「でも、寿命が短いわけじゃないから、この状態はとても珍しい」

「え!? そうだったの!?」

「知らなかったの?」

「う」困惑。


「永久インフレーションの管理」

 ASAHIは呟く。それを聞いて、陽葵は彼に尋ねる。

「どうしたの?」

「僕たち機械も頑張ってるでしょ?」

「うんうん、0ミリ」笑顔。

「「ごめんってぇ! もう言わないから、ここで使わないでぇ!」


「陽葵。ありがとう」

ASAHIは微笑む。

「え?」

「生命体たちのために、僕たち科学を使ってくれて」

「うん。こちらこそ」

陽葵も笑顔になった。

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